April 10, 2005

オリバー・ストーン監督「アレキサンダー」のサウンドデザイン

By K.Hilton 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

[ はじめに ]
1920-30年代の古き良きハリウッド時代の監督は、自らの個性と感性にもとずいて作品をつくることができた。今日その伝統を受け継いで制作しているのは。OLIVER STONEである。アレクサンダー大王はマケドニアを中心に世界を制覇した偉大な人物として有名でこうした時代設定の映画としては、「グラディエータ」「トロイ」といった近作がある。本作の内容は、豪華なキャストと視覚効果に加え、サウンドデザイナーの果たす役割が大変重要である。
今回も永年ストーン監督とチームを組んできたサウンド デザイナーのWYLIE STATEMANが担当した。彼の仕事は、
「SOUTHER COMFORT」「STAND BY ME」「FOOT LOOSE」やストーン監督が注目された「TALK RADIO」「THE DOORS」「JFK」
「NATURAL BORN KILLERS」「NIXSON」などで聞くことができる。

STATEMANが言うにはストーン監督はプリプロダクションの段階から音について「考える思考プロセス」を非常に重要視するタイプであると述べている。
アレクサンダーは特にアメリカーヨーロッパの国際共同制作チームで行われ、サウンドクルーには、フランスのチームが参加することになっていた。JEAN GOOUDIERは「The Man on the Train」にサウンド スーパバイザーとしてクレジットされており、同時に彼の希望でken yasumotoもサウンド デザインに参加することになった。

デザインの過程
ストーンのサウンドに対する考えは、先に述べたように実に知的で独自のスタイルがあり、映像的にも音響的にも異なった個性をぶつけるという方法をとっている。GooudieとYasumotoは、このために「ミュージック コンクリート」という実験音楽的な手法をサウンド デザインに導入した。これらの要素は音楽を担当したバンゲリスの作曲にも採用され、結果大変感動的で、印象の強いサウンドができあがった。Yasumotoは、ミュージック コンクリートの素材として使用したのは虎のうなり声、風、声などのリアルな素材からであったと述べている。これらから音楽的なメロディやリズムの要素を作り上げた。
古代の世界を音で再現する場合キーとなるのは、メソポタミアのバビロンで当時どんな音がしていたかを再現することにある。バビロンのシーンのサウンド デザインを担当したのは、VINCENT MONTROBERTで彼は、Gougierが世界中で録音してきた素材を使い、複合文明都市のイメージを再現した。

戦闘シーンのサウンド
現場の同録に加え我々のライブラリーから素材を集積しサウンドを構成することにした。こうした作業は、パリ郊外のAuditorium de Boulogneで行われた。
ここには、AMS/NEVE DFCを備えたダビング ステージ2室、Foley/ADRが2室と試写室が備えられている。サウンド エディターの多くは、PRO TOOLS HDを使っているがGoudierは、Pyramixを好んで使用し、ほかのセッションを再生する場合にのみpro toolsを使用した。各DAWはサーバーと接続されており映像は同じくPyramixのVCubeハードディスクビデオシステムが使用され効率的な作業がおこなわれている。

Final Mix
Final Mixも同じスタジオAuditorium de BoulogneでVicent Arnardi Alex Goosse Bruno Tarriereのチームで行われた。しかし予定スケジュールをオーバーしたため残りはロンドンのDe Lane Leaに移動して行われた。ここでは、ロスから呼んだChris David Paul Massey がFinal Mixを担当。彼らは、これまでも「Nixon」で仕事をしている。MIXは、一日16時間、一月で仕上げDavidが効果音パートをMasseyがせりふと音楽パートを担当した。それまでに仕上げた部分を試写して2つの戦闘シーンのみ修正を行い、残りの部分をMIXすることにした。
戦闘シーンの素材自体はすばらしいのでそれらを一層強調し、いきいきとしたバランスに修正し、この場面でアレキサンダーがすばらしい戦略家であることを聴衆に認識できるようにした。もうひとつの戦闘シーンであるインドでの場面は、修正ではなく、はじめからやり直すことにした。6台のPro Toolsが持ち込まれたが、それぞれが効果音 背景音 せりふ 音楽 Foleyが仕込まれ、6台目は効果音ライブラリーである。

インドでの戦闘シーンのデザインについてDavidは、「サラウンドチャンネルには、象の呼笛Elephants trumpet blastを配置しました。いままでは、映画館の再生装置に不安があったので用心のためフロントにもこぼしましたが、今回は非常に明確な定位を意図したためです」
音楽を担当したVangerisはギリシャのスタジオを根拠地にパリでオーケストラ録音を行い、両者は44.1KHz 16bitのADSL回線で接続し最終てきな仕上げを確認しながら両者で作業を進めることができた。
ヨーロッパとアメリカの上映環境の相違は、アメリカが5.1CH基本であることに比べヨーロッパは3.1CHが基本である。このため映画用の音楽MIX5.1CHもサラウンドチャンネルにはアンビエンス中心でMIX している。(了)

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