January 24, 2010

山陰放送 亀川式オムニ8を使用した教会録音

「山陰放送」大村さんの取り組みレポート

2010年1月24日

● 山陰放送大村さんから以下のようなリポートがきましたので紹介します。
  東京芸大 亀川さんが提起している オムニ8サラウンド マイキングが使われています。
  あるものを利用してサラウンド制作を行っている姿勢は、脱帽!
  この後、山陰の方々に声をかけてサラウンドMIXの勉強会をこの素材を使って行うそうです。(沢口 記)

米子市安倍『聖ニコラス教会』での合唱収録の模様

1月24日 米子市安倍にある『聖ニコラス教会』で、合唱団リトルフェニックスの
収録を行いました。その様子を簡単に紹介したいと思います。

○セッティング
 現地でのセッティング時間が30分程度しか取れないため、予めハイエース車内にミックスブースをセッティング、現場では会場までマルチケーブルを引いて、マイクセッティングのみを行う事で現場での時間短縮を行いました。

○収録方法
 教会の礼拝堂の響きを伝える事が出来るようにミキシングを行う。また、その臨場感を伝えるために、ステレオミックスと5.1サラウンドミックスの両方を行う。

○マイクセッティング
 上記の収録の両立のため、次のようなマイクセッティングとした。大きく分けて3つ。

写真01 ステレオ、サラウンド兼用ワンポイント収録用メインマイク


このマイクアレーは『Omni8』と言われるものです。2m間隔でセットされた無指向性
マイクで広がりのある音を捉え、センターにセットされている双指向性マイク(これを8で表しています。)で両端からのかぶりを排除しつつ、安定したセンター定位を得る事が出来ます。テラークが行っていた3本マイクでのステレオ収録方法に似ています。
ステレオ収録ではセンターマイクをLR両チャンネルにミックスして広がりをコントロールし、サラウンドではこの3本のマイクをL/C/Rにそのままアサインします。


写真02 ステレオ、サラウンド兼用ホールトーン(残響)収録用のアンビエンスマイク


リアのアンビエンスマイクはAudiotechnicaのAT4050をペア、無指向性で使用しています。本来は単一指向性での使用を推奨されていますが、今回は前後のつながりを重視する意味で無指向性としました。これはどちらが良いのか迷うところ(後述)です。
2本のマイクの間隔は2mとし、メインマイクからの距離は5mとしています。


写真03 残響感を出しながら、楽器や合唱を際立たせるための補助マイク類
合唱団にオンマイク(近距離収録)でセットした補助マイクです。

 使用しているマイクはsankenのCU32を3本使用しています。ブームスタンドの上部を取り外し、そこにフレキシブルシャフトを取り付けています。微妙な角度の調整がやり易く重宝します。

写真04 ピアノにセットした補助マイクです。

 使用しているマイクは合唱と同じく、sankenのCU32を2本使用しています。
 ブームスタンドに双頭フレキを取り付けてセットしました。

教会のような響きが多い中では、メインマイクのみでは、コーラスやピアノの音像がぼやけたりします。このため最大限響きを生かしながら、クリアーなコーラスやピアノの音像を得るために使用する補助マイクです。ただし、そのレベルは要注意で混ぜすぎるとせっかくの響きが失われていきます。このあたりがミキサーの腕の見せ所です。

また、アンビエンスマイクの指向性については、実際のミックスを行っていて、ホールトーンや広がり感は十分に感じられるものの、フロント方向からの直接音の高域成分が結構聞こえているので、単一指向性で直接音を避けるか、無指向性でもカプセルの方向やマイクの高さなどで、高域成分を少なくする方法を探した方が良いと感じました。

写真05 会場全体のマイクセッティングの様子です。



○ミキシング環境
専用の音中車などは当然ありませんので、にわか仕込みの音中車を仕立てています。

写真06 音声車(と言えるような環境ではありませんが・・・・・)の内部です。


車両はトヨタのハイエースロングボディーの荷物室に組み上げています。

写真07 フロント側のモニター
車両の荷物バーにクランプ金具を使用して取り付けました。


写真08 リア側のモニター
ULTIMATEのスピーカースタンドを使用しました。


スピーカーの配置も、室内の音響状態も理想とは程遠いので、何だコリャ!と言われそうですが、これでも専用スペースでミックスできるのですから良い方です。もっと劣悪な環境での作業を強いられることもしばしばです。

それに、出来ないとあきらめるより、出来ると信じてトライすることが何よりも大切。
サラウンドのミックスはなによりも『トライ』する気持ち??です。

写真09 今回参加いただいた合唱団『リトルフェニックス』の皆さんです。
ご苦労さまでした!



○使用機器

ミキサー     YAMAHA O2R96
マルチレコーダ  FOSTEX D2424LV
CDレコーダー  TASCAM CD-RW2000
モニターSP   YAMAHA MSP-3
マイク      sanken CU32
         AKG  C414
         AudioTechnica AT4050

次は、ミックスダウンの講習会を行います。この時の素材を使用して、教会での音場再現
にトライしてみます。(了)

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January 1, 2010

第68回 長野朝日放送の7時間サラウンド生番組・後編:実践5.1ch サラウンド番組制作


By Satoshi Inoue 井上 哲



“番組終了後はしばらく放心状態で動けなかった程で、間違いなくこれまでで最も厳しく、また最も思い出に残るであろう仕事となった。(中略) 今回これだけの内容に挑み、無事に実現、成功に導いた、少数精鋭の長野朝日放送技術スタッフの方々の意識の高さと地道な努力にはあらためて見習うべきものが多いし、またこういった地方独特の素晴らしいコンテンツを提案できる製作陣の企画力にも改めて驚かされた。”
月刊FDI 2010/1(PDF)より

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