October 26, 2008

第55回サラウンド塾 野外音楽イベントでのサラウンドのススメ 相原耕治

By. Mick Sawaguchi
2008年10月26日 三鷹沢口スタジオにて
テーマ:野外音楽イベントでのサラウンドのススメ
講師:相原 耕治(Syn-phonic5、国立音楽院講師)


沢口:2008年10月のテーマは、野外イベントのサラウンドです。たぶんこれを取り上げるのは、富田勳さん以外、初めてだと思います。野外というスケールの大きなイベントでのサラウンド音響表現は、大変面白い分野だと私も思っています。本日の講師は、シンフォニックファイブの相原さんです。相原さんはご自分で色々なサラウンドの音楽制作をしたり、イベントの企画とか、ある時は、ステージマネージャーもやっているやっているそうで、国立音楽院で先生もされています。今回は2007年9月7日に千葉県柏市の布施弁天で行った「未来への贈り物」というシンセサイザーサラウンドコンサートの企画から実際までを例に講演していただきます。それでは、よろしくお願いします。

相原:まずは自己紹介からしたいと思います。私も寺子屋のホームページを眺めていまして、50回以上やっていますから、今までのを見れば色々なジャンルが取り上げられており、私もこの寺子屋へ参加したいなぁと思っていました。そして2007年のInter BEEで初めて沢口さんと話す機会があり、以来この寺子屋へ参加しています。僕は、一流のプロの皆さんの話を聞いて勉強したい、ノウハウなど色々なことを学びたいと思っていたんですけれども、逆に野外でサラウンドやっているなら、講師をやってくださいということで今日はこちら側に立たせて頂くことになりました。ですから、今日は頑張らせて頂きたいと思います。(一同拍手)

[サラウンドコンサートへの夢]
相原:野外イベントにはお客さんが居らっしゃいます。お客様に夢を見ていただくのが仕事です。これはコンサートホールも同じ事なんですけれども、自分にとってのサラウンドコンサートとは夢です。それが私の行動力の源になっていると思います。私が中学生の頃、当時YMOがはやった時期でした。シンセサイザー奏者の藤掛廣幸さんのサラウンドのチラシを見ました。チラシを見るとBOSEの802スピーカをつかって4chコンサートをやるというものでした。当時の私は4chとは何だろうと思いました。

1983年「訪問インタビュー」というNHKの番組で富田勲さんが「サウンドクラウド」の話をされていました。当時高校生の私はそんなすごい事するんだ!と本当に感動し興味が湧きました。そして自分もこんな風にコンサートを出来たらいいなぁと思っていました。この時から夢を見ていました。また、その頃やっていたのが筑波万博です。音場について面白くできているコーナーが沢山ありました。どこの音響のパビリオンも面白かったです。その後、富田勲さんの「サウンドクラウド」をCDでよく聞いていました。後はホロフォニックス、2chの立体音響なんかにもはまっていました。栗原さん(大阪芸大)も立体音響のコンサートをやっていたのですが、実際行けなかったのでチラシは今でも大事にとってあります。それから初めて冨田勲さんの「サウンドクラウド」を体験しました。岐阜でした。その後の横浜にも行きいろんなアーティストのコンサートもチェックしていました。それから初めて野外でイベントをやった時が1997年でした。この時はBOSE802が4発あったにもかかわらず2chでやりました。本当は4chやりたかったのですが。DAWにもこの頃はサラウンドレコーディング機能がなく、MIDIだけだったので、できませんでした。

[野外でのサラウンドの利点]
・開放感が良い。
・サラウンド=天然のサラウンド。空間的3D。
・自然による演出がしやすい。(例えば、マチネでの夕焼けなど)
・お客様が夢から覚めにくい。
・演出空間が広がる。拡大できる。
などが魅力だと思います。

そして今回私が話をいただいたのが千葉県柏市の布施弁天でした。まずサラウンドとは直接関係ありませんが布施弁天の説明をさせて頂きます。

[紅龍山 布施弁天 東海寺(真言宗豊山派)]
上野(不忍)、江ノ島、布施弁天は関東三弁天といわれています。弁天様は琵琶を持っている事から、音楽の神様です。音楽の神様の前で音楽のイベント出来るなんてこんな光栄な事はないので本当にありがたっかったです。東海寺は「亀の甲山」と呼ばれる丘に、竜宮造りの桜門(ろうもん)や、多宝塔式鐘楼(たほうとうしきしょうろう)と珍しい建物があり、千葉県の重要文化財に指定されています。

[多宝塔式鐘楼(たほうとうしきしょうろう)]
鐘楼は文化15年(1818年)に建てられました。12本の柱には十二支の彫刻を配し方位を示しています。設計は伊賀七が行い、現在も設計図が子孫に保存されています。第二次世界大戦中、鉄不足のため鐘を切断して外され、持っていかれてしまいました。終戦後、昭和33年に鐘を吊るす事になったが建物に入らず、設計図を見て鐘楼を分解し、鐘を吊るし再度建物を組み立てたそうです。その現場を幼年の頃に見たという人が、現在の東海寺の総代を勤めていたため、この鐘の音を生で総代に突いてもらいイベントに活かしました。また、住職の唱名のステージとしても利用しました。

[紅龍山 布施弁天 東海寺に伝わる伝説]
この伝説がまたサラウンド向けなんですよ(笑)
①大同2年(807年)7月7日、嵐の夜に紅い龍が西より現れ、沼に土の塊を落として去ってゆく。
②塊はたちまち島(亀の甲山)となり、大地が揺れ続き、夜には島の一角から不思議な光が差しはじめる。
③里人が光に導かれ島へ渡ると、その場所に3寸ほどの仏像があり、里人は小さな祠を建て祀った。
④空海がこの地を訪れ、その仏像が修行時代に、自分が彫った物である事を知り、この地に寺を建てた。
これが現在の「紅龍山 布施弁天 東海寺」となる。

[布勢弁天でのサラウンドイベントの目的]
*今回の場合サラウンドをどうアピールしたか?
・シンセサイザーのコンサートを行ってほしいと依頼されました。
・伝説をもとにストーリーを構築する。
・ストーリーでサラウンドの音場効果を説明する(西から龍、地震など)本当に竜が飛ぶように演出
・住職に唱名をお願いしました。(サラウンドの効果を説明)
・総代には鐘を鳴らして頂くようお願いしました。(音源の中に鐘の生音が入る事をアピール)
・弁天様の役を誰かに演じてもらう。女性の方にやって頂いたきました。(弁天様が歌う効果をアピール)
・布施弁天を360度で演出するため、野外のサラウンドではないと表現できない世界。野外でのサラウンド利用の最大のメリットでした。

*今回の目的
・コンサートを行う事で、布施弁天をアピールし、新たな客層を増やすことです。
*その場所ならではのイベントにするためには
・そこにまつわるものを可能な限りストーリに応用する。
・歴史や伝説、建物の特徴を生かして計画しました。曲や曲順にも影響します。
ホールで世界を創るのではなく、その場所がすでに世界になるように考えました。
*メッセージ(伝えたい事)
・音楽やサウンドを通して、自分の思いをお客さんに伝えます。
・映画と思われる可能性もあるので、チラシに音楽サラウンドである旨説明文を添えました。
*主催者にサラウンドのメリットを説得
・サラウンドにする事で、主催者にどのようなメリットがあるか説明します。
・主催者の気持ちを考えるること。→ どうしてこれをやるのか。
・観客の気持ちを考えるること。→ これはすごく大事な事です。

それにはやはり下調べが大切です。
・会場の特徴や地形 ※これにより当然サラウンドプランも変わってきます。
・その地域の伝統や文化、方言。その場所で活かせるものを取り入れた方が良い発想が生まれるのではないのかと思います。
・地元の共演者
(出身の方を呼んだりすると喜んでくれる事が多いです)



*今回の場合(予算内でまとめるために)
実行するための機材はなにか。今回の予算から優先順位で、サラウンドを優先に範囲内におさめていきました。
・照明装置に影響がでてきます。演出にも影響が出ます。

対策:映像をつけました(知り合いに依頼、自前のプロジェクター使用しました)
なお、製作中だったので同期はせず、マニュアルでイメージ画像とタイトルをループで再生しました。ちなみに、全体の予算の半分は照明に費やしました。

[野外イベントでの注意点]
サラウンドにかぎらず野外イベントを行う場合に必要な項目を述べておきますので皆さんも参考にしてください。

*リハーサル:野外の照明リハーサルは前日に行うのが理想です (ただし、リハーサルは夜しかできません。昼の太陽が当たっている状態では照明、映像がどのくらい色が反映されているかわからないからです。)
*レーザー:スピーカーのセットで使うレーザー距離計のポイントが昼だと見えにくいのです。注意しましょう。
*天候と雨天時の対応:リハ、本番、予備日を考え、3日間は機材とスタッフを押さえるのが理想だと考えました(今回は1日だけでした。神に祈るようなような思いでした)
*本番日の告知:小雨決行、雨天延期、雨天中止、荒天順延など告げる、伝える事もしておきましょう。
*ワイヤレス:タクシーや警察、違法無線などの電波を拾う可能性もあるので注意。予備チャンネルの確保しておきます。
*電源の確保:サイレントジェネレータを使用し、会場から離れた場所へ設置。※離れたという事はケーブルも長く敷くという事なので、つまり抵抗がかかります。出力が弱まってしまいます。なので、ジェネレータでは少し高く設定していました。
*壁のない空間:アコースティックな残響がない(少ない)建物がある場合、反射するので、特に音出しテストを行うのが理想です。対の建物等は壁が平らな場合、フラッターの可能性もある。ガラス張りの建物などは反射がしやすく、鳴き竜がおこる可能性もある。
*音が逃げていく:ストレート音だけの音場になりやすいです。
*風による影響:追い風や向かい風で伝わる速度が変化したり、横風で曲がる。スピーカを吊るすと揺れるため、指向性が変わり、うねりを起こすことも。
*音速の問題:広い会場では、340mにつき1秒遅れる事を考慮する。VIP席に合わせディレイで対処するしかありません。ピンクノイズでチェックしました。
*ドップラー効果:演出で乗り物を使う場合など、遅れと共に考慮する。あらかじめピッチを変えて制作、ハーモナイザーでリアルタイム処理する。
*ハース効果:設置条件で距離が変る場合も考えられるので、同じ音は出さない方が無難では?
*樹木など影響:音が木や葉に当たり、散乱や吸収をすることもあります。
*やまびこ:会場によっては、山びことなって返ってくる事も考えられる。小さい音なので気にならない?
*音圧レベル:オールパスレベルで85dBC (富田勲さんのサウンドクラウドでは100dBCだったそうです) を目安にした。音は抜けるのでメーターに頼りつつも、今回は客観的に聴いて決定しました。
*自然ノイズ:季節や場所により、環境ノイズは変わるが、自然に発するものは、心地よい音が多いと思います。
*人工ノイズ:ヘリコプターや緊急車両などはやむをえない。(フライトプランはパイロット自身に委ねられている)
*近所の苦情:音響機器を使うため、近所周辺へは理解をしてもらうようお願いをします。(今回は周りが田んぼばかりで大丈夫でした)
*海や港で野外照明を使う場合:灯台と間違える可能性があるので、会場最寄りの海上保安部などへ相談しておきましょう。
*火を使う場合:火や煙を使う演出で、火事と間違える可能性がある場合、会場最寄りの消防署(予防課)へ届けを出す。ホールなどでは禁止行為解除承諾申請書を提出しましょう。
*道路が混雑する場合や、道を封鎖して会場として使う場合:交通整理、誘導の必要があるため、会場最寄りの警察署へ届けを出しましょう。
*道路の目隠し:近くの首都なる道路から会場が見えると、見物しながらの運転となるため、橋や高速道路では壁に目隠しをする事も必要です。
*日周運動:機材の放熱、LED表示など見えなくなることもあります。演奏者がまぶしく演奏できない場合もあります。
*生楽器:空調、温度湿度、直射日光、譜面灯、風の対策(譜面が飛ぶ)
*モニタ環境:イヤホンでドンカマ(クリック)を使う場合は問題ありません。モニタースピーカー使用の場合は、壁がないので出力に余裕を持たせます。
*客席:パイプ椅子、ござ、場所取りなど、携帯椅子を購入して頂くこともあります。
*有料の場合:有料エリアの確保、警備員を配置を考えましょう。
*トイレ:最寄りの公共施設の利用(協力を求める)、仮設トイレの設置も大事です。
*その他:控え室の確保、ゴミ箱の設置なども必要です。

[音場プラン]

4チャンネルサラウンドは、ピンポイントの再生が不自然になります。その場合後ろをサラウンドアレイにしてしまえばいいのではないでしょうか。障害物、建造物、木などある場合はこのやり方をすればいいのではないのかと思います。今回は4.1chでベースにしましけれども、弁天様が歌うという事をしたので、それは弁天チャンネルと呼んでいました。弁天チャンネルはそのシーンの為だけに本堂に設置させて頂きました。弁天チャンネルはエレクトロヴォイスのSX300です。CMでもないし、映画でもなく、セリフがありませんのでファンタムセンターでいいのではないかと思いました。

オペレータの方がべースマネジメントの機能をご存知でなかったため、ベースマネージメントは使用しませんでした。当日はスタッフ9人くらい。他にもボランティアの方々が来てくださいました。ありがとうございました。野外では演奏者はドンカマ(クリック)を基準にして演奏します。

やっぱり野外でPAして録音することはできないので、あらかじめ予備として音源をもらっておいたり録音しておいた方がいいと思います。そうなると口パク状態になってしまうんですが、広いエリアでのオーディオを聴くような環境で考えれば有りなのではないかなと僕は思います。

d&bのQ7サブウーハーはQ-subでした。サブウーハーが全てのチャンネルに付いていました。
弁天チャンネルはエレクトロヴォイスのSX-300を使いました。音素材の送り出しの機材はタスカムDA-38でやりました。トラブルがあった時の為にMacBookとオーディオインターフェースを用意をしておきました。何がおこるかわからないのでDVDにも音源を焼いておきました。コンソールはYamaha DM1000を使用しました。何か音源に問題があった時など、いざという時の為にシンセサイザーで効果音を作っておきました。風の音とか水の音とか一応作っておいて、問題が起きたときにこの音で繋いでもらって、その間でなんとかするように用意しておきました。音源制作ではミキサーは使っていません。ダイレクトで行ってしまいます。必要な時は使いますが、なるべくLineでとれるものはインターフェースにダイレクトで入れた方が音がいいと思っています。

デモ(映像)

[本番を終えてからの反省点]
音量的には問題ありませんでした。演出も好評でした。
*リアスピーカーの位置の検討。
*スピーカーのセレクト。
*音質的な問題。Lowが足りない、抜けが悪い。
*音調整でもっとつめれば良かった。スペアナは見てなかったです。ピンクノイズは出したんですが、音圧系と耳で聞いた感覚で行きました。
*照明がトータル的に暗かった。(本番の時間帯の夜に)リハーサルが出来ませんでした。
*映像の色が左右で合ってない。
*映像が小さい、曲がっている。
*本堂チャンネルとLs(Lサラウンド)が重なり効果がはっきり現れなかった。リバーブを他のスピーカーから出したため。
*今回はサラウンドアレイで拡散させた方がよかった。
*MIDIプログラムの音の処理、フレーズのブレスがないなど、本物ぽく作りたかったのですが、時間の問題で、出来ませんでした。
*プログラム(印刷)の予算がなくコピーで代用しましたが、きちんと印刷すべきでした。

[音響 担当のかたからいただいたアンケートの結果]
Q.サラウンドのコンサートは他にありましたか?ある場合どのようなイベントでしたか?
A.コンサートではないですが、自社スピーカーを提供した仕事は2件ほどありました。2件とも5.1chで映画の試写会でして、SHIBUYA AXと日比谷野音です。

Q.サブウーハーを4発用意した理由は?
A.野外ということもあり、音が溜まらないことは予測できていたので全体的にカバーしてみました。

Q.スピーカー選択としてd&b Q7とQ subを選んだ理由などありますか?
A.自社のメインシステムであることが第一ではありますが、再生する情報量は自社保有の機材のなかでは一番優れているという点を重要視した結果でした。

Q.サラウンドのイベントの音響をご担当された感想、発見、反省点、などありましたら参考のため教えて下さい。
A.当時、私自身あのような仕事は初めてに近いものだったのでとても勉強になりました。当時感じた事は、野外の広い場所でのサラウンド用(特にリア)のスピーカーは2箇所くらいスピーカーを立てたほうが、より音場が広がりそうな気がしました。私自身、音の発生箇所がピンポイントすぎて意識して聞いてしまったような感がありました。あのような野外の場合、意識せず自然に体感できる音場を提供するには再生箇所を増やすのもありなのかなと感じました。

[反省点]
今回、サラウンドスピーカーが後ろ向きだったのですが自分の方に向いているとアラだらけだったのと、お客様がどういった状況で聞くかわからないので、後ろを向いて編集(確認)をする事も必要になると思いました。

[音楽鑑賞とサラウンドを関連づけるには]
一般の人が考えるサラウンドは映画館、もしくは映画ソフト再生のイメージでしょう。音楽再生といえばCDか音楽配信だと思います。DVDはどうでしょうか?映画やコンサートの鑑賞だと思います。音楽番組はサラウンドをもっと再生してほしいですね。また、録画するので録画の対応を分かりやすしてもらいたいです。CDのマトリックスでは音質があまり良くありません、4chまでしか入らないと言う弱点があります。またDVD-videoはロッシーということで音を欠落されるのをアーティストが嫌がります。DVD-Audio、SACD、BD(ブルーレイディスク)は再生機の普及が問題ではないでしょうか?DVD-videoでPCM、ディスクリートで作られる事が目標ではないでしょうか?DVD-videoのPCMというものは規格は出来ているのでこれからはハードをどうするか、という問題が出てきます。マスターを作るプロセスが必要になってきます。音楽配信ではiPodもサラウンドでやれば良いと思います。また、VictorのSU-DH1を見習ってほしいです。携帯プレイヤーに対応するサラウンドファイルを対応してもらうようにしてもらいたいです。オーディファイルをWMAやMP3D、AACのようなフォーマットを一つ用意すべきでは無いでしょうか。コンサートにサラウンドを使うメリットとしては、印象付けやすい、放送しやすい、ソフトにしやすいということです。ポピュラー、ダンス、テクノ(等)こそサラウンドでやってほしいです。瀬戸勝之さんが2005年に代々木野外ステージで「AREA5.1」という野外サラウンドイベントを開催しています。ホールの3点吊り(マイク)は4〜6chへの対応をするように説得しましょう。説得の材料として、○○ホールではもうやってますよ、というのは説得として使えます。(一同笑い)

[今後の予定など]
・親子で楽しんでもらう。子供に出資する親にサラウンドをアピールする。
・オペラのサラウンドをやろうと思います。国立音楽院でシンセサイザー・サラウンド・オペラの試みとして「オペラ・ガラ・ミニ・コンサート」というイベントを行います。
・オペラファンはDVD沢山持っているのでサラウンド再生を進めたいと思います。
・肝試し野外サラウンドコンサート。
・JASジャーナルに記事が載っていますのでもし良かったら見てください。

デモ :つるぎの舞い(キッチンダンス)FLASHアニメ

相原:こういう楽しさのあるコンサートを子供たちにプレゼントしたいと思っています。やりたい事はたくさん企んでおりますので、また何かありましたら情報を出しますのでよろしくお願いします。

[Q&A]
Q.サイレントジェネレーターのレンタル代は、いくらでしたか?
A.6万くらいでしょうか、詳しくは業者さんに(問い合わせを)お願いします。ケーブルを延長した場合、どのくらい電圧を使うかは計算が必要なようです。もちろんガソリン稼働です。

Q.弁天様モニターのディレイなどのかぶりや歌いにくさはどうでしたか?
A.形だけ歌ってもらって素材を入れていてカンパケ物でしたので問題なかったです。実際にはメロトロンを使いました。

Q.ソフト音源は何を使っているんですか?
A.Logicの音源は負担が大きいのでES1以外ほとんど使わないです。Sculptureは非常に良いので使いました。

Q.サンプリング音源はだめですか?
A.だめじゃないです。サンプラーは自分で録る物だと思っています。楽器から吸い取ったらそっくりなのは当然だと思っています。

Q.今回、一番予算が出たのは?
A.多分照明だと思います。

Q.スタッフは何人でしたか?
A.結局ボランティア含めて10人くらいでした。

Q.先ほど写真に写ってたオーディオインターフェイスは何に使われたんですか?
A. EmagicのA26 青い色の物です。タスカムDA-88がメインだったのですが、そこから録音してはいなかったのであまり関係はありませんでした。

Q.今回のコンサートの日時は正確にはいつだったのでしょうか?
A.2007年9月8日19:00〜20:00で、実際お客様は300名程来て下さいました。お客様の中には、ござを敷いて座ってくれたりしたのですが、あまりセンターに座ってもらえませんでした。

Q.屋外という事で反射音などの影響はありましたか?
A.あまり気になりませんでした。木に音を吸収されリバーブ成分が無くなりました。Apple Logic7の頃はステレオリバーブしかなかったのでそれを少なめにと後からYamaha DM1000でリバーブを追加しました。実際の音はもう少しリバーブ感がありました。

Q.テルミンなどやっているとダウンミックスが気になると思うのですが、どういう風にどうされましたか?やはり頭の片隅に入れておきながらやったのでしょうか?もしくはイベントなので気ままにでしょうか?
A.どちらかというと後者です。あまり気にする時間もありませんでした。

Q.お客さんのサラウンドに対するリアクションはありましたか?
A.お客さんも音が移動するのに反応して面白かったです。

Q.本堂裏の照明はコントロールできるようになってたんですか?
A.はい、できるようになってました。

Q.スピーカー設置の自由なイベントのサラウンドで、フォーマットとして、あえて5.1chを選んだ理由を教えて下さい。
A.(以前の)4chの時のようにフォーマットが増えすぎてはいけないと思います。だから5.1ch=サラウンドで良いと思います。でも8chの音は良いと思います。(それは4.1chで再生しました。)

Q.映像と音の制作順番を教えて下さい。
A.実は絵は卒業生が作りました。彼女は無い物でもなんとかするという考え方で、実際の映像ほどを要求していなかったが2chのソースを渡したらシンクロして作れるような物を作ってきてくれ、それで本番できたので、音→絵→音の順番です。


Q.花火のシンク装置という話がありましたが、詳しく教えて下さい。
A.おそらく花火屋さんに聞くのが一番だと思いますが、タイムコードに合わせて電気の点火スイッチと音声信号にあわせてシンクロできるのだと思います。花火方面もステレオでやるくらいならば、サラウンドでやってしまえば良いのにと思います。

Q.サイレントジェネレーターの稼働時のノイズはいかがでしたか?
A.ジェネレーターの音はしていましたが静かでした。

相原:では、以上で私の講演とデモを終わります。ありがとうございました。(一同拍手)

沢口:野外イベントのサラウンドと言うダイナミックな分野の詳細なお話をありがとうございました。同じ10月に東大寺でのコンサートでもこの寺子屋メンバーの作曲家 野尻さんがサラウンドで音響制作をしましたので機会を見てこれもお話してもらう予定です。

[ 関連リンク ]
第13回サラウンド塾 TOMITA ISAO サウンドクラウドの歩み 冨田勲
サラウンド入門 / 相原 耕治(著)
JASジャーナル2008年10月特集号/私のサラウンド制作と普及・啓発活動について(ページ21~28)
Victor:SU-DH1(ヘッドホンサラウンドアダプター)

「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です

September 14, 2008

第54回サラウンド塾 実践Foley録音とそのアプローチ 長谷川有理、染谷和孝

By. Mick Sawaguchi
2008年9月14日 ダイマジックスタジオ&Foleyスタジオにて
テーマ:実践フォーリーレコーディング(Foley Recording)
講師:長谷川有理(SONYPCL)染谷和孝(ダイマジック)

沢口:今日のテーマは、みなさんがあまり馴染みのないフォーリーレコーディング(Foley Recording)です。フォーリーとはどういうものなのでしょうか? 日本ではCDの効果音ライブラリーが沢山あり、これから使えば十分という風潮でフォーリーの評価が低いですが、海外ではフォーリーアーティストという職業やフォーリー録音専門のスタジオもあり、非常に価値の高いものです。今日は国内でそうしたフォーリーの重要性を認識して仕事をされているフォーリーアーティストの方に、その目的やデモ映像を使っての録音パフォーマンスをして頂き、同じ素材を使って塾生のみなさんにも体験して頂きます。それでは講師のみなさんよろしくお願いします。

染谷:ダイマジックの染谷と申します。日本ではその必要性を理解してもらうことが難しい部分もあるフォーリーですが、だからこそ逆にチャンスが多いのではないでしょうか。今回は僕たちが日頃どういうことをやっているのかデモをご覧頂き、進めさせて頂きます。今日は、スタジオにフォーリーアーティストをお呼びしました。ソニーPCLのサウンドデザイナー長谷川さんです。僕はフォーリーミキサーとしての視点で、長谷川さんにはフォーリーアーティストとしての視点でのデモとプレゼンテーションという形で進めたいと思います。

■フォーリーの実際をデモ映像を使いながら録音

フォーリーという作業は、映像を流しながらマイクの前でリアルタイムで映像と同じような動きをして音をあてていくアフレコのような作業行程です。お配りしたキューシートは、この映像に対してこの音をあててくださいとフォーリーアーティストとミキサーにお願いをするものです。ではまず録ってみます。登場するキャラクターはひとりです。

-デモ-
 

音を録る前には必ずキューシートを作成します。キューシートは登場人物の動作の音、装備品の音、そしてプロップ順に書きます。言い方が正しいのかわかりませんが、今回の作品では、足音、衣擦れ(着ている着物の裾などが擦れ合う音)、装備品以外の音をすべてプロップと呼んで記入しています。海外での制作も多いのでキューシートは英語表記にしておきます。
複数本のマイクを立ててフォーリーを録ることもありますが、フォーリーアーティストはひとつの演技に集中したいので、基本的にはマイク1本で、複数の音が必要な場合は、それぞれ音をパーツごとに分けて録ります。例えば、倒れる動きだと、Fs+Body Fall+Hand Touchというふうに分けて録って後でこれらを合成してひとつの動作を完成させる方法です。キューシートもそういうふうに書きます。

●Q&A
Q.キューシートはフォーリー担当者自身で作るのですか?
A.スタッフで手分けします。キューアップした人間が演技か収録に関わっていた方が映像を覚えるという意味でいいです。また、キューシートを書いた人がフォーリーのエディットをします。

Q.キューシートなしで作業する場合はありますか?
A.よっぽど単純な場面ではないとキューシートなしで録ることはありません。キューシートで拾い忘れると音を録り忘れるということなので、キューシートを書いた人が責任を持ってエディットするという意味もあります。

Q.今の1分程度の映像のキューシートを書いたとき、時間はどのくらいかかりました?
A.恐らくこのロールだと1時間。一度に色々なものを見ることができないので、シートを書くときは、まず足だけをみる、
足以外の音は何があるかをみて大体3回再生してキューシートを書きます。登場人物が増えると試写する回数も増えます。

Q.カバンを使って衣擦れを表現していましたが?
A.そうですね。カバンの中身を変えることで、人の体重の表現ができます。中身がないと重さが現れないです。

Q.靴の選び方はありますか?

A.靴は以前履きつぶしたものなどが多いので、大体どんな音がするかわかっています。

Q.実音と録音した音の違いはどうするのでしょうか?
A.録音の前の日に、EQで調整したり音のデザインをします。録音当日はそれで決まった音で録ってます。

Q.女性の足音を表現するときのポイントはありますか?

A.理想はやはり女性が歩いた方がいいですね。でも、ローカットしたり、足がつく面積を小さくすると女性っぽくなります。固い革靴で歩くとピッチを上げることもあるし、ビッグサイズのハイヒールを買ったこともあります(一同笑い)

Q.歩き方が普通とは違うようですが?
A.普通に歩くと、本当みたいな足音がしません。足音を出すためにカカトから着きたくなるのですが、カカトから着くとカカトの音がしなくなるのです。私の経験則でいえば、横に歩くと体重がかけやすいですし、リアルさを出しやすいのです。

Q.オンで録るか、オフで録るかはどういうふうに決めますか?

A.ミキサーが扱いやすい方にします。フォーリーアーティストから見るとS/Nを気にしてオンで録りたいのですが、ミキサーから見ると近過ぎてどうにもならないこともあります。マイクは、足音はガンマイクで録るケースも多いです。足が動くと裾の音がするので、ガンマイクを使うと周りの音を録らないから便利です。

Q.音を録るとき、どうしても時間がかかり過ぎてしまうのですがアドバイスはありますか?
A.体つきに対する自分が思っている音をイメージして、そこに近付けるようにしています。録音して聴いてみる反復作業で、どうやればいいのかがだんだん見えてきます。



Q.距離がある場面だと、マイクも離せばいいのでしょうか?
A.オフにして録ってトラックが重なったらS/Nがすごく悪くなりますね。ケースバイケースですが、距離感を出すところはフェーダー操作をしながら録ることもありです。フォーリーアーティストとフォーリーミキサーとフォーリーレコーディストがリンクすることで、優れたフォーリーサウンドが生まれるのです。



Q.ほふく前進の場面の音はどうやって録りました?
A.難しかったのですが、パーツごとに別々で録ったものを混ぜました。膝、手、肘、ボディ、爪先で分けました。

Q.ゲーム中のインタラクティブな部分の音付けのポイントはありますか?
A.ゲームはユーザーが動かして主人公が動くという感じで、足音を左、右、左、右の4歩分の音をコンピューター上のメモリーにおいておきます。ユーザーが主人公を動かしたとき、プログラムが足音を呼び出すのです。ユーザーはカメラも動かすので、カメラ位置に対するプレイヤーの位置をプログラムで認識させて音を出しています。しかもサラウンドですので、定位、音質、距離演算、リヴァーブ感などを全部プログラムしておけば、ユーザーの操作によってインタラクティブにミックスした音を出します。

Q.インタラクティブ部分と映像の部分のフォーリーを録るのに注意点はありますか?

A.そうですね。インタラクティブなところはユーザーがいつ動かすかわからないので、音を素材として考えて、1個1個録ることにしています。

Q.収録の段取りで、録るときの分け方は?
A.できるだけ一気に、切りのいいところまでやります。時間がきたからといって、足音の途中でやめることはまずないです。日が変わるとコンディションも変わるので、少なくとも切りのいいところまで収録します。

Q.モニターするときの注意点はありますか?
A.フォーリーをやってる最中はタイミングと強さを気にします。音色をチェックすることまでは頭が回らないので音色に対してはミキサーに任せます。

Q.環境音を入れることで、フォーリーサウンドに影響はないですか?
A.環境音はフォーリーより後にできる場合が多かったので、考えたことはありません。そしてフォーリーで録ったものはフェーダーを上げれば出るものであるというのが自分の考えです。画面で主人公の音は上げれば出る音でないといけないと思いますし、環境音がそれに勝ってしまったら、むしろ環境音がおかしいのではないかと思います。
A.フォーリーの音は帯域を解析すると、高い周波数にまとまっています。環境音はミッド、ローに分布しているのではないでしょうか。ですから、あまり影響がありません。

Q.音をどうやって創り込んでいけばいいでしょうか?
A.フォーリーするときは自分が出したい音のイメージをはっきり頭の中に置いて、それを目指して音を創った方が早いです。いろいろな音を聴いて、現実音を多く知っていれば、サウンドデザインが楽にできます。
デモは、以上です(一同拍手)。

■ フォーリーサウンドとは?

染谷:フォーリーサウンドは2つの意味があります。ひとつとして、各キャラクターの動作音(足音、衣擦れ、アクセサリー、etc)、もうひとつとして、その他の動く音(水中音、岩、火事、etc)です。フォーリーはアイデアです。今まで見た中で一番面白かったのが、ハンカチを使ってEQ等で補正し大砲の音を創るというものでした。(実際にやりながら)このようなアイデアがフォーリーサウンドに良い結果をもたらします。

●フォーリーが担っている目的について
1 不足している動作音を補うことで演技をわかりやすくする
2 各キャラクターの特徴、存在感を音で表現する
3 フォーリーサウンドを作成することによってシーンとシーンの自然な流れを創り出す
、大切なのは、優れたサウンドトラックを創る上で、フォーリーは非常に重要な役割ということです。
フォーリーというのは陰の役者です。
フォーリーと業界で呼ばれているのには以下のような背景があります。

Jack Foley氏/1891年アメリカN.Y.生まれ、カリフォルニアに移住し、高校生活はこちらで過ごします。金物屋で働きながら、映画の脚本を書いていました。またその傍ら、自分の町を映画に使ってもらおうと誘致の仕事もしていたようです。それが認められ、ロケーションスカウトとして映画業界に入ります。『SHOW BOAT』という作品の制作でサウンドマンのキャリアをスタートしました。彼が注目されたのは、「映像をプロジェクションしながら効果音をレコーディングする」というスタイルを確立したためです。足音に関して異なる材質を用意し、映像にあった効果音を創り出しました。以降、1960年までたくさんの作品にサウンドマンとして携わります。1967年の他界。彼の功績が評価され、映像を見ながら効果音を創り出すことを、「Foley Sound」と呼ぶようになりました。詳細を知りたい方には以下のURLが参考になります。
The Story of Jack Foley 

Foleyとは?

http://hw001.gate01.com/mick-sawa/terakoya/mick_news_data/jackfoley.html




●ハリウッド版フォーリー作業の流れ
1 フォーリーアーティスト(映像を見ながら音を発して演じる役割)
2 フォーリーミキサー(音質やマイクバランスを変化させ良質なフォーリーサウンドを創りだす役割)
3 フォーリーレコーディスト(創り出された音を録りこぼしの無いように録音する役割)
 
+フォーリーエディターこれらの役割でフォーリーサウンドは支えられています。

●使用機材について
 
マイクは、「Sennheiser MKH416/MKE2/Neumann U87Ai」などを使います。これらの中で、作品ジャンルによって変えています。実写の場合は、同録の台詞と同じようなマイクを使って音色を揃えます。

●エフェクター
 
HAは、微細な音ばかりなのでS/Nが良くタフなものを選びます。EQは、S/Nが良く感度が良いもの、効きが良いものを選びます。コンプレッサーは、S/Nが良く、音色変化の少ないものを選びます。

●マイクポジションについて
 
ピンマイクでアタック感や低域成分を創り、「U87Ai」で全体の輪郭を創っていきます。EQの目盛りはあまり気にしてはいけません。8dBくらいはざらにあります。気にしてしまうと良い音は創れません。また、ハーモナイザーで音色を変えるのも良いかもしれません。

●フォーリーセッションについて
 
フォーリーREC用にキューセッションを作成し、使うSEを並べ、すべてに空リージョンをくっつけてしまいます。それを塗りつぶすように細かく録音していくことで収録漏れを防げます。

●Q&A
Q.マイクゲインの目安を教えてください。
A.ピークでオーバーしない程度にし、アナログのコンプをかけます。また、卓のEQは一切使っていません。

Q.いくつか重ねたひとつの音を創る際、全体のバランスを見込んでひとつひとつで録るのですか?

A.ケースバイケースでひとつずつバランスを取ることもあるし、見込めるなら全体に下げてバランスを取ることもあります。



Q.素材はモノですかステレオですか?
A.後々扱いやすいので、基本的にはモノです。集団などではステレオにしたりもします。パンニングはその後にすることも多いです。

Q.土などの上ではピンマイクはどうしているのですか?
A.土に直接つけてしまうこともありまが、さすがに水には濡らさないようにしています。ダイマジックでは、フォーリーで使用したものはフォーリー専用にして、セリフ用と区別しています。



Q.実写やアニメーションでのマイキングは変えていますか?

A.同録に合うように素材を録ります。いかに馴染むかが大切です。アニメーションの場合は録音のプロセスとしては自由度が高いかも知れません。

Q.音に対するイメージは事前にエンジニアとフォーリーアーティストで擦り合わせておくのですか?
A.打ち合わせで決めることもありますが、やってみて意見を出し合うことも多いです。やってみないとわからないことも多いですから。



Q.ハーモナイザーを使った場合は、高域をカットしますか?
A.今日はカットしていません。当然低域は下がりますが、アタック感もなくなります。ハーモナイザーにコンプをかけることも大切なことです。

Q.できるだけオンマイクで録るとのことですが、画面に合わせて距離感を出すときはプリミックスで調整するのですか?

A.アニメーションなどの時はもう少しルーズに多めに録ります。会社のエントランスでみんなが喋っているようなロングショットシーンでは、ガンマイクで遠目に録ったりもします。あとはフェーダー操作で変えながら録ったりすることもあります。

Q.最終的なソフトになる場合、圧縮する訳で音質が変わってしまいますが、ファイナルを予想しながら創るのでしょうか?
A.素材は素直に録っていきます。

■ フォーリーアーティストの考え方

長谷川:私からはフォーリーアーティストとして、演じる側の考え方をお話します。



●フォーリーアーティストが考えること
 
どのような作品なのか理解すること。チャンネルフォーマットを確認する。(仕上げがどうなるかによって、パンニングも変わる)そのシーンが同録なのか、アフレコなのか、同録なら馴染ませることが必要ですし、アフレコでも同録されたものを聴いてイメージすると馴染みが良くなります。ゲームやアニメーションは映像に乗らせるために、実写よりわかりやすくキャラクティブな音にします。実写の場合は空気感を出すために少しオフで録ります。すべてが同じより雰囲気が出るから少しずれても良いときもあります。エンジニアと話合うことも大切です。

●録音のポイント
 
素材の選定が大事です。コンクリートだけで足りなかったら、砂を足したりして調整します。砂に草を蒔いて草原を表現することもあります。鉄板の使い方は、浮かせるか、置くか、抑えるかなどの工夫します。

●靴、小物などの選定
 
やってみて、出してみて決めます。靴は3種類くらいお気に入りを見つけるとほとんどがまかなえます。いくら機械を使って補正しても出音が悪かったらダメですから、素材を選び、出音を良くすることが大切です。自分が録りたい音を明確にし、エンジニアと同じ目標を持って録ります。

●タイミングを合わせること
 
長編の作品などは分量が多いので特に重要です。切り刻んだりエディットで合わせることも可能ですが、そうすると、フォーリーの味が出ないです。布ずれが入ってしまっても、それも味だと思っていますので生かしてしまったりもします。音の強弱は、役者と同じ気持ちになって演技すると上手くいくことが多いです。「Pro Tools」での補正でできることではないので、そこが楽しいところです。大胆に、そして繊細に。キレがあるところ、優しいところの差を付けること。場面によっての変化、エフェクターを使っての調整も必要です。音を単調にしないようにする。そのために、少し動いてみたりして変化を付けたり、エンジニアに頼んでフェーダー操作をしてもらうこともあります。いつも全部同じように歩いている人はいないですから、少し離れても効果的です。

●まとめ
 
フォーリーとは映像との馴染みが一番重要です。タイミング、演出、音質などはエンジニアによってやり方が違います。フォーリーは効果音の一部でありフォーリーと気付かれてはいけません。(音が)付いていて当たり前。しかし、ないと薄く聴こえるから音を厚くし、演出を引き立てる大切な要素です。ひとりひとり工夫して録ってみてください。とても面白いと思います。

■フォーリー実践編
 
ではいよいよ実践編です。希望者がブースに入り、映像を見ながら実際に足音をフォーリーしてみるという実践です。まず長谷川さんが見本を見せ、その後参加者が足音に挑戦しました。

参加者の実践後の音を聴いての講師の講評をまとめると、


・自分で出している音は、ヘッドフォンを外して耳で聴いてみることが大切。出音を把握しておくこと。
・イメージしている音を出すことは、本当に難しい。
・映像を見て先を読みながらやるようにすると、動きが読めてくる。
・普段歩いているときの足音を録音してみる。
・どうすれば、どんな音が出るかというイメージを持つこと。
・キャラクターらしさや雰囲気をどれだけ出せるかを考えること。
・立ち止まる姿勢に来るには何歩必要なのかを考えてみる。
 


◎慣れ(トレーニング)が必要です。

沢口:今日は、日頃なじみの無いフォーリーの意味となかなか体験できない実践を交えた盛りだくさんのプレゼンテーションでした。スタジオを提供していただいた染谷さん、そして実践編での講師役を担当していただきました長谷川さん、本当にありがとうございました。終了後も参加者からは、初めてFoleyの大切さを実感したとか、映画 ゲーム ドラマなどで当たり前のように感じていた音がじつはこうして作られていることがわかり今後聞き方も変わる。大変細やかな仕事でアイディアと根気のいる仕事だ。といったコメントが寄せられました。機会があれば次回はSFXの素材となるFoley録音編も企画したいと思います。(了)


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「サラウンド入門」は実践的な解説書です

July 20, 2008

第53回サラウンド塾 ドキュメンタリーサラウンド音響表現 
サウンドスケープスの音場表現とサウンドコラージュの考え方 宮川亮

By. Mick Sawaguchi
2008年7月20日 三鷹 沢口スタジオにて


テーマ:ドキュメンタリーサラウンド音響表現
〜サウンドスケープスの音場表現とサウンドコラージュの考え方〜
講師:宮川亮(NSL)

はじめに 

沢口:暑い中こんなに大勢集まっていただきありがとうございます。 
立ち見がでるのは、ジョージ・マッセンバーグが来て以来ですね。
7月の寺子屋は、NSLの宮川さんが講師役です。BS-iやTBS地上波デジタルで放送されたドキュメンタリー番組「世界自然遺産」の音響効果を注意深く聞くと、大変緻密な音響デザインがサラウンドで構築されていることにお気づきだと思います。これらはどういった考え方を基本にしているのかを今回は実例を交えてお話していただこうと思います。では宮川さん、17時までたっぷりお願いします。



宮川:NSLの宮川です。よろしくお願いします。
私は普段選曲の仕事をしていまして、サラウンドに関して言うと選曲感覚でサラウンドのデザインをやってます。本日は、学生の方も参加しているので選曲?とはどんな仕事をしているのかをまず紹介しておきましょう。選曲とは、ある作品や番組のなかで最も効果的な音楽素材をCDライブラリーなどから選び、それを映像の流れや長さに合わせて編集制作することをいいます。 
いわばクラブDJのサンプリングと似たCDによる作曲とでもいえばいいかと思います。
最初に私の基本をお話します。これはサラウンドに限ったわけでなく仕事をする際の共通の考え方として私が実行している方法です。

基本的な考え方その1:サウンドマークとは? 実例とともに私がサラウンドだけではなくテレビ作品を制作する時は、サウンドコラージュという手法を使います。
・テレビの映像がランドスケープだとすれば、
映像を綺麗に見せる為や良い映像を見せる→美しいランドマークが必要。
・同様にテレビの音声も音風景と捉えて、
良いサウンドスケープを創る→その為には良いサウンドマークを置いていく。
というのが私の基本です。

サウンドマークとは、作品のなかで音が占める役割と効果のすべてを意味しています。これはナレーションであり、音楽であり、効果音であり、表現する為の音全てということで、これを
家庭で観ればテレビの音がサウンドマークになるということになります。

 

世界遺産という番組のロレンツ国立公園編は、ここにいらっしゃいます土方さんがフィールドワークでサラウンド録音し(第51回寺子屋参照)、音響効果を私が担当しています。まずこれを聞いていただき,その後私のアプローチをお話します。
今回はサウンドコラージュが分かりやすい1回目の方を出したいと思います。
音に意味合いを付けているので、自分が聴こうとする耳の方向性に注意して聴いてください。 

素材は全てステレオで、業務用のライブラリー音源とLogicProのシンセを使いながらイメージを構築していきます。いわば、音楽でも無いし、効果音でも無いサラウンドのコラージュという意味合いですね。



世界遺産ロレンツ国立公園編デモ

宮川:やはり我々選曲家はどうしても、映像に合わせた音楽やナレーション、効果音を付けがちですが、
例えば日本家屋なら和風なものとか、そういう短絡的な表現をしたくないというのが基にあり、
音楽も効果音もナレーションもそれから映像も表現の方向さえ同じであれば、多少不協が出たとしてもそれは1つの和音に成る、という仮定の下に今のコラージュをやっています。
例えば暗いものを表現しようとした時に、前のシーンを明るい音で表現しておきながら暗いシーンでは暗い音を付けずにそのまま画面の性格だけで暗さを表す。
要は聞き手がその方向性を感じる様に、という風にやっているのが私のやり方です。

基本的な考え方その2:耳線とは


我々は音を作る時に定位で色々なものを置きますけど、観ている人は必ずそこに耳の注意が行くかと言うとそうでもありません。
目線と耳で聴くというのは結構一体感がありまして、その耳線という考え方を基にやってます。

・観ている人が聴こうとする方向性、音楽とか音の性格性で耳線は動く。
・前の音も聴きながら横の音も聴いているという意味で耳線は1本ではない。

・サウンドマークを耳線の先に置くことで、音の性格を利用して聴いている人間の心理をコントロールする。



 聴く側の聴こうという力を利用して見せている、というのが私の考え方です。
ノイズの中から聞きたい音を探すというカクテルパーティ効果(様々な音圧レベルの複数の音が存在する状況下で、低い音圧レベルの音を鮮明に認知する聴覚効果)はご存知かと思いますが、
人間の耳というのはそういうことに長けていますので、
その感覚を使わない手はないということでこういうコラージュをします。
 


基本的な考え方その3:耳線と定位と時間

・耳線が定位として一定な所にあると心理的に安心する→長い時間その状態で音を聴いていると、どんな広がりのある音でも慣れてしまう。 


・耳線が変化していると、どこを聴いてよいのか分からない不安感→ただしそれは新鮮味をもっていると言える。


第1項でのべた音の様々な要素「サウンドマーク」を色々な所に置いていくことで聞き手の耳線をコントロールし心理的な効果を生み出すやり方です。

基本的な考え方その4:要素を融合させて新たな表現にする


コラージュだけで考えると難しい発想になってきますが、単純に選曲において1曲でいい曲があればその曲だけで済むんです。 


・ディレクターの要求は「明るくて暗い曲無い?」「早いんだけどゆっくりな曲無い?」
→それを表現するのに選曲で音楽だけで表現するのはかなり難しい 
→明るい部分と暗い部分の成分を音楽から取り出して別々に付けて表現という発想がこのコラージュ。


・CD音源に、LogicPro内蔵のシンセのパッドを足す 

例えば先ほどのデモの最後の所は、現地の人が騒いでいるキーに合わせたパッドを加えることで 
文明の侵略という作品のテーマ性を表現しています。

普通、番組といえばナレーションが1番でBGMが2番目に、とかそういう考え方をします。
私のつける音楽の中にメロディがほとんど無い、それから、高い音と低い音がメインにある、というのは実はそこにミソがあります。
・メロディライン→ナレーションや同録音でいい。
・音域の中域→ナレーションや同録音
→ナレーションや同録音をボーカルと捉えたバックトラックを作っている。
そのバックトラックの中に効果音やCDからの音が楽器としてあるという捉え方です。



・サラウンドでのアプローチ

ドキュメンタリーに関しては
全編サラウンドでやる必要は無い→サラウンドの音場の中にステレオがあって、ステレオの音場の中にはモノがある
→常に後ろの音が鳴っているということよりも、サラウンド環境の中でモノやステレオやサラウンドをコントロールしていくことが大事。
最初の頃はフルサラウンドに拘ってしまうばかりに、その音を聴いている人間が慣れてしまうということにショックを感じていました。その経験の上に立って今はサラウンドだからといって全てサラウンドの音源にしないようにしています。
サラウンド音場の定位と感じ方〜主観音と客観音とは〜 

このサウンドコラージュは非常にサラウンドに向いている手法だと思っています。 


*フィールドワークでは確実にサラウンドで録音してくるということ。
→後々ステレオ素材をただ広げてコラージュをしても、臨場感という意味ではすごく嘘くさいものになる。
→逆に臨場感を出さずに異空間を表現するには、ステレオ素材でコラージュすると良い。
*演出の方向性と耳線の一致又は不一致という、音と映像とのマッチング。
*耳線の位置をコントロールする。
*サラウンドでの耳線の位置。
→音の位置が遠くに行けば行くほど客観的に感じる。
フロントは、真ん中のみ主観的に感じる。

このコントロールがサラウンドでは楽なのです。
例えば先行で暗い曲を後ろから客観的に出して主観の位置に持って行くとか、
いきなり主観の位置にモノローグを置いていくと、エコーも掛けずに主観の感覚が出るということなどです。ですから私の場合はこうした耳線とその配置で全体の音場(サウンドスケープ)がどういった役割をすればいいのかを考えながらサウンドをデザインしていきます。サウンドコラージュの制作機材


作業として、MAに関してはLogicProからEmagicのA3というオーディオインターフェイスを通して、アナログでメインに入れています。
LogicProのファイルフォーマットは44.1kHzの16bitです。

使用している音源は主に日音サウンズライブラリーです。
LogicProを使う利点として、MA現場ですぐ直せるという良さがあります。
LogicProのバージョンはLogicPro7ですがLogicPro8はサラウンドにさらに特化していますので、移行したいと思っています。

Q:音源は一度オーディオデータにしますか?
A:します。そのほうが加工しやすさがある為です。
作曲する場合は、打ち込み用に別にプロジェクトを作ります。

Q:44.1kHzで作業されているということですが、48kHzにリサンプリングしない理由は?
A:音源ライブラリが全て44.1kHzなので、44.1kHzでやって、MAでそうしてくれと言われればその段階でリサンプリングします。

CDがベースなのでどうしてもLow bitなやり方になります。最終的にMAはProToolsで行い、納品形態はD5(8trのハイビジョンVTR)です。

デモ素材からの解説

宮川:パッド(シンセサイザーの音色で、持続性で柔らかくて強く主張せず、背景や雰囲気を出すのに用いられる)が出てくるオープニングシーンをご覧ください。


定位が変わっているのが分かりますでしょうか。
リアルな音からいきなりイメージの音を持って行くために、モノラルのフロントから段々広がっている1つの音と、真後ろから鳴る1つの音とが途中で交差しています。
イメージ方向に行かせるために、前方の主観方向からと後方の客観方向からの音が混ざってきて、
センターの主観に音が溜まるという演出をしてみました。
・サラウンドだと主観の位置に音が行くことで、イメージシーンに持っていきやすい。

→ステレオではおそらく音の移動ではなくて、ナレーションで説明してしまうのが通常で、
サラウンドの場合は音の配置によって色々な意味が付くので心理的表現がしやすい。




音による心理のコントロール
宮川:耳線の動きで主観客観が変わるというシーンを出します。

デモ
・同録音がステレオのシーンは、リズムをリアよりに配置→前後で相関され、リスナーの気持ちが真ん中に来る

同シーンを音声だけでデモ
・リア寄りに音を配置したときに、エコーのリターンだけフロントに返し空間を作った。 

自然破壊が表現されたシーンデモ
・自然破壊に話を持っていく為に、重低音
高音→緊張感、低音→不安感
・工業的なイメージを出すため、金属的な音をリズムに。

ここに原住民の口琴の音を加えることで、自然破壊をしているというイメージを作り出しています。サラウンドが持っている、音の位置によって主観客観が変わってくることを利用した例です。 




空撮シーンデモ
宮川:
いつも空撮シーンでは「空撮っぽい音ください」と言われます(笑い)
浮遊感と広い音を混ぜ、そこにちょっとしたタッチをいれることで耳線が動き、
ナレーションに耳がいくようにしたシーンです。


世界遺産のサラウンド放送


2002年から始まり、2002年にBSの年間大賞をサラウンド放送でとりました。
このときはDAT2台を現場でカチンコで合わせていました。
翌2003年のモロッコ・マラケシュ編ではタムコさんにお願いし5ch録音をしましたが、
お蔵入りしてしまいました。
それ以降は土方さんなどに御尽力いただきまして、現場ではサラウンドで録音しています。
2008年7月28日にタイトルがTHE 世界遺産と変わってから初のサラウンド放送があります。

サラウンドプラスONE
宮川:デモ

サラウンドプラスワンというライブをやってる方がいまして、私も考え方が少し似ています。
サラウンド音源に1つ違う音をプラスすることで立体の音風景において面白いものが出来るのではないか、という発想です。
サラウンドの音場で色々なことをする番組を、情報ドキュメンタリー番組で何か出来ないかと思いまして、こういうの出来ませんかと企画書を出し実際に撮ってつくったものがありまして、それを聴いてみていただこうと思います。

デモ

先程の世界遺産と考え方は全く同じで、もっと分かりやすくサラウンドの番組が創れないか、ということで提出したデモです。
もう1つ、これだと分からないからサラウンドというものはどういうものかをもっと分かりやすくしてくれ、と言われ、非常に分かりやすくしてみたのでそれも観てください。

デモ
宮川:
これをプレゼンしたら、「非常に分かりやすいんだけど、スポンサー付いたらやってあげる。」と言われました(笑い)
そのままお蔵に入っております。
沢口:たくさんのデモと解説をありがとうございました。では質問をお願いします。

Q&A
Q:スピーカの位置で主観客観という図の説明をもう少し詳しく聞きたいのですが。
A:私の考え方なんですが、音を聴こうという意識の主観と客観が図の位置で変わるということです。たとえば音楽番組を自分が歌っているように気分で聴く人はいませんが、
ヘッドフォンステレオで聴けば自分で歌っている気になりますね?

Q:ハードセンターに関しては距離に関係なく主観ということですか?
A:主観の部分が多いという発想です。なぜかというと、目線に引っ張られるんです。
映像があるので、目線に引っ張られて一緒にそこを見ている気持ちになるということです。
客観の四隅に音があったとすると、足して割って真ん中に来ます。すると主観になると。
前だけにすると客観で物を見れるかなと、そういう使い分けをしています。



デモ
宮川:
足してる音を前後に配置し分けて、ナレーションの意味合いの主観客観を分けているつもりです。
モノやステレオやサラウンドや移動を使い、見ている人に何となくそうなのかなと感じてもらえるかなと。何となくっていうのは人間の深層心理に残ることですから、そういうギミックを使っています。

Q:音と効果の引き出しと、発想がなければなりませんね。
A:そうです、それでイメージがあっても音が無ければどうにもならないので。
私は選曲がメインだったので、選曲のほうから発生した今のコラージュの仕方という部分です。

Q:フロントLCRだけの場合は、客観という位置づけですか?
A:センター成分の音があれば主観になりうるということです。

Q:リアLRは?
A:客観になります。しかしリアは前の意識から主観の位置まで耳線をひっぱる補足にもなります。



Q:おすすめのライブラリ音源はありますか?


A:日音サウンズライブラリ以外には、自分で気に入ったものだけ買っています。
ただ、ライブラリ音源だけだとなんか足りないなと感じることが多いので、こういう混ぜ方をしています。

Q:作業の準備をするとき尺に当てはめていく時に楽譜とかを用意するのですか?
A:ありません。打ち合わせをして全体の構造からイメージが出てくるんです。
それを頭から順番にやっていくという感じです。
譜面はありませんが、台本ですね。ナレーション原稿なり構成原稿なりです。

Q:この作品を作るにあったって、一言で何を求めてやっていますか?
A:環境破壊です。ラストカットにあったようにああいう場所にも開発の手が入っているということが、音で言いたかったということです。監督はそう言ってなかったですけどね。
ディレクターが現地に行ったイメージで作ってきますけども、我々はそれをはじめて見てどう感じるのか。そこが自分として個性の出しどころです。

Q:宮川さんの選曲という仕事の領域とは?
A:単純に言いって音響効果なんですよ。
ただ音楽を付けるだけではクリエイティブじゃないですか!なので今の手法でやっているということです。

Q:最後のMAでは音量バランスだけですか?


A:そうです。がディレクターと合わなければ「もう一日ください」と。

Q:コラージュをつくられる際に、ナレーションは入っていますか?

A:ありません。ナレーション原稿も無い場合もあります。

Q:映像は出来上がった状態ですか?
A:映像はありますが、スーパーはりません。QuickTimeでLogicProに貼付け作業します。



Q:作業時間はどれくらいですか?
A:3日でのべ36時間程度です。3日やってすべて終わってから家に帰ってますから。(一同笑い)

Q:ステレオでの作業と時間の違いは?


A:逆にサラウンドのほうが早いですね。落としどころがいろいろありますので。



Q:それをダウンミックスした時のことは?
A:実は一切考えていません。ダウンミックスに関してはミキサーに一任してしまいます。



Q:音源のライブラリはデータベース化されてますか?
A:しています。ファイルメーカーで手作りです。キーワード検索はできます。

宮川:

私は関係者にサラウンド制作をプレゼンするたびに、「サラウンドにして何が変わるの?」「数字がよくなるの?」
「売り上げあがるの?」って言う話になってくるんですよ。
しかしサラウンドという新たな分野は、少しでもいいからやらないとノウハウの構築はできないんですよ。
次世代の方達がサラウンドありきで発想してほしいという気持ちです。
サラウンドにすることでちょこっとした表現も面白くなるし、変わっていくっていうことをみんなで啓蒙していきたいということが言いたくて、今回講師を受けました。 (一同拍手)



先ほどのプレゼンした映像のときも、企画から音の人間が動いているので、音の発想から制作まで全部話が出来るということなんです。普段、制作が「こういう番組作りました」って来たときにそこでサラウンドやろうって言っても遅いじゃないですか。
小っちゃいことからサラウンドをやらないといけないと思っています。

では、特別編で、お蔵入りになった世界遺産幻のマラケシュ編というのがありますので、
そちらもご覧ください。



世界遺産マラケシュ旧市街編デモ

宮川:
手探りの頃なのでほんとにわからない状態でお蔵に入ってしまう意味もなんとなくわかってしまいます。(一同笑い)
私から以上で終わらせていただきます、ありがとうございました。(拍手)


沢口:宮川さん、実際のデモ交えての詳しい解説をありがとうございました。

[ 関連リンク ]
世界遺産:ロレンツ国立公園 I(インドネシア)
世界遺産:ロレンツ国立公園 II(インドネシア)
THE 世界遺産

株式会社エヌ・エス・エル
宮川亮 on Twitter

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June 8, 2008

第52回サラウンド塾 SACDプラネットアースのサラウンド制作と最近のサラウンド録音クラシックアへのプローチ
 入交英雄

By. Mick Sawaguchi
2008年6月8日 株式会社ダイマジック Mix-Aにて
講師:入交英雄(レーベル主宰)、京田真一(TC Electronics)協力:染谷(ダイマジック)



沢口:2008年6月の寺子屋は、ここ秋葉原に2007年11月にOPENしました素晴らしいスタジオをDiMAGICの染谷さんと谷口さんに提供して頂いて、クラシックのサラウンドをテーマにしました。2月に横浜パシフィコでAVフェスタがあったときに、会期中の一日をクラシックのサラウンドというテーマで企画してやりました。なぜかというと、クラシックを聴く多くの人たちは「クラシックはステレオで十分」と頭の中にすり込まれています。それをなんとか変えたいと思い、その時、適任の講師として大阪からわざわざ入交さんに来て頂きました。なんと大入り満員で、ステレオとサラウンドの聴き比べをしてもらって皆さんその違いに納得されていました。そういう地道な活動をして、クラシックファンにもサラウンドにとけ込んでもらいたいということで、今月はSA-CD「プラネットアース」を制作した入交さんと、SEを担当したTCエレクトロニクスの京田さんを講師にお迎えして開催したいと思います。

入交さんの本業は大阪の毎日放送という放送局のエンジニアですが、一方でクラシックのサラウンドに情熱的に取り組んでいる方です。去年もAES日本支部入交さんがリーダーとなりオーケストラのクラシック録音について膨大な研究をやりまして、ウィーンとニューヨークで発表しました。ソフトもちょうど発売になったところです。自分でレーベルもやられています。その中から私も非常に感銘を受けた「プラネット・アース」という作品がどうやって作られたかというお話をしてもらいます。この作品はSEも大変素晴らしいので、その制作者のTCエレクトロニクス京田さんから紹介をしてもらいたいと思います。

ここのスタジオは去年の11月にできたばかりで、ソナの中原さんとDiMAGICの染谷さん谷口さんの共同作業による、世界でもトップクラスのポストプロダクションスタジオです。詳細は、PROSOUND2008年4月号と6月号に載っていますので、3人の情熱をぜひ紙面でお読みください。せっかくなのでスタジオの見学ツアーとダイマジックの解説を、メインのワークショップが終わったら染谷さんにお願いします。ではよろしくお願いします。

[ ヨハン・デ・メイ/プラネットアース ]

入交:はじめまして入交と申します。
放送局の社員をしておりますが、クラシックの録音もやっております。
サラウンドに関しましては、中学生の頃に4チャンネルというのに出会ってそこからやっています。今日紹介しますプラネットアースというSACDが出たんですが、これを大阪市音楽団で録音しました。これは吹奏楽の作品なんですが、ヨハン・デ・メイという人が作った50分ぐらいある非常に長い曲です。

「PLANET EARTH 」

・演奏団体:大阪市音楽団(Osaka Municipal Symphonic Band)

・指揮者:ヨハン・デ・メイ(Johan de Meij)

・2007年6月8日 大阪/ザ・シンフォニーホールで録音

・コーラスやサウンドエフェクトが使用される
今回の収録のキーポイント
*大編成の吹奏楽団 70人〜

*効果音のPAがサラウンドで行われる

*コーラスのPAがある
*作品自体をサラウンド録音する

・コーラスは本来100人程度必要だが、予算の都合上20人でやらなければならなかった。

→PAを入れる。しかもサラウンド。録音にとっては難しく、工夫を要した作品。

入交:作曲者からこの話があったときに、まずデモテープとしてSEが来ました。
彗星が創世記の地球に降り注ぐという音で、サラウンドにしたら面白そうですねという話からやることになり、SE素材のオーディオファイルを受け取り、作業が始まりました。

・SE素材は、素材毎にステレオミックスされた最大10トラックの状態のものがきた。
→サラウンド化に、TCエレクトロニクスのSystem6000が威力を発揮すると考え京田さんに依頼しましたので最初にSE制作の紹介をしたいと思います。

京田:TCエレクトロニクスの京田です。
この話を入交さんから頂いた時、二つ返事で引き受けましたが、もらったファイルを見てびっくりしました。
今日もってきたのはSACD用のミックスで、実際の会場では動きの大胆化や配置を簡素化した別ミックスを使用しました。
会場用ミックスはSystem6000を使いましたが、SACDには、使っていません。
System6000を使わずに、もっと簡単にサラウンド制作が出来ますよというのを紹介します。

2ch素材を聴きながら、どういうイメージで立体化していくか

原音のイメージを崩さないで平面から立体へ。
*動かす音
*動かさない音
*散らす音
*曖昧な定位の音

*鋭い音
の5つの要素で素材を分類。
曖昧な定位は、空気感。ピンポイントに定位は、速度感。
曖昧に動く音は、遠景感。など。



動きの制御には、Nuendoのサラウンドパンを多用した
・ステレオ素材だが、素材によってはモノラルで振っていく

・1trに2つのパンを使い、前後半で使い分ける

・ステレオイメージでダイバージェンスを広げるパンナー
・パラメトリックEQを併用。

・XY軸に対してミラーがかけられるパンナー

京田:このスタジオは前後のつながりが非常にきれいですので、真ん中に座っている方はよくわかると思います。
ではどんな音なのかを聴いてください。


(これらのテクニックをつかったシーンのデモ)



チェロトランスフォーマー
・舞台上のチェロのソロが、広がりながら同じリズムのSEとクロスフェードしていく


(チェロトランスフォーマーのデモ)

空気感を付加するInsertEffectのルーティング

・ステレオリバーブをつかった。

・ヌエンドではインサートに対して、バスを選択できる。
→フロントの音はリアにリバーブ音、リアの音はフロントにリバーブ音を送る。

→彗星が飛び去ったあとのところに残響が生まれる。


(リバーブのデモ)

周波数と高さの関係
・周波数と移動スピードの関係
・EQにより、高さの変化をつける。

→5本の平面スピーカーでも音を立体に。

・4種類の鐘の音が回る音。低い音2つは時計回り、高い音2つは反時計回り。
→高さの表現

(鐘の音のデモ)

入交:こんなに細かいことをされてるとは知りませんでした。ここからは、それ以外の部分の説明です。



メインマイク:デッカツリー方式 DPA4006 x3

サラウンドチャンネル用マイク:
2種類のアンビエンス
フロント後ろ3mに DPA4011 x2
フロント後ろ10mに DPA4006 x2

スポットマイク:計21本

SE:ポスプロにて差し替え。

コーラス:オーバーダブ用パッチ収録。

→全体的にはFukadaTreeに似た感じにした。

SPOTの目的

*音色のディテールをはっきりさせる。

*定位のディテールをはっきりさせる。

*音楽的バランスを補助する。

→ライブなので(保険)

今回のアプローチ

*タイムアライメント
スポットマイクにディレイシステム、メインマイクに到達する時間を合わせる。
→実際にはDAWの時間軸上で移動。
→特に定位のデティールが良くなる。

*マイクの数はできるだけ減らした。

*カブリを逆用する。

SPOT実施

*木管用 x2、金管用 x3、打楽器用 x3、マレット用 x2、合唱用 x4
Hr、Tuba、VC、DB、Pf、Harp、Celesta x1



それでは各パートがどんな音をしているか聴き比べデモします。
1.All−Mix
(以下SPOT MICのみ)
2.Brass

3.Horn、Tuba
4.VC、DB

5.Pf、Harp

6.Percussion、Mallet
7.Wood winds

入交:これぐらいかぶりがあります。これは取れないので、どういう風に利用するかが大切です。(かぶりを)嫌うとマイクを近づけるしかありませんが、そうすると楽器本来の音と離れてしまいます。次はスポットマイクとメインマイクを足したものの聴き比べです。

聴き比べデモ

1.Front Only

2.Front&Brass、Hr、Tuba
3.Front&VC、DB
4.Front&Pf、Harp

5.Front&Percussion ,Mallet
6.Front&SPOT All


入交:スポットマイクの音量は、合計の音量が、メインと同じくらいまでならOKと考えています。メインマイクにデティールを足してくという方法論です。EQは、不要なところをカットするが基本です。例えばトランペットのLowを切る、などです。次に、サラウンドマイクとスポットマイクの聴き比べです。



聴き比べデモ

1.Surround Mainのみ(DeccaTree)
2.Surround Main&brasses

3.Surround Main&brasses&Percussion
4.All Mix



入交:こういうようにスポットマイクを足していくと、ディテールがでてくるということがわかったと思います。なぜスポットを足すかという背景に、吹奏楽をされる方々が参考音源にする場合などに細かいところまで聴きたいという要求があるためです。スポットの使い方として、TPOもありますが、その音楽をどれだけ聴いたかで自分の持っている技量が活かせるかが決まると思います。では次に、メインマイクと2つのリアマイクの聴き比べです。

聴き比べデモ

1.Surround Main System Decca Tree&Double Rear Pair

2.Surround Main Rear Only(Cardioid Pair)

3.Ambience Pair Only (Omni Pair)

4.Surround Main System Decca Tree & Cardioid Pair

5.Surround Main System Decca Tree & Omni Pair

6.Surround Main System All

入交:前後の広がりは、オムニペアのほうがあったと思います。なぜかというと、カーディオイドペアは特性が200Hzから下がる傾向を持っています。それと単一指向性ですので、レコーディングエリアが狭くなるために広がりが出ないのではと思います。しかし、フロントと距離が離れたオムニペアのみだとフロントとリアで全然違う音になってしまいます。オムニスクエアのみだと、ダウンミックスした場合にフロントの音が濁る結果になったので両方を用いて辻褄を合わせました。アンビエンスマイクの立て方はまだまだこれからの課題です。次に、先ほど述べたタイムアライメントについてです。


タイムアライメント
目的

*メインとスポットの距離ディレイを相殺するディレイシステムを組むこと

*ライブでは、メインマイクに一番距離の遠いマイクを起点にディレイ量を計算して、
各チャンネルにディレイをインサートする。
*実際にはDAW上で各チャンネル毎に時間軸を調整して実現する。
→今回は拍子木の音を録音して、波形上でピーク位置がほぼ同位置となるようにナッジングした。

→全てのスポットマイクの位置でやり、10分くらいかかった。

Q:距離を計算するよりも良い?
A:高さの関係などで、正確には計れないので。
ぴったり合わせるよりはスポットを時間軸で少し後ろに配置する、などのノウハウはあります。


Q:アンビエンスマイクの時間軸調整については、どう考えますか?

A:今回は入れましたが、私は無いほうが好きです。



タイムアライメント正規化の効果のデモ
1.カチンコの音のタイムアライメントBefore、After
→定位がBeforeは左寄りだったのが、中心に動いた。(だいたい25msecくらいの移動)
2.オケでのExample タイムアライメントBefore、After

3.オケでのExample タイムアライメントBefore、After

4.オケでのExample タイムアライメントBefore、After



入交:タイムアライメントを行うと、スポットを足した時、EQで触ったような感覚になる。

→上げ過ぎに注意。

今日のこういうノウハウはぜひお試しください。

入交:合唱をオーバーダブしたと言いましたが、これは苦肉の策でした。ライブ演奏なのに良いのかという話もあるとは思いますが、これはCDとして聴いた人たちが楽しいようにしたいと思ってのことです。リハーサル終了後、コーラスのみのパッチ収録セッションを行いました。順番に聴き比べていただきます。



コーラスの聴き比べデモ

1.本番メインマイクのみ(PAのカブリあり)

2.コーラススポットマイクのみ
3.コーラスパッチ収録によるコーラスの音
4.本番をスポットマイクのみ使用してミックスダウン

5.コーラスのオーバーダブ分を使用してみると...



入交:20人の合唱がさらに大規模なコーラスに化けたかと思います。

Q:これは合唱団が上手だからずれないのか?
A:タイミングは、実は修正しています。
同じ指揮者でも、最大で10%程度のテンポが違ってしまいます。

Q:本番録音時のスポットマイクは?
A:4本使いました。6パート有り、4人に1本程度です。

入交:
今回は結構大胆にポスプロ作業をしましたが、
ライブ演奏に関する編集の是非の私の考えです。

・芸術作品か。ドキュメンタリーか。

・歴史的演奏はドキュメンタリー性重視
→その場合は、あるがままのものを望まれることが多い。

・セッション録音の代用 芸術作品としての必要性重視。

→レコードは何回も聴くもの。出来ればミスはないほうが...。

・完璧性を重視と考え、TPOに応じて対処。頑なになる必要はないと考える。

では、全体では50分ですが、17〜8分にまとめたのを、お聴きください。

ではプラネットアースのサラウンド制作については一区切りとしまして,それ以外の
私の最近のサラウンド制作からいくつかご紹介します。

[ 名倉誠/Bach Beat ]

入交:これは、名倉誠さんという人のマリンバの音楽です。これは2008年5月下旬に輸入販売がされるはずなので、もう店頭に並んでる頃なのではないかなと思います。
これはクレオスレーベルというアメリカのレーベルです。名倉さんとは友人で、非常に難しい曲ばかり演る人なので、「バッハとかやりません?」というような提案をして実現したものです。

入交:場所は、京都の教会で録りました。非常に不思議な形をしていて、六角形の形で天井が斜めになっています。
響きは独特ですが、小さい割りに結構残響時間が長いというホールで、
独奏楽器には良いと思いますが、アンサンブルなどの録音にはちょっと難しいかなあという感じがします。自動車の音等の外来ノイズがどんどん入ってくるので、これが大変でした。

入交:ここではまず、ワンポイントサラウンド方式を試しました。
正面0度、LRを45度、Ls,Rsを135度で、半径1メートル(L,C,R)と1.6メートル(Ls,Rs)です。
特殊な手製のツリーを作り試した結果、これでは空気感が出ないので、アンビエンスマイクを使いました。
最終的にはアンビエンスマイクの方が音量が大きくミックスされています。
スポットマイクも3本立てました。
L,C,Rとのセパレーションのため、Ls、Rsのマイクに青い紙がバッフル効果を狙って貼ってあります。紙は円盤にしたかったんでが細工が出来ませんでしたので四角い紙を貼っています。最初はLs,Rsのマイクもフロントと同心円上に配置しましたが、あまり良くなかったので、段々延びていって、一番長い1.6メートルまで延ばしました。

演奏者側から見るとこんな感じです。


Q:LsとRsのマイクを同心円に配置すると、何が上手くいかなかったのですか?


入交:後でいわゆるITU-Rの5.1chの再生環境で聴くと明らかに、後ろに壁が迫ってきた様な感じに聴こえましたので、Ls,Rsにアンビエンスマイクを多めに使ってミックスしています。

でもそれでも上手く出来なかったので、アンビエンスマイクを主に使っています。

聴き比べデモ

1.All−Mix
2.Main Surround System
3.One Point Surround Mics
4.Front & Ambience

入交:違いが判りましたか? ここのスタジオは、ディフューズサウンドで再生していますが、ここの位置で聴くと、それほどワンポイントサラウンドも悪くないなと感じました。
いわゆるITU-Rの5.1chの再生環境で聴くと明らかに、後ろに壁が迫ってきた様な感じに聴こえましたので、Ls,Rsのマイクを多めに使ってミックスしています。

では次は、センタースピーカーが有るのと無いのでどう違うのかというところを聴き比べます。
まず、フロントのメインマイク3本をLCRとしたもの。
次に、真ん中をLとRに割ったつまりファンタムセンターにしたもの。
次に、スポットマイクも足した状態で同じことやります。
そして、最後にサラウンドで同じことをやってます。

聴き比べデモ

1.Main front only 3ch VS Stereo
2.Main & spot 3ch VS Stereo
3.All Mix Surround VS Stereo

入交:サラウンドで聴いた時とステレオで聴いた時とで、その音像感が全然違ったんです。
サラウンドで聴きますと、マリンバは2.5メートルくらいの比較的大きな楽器なんですけども、そこに有るように聴こえて、ステレオの場合はそこまで鮮明に聴こえなかったという印象がありました。これはきっとセンタースピーカーの有る無しに違いないと思って、こういう素材を用意しました。

Q:ステレオのときは、センタースピーカーをゼロにしただけで全体の音量は持ち上げていないでしょうか?
A:ファンタムセンターにするため、2dBぐらい上げています。全体の音響エネルギーとしては聴感上で同じぐらいにしてます。
Q:スポットもメインのマイクもセンターを単純にLRに振ってるんでしょうか?

A:そうです。センターを3dB下げて、パンポッドで振っています。



入交:スポットマイク付きの、センターをオフしたものを聞いてみましょう。

(デモ)

入交:これはやっぱり中抜けしてますね。サラウンドとステレオで、ステレオはもうダウンミックスと考えて頂いてほぼ差し支えない様な感じです。
サラウンドと聴き比べると、センター定位もそうなんですが、グッと向こうに平板になってしまったって感じがよく判ったかと思います。
オーケストラだけでなく、こういう鍵盤楽器みたいな単楽器でも充分にサラウンドの素晴らしさがあるんじゃないかなと感じた経験でした。
それでは、7分ほどの曲を聴いて下さい。曲は、カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ / スペインのフォリアによる12の変奏曲という曲です。



(デモ)


入交:この教会での響きは、上に登っていくって感じがあったんですけども、そういう感じが良く出たんじゃないかなと思いました。

エピソードとは全然関係ないんですけれども、彼と編集のやり取りはmp3で送ったんですけども、プロツールスの128kbpsで送ったところ、どうも変な音が聴こえると彼から言ってきました。仔細に聞きますと、mp3というのはプリエコーというのが原理的に出ます。カカカカカッっというのがスカスカスカスカッという風に出てくるんですね。それが聴こえないようにしようと思うと256kbpsまでビットレートをあげないと駄目でした。ちなみにARIBの品質作業班でも話題となったのですが、カスタネットが一番圧縮オーディオで、それが聴こえないようにしようと思うと256kbps/perまであげないと駄目でした。マリンバも原理的には木の音ですので、圧縮オーディオに非常に向かない音となると思います。ですので、そういう時のチェックにも良いんじゃないかなという風に思います。
以上で終わります。長い間どうもお疲れさまでした。

(一同拍手)



[ Q and A ]

Q:「プラネット・アース」と「Bach Beat」の作品の両方なんですが、ポストの処理でリバーブは全く使ってないということでしょうか?

A:「プラネット・アース」では、スポットマイクに対してはDigidesignのルームモデリングリバーブのReVibeを使いましたが、メインマイクには使っていません。
「Bach Beat」では全く使っていません。
Q:録音時のモニター環境をそれぞれ、教えてください。
A:シンフォニーホールには、エクスクルーシブがあり2本あり、それでモニターしました。教会では、ソニーのスピーカーでやってます。

Q:教会では、5本でモニターしましたか?

A:いや、これも現場では2本です。
Q:2本でモニターして、後ろの壁が迫ってくるから(Ls,Rsのマイクを)1.6メートルにしよう、っていうのは、決めれるものなのですか?

A:現場では半分は想像のところなんですけども、持って帰ってのプレイバックでそういう感じがしました。現場ではダウンミックスの音色で判断出来る部分があります。
もちろん、サラウンドモニター環境を現場に持っていけば、もっと違うアプローチに変えたかもしれません。
その時もアンビエンスマイクは保険のつもりで録っていって、通常のアンビエンスマイクの録り方をしていますので、
フロント3本とアンビエンスマイクで成立できるということは想像しながら録音しています。
それでプラスアルファということでワンポイントサラウンド方式をやってみて、この場所ではあまり巧くいかなかった、という結論に達しました。
そのなかで同心円上にしてダウンミックスで聴くわけですが、
現場でダウンミックスを聴くと、まず最初、セパレーション確保用の紙が無い状態でやりますと、全て全指向性のマイクですのでカブリの結果、音が濁る感じですよね。
そうなりましたのでその紙で遮蔽してみた、と。それでも良くないのでマイクステイを延ばしていった、というわけです。
一番伸ばした状態でも膨らんだ感じがあり、要するに2本のマイクを足した時に独特のカブリで濁るという感じが聴こえるので、多分よくないだろうなという風に想像はしていましたけれど、持って帰ってサラウンドで聞いてみるとやはり良くなかったという状況です。


Q:「プラネット・アース」はPCMで録られたとおっしゃってましたが、DSDにはどのような形式で変換されたんですか?

A:具体的にはマスタリングスタジオのエフという所でやったんですけれども、まずPCMからDSDにピラミックスで変換しまして、
そのDIFFというファイルをオクタヴィアに持って行きそこでマスタリングしました。
「Bach Beat」はやはり同じエフでDIFFに変換したあとで、ピラミックス出しのSadie録りという形で、
これに同時収録しながらマスタリングしていったというような形です。
Q:編集の時にはスコアは見てやられるんですか?

A:はい、スコア見ます。

Q:スコアを見て、どこが小さいとかっていうのは確認されるんですか?
A:はい。さらに先ほどの「プラネット・アース」で言えば大体300カ所ぐらい編集していますが、それはスコア見てどれが違っているかというのを全部先に洗い出しをします。
どこが編集できるのかというのを次々にトライしていって、変えると駄目な部分も当然有りますから、そういう様な作業を繰り返します。
Q:変えるっていうのはリハのテイクとですか?
A:そうです。リハのテイクと、それでも足らない場合は、クラッシックの曲というのは繰り返しがありますので繰り返しが無いかどうか探します。
それでもどうしても変えたいというのがあると、クラシックには展開部で4度上というのがありますので、
そういうとこから4度下げて同じ様になるようなものは無いか探しにいきます。(一同騒然、笑い)(これはジョークです。実際に探したことはありますが、うまくつながりませんでした。)

Q:先ほどコーラスで何か本当に歌っているのかなって、すごい高い声に聴こえたんですけどあれは本当の声ですか?
A:歌ってます。一番最初にですね、効果音の方で後ろでコーラスが有ったと思うんですけども、あれはシンセサイザーなんですよね。
それに声に似せて歌いなさいって書いてあるんですけども(笑い)、それであの、ウーっていう、まあハミングみたいな音で歌い始めると。このコーラスはコーラスのかたに聞くと非常に難しいと。ハイCが出てくるんです。ほとんど考えられない、普通の演奏会では考えられないような音域だそうです。
たまたまですね、大阪に優れた合唱団が居たので出来たんですけれども、逆に100人集まったらもっと酷かったんじゃないかという風に言われています。
ハイCとハイBの2度とかでハモらないといけないんですけどもね。
Q:SEはPA出しですよね。PAはいわゆるサラウンドのこの並びは出来ないですよね、会場では?
京田:はい。なのでSEはフロントリアの4chなんです。
Q:クラシックだとPAを使うことを会場の人が嫌がりますが,問題はありませんでしたか?
入交:それは無かったですね。事前に根回しをしたというのはあります。
逆にですね、シンフォニーホールは非常に残響が長いので、効果が得られるかどうかっていう風な心配をして頂きまして。
で、フロントが2発、リアは1階席と2階席に2発ずつ、それと真横にですね2本、ですのでリアは6本使ってました。

Q:当然この今日聴いたミックスでなくて、その会場に合わせたミックスを作ってらしたんですか?

京田:はい。

入交:そんなに芸が細かいことをしてたとは全然私は知りませんでした。(笑い)
Q:作曲家のかたから、そこの部分はこういう風に出してとか指示はあったんですか?

京田:いや全然無しです。来てもらって、リハーサルも別会場でリハーサルしてますので同じ環境では聴けないですから、任せてもらった様なものです。
Q:音素材は全部送られてきたものなんですか?

京田:そうです。

Q:0.1(LFE)の処理はどうされてるんですか?

入交:これは5.0です。
Q:拍子木じゃなくて、DAWで何かワンパルスを作ってスピーカーで出すっていうのは駄目なんですか?

入交:良いと思いますけど、拍子木を叩いた方が早いですね。ただ拍子木なかなか難しいですよね。良い音出すのは。(一同笑い)

沢口:年季が要る。(笑い)

入交:そう、年季が要る。下手に叩くとね、拍子木を持っている手がものすごく痛い。
(一同笑い)
Q:サラウンドで、特に小さい部屋で録る場合なんですけども、後ろの方のメインマイクの2本を延ばされたって話で、
こういう場合に5本のマイクで録られて、その5本のマイクに対して、DAW上で時間をずらしたりしてミックスの時に試したことあるんですか?
入交:この録音では試していませんが、過去に一度やったことありますけども、ものすごく変になったのでやめました。それを追求して何か良い感じに出来る遅延時間があるのかどうかなど、そういう実験はやってないですね。

Q:サラウンドで、特に小さい部屋で録る場合なんですけども、後ろの方のメインマイクの2本を延ばされたって話で、こういう場合に5本のマイクで録られて、その5本のマイクに対して、DAW上で時間をずらしたりしてミックスの時に試したことあるんですか?
入交:一度、やったことありますけども、ものすごく変になったのでやめました。それを追求して何か良い時間軸があるのかどうかとか、そういうのはやってないですね。
Q:25ms以上飛ばせば、音色に関係なくエコーになっちゃうんで大丈夫だと思うんですけど、小さい部屋で平らな面が多いとどうしてもそのディレイによる 位相干渉が多分多くなると思うんで、でもマイクが重なっていけば重なっていくほど、ある中高域の帯域のホールド音が滅茶苦茶強調される様な感じが ちょっとしたんですね。


Q:もう1つ、先ほどの最初の作品の中で、メインマイクとオンマイクのタイミング合わせるのにカチンコでってお話されてましたけど、それはカチンコそのものの音を波形を見られて合わせられてるって感じなんですか?

入交:そうです。
Q:じゃあ実際に、ちょっと分かんないですけど試して頂くと良いかなって思うのは、その、オンマイクのほうにEQ掛けられると仰ってましたよね、楽器の帯域毎に。カブリを減少する為に。
入交:はい、ローカットハイカットぐらいなんですけども。
Q:それと同じものを、メインマイクとそのオンマイクで拾ったカチンコの音に掛けられると、まあ多分郡遅延持っていると思うんですよね。要するに楽器に よってピークだけ見てると、こう、ひっくり返ってくるとこっちの方が本当は正解のその帯域だと頭かもしれないんで、多分ですね、25ms以内だと エコーになっちゃうんでそうじゃないですけど、それを入交さん、厳密に合わせようとされてるんで、合わせれば合わせるほどほとんど音色の変化の領域に入っ てくるんで、もうそこまでくると厳密ならば厳密に越したことは無いと思うんですよね。だから多分そのEQも掛けられるんであればそれで見るとどのくらい変 わるのかなっていうのはちょっと興味ありますね。
入交:その場合っていうのは、一度EQ掛けた素材を多分レンダリングし直さないと判んないですよね、その波形は。
Q:そうですね、あーそうですね。波形も見ないといけないですよね。


入交:それはちょっと試しておかないとですね。

Q:そうすると楽器毎に、まああんまり変わんないかもしれないですけど、例えばマイクとかHAとかがすごい郡遅延持ってると、低い、例えばティンパニーのところのカチンコの音と、例えば他のトランペットとかそういうところのそのタイミングが変わるかもしれないなと思います。



入交:それとですね、拍子木で意外に面白かったのは、実はこれはAESの実験の時なんですけども、ステューダーの卓を何式か使ったんですけども、1つどうやら日本仕様になってないものがあったみたいで、逆相になってるチャンネルがあったんですよね。で、そこはカチンコの音を見ていてですね、反対の方向にピークがあることが判りましてですね、もしかしたら逆相じゃないかと言うことで、そのチャンネルの逆相ボタンを押してミックスしてみるとしっくりしたっていう経験があります。もちろんオールミックスでは判らないですけど、近くのスポットマイクの音を聞いてみると判りました。結構判るもんですね、ああいうもんで、っていう不思議な経験でした。
 


Q:専門的なことはよく分からないんですけど、その拍子木で思ったんですけど、例えばオーケストラでリハーサルで、例えばチェロと例えばパーカッションとか、チェロとか響くのにすごい時間掛かるからタイミング一緒に鳴らすと駄目なんですよ。チェロの人が先に鳴らして初めて合うっていうか、指揮する時に初めて、こう、合うんですよ。そうすると拍子木ってバイブレーションとか、ただカチッって鳴らしてるだけじゃないですか。バイブレーションがどこで始まって音が膨らんでいくかとか、そのタイムスパンとか別に考えないで、こう純粋に音の時間だけででしょか?
入交:そうですね。あの、マイクのアライメントというのはそれで大丈夫と思います。チェロとかがですねタイミング合わないっていうのは、まあアタックタイムっていうのがあるじゃないですか。拍子木はさっき言ったみたいにですね、ほとんどインパルスみたいな感じで立ち上がりがありますので、そこそこ叩ければ誰が叩いても同じなんですけども、チェロみたいなのはやっぱりその弓のスピードが全然変わってきますんで、弾いてから発音はすでに遅いですから、突っ込んで弾かないとオンタイムで出ないっていう特性があるんですよね。これは管楽器もそうなんですけども、例えばピアニッシモで弱く吹く場合はですね、ちょっと突っ込んで吹かないと発音タイミングが揃わないんですけども、それが難しくてですね、突っ込みすぎると自分だけ1人先に行ってしまったりとかですね、難しいもんがあるんですけども、そういう様に実際に息を吹き入れて出す楽器とかですね、弦を弾いて出す楽器、これはあの打楽器とは違ってですね発音に時間が掛かるとこがありますんで、多分そこのとこを仰ってるんだと思いますけれども。
A:はい。そうです。


Q:「プラネット・アース」のSACDのミックスですけれども、京田さんのSEと現場で録った音とが、どこであわせたのですか。すごく綺麗に入ってたと思うんですけども?


入交:5秒前ぐらいからフェードインしていって、足していっています。スーっと上げていって、それで規定レベルにしてるという感じです。
Q:実際のコンサートの時もSEと音楽が同時にやってる箇所はあんまり無いから出来たっていうことですか?


入交:そのとおりです。そしてSEを合わせるのはサンプリング周波数で合ってますので、途中で長さが変わるということはありませんので、
1トラックだけパイロットトラックをマルチに入れておいて、そのマルチをガイドにして、そこに差し替えました。ですのでズレていって音がおかしくなるということは無いです。


京田:ポン出しは、PAを大阪音研が担当されたのですが、ものすっごいタイミングですね。指揮者が“ヒュッ”と出したら“ヒュッ”と出すんですよね。チェロの効果音なんかは16分音符のタイミングで合わせないといけないのですがピタッと合ってすごいんですよ。(一同驚嘆)
 

Q:ポスプロ作業の時に、SEのカブリがサラウンド側に吊ってらっしゃるマイクと合わせる時すごく苦労されたと思うんですけど、
マイクで収録されてるSEのカブリっていうのは、どのくらい切ろうとしましたか?


入交:実際にはそれほど苦労してないんです。(笑い)あの合わせて、盗んで(フェードイン)上げていっただけでですね、多分判んなかったと思うんですけど。


Q:差し替えたSEのほうのリバーブの環境とかっていうのは合わせ込みはかなりやられましたか?

入交:いえ、リバーブはこれ特に付けてないです。SEには付けてないですね。クロスフェードだけでやってます。
Q:会場のお客さんの反応ってどうだったんですか?
入交:やっぱり、後ろが出た時に後ろを向いてましたよ。(一同笑い)おもしろかったですね。
まさか後ろから音が出るとは思ってない人が大半だったんですね。これはもう吹奏楽を超えた、とかいう声が聞こえてましたから。(笑い)

Q:この写真ですが、あれは撮影用にマリンバをLRに向けてるんですか?

入交:これはですね、先ほどマリンバ1個だけだったんですけれども、実は一番最初に、3本のマリンバのためのがありましてですね、
実は1人多重録音をしております。
Q:ということはこのトラックを聴くともっとこうLR感が?

入交:LR感出ますねそれはもちろん。今回はセンタースピーカーの聴き比べ、ということで何曲かしましたけれども。
Q:サラウンドっていうのをメインにして作られる作曲家とか、サラウンドにするってことをイメージして指揮をなさるかたっているんですか?
私も指揮勉強したことがあるんですけど、指揮をする時は絶対会場のホールがどのぐらい音響があって、どのぐらい響きがステイするかを考えながらやらなくちゃ、やっぱり響きがあんまり無いと、ある程度曲の早さを早くしないとつまらなくなっちゃうし、すごい響きがあると、割とこうゆったりして聴かせても、お客さんが満足出来るけど、もしそのサラウンドっていう環境が在って、その例えばサラウンドでもって音楽を聴くっていう人達にとっては、多分そのライブで聴く早さと、このサラウンドにした時にその音楽が持ってるこのサラウンドっていう響きの中で作られる音楽の気持ちよい早さとかって結構違ってくると思うんですよ。だから多分そういうことを意識して指揮をする人、そういう風にCDでサラウンドにするってことを意識して指揮者が指揮する曲に対して臨む早さと、ただ何もしないで、あ、結果的にサラウンドになるっていう風に思ってただこう実際にその場で指揮したり演奏するのと違うのかなって思ったんですけど。
入交:恐らくですね、再生環境でサラウンドしてるとは言ってますけれども、ここで聴いたみたいなですね、響き中心のね、サラウンドっていうのはもうホールで聴いてる時点でサラウンドじゃないですか。だからそれほど指揮者が違和感を感じるとは思わないんですけども。そうでなくて、じゃあ客席に楽団がある場合はどうかということを考えますと、これは、ベートーベンがウェリントンの勝利という曲を書いているんですけども、この時には彼自身が注釈を書いていまして、なるべく遠い所に、あれは戦争を模倣した曲なんですけども、フランス軍とイギリス軍に模した楽団を置くようにという指示があるんですね。これを演奏する為には少なくとも1名の副指揮者が必要であるという様に書いてます。これはウイーンの学友協会ホールで演ってますけども、ここでは多分一番後ろと一番前で残響感のちがいでですね、多分、音を聴いたらそこで演奏は不可能だと思います。それで指揮者は副指揮者を立てなさいという様な指示があるんだと思うんですよね。そういう風に作曲家もそういった演出上のことを考えていたと思うんですよね。更に言うならばですね、ルネッサンス時代ですね、ベネチアで、演られました楽劇と言いますか、オペラの前身ですよね、これは非常に大きなドームで演奏されてたらしいんですけれども、例えばオーケストラが2つ3つあって、それが正面とか後ろとかにあると、合唱隊が天井のほうから歌うとかですね、鳴り物が天井に仕掛けてあるとかですね、非常にサラウンド的な演出をしてますよね。ですので逆に、かしこまって前のほうを向いて聴くっていうのはおそらく18世紀以降の話だと思うんですよね。それまではもっと自由に楽しまれてたと思うんですよね。と言うのはですね、ホールじゃなくておそらく教会で演奏会があったと思うんですよね。教会っていうの賛美歌隊なんかを客席の後ろにやったりしますよね。オルガンも後ろにあるほうが多いですよね、前からの音楽のみに対峙するっていうほうがごく最近のことじゃないかなと僕は思います。それは最近ですね、古楽のCDとかが増えてきてるんですけど、それを聴いてても、おそらくそうだったんじゃないかなという風な曲が多いですし。だから意外に、古典を聴くと、ヒントが見えてくるんじゃないかなという風に最近思っているんですけども、いかがでしょうか。
(一同拍手)

沢口:入交さん、京田さん、普段は聞くことのできない製作過程の音源を沢山デモして頂き難うございました。
染谷さん、谷口さん、DiMAGICスタジオのみなさん、詳細なスタジオツアー、また、長時間スタジオを提供頂き大変有り難うございました。

セミナー終了後、染谷さんからダイマジックのサラウンド関連新製品の紹介とダイマジックのスタジオツアーを行いました。中でもFOLEY収録専用のスタジオの充実ぶりには,一同感激でした。機会をみて今度はここでFOLEY収録セミナーを開催しようと染谷さんとも企画していますのでご期待ください。(了)

[ 関連リンク ]

名倉誠人公式サイト
カトリック聖ヴィアトール北白川教会
DiMAGICスタジオ

5.1サラウンド寺子屋塾レポート ROCK ON PRO
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