July 7, 2021

007シリーズ・SKYFALLのサウンド・デザイン分析 - 2012年 第85回アカデミー Best Mix/音響/音楽賞 受賞作


                By. Mick Sawaguchi

               UNAMAS-Label・サラウンド寺子屋塾主宰

はじめに

2012年第85回アカデミーBEST MIX /音響/音楽 受賞作007 SKYFALLを分析します。007シリーズは、1962年制作「ドクター・ノオ」からこの作品で23作となる歴史的な映画です。143分という大作で、そのうち音楽が使われた時間が、91分、比率で64%と音楽の割合が多くベテラン作曲家のトーマス・ニューマンのスコアリング音楽の使われ方を理解するには、良い作品です。


1 スタッフ:

監督Sam Mendes 

Final Mix

Scott Millan/Graig Russel/Stuart Wilson 

サウンド・デザイン

Peter Staubli/Christpher Assells/Dino R. Dimuro 

音響効果

Per Hailberg/Karen B. Landers  

音楽MIX

Simon Rhodes 

作曲

Tomas Newman 

音楽スタジオ

Abbey



Road /Sphere 

ポストプロダクション

Delanelea(www.delanelea.com/)   

時間:143分 


2 あらすじ

ジェームズ・ボンドは新人女性エージェントのイヴとトルコでの作戦に参加していましたがMI-6の工作員が殺され、各国のテロ組織に潜入しているNATO工作員のリストが記録されたハードディスクが奪われます。ボンドはディスクを取り戻すべく、犯人パトリスを追跡、列車上で彼は、川に落下し行方不明に。

数ヶ月後。MI-6ビルが爆発。僻地で体力回復していたボンドもニュースでしりMI-6へ復帰します。体力の衰えたボンドをMが復帰させデータを盗んだパトリスを捕獲するため上海でボンドはパトリスを倒しパトリスの所持品にあったカジノのチップを手掛かりにマカオへ向かいます。さらにマカオから今回のハッカー シルビアのいる孤島へ向かい2人は、対面します。格闘の末シルビアを逮捕、ロンドンのMI-6新本部に拘禁しますがここから脱出したシルビアは、Mへの復讐を国会内で行います。国会からMを救出したボンドは、シルビアとの対決の場としてスコットランドの実家「Sky-Fall」邸で、かれらを待ち受け激戦の末シルビアを倒し同時にMも命を落とします。


3 作品の起承転結

● プレオープニング:13‘00“

犯人との派手なアクションとチェースシーンを展開し、観客を引き込む役目をしています。




 

オープニングクレジット:4‘00“

アデルの主題歌といつもながらの007のイメージを再現

起:24‘00“

ボンドの復活とMI6への犯人シルビアからの復讐。新しいエージェントとボンドのような古いタイプの人間のコントラスト。Mへの国会からの辞任要求と幅広く今後の展開の背景が観客に提供されます。




● 承:40‘00“

ボンドの復帰初回の仕事が開始。犯人逮捕のため上海〜マカオと移動。真犯人シルビアとの対面。お互いがMI6からすでに見捨てられた古いネズミだと告げられ、シルビアのMへの復讐という動機が、観客へ送られます。

転:23‘00“

犯人シルビアは、ロンドンMI6に監禁。しかしこれも彼のプログラムに計画された行動で、いよいよMがいる国会査問委員会へ仲間と乗り込み復讐劇が開始。Mは、ボンドの救出で危うく難を逃れます。


 

結:33‘00“

Mを救出したボンドは、犯人との決着をつけるべくMをスコットランドの実家「Sky-Fall」邸へと移動し、犯人との戦いに望みます。Mは、死亡し、後任マロリーから次の任務を告げられて再出発する007で幕がおります。

                               


では、それぞれのシーン毎に特徴的なサウンド・デザインを紹介します。

3−1 プレオープニング

●このシーンは、ほとんど全編音楽で、展開され映像のカットやアクションに合わせた細かなCUEによって「セグエ」という手法で自然に聞こえながらも様々なリズムやテンポとムードのスコアリング音楽が継続しています。

●配給のトレードマークが出た後は、一瞬ノンモンになります。ここで観客の耳をリセットして聴覚神経を高めておく役目です。TVですと逆にラウドな音でリ視聴者に注意を向けるサウンド・デザインが多いですが、映画の場合は、これだけを鑑賞にきているお客に向けたリセット効果としてノンモンが良く使われます。

●冒頭のトルコ イスタンブールの町であることを告げるアンビエンスが低く静かにリアチャンネルから登場。少し遅れて何かが始まる予感をイメージした音楽が低いレベルでカットインします。

ここで状況を観客に混乱なく伝えるためのセオリー「違う音を同時に発音しない。2つ以上の音を出す場合は、必ずタイミングをずらして発音」という基本がしっかり行われています。

●ボンドが、エージェントのいる部屋へと入っていきます。暗い彼の顔に一筋の光線があたり、ボンドだということが分かるカットで音楽CUEが入りキーンといった注意をひくフレーズが一瞬はいります。ドアをあけるアクションでCUEがあり部屋の惨状が音楽で示されます。台詞が始まるとBGMで十分低いレベルに構成が変わり台詞の邪魔をしないで、かつムードを継続しています。(こうした作曲手法は、日本でも参考にして欲しいと思います。FINAL MIXでMIXERがレベルを下げてBGにするのではなく、本来の作曲の段階で曲想や編成をかえることで違和感のないUNDER SCOREが成立している訳です!

スコアリング音楽を作曲する時のCUEとは、ドラマの進行でなにかきっかけや注意を引きたい映像を引き立たせる役目をもっています。

●エージェントのリストがはいった機密データHDが無くなっていることに気づいた007は、部屋から外に出て犯人の追跡劇がはじまります。音楽は、イスタンブールの市内を象徴する中近東ムードの曲調で全開、犯人とのチェースが繰り返されるシーンとロンドンMI6のOFFICEで指示するMとの台詞のやりとりがカットバックでくり返されています。このシーンでは、イスタンブールのチェースシーンが、音楽と車の激突や屋台の転倒、階段や窓ガラスの破壊、屋根の上のオートバイ走行音や瓦の崩れる音といった各種Foleyに人々のざわめきがサラウンドで組み合わされたダイナミックなサウンド構成であり、ロンドンのMI6 OFIICEは、Mが出す指示の台詞が主体です。ここでも音楽は、見事にチェースシーンでのダイナミックな動きとカットバックMのOFFICEでの台詞で押さえたレベルで流れるBGMがコントラストのついた音楽になっている点に注目してください。

●アクションを補完する音楽の役目の例としてこのシーンで、オートバイが転倒し通りを長いストロークで滑っていくシーンがあります。この滑っていくストローク分をストリングスで長いフレーズを同期させて使っています。また車が激突するカットには、アクセントにティンパニーを加えるという例があります。

●バザールの狭い通りの人ごみをかき分けてオートバイでチェースするシーンで、効果音はリア側から通過の風音が使われています。この作品全体にいえることですがサラウンドの使い方は、大変オーソドックスでアンビエンスとFLY-OVERが使われている程度です。

●新人エージェント イブがジープで2人を追跡しています。高架橋にさしかかり車はい行き止まりになります。この不安なイブのカットに次ぎにくる列車の汽笛が先行し次のカットを観客に予感させています。


●列車に飛び乗ったボンドは、危うく列車から落ちそうになりますが、かろうじて列車の端に手をかけて、屋根へと上ります。このシーンで、おなじみの007のテーマが流れます。こうした使い方を「Leitmotiv」と呼びます。この後も007の山場の活躍やシーンの転換点で何度も使われています。

●列車の上の2人のアクションシーンでは、お互いのガンショット効果音が、非常にリアリティあるサウンドで使われています。特に犯人パトリスが発射した弾丸がクレーンの掘削部に跳弾する効果音は、十分な高域を含んだ素材がつかわれていることがわかります。ここでも音楽は、ボンドのアクションに合わせた多くのCUEが使われてテンポある映像を盛り上げています。ボンドが犯人を客車内で捕獲するために新たな行動へでるカットに「Leitmotiv」としてボンドのテーマが使われボンドの反撃姿勢をサポートしています。

●トンネル内通過のシーンでは、通過音の低域がサラウンドで全体を包み、OPENな空間とのコントラストをつけています。イブは、ライフルを構え犯人を狙いますが、2人が格闘しているためボンドにもあたる危険があります。しかしもう時間がありません。ロンドンからMの指令で「SHOOT」という指示で放った弾丸はボンドにあたり橋から落下。このタイミングで音楽は、カットアウトとなり弾丸の余韻と激流の流れに変化します。

●カットは、MのOFFICEとなり窓辺にたたずむMに外の雨音が密やかなアンビエンスとして流れていますが、そこに激流に流されたボンドの印象を高めるためリアから激流の音がスネークインし、オープニングクレジットが始まります。

3−2 起

●オープニングが終わると、MI6のビル全景が登場し、リアには、遠雷と雨が流れボンドの死を予感させます。追悼文をパソコンで入力するMの静かなレベルは、それまでのダイナミックなサウンドと大きなコントラストがありメリハリがしっかりと表現されています。

●Mは、責任を問われマロリーが待つOFFICE へ向かうカットになるとウエストミンスターの鐘が印象的に流れシーン転換したことを表します。

●マロリーの執務室は、台詞にも響きがつけられ、2人の台詞中心で進行。そして辞職勧告を辞退したMの決意を表す音楽がはいりそのままMI6へ戻る移動シーンのBGMになります。

こうした様々な場所を移動していくシーンをひとつのムードで接合していく音楽の使い方を「TRACKING MUSIC」と呼んでいます。この使用も映画では、大変良く使われます。

●MI6ビルに近づいたMの車は、爆弾予告により道路封鎖。Mの目の前でMI6ビルが爆発炎上します。この余韻に次のシーンを予感させる波音が入ってきて、シーンが変わり、海岸で救出され体力回復しているボンドのシーンとなります。海辺には、レストランがありそこから流れる音楽が「SOURCE MUSIC」として使われます。翌朝同じレストランで酒を飲んでいるシーンでは、密かにウインドチャイムが風に吹かれて聞こえます。この音は、主張はありませんが、海辺の静けさと立体感を表すのに有効な効果音です。

●CNN NEWSからロンドンでMI6がサイバーテロ攻撃を受けたことを知ったボンドは、帰国。サイバーテロというニュースのコメントをきっかけに音楽が移動を表す音楽となり、葬儀の終わったMの自宅でウイスキーの栓を開ける音とボンドの「戻りました」という台詞に合わせて音楽が終わります。

こうした音楽のIN点とOUT点がどういったきっかけとリンクしているかをチェックするのもサウンド・デザインでは、良い勉強になります。是非クリティカル リスニングを実践してみてください。

●MI6に復帰する007を載せた車が市内を移動し地下にある新MI6ビルへ到着するまでは、移動を表すトラッキング音楽が使われています。地下の新OFFICEは、石つくりなのでここでも台詞には響きが付加。ボンドが、復帰のためのテストをうけるシーンには、音楽が流れていますが、懸垂テストで疲れ果ててマットに倒れ込むカットで終わります。

●このOFFICEが、ロンドン地下鉄に近接した場所にあることを示す地下鉄通過音がさりげなくリアから流れ場所の説明をしています。最後の心理テストを受ける部屋は、最も響きが多い台詞です。

そしていよいよ復帰検査結果の発表。実際は、落第だったにも関わらずMの決断で復帰となりその最初の任務としてパトリスが上海に表れるという情報からボンドも上海へ向かいます。雇い主とHDを探すという新たな任務へ向かうボンドと上海の夜景が音楽で包まれドラマが次の展開へと向かうことを印象つけます。



3−3 承

説明のための上海夜景、エアーショットでホテルの最上階が映るとそこは室内プールだということが、なんとなく分かりますが、プールのアップになるとボンドがスイミング中でしかし体力の衰えは、隠せない様子が映像からわかります。プールから上がり、バーラウンジにいると犯人パトリスがPM21:00 EWA-226便で上海にくるという情報が携帯へ。このイントロは音楽で包んでいます。

●空港へ行ったボンドの顔アップにEWA-226便の着陸音が先行してかぶさり、一気にテンポをあげる役目をしています。パトリスが、狙撃に向かうビルまでの追跡シーンは、TRACKING MUSICでカバーし。目的のビル内犯人の乗ったエレベータの底へボンドが飛びついて乗るアクションから、犯人の狙撃、ボンドの犯人との格闘、そして犯人は、雇い主もHDの所在も言わず高層ビルから転落までの7‘30“を一気に音楽と効果音だけで表現しています。このなかは、それぞれのアクションをCUEとして様々な音楽の展開が行われます。効果音の中では、犯人を屋上で追いつめたシーンでリアからビル風が吹いています。犯人のトランクから見つかったマカオの賭博換金コインを手がかりにマカオへ向かうボンド。ここでテーマに使われたアデルの主題歌のメロディを「Leitmotiv」として使ったTRACKING MUSICが移動を表しています。

●マカオのカジノにあるバーのシーンには、BGMが流れSOURCE MUSICが使われています。謎の女セブリンと黒幕に会う取引後、ボンドは3人のガードマンとカジノで派手なアクションをおこしカジノを去りますが、ここに流れる音楽のラストには、AGt演奏によるボンドのテーマが「Leitmotiv」として使われています。

●長崎 軍艦島でロケした真犯人シルビアの住まいで初めて対面する2人。大事なシーンは、基本台詞中心で展開していますのでここも台詞と低いレベルのアンビエンスのみで展開し台詞は、広い倉庫内を表す響きがたっぷりついています。外へ出ると柱につけたトランペットSPから懐かしい60年代のアメリカ音楽が流れ、これもSOURCE MUICとして処理されています。腕試しをする2人がうつ昔の銃の発射音と弾道音は、すばらしいリアリティで高域と空気を切り裂く低域成分が、参考になるでしょう。良い素材を録音しておく大切さが分かります。ひそかに発信器でボンドの位置をMI6に知らせていたボンドに上空からヘリコプター3台が接近。真犯人シルビアは捕獲されます。ボンドの復帰後の初手柄となる承のエンドは、おなじみボンドの「Leitmotiv」で幕を引きます。

分析後分かったのですが、承と転、結それぞれボンドが有利な立場でシーンが終わると必ずボンドの「Leitmotiv」が曲想を変えて使われています。よく計算された音楽構成だと思います。

3−4 転

●真犯人シルビアがMI6の一室に頑丈なガラス製の檻で監禁されています。Mとの対面シーンは、ここも大切な情報が多いので台詞中心でシルビアの台詞とその外にいるMには、それぞれ異なった響きが付加されています。

●ここからはシルビアが仕掛けたプログラムによってMへの復讐劇が展開。地下道や地下鉄 車内 地下鉄駅 ウエストミンスター駅から国会と次々とアクションがくりひろがられますが、転のラストまでの18‘26“を様々なCUEをきっかけに音楽で展開しています。音楽の構成は、重厚なシーンでは、アビーロードで録音したオーケストラサウンドを、そしてアクションが展開するテンポの良いシーンには、Sphere Studioで打ち込み制作した音楽と使い分けがされておりそれが違和感なく一連のスコアリングとして成立していることです。

  

●効果音が主体のシーンは、地下鉄の暴走と国会内の銃撃戦です。こうした素材も大変Hi-Fiなのでリアリティがあります。(地下鉄の暴走効果音ですばらしいサウンド・デザインを行った一例としては、1994年製作「Speed」の後半で大暴走シーンがあり、このサウンドも参考になります。ついでに主役のキアヌ・リーブスがつけていたCASIO G-SHOCKも話題になりました!)

●Mを救出したボンドは、犯人からの追跡を逃れるため公用車からボンドの自家用車にガレージで乗り換えます。扉が開くにつれて姿をあらわしたのは、なんとかつてのボンド車「アストンマーティン」です。ここでもボンドの「Leitmotiv」が使われいよいよ決戦。という雰囲気を表しています。

3−5 結

●スコットランドの典型的な風景とともにゆっくりとアストンマーティンがボンドの実家へ向かいます。風や鳥そして嵐が来そうな予感をアンビエンスでさりげなく表現。ここの同録のみ、かなり苦しい編集で、断続的な背景音が聴かれます!

●実家SKYFALLへ入った2人を向かえるのは、昔からの番人キンケイドです。3人は、決戦に備えて武器と仕掛けを準備します。「最後の武器は、このナイフだよ」というキンケイド。ラストで有効にきいてくる台詞の伏線です。

●家の中は、台詞に響きが付加され、決戦の準備をする2‘13“の音楽にも様々なCUEがあります。一段落した3人は、台詞のみで前の音楽とコントラストがついた後遠くで犬が吠え始めいよいよ対決の時がきたことを予感させています。

●11人の配下が車からおりて家のドアへ爆弾をセット爆発とともに音楽が緊張感を高めます。ここで番人キンケイドがショットガンを構えて犯人を迎え撃つのですが、彼の台詞「WELL COME SCOTLAND」で一瞬音楽はCUT OUTそしてまた再開します。このコントラストも大事な台詞に観客を注目させる上で効果的な方法です。

いよいよシルビアの登場です。彼はヘリコプターで乗り込みそこにはアメリカンロックがSPから大音量で再生されています。この手法は、1970年代の名作「地獄の黙示録」で川から村を攻撃するサーフィン好きのキルゴア中佐がワーグナーを流しながら攻撃したシーンを再現しています。サウンド・デザインを担当したウオルター・マーチを尊敬しているのかもしれません。

●反撃するボンドは、部屋にガスボンベを仕掛け、脱走用の地下室へ飛び込みます。ここでもボンドの「Leitmotiv」が使われています。逃走した3人とそれを追う犯人たち。ここも約8分という長いシーンを様々なCUEをきっかけに音楽が受け持っています。

シルビアは、ついにMを小屋でみつけお互いの頭に銃をむけ「さあ2人で自由になろう」とせまります。テンションの高い音楽は、ここで「アー」という彼の悲鳴で一気に下がります。このシーンの冒頭で予告した「最後の武器はナイフ」という言葉のとおりボンドの投げたナイフでシルビアは、絶命。そしてMも「ボンドを復帰させたことは正しい決断だった」といい息を引き取ります。Mを抱き起こすカットから入った音楽は、50“もの悲しい雰囲気を下支えしたあとホルンのメロディで雰囲気を変え、場所はロンドンMI6屋上へと時間経過を示しています。

●屋上では、ロンドンのアンビエンスと遠くではためくイギリス国旗のパタパタというFoleyがさりげなく状況説明。マロリーが後任Mとなりボンドに新たな任務が告げられるとここでもボンドの「Leitmotiv」が使われエンドロールへつながっていきます。

4デザイン上の特徴

冒頭でも述べましたが、サウンドの組み立ては、大変オーソドックスで、特段驚くようなデザインは、ありません。音楽が60%とドラマの展開に寄り添って大きな役割を果たしているからだと思います。しかし、音楽が活躍するシーンの対比として、

転パートの犯人シルビアが地下鉄の壁を破壊して暴走する地下鉄のシーン

国会内の銃撃戦、

結パートのヘリコプターでの攻撃から墜落

シーンの3パートは、効果音がメインとなってダイナミックな山場を作っています。

4−1先行効果例

●プレオープニングのなかで、新人イブが高架橋へ着きます。ここで次に列車がくることを汽笛の先行音で表現しています。

●MI6 Mの部屋でボンドが死亡したと報告を受けたあとのガラス窓にむかうMの雨音に先行して激流を流れるボンドの水音が入ってきます。

●同様の表現でMI6ビルが爆発した余韻に次のとある海岸でボンドが生きているシーンの波音が先行しています。

●もうひとつは、上海空港で狙撃犯パトリスの到着を待つボンドのクローズアップに飛行機の着陸音が先行し、この音だけで、次に市内を移動する2人へテンポよくシーンが変わります。

4−2台詞の空間表現例

響きのないドライな台詞に加えてOFFICEやMの住居、シルビアの隠れ家である倉庫、シルビアが捕われたガラスの独房、新MI6地下OFFICE 復帰テストで心理テストを受ける検査室、スコットランドの実家内、ラストの小屋の中といったシーンにさりげない響きから広がりを感じる響きまで空間表現がされています。これらもきわめて自然な扱いといえます。

4−3台詞でクローズアップ表現例

プレオープニングのラストでボンドが撃たれて橋から落下した後、イブがロンドンへ報告する無線の声「ボンドが落下」、ボンドがMの自宅内で「007職場に復帰しました」と語るカット、Mの息を引き取る最後の言葉「私の決断は、正しかった」とボンドの復帰を落第点にもかかわらず承認したこと、そして一番ラストの「新たな任務につきます」というボンドの決め台詞といった箇所です。大事な台詞は「アップ」という基本がここでも実証されているといえます。

4−4ダイナミックレンジ感

静かなシーンの設定は、こうした派手なアクション中心の映画では、大切なコントラストとなります。

●まずは、起の冒頭、ボンドが死亡した報告をうけてMが追悼文をパソコンへ入力するシーンです。ここは、キータッチの音と雨、遠雷といった控えめなレベル設定でその前の13‘にわたるアクションシーンのダイナミックスをリセットする役目を果たしています。

●ボンドが、海岸で体力回復しているシーンは、昨晩のギャンブルの喧噪とコントラストのついた翌朝の静かな海岸のレストランにひそかにウインドチャイムが風に揺れているというシーンがあります。

●転の冒頭シーンでは、その前の真犯人シルビアの逮捕劇で華やかなボンドのテーマで終わったあとの廊下からガラスの独房にはいったシルビアとの出会いが密やかなアンビエンスと遠くの地下鉄走行音でコントラストがつけられています。

●結の冒頭も同様でロンドンからスコットランドの自然へ帰ってきた状況とこれから起きるシルビアとの対決を予感する風音や鳥、霧雨といった押さえた表現でコントラストがつけられています。

●全てが終わった後のロンドン新OFFICEの屋上にたたずむボンドにイブがMの形見のブルドックの置物を手渡すシーンです。やはり市内のアンビエンスと密やかなイギリス国旗のはためきという構成でこれまでのダイナミックなレンジ感をリセットしています。

5音楽の特徴

Tomas Newmanの音楽は、大きく2つのパターンで構成されています。

●ひとつは、重厚なオーケストラによるアコースティック音楽。

●もうひとつは、シンセサイザーを多用したノイズ感の音楽です。

この2タイプが重みのあるシーンでは、オーケストラを、チェースシーンやアクションではシンセサイザー音楽をと使い分けています。

本作で参考になるのは、映像のキーポイントとなるカットにシンクロして曲想が変化していく時のCUEの使い方、そこでどんな楽器がその役目をしているかを分析すること。もうひとつは、台詞がなく効果音と音楽で押していくシーンでの曲想と台詞がある場合のBGMの曲想が違和感なくつながっている点に注目していただきたいと思います。



                                                第1作目から演奏している TP

6効果音 Foley

映画のサウンドが新鮮だと感じたりリアリティや、ゴージャスなサウンドだと感じる要素の大きな部分は、効果音にあります。どれくらい作品にふさわしい効果音が用意でき、ふさわしいFoleyがしっかり録音できているか?本作では、足音は、当然として様々なFoleyが高品質で使われています。効果音の高品質とは、低域が必要な音は、しっかり低域成分があり、高域成分が必要な音は、抜けの良い高域を持った音が用意されることです。


おわりに

たびたび名前が上がるFinal mix studioのWarner Bros所属De Lane Leaロンドンの歴史を調べてみました。始まりは1940年で主に外国映画の吹き替えダビングスタジオとしてスタート、その後映画のみでなくTV、オーケストラ対応の音楽スタジオまで拡張し現在制作規模別のダビング・ステージが4スタジオ、ADR2室そして50の編集室を設備し年間14作品の仕上げをおこなっています。

また、映画音楽録音では定番ともいえるAbbey Road 1stも紹介します。面積は、縦28.22m幅16.89m高さは、12.15mで残響時間は、2.3secそれに独立したブースが2つあります。コントロールルームは、スタジオに比べとても狭くあまり快適とは言えません。ここのスコアリング録音を担当している、Simon Rhodes の名前がたびたびクレジットされます。写真で見ると若手のようです。

 

アカデミー音響効果賞に見るサラウンドデザイン分析 Index

「Let's Surround」は基礎知識や全体像が理解できる資料です。

「サラウンド入門」は実践的な解説書です。


「ICE AGE4 Continental Drift」とアニメーション・デザインの歴史

By. Mick Sawaguchi
UNAMAS-Label・サラウンド寺子屋塾主宰





はじめに

2010年アカデミー賞ノミネートアニメーション作品「Toy Story3」を候補にして分析を行いましたが、全編音楽中心で構成されており、D-M-Eのデザイン要素が少ないため、201220世紀FOXアニメーションICE AGEシリーズの4作目Continental Driftのサウンドメイキングを取り上げます。また1930年代の創成期から現在までのアニメーション・サウンドの貴重な歴史についても参考になる資料がありましたのであわせて紹介します。


1 スタッフ

監督:Steve Martino/Mike Thumeier

Mix: Randy Thom/ Lora Hirschberg (Skywalker Sound)

Sound Supervisor: Randy Thom/Michal Silvers

Sound Design: Randy Thom

Foley Artist: Jana Vance/Dennie Thorpe

Dialogue/ADR Mix: Cameron Davis/Bill Higlev/Charleen R.Steevs

Music: John Powell

Music Rec/Mix: Shawn Murphy at The Newman Scoring Stage 20C-FOX/5CATs Studio

 

2 ストーリと主要登場人物

 

ICE AGEは、本作で4作目となる人気アニメーションで制作は、Blue-Sky Studioです。毎回狂言まわし役で登場するドングリ大好きのリス「スクラット」が騒動をおこしてストーリが展開していきます。今回は、スクラッドが、氷河期のとある山の上でドングリを氷へ差し込んだことで山が割け地球のマントルまで落下し、マントル内でドングリを追いかけるうちに地球の地殻が壊れて5大陸ができるというイントロから物語が始まります。


ある氷河期の大陸に住んでいる平和な動物達、中でもマンモスの家族マニーと妻のエリーには、最愛の娘ピーチがいます。その周りには、群れを外れたトラのディエゴ、おとぼけなまけものシド ピーチの友達モグラのルイス等が暮らしています。そこへシドの家族が、年老いたグラウニーおばあさんをやっかい払いに預けにきます。グラウニーおばあちゃんは、周囲の冷たい視線にもめげずに元気者で、物語の最後では、みんなを救うことになるクジラのプレシャスというペットを海に飼っています。


平和な大地も大陸変動の影響で、氷河が崩落、大地が崩壊し始めます。

 崩壊した氷河がマンモス親子を襲い、マニーとトラのディエゴ、のんきなシドを乗せて、大海原へ流されます。大地は、大地震と崩壊が始まり、みんなは、安全な場所を求めて南の橋をめざして移動していきます。

 

一方海に流された3人。実際は、グラウニーおばあさんも木の穴で寝ていてそのまま一緒になり4人が陸地への帰還を試みます。

しかしその海には海賊キャプテン・ガット様が君臨。4人は海賊の捕虜となりますが、無事脱出。怒り心頭の海賊は、リベンジとばかり陸のマンモス親子を捕虜にしてリベンジ決戦となります。海賊有利、あわや全員降参か!という時にクジラのプレシャスが救援にきて無事全員、新天地で平和な暮らしを取り戻します。

平和と家族愛が、テーマ曲「We are family」に象徴されています。

 

3 作品の構成 起承転結とは?

アニメーション作品では、長編となる88分です。

   オープニング 2’03”

狂言回し役のドングリ大好きリス「スクラット」が山頂の氷河の中でドングリを食べようと氷河へ突き刺します。突然ひびが入り、大地の裂け目から地球の核へ落下、それでもなお、ドングリを捕まえようと格闘するうちにマントルに激突、その衝撃で地上の大陸は、現在の5大陸へと分裂します。そのひとつマンモス親子や愉快な動物達の暮らす大地にも異変がおきてしまいます。

   起 2231

マンモスの夫婦マニーとエリーを中心としてトラのディエゴ、おとぼけ者シド、その家族が預けていったやっかいなおばあさんグラウニー、マンモスの年頃の娘ピーチと彼女が憧れるイケメンマンモス イーサン、モグラの友人ルイスといった主要登場人物がここで紹介されます。

不吉な天変地異が起こる予感の後、地殻変動のため氷河が崩壊しその一片に乗ったマンモスのパパ マニーとディエゴ、シドが大地から海へと流されてしまいます。残された動物達は、安全な土地を求めて南の橋に大移動していきます。

ここからは、海へ流された3人の行動と、南へ避難していく動物達という2つのストーリが交互に登場する展開となります。海に投げ出された3人は、必死で大地へ戻ろうとしますが、彼らの行く手では、大嵐や大竜巻に遭遇、ハラハラどきどきのストーリ展開でリスナーを引きつけていきます。無事嵐を乗り越えた3人が一安心しているとなにやら不気味な音が氷山の木の穴から聞こえてきます。なんとあの厄介者のグラウニーおばあさんがいたのです。こうして海に流された仲間は4人となりました。

   承 5355

ドラマの展開を区切るシーンで必ず狂言回しのリス スクラットとドングリの展開が登場する構成です。承の冒頭もスクラットが登場し、氷山に乗って島へ到着、しかしそこには、白骨になったリスがいるだけです。海の底を見ると、なんとドングリが見えます。深海までもぐってドングリを見つけると中身は、ありません!しかしそこには、ドングリ王国「スクラットランティス」へたどり着く地図が書いてありました。

承の主役は、海賊キャプテン ガット一味の登場と海に流された4人の攻防です。

   転 6135

転のきっかけ部分にも同様にリスのスクラットが登場し、ここでは、木の葉に乗って島を脱出しようという短いカットが入ります。転の山場は、海に現れたセイレーンによる幻想シーンです。幻覚をおこしながら4人を海に沈めようとします。

   結 7700

この転換点でもリスのスクラットが登場。木の葉で海に飛んだ後、やはりセイレーンの幻覚に遭遇します。

一方南へ移動した動物達は、新天地へ行くための橋が崩落していることを見て失望してしまいます。そこへ海賊一味が乗り込み、マンモスの親子を人質にリベンジの戦いが開始。4人は、勝ち目のない戦いを強いられこれでもう最後かと覚悟したとき、厄介者だったグラウニーおばあさんのペット「プレシャス」が登場します。なんとおばあさんのペットというのは、巨大なクジラだったのです。クジラの活躍で海賊を撃退した4人が、新大陸を目指して動物たちと移動していきます。新天地での動物たちの平和な暮らしが戻ったのです。ここで家族愛というテーマが明確に表現されています。

エンドロールへいく最後のオチに、再びリスのスクラットが登場します。ドングリの地図をたよりにリスの楽園「スクラット・ランティス」を見つけたのです。そこには、食べきれないほどのドングリがありました。興奮したスクラットは、手当たり次第にドングリに手を出します、そして最後に手を出したのは、抜いては行けない「スクラット・ランティス」の止水栓でした。海へ沈没崩壊した「スクラット・ランティス」から再び地球の一角へ現れたスクラット。そこはなんと死の砂漠「デスバレー」でした。

   エンドロール 7900”

デスバレーの熱波で日干しになるスクラットのアップでストーリは終わり、家族愛「We are family」のテーマ曲に乗ってエンドロールが流れます。

では、それぞれのシーン毎に具体的なサウンドデザインをみてみましょう。本作は、アニメーションということもありスコアリング音楽の果たす役目が、重要なので特徴的な音楽部分に注目して、紹介します。

3−1 プレオープニング

Blue sky Studioのロゴとともに音楽が始まります。これはロゴを包むだけで27“と短いバンパーの役目をしています。

リスのスクラットがドングリを氷へ突き刺して山が半分に割け地球のマントルへ落下するシーンでは、効果音と音楽の役割分担の好例がありますので、そこを紹介します。まず山が割ける部分は、大胆なSEでドーンと山が割けると、低レベルのシンバル・クラッシュがはじまり、続いてティンパニそしてオーケストラへと編成が拡大していきます。効果音と音楽の棲み分けが効果的なデザイン例だと思います。落下の音楽に加えてスクラットの叫び声や壁を押さえるSEが全面でリバーブにより響きを付加しています。マントル内でドングリを追跡する度に地殻変動をおこしその衝撃SE と分裂する5大陸の風土に合わせた音楽がメインで流れています。最後にはスクラットが宇宙へはじき出され、そして再び氷塊の上へ着地し、タイトルが登場します。

ここでの音楽と着地の効果音の役割分担が、明快です。それは、氷塊へ着地する直前までは、軽快な音楽だけで進行していますが着地の直前で音楽は、カットアウト、そして着地音はSE のみという棲み分けが行われている点です。一般的にこうした場合、音楽も最後の着地までを表し、そのタイミングへシンバルやティンパニといった楽器をフィーチャーした楽曲となり、一方のSEでもそこへ着地音を用意して、Final MIXの段階で「ぶつかる」といったことが起きがちになります。本作では、他のシーンでもこうした役割分担が事前に検討されていることが良くわかります。

タイトルロゴになると音楽の背景で「大陸大移動」を表す大地の割けるSEが、360度のフライオーバー、サラウンドで展開します。

3−2 起 

これから起きる天変地異を予告する地響きや遠雷が不気味に響きます。主要登場人物の紹介と動きに合わせた音楽が主役で、アニメーションでは、よく使われるアクションにリンクして楽曲が展開していく「ミッキーマウス」と呼ぶ手法が使われています。

起の山場は、10‘10“に及ぶセグエ手法のアクション・スコアリングです。まずマンモスの家族の年頃の娘ピーチがイケメンマンモス イーサンに恋い心を持ち彼らの仲間が窪地でダンスをしているシーンへの展開は、遠くで聞こえるダンス音楽がリアLSから点音源で聞こえ、次にダンスシーンになると、これまでのオーケストラ編成から軽快なディスコ風のBGMになります。キック音には、大胆にLFEが使われテンポ感を強調しています。

山の上からシカがジャンプしてダンスに参加しようとするシーンでは、台詞がリアからフロントへフライオーバーし着地します。実写映像では、セリフは、殆どセンター定位であるのと異なりイーサングループの会話は、登場人物の定位に合わせ、細かく動きをつけています。

それを見つけた父のマニーが娘をとがめていると、突然大地が崩壊するアタック音がリアで始まり、大地の氷が割けていくSEがフロントL-C-Rと続きます。この後一瞬、間があってリアから単発でコロンと氷のかけらが転がります。レンジ感を出した良いデザイン例だといえます。次にオーケストラのストリングスが静かにフェードしはじめると大音響で大地の崩壊がはじまり、LFEを活用したSEと音楽が全面で山場を作っています。

マニーとディエゴ、シドの乗った氷塊が沖へ流されます。海のシーンでは、波音が大変控えめのアンビエンスとなっていますが、これは、その後次々とスコアリング音楽が登場するためだと思います。遠くで嵐雲が見え始めると、リアから突風がアクセントをつけ、フロントで遠雷と風が鳴り、これをきっかけにスペクタクル音楽が始まります。アクションやシークエンスのけじめにブラスセクションが登場しながら次々と音楽が展開します。渦のなかを進む3人の乗った氷と波は、大胆なLFEアタックを伴って突き進みますが、ついに竜巻に飲み込まれると3人の叫びは、360度サラウンドで回転し、天空へ放り出されます。ここでこれまでの大スペクタクル音楽は、一転して優しいコーラスに変わり、すぐに落下のカットとなると落下のSEと短いバンパー音楽でシーンを区切っています。

ここも落下直前まではコーラスとティンパニ音楽で、落下瞬間は大胆なLFEを使ったSEという棲み分けがなされています。展開の区切りを明確にサウンドで表現したデザイン例といえます。

シーンが変わって大陸側の動物大移動になると、それまでの大きなダイナミックスにコントラストをつけるように、移動のワイドショットにL-Rで移動のアンビエンス、Cに動物のざわめきが大変小さなレベルで表現されています。2つのシーンのメリハリをダイナミックレンジのコントラストで表した例といえます。大スペクタクルシーンで過激なレンジを使った後は、こうした耳をリセットする低レベルのサウンドというデザインが多く見られます。その小さいレベルを突き破るように突然マンモスの娘ピーチの目の前を大地滑りが海まで発生しますが、ここは、全面サラウンドでダイナミックスを十分使うことで再びレンジ感を強調しています。

3−3 承 

スクラットが黄金の地図をたよりに海中を歩行していると釣り針にかかり海賊船の帆先へ張り付きます。ここでも10‘44“に及ぶスコアリング音楽が展開します。スクラットが、後にドングリ王国を見つけるという伏線としてベートーベンの第九から歓喜の歌のフレーズがライトモチーフとして登場してきます。まずは、リスのスクラットがドングリの殻の内側へ書かれた黄金の島スクラット・ランティスの地図を見つける喜びから使われます。地図を見ながら海中を歩いていると突然釣り針にかかります。ここで音楽は、カッッとアウトしこの後海賊船の舳先へ張り付くまではSEが担当します。ここでもスクラットが舳先にベタンと張り付くと一瞬、間をおいて一緒に引き上がられたガラクタが落下する音がリアに定位します。氷のかけらの表現と同様のデザイン例です。次に再び音楽へ役目を渡し、映像がズームアウトしてここが何か?を示すと海賊船のきしみが加わり海賊キャプテン・ガッドの登場を表しています。海を偵察していた海賊キャプテン・ガッドの手下のトリが4人を見つけ一声鳴くタイミングで音楽は、不気味な予感を表す曲調に変化、4人のえさを見つけたと報告する船上ではリアから不気味なきしみが鳴っています。4人を捉える海賊の声は、リバーブ処理でサラウンドに定位し霧のなかでの海賊船というムードを表しています。単音でLFEを大胆に使ったのは、骨製のアンカーが海賊船から4人の乗った氷塊へ投げ込まれるSEに使用しています。

いよいよ攻撃となると、逆にリアからキャプテンの声が「かかれ!」と極端なONで定位しています。この表現は、本作で唯一ここだけです。そして捕虜になる4人の船上では、リアできしみが定位し、 キャプテン・ガッドを紹介するテーマ音楽がバンド編成で軽快に進行します。ボーカルは、海賊の手下のいる配置に合わせて定位が変化しています。4人の反撃では、刀や飛び道具が大胆にフライオーバーで表され、崩壊沈没までを音楽でテンポ良く包んでいき沈没後の海上波音は、このシーンで全面サラウンドを強調した波音になっています。11’18”のセグエを利用したもうひとつは、4人が海賊へリベンジし大陸へ戻る戦闘シーンで、タイミング良くアレンジが変化したスコアリングです。

3−4 転 

比較的短い転です。これまでと違って海の妖精セイレーンに化けた怪物がみんなを幻想によりおびき寄せ海に沈めて餌食にしようとします。セイレーンの声には、サラウンドリバーブが付加されています。この幻想シーンを7‘00“の音楽で包んでいます。

3−5 結 

ここでも14‘19“に及ぶスコアリング音楽が活躍します。

まずリスのスクラットがシーンの区切り役として登場しますが、ここでも歓喜の歌のライトモチーフが使われセイレーンがスクラットを幻覚に誘います。

無事船を奪還した4人がみんなの待つ大陸へ到着します。無事再会かと思うと海賊 キャプテン・ガッッドが娘ピーチと母エリーを人質にリベンジの戦いとなります。救出へ登場したのは、モグラのルイス。彼が投げたナイフで海賊を取り囲む氷が割れるシーンでは、氷の割ける音が360度のフライオーバーで表されます。部下のトラ・シーラを叱咤するキャプテン・ガッドの着地音にも大胆なレベルのLFEが使われています。

キャプテン・ガッッドとマンモス・マーニーの戦いのシーンでガッッドの刀がスローモーションでフロントからリアへ流れるカットで、音楽は無くなり、刀の空を切るSEのみが大胆な低域を伴ってフロントからリアへフライオーバー、その後再び音楽が復活という構成です。

4人の形成不利となったところでグラウニーおばあさんのペット クジラのプレシャスが登場し活躍します。ここもクジラの大きさを大胆なLFEを伴ったSEで強調。マンモスの娘ピーチもキャプテン ガッドを粉砕しますがここもフライオーバーでロープをジャンプしていく動きを表現しています。一件落着し、無事動物達を新大陸へとプレシャスが運びここでの新しい生活が始まります。

3−6 エピローグ 

リスのスクラットが再び登場。これまで伏線としてライトモチーフにしていた歓喜の歌が全面で使われ、スクラットのドングリ王国「スクラット・ランティス」発見と興奮を表現しています。しかし、興奮のあまり島の生命線である止水栓を抜いてしまい、王国は、水没、スクラットは、地球へ飲み込まれます。再び顔を出したところは?なんと灼熱のデスバレー。デスバレーのひび割れが全面サラウンドで展開します。エンドテーマ曲We are Familyが約2‘00流れ、エンドロールとなります。We are Familyというリフは、リアにも定位しリピートの効果を出したMIXに仕上がっています。

4デザイン上の特徴

● アニメーション作品では、一般的にシンプルなサウンドデザインが好まれるようで本作も単発のカッットエフェクトやサラウンドで動きをつけたフライオーバーの音移動が多くみられますが、重厚な音響空間は、構築していません。特にアンビエンスは、極端に控えめで、再生音レベルをかなり大きくしないと気づかないレベルとなっています。

● 台詞の定位は、画面定位に忠実でL-C-Rでの明確な定位に加えてL-C C-R間といった中間ファンタム定位を使用し人物の移動にも丁寧に定位の動きを付けています。台詞の加工でいえば、木の穴のなかの声、洞窟内 水中 ロングショットといった部分で響きを付加する程度です。基本は、ドライな台詞をしっかり聞かせるという方法でこれは、対象が成人にも子供達にも分かり易いという観点にあるからだと思います。

● LFEは、パンチや着地、噴火、地滑り、爆発といった素材で使われ、海賊キャプテン ガッドが手下のトラ シーラに警告をするシーンでは、彼の足音に大胆なLFEを付加し、その怖さを強調しています。スコアリング音楽全体も、控えめですが、LFEをわずかに使っています。● 高域素材としては、刀のこすれ、低域は地鳴りや渦巻き、地滑りといったLFE成分になります。

5音楽

音楽の占める割合は、実写作品より多くエンドクレジットロールの音楽を除いて79%、これも入れると88%になります。アニメ作品での音楽の役割がいかに多いかお分かりになると思います。  

作曲を担当したJohn Powellは、1963年生まれのイギリス人でこれまでのメジャー作品は、「シュレック」「ハッピーフィート」「リオ」等とクレジットされています。

ユニークなのは、音楽録音を20世紀FOXのスコアリングステージでShawn Murphyが行っていますが、MIX-DOWNは、ロスにある彼のスタジオ5 CAT STUDIOで行っています。

Home Studioとしては、規模の大きなStudioでメインルームでは、約30名までのストリングスも録音できるそうで天井には、そのためのDecca Treeもセットアップされています。






最近、MIX DOWNは、こうした作曲者のHOME STUDIOやスコアリングミキサーのHOME STUDIOといたところで行う例もみられますが、制作コストの影響でしょうか。それともじっくり好きに仕事ができるという観点からでしょうか。

本作のスコアリングのバランスは、とてもオーソドックスで最近のハリウッド映画で聞かれるような極端なダイナミックレンジの使い方をしていません。これは、Randy Thomがアニメーションでの台詞を重視したのか、観客の対象が成人ではないという点を考慮した結果ではなかと思います。



サラウンドの使い方も一部特定の楽器がリア定位という楽曲が数曲見られた程度でオーソドックスでした。

通常のオーケストラ編成の音楽以外で使われたのは、

   冒頭の大陸分割でそれぞれの風土を表すワールドミュージック。

   地球のマントルとはなにか?を紹介するジングル

●イケメンマンモス イーサンの仲間が踊っているシーンでのディスコ風バン

ド編成。ここでは、ディスコにふさわしくキックドラムには、大胆なLFEが付いています。

   キャプテン ガッッドのテーマ。軽快なアコーディオン等を使ったバンド編成

   本作のテーマ音楽We are Familyです。

6効果音 Foley

Foleyは、クレジットからSkywalker SoundFoley Stageで行われたと思います。Foley Artistは、Jana VanceDennie ThorpeとクレジットされFoleyは、大変丁寧で細かい音までカバーされています。効果音と音楽の棲み分けがしっかり検討されていますが、音楽の使用比率が高いので効果音のデザインをフィーチャーした見せ場は多くは、ありません。

効果音のデザインで力をいれたと見られるシーンは、

 

● 起のラストにある氷塊に乗った3人 マンモスのマニーとトラのディエゴ、なまけものシドが嵐の中へ巻き込まれ、渦巻に巻き込まれ、そして竜巻となり、天界へと押し上げられて浮揚しているシーン。3人の叫び声は、大胆に360度回転させています。


● 転での海賊キャプテン・ガッドとの戦闘シーン。


● 結の部分でのキャプテン・ガッドのリベンジと戦う4人というところで登場したクジラのプレシャスによる大反撃シーンです。ここでは、アクションのキューに同期した様々な音楽に絡まってタイミングよくカッットエフェクトとして単発のSEが刀、ロープ 着地 などアクション系SEが活躍します。

 

おわりに

今回は、アニメーションのサウンドデザイン例を紹介しました。アニメーションでは、ディズニーアニメに見られるような音楽主体のデザインが主流ですが、2004年のアカデミー受賞作「The Polar Express」に始まるRandy Thomや「WALLE-E」のBen Burtといった実写のサウンド.デザインを経験している人たちのアニメーションデザイン表現は、参考になると思います。それは全面音楽表現というだけでなく、必要なところは音楽以外の要素も活用し、その役割分担をしっかりわきまえたサウンドデザインにあるのではないかと思います。


参考資料編 BOOM BOX POSTというスタジオのオーナーであるKATE FINAN氏が執筆したアニメーションにおけるサウンド・デザインの歩みという資料がとても参考になりますので

抄訳して紹介します。

アニメーション・サウンド制作の歴史

 

 BY KATE FINAN, CO-OWNER OF BOOM BOX POST

 

SOUND ON PICTURE

 

1928年、ジャズシンガーが最初の「トーキー」でした。アニメーションスタジオは、画像上の音を同期させる可能性をすぐに受け入れました。その同じ年、ウォルトディズニースタジオは、同期されたサウンドトラックでアニメーションを世界に紹介する蒸気船ウィリーを制作しました。 「ミッキーマウス」という用語は、すぐに、綿密に振り付けられた画面上のアクションとサウンドの同義語になるようになりました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=BBgghnQF6E4&feature=emb_logo

 

THE WARNER BROS& DISNEY APPROACHES

 

1920年代と1930年代には、録音機器は非常に大きくて重いため、スタジオの外に持ち出すことはできませんでした。フィールドで効果音を録音することができなかったため、スタジオはアニメーションのサウンドを作成するための新しいアプローチを発明することを余儀なくされ以下のような2つの異なるアプローチが開発されました。

 

1つのアプローチでは、音楽録音セッション中にミュージシャンが効果音をシミュレートしました。これらは主にティンパニ、シンバル、ウッドブロックなどの打楽器で演奏されました。トーキ」以前は、ピットドラマーと呼ばれる打楽器奏者が映画館で打楽器の効果音を扱うために映画館に雇われていました。アニメーション映画にシンクロナイズドサウンドが含まれるようになると、スタジオは同じミュージシャンを雇ってスタジオ内で録音しました。ピットドラマーは、スライドホイッスル、口琴、電球の角、ブレーキドラムなど、彼らが一般的に使用するさまざまなアイテムを持ってきました。





 

2番目のアプローチは、スタジオで外界の音を再現できる複雑な効果音マシンを作成しました。





 

WARNER BROS ANIMATION: CARL STALLING & TREGOWETH BROWN

 

1930年、ワーナーブラザーススタジオは、作曲家のカールスターリングとサウンドエディターのトレゴウェスブラウンを雇いました。

 

カール・スターリングは、つま先立ちのキャラクターのためのピッツィカート・バイオリンや象の発声のためのトランペット・グリッサンドなどを採用することで、おどけたオーケストラ効果音のパイオニアとしてワーナー・ブラザースのアイコンとなりました。

 

一方、トレゴウェスブラウンは、ワーナーブラザースの実写映画セットのレコーディングの豊富なライブラリをアニメーションで使用する実験を開始しました。彼は、アニメのキャラクターが突然停止するときに車のスキッド音や、画面からズームアウトするキャラクターに飛んでいる複葉機の音を使用しワーナーブラザーズ・アニメーションの特徴を形成しました。

 

さらに、録音機器がよりコンパクトになるにつれて、ブラウンはテープレコーダーをスタジオからフィールドに持ち出し、現実の世界でサウンドを録音しこれらのサウンドを彼らのサウンドエフェクト・ライブラリに保存しました。

この編集方法はアニメーションにとってまったく新しいものでしたが、すぐにプロセスの重要な部分になりました。


Crash! Bang! Boom! The Wild Sounds of Treg Brown Part 1.  Click play to watch.  

https://www.youtube.com/watch?v=Xqaeds-wO4A&feature=emb_logo

Crash! Bang! Boom! The Wild Sounds of Treg Brown Part 2.  Click play to watch.

https://www.youtube.com/watch?v=x6IeTsHfcvU&feature=emb_logo

 

 

WALT DISNEY STUDIOS: JIMMY MACDONALD

 

https://www.youtube.com/watch?v=PtY-eYXrYTs

Hollywood Lost and Found

http://hollywoodlostandfound.net/tributes/macdonald/

 

https://soundworkscollection.com/post/imagineering

 

Tributes

 

ジム・マクドナルドの作り出した効果音を作品を​​聞いたことがない人を見つけるのは難しいでしょう。ディズニーの短編アニメーション、長編映画、またはディズニーパークなど、50年以上にわたって、ジミーはスタジオの特徴を効果音で作成しました。




 

ジェームズマクドナルドは、1906519日にスコットランドのダンディーで生まれ彼が、生後1か月のときに米国に来ました。フィラデルフィアで育った彼は、1927年にカリフォルニアに移る前に、工学の学位を取得しました。

ロサンゼルスでのエンジニアとしての仕事は、マンホールから落ちて怪我をしたことにより中断しその後、彼はミュージシャンとしての仕事を追求することを決心しました。 1934年にDollar.Steamship Linesのバンドでドラムとパーカッションを演奏している間、彼はミッキーマウスの漫画の音楽を録音するためにディズニースタジオに呼ばれました。彼の非の打ちどころのないタイミングと才能は、スタジオのサウンド部門を形成するための恒久的な地位を獲得しました。

 

彼の音楽トレーニングは、効果音「楽譜」を作成する方法を開拓するのに役立ちました。つまり、各音とその持続時間を表す音符を音楽スタッフに書きます。次に、ミュージカルの演奏者と同じようにビートを数えながら、これらの効果音を演奏します。多くの場合、投影された画像と同期してこれらの効果音を演奏します。

 

おそらく、ディズニーでのマクドナルドの作品の最もユニークな側面は、効果音を作るために使用される何百ものユニークなガジェットと小道具の作成でした。彼の驚くべき仕掛けは、電車から蚊まで何でも音を再現することができました。










 彼は、ハンドルで回転できるトラックに車輪を取り付けレールに乗っている電車の車を完璧に再現した「クラッキークラック」を作りました。この小道具は、電車が遠くの山を一周するときに、ディズニーランドのサンダーマウンテン鉄道で毎日聞くことができます。

 

ジミーは古い自動車から回収されたブレーキドラムを大いに利用し音階のある楽器にしました。ました。「私は何年も前に古い解体屋でそれらを拾いました」と彼はテレビのインタビューで説明しました。「それらはグリース、砂、泥で3インチの厚さでした...私はそれらをサンドブラストしてもらい、それから半音階の13音を得るためにそれらを調整しなければなりませんでした。チャイムが必要なときはいつでもそれらを使用しました。」それらは、「ピーターパン」のビッグベンのチャイム、「シンデレラ」の真夜中の時計のチャイムとして、数え切れないほどのディズニー映画で聞かれました。また、ディズニーパークのホーンテッドマンションで、ドゥームバギーに乗るときに毎日聞くことができます。





 

1977年、彼は引退し199121日金曜日心不全にて亡くなりました。

ディズニー在職中、マクドナルドは139本の長編映画と335本の短編映画で28,000を超える効果音を作成したと言われています。

 

追補 byスティーブ・リー

 

1941年、ウォルトディズニースタジオは、映画「ダンボ」で最初にセリフに音声処理を行いました。これは、パフォーマーの喉の両側に保持されたブリキ缶に似た外観の2つのシリンダーを備えた装置であるSonoBoxを使用して達成されました。録音されたサウンドはメタリックな音質でしたが、俳優のパフォーマンスも維持されていました。このデバイスの現代版はボコーダーです。

 

HANNA-BARBERA: GREG WATSON & PAT FOLEY

 

https://www.youtube.com/watch?v=QGYuOqA0pnw&feature=emb_logo

 

https://www.youtube.com/watch?v=CWgcizAgxOs

 

1950年代後半、テレビアニメーションの最前線にいたのはハンナ・バーベラでした。 1960年代に、ハンナバーベラのテレビシリーズ「原始家族フリントストーン」は、その時代のスタジオコメディテレビシリーズの人気のある側面であるライブスタジオの視聴者の感覚再現した笑いトラックの使用を開始しました。

 

1960年代を通じて、グレッグワトソンは、トレッグブラウンのワーナーブラザース・ライブラリに対応する漫画のサウンドライブラリを作成しました。ワトソンは、宇宙家族ジェットソン、ヨギベアショー、原始家族フリントストーンのサウンドの後に象徴的なサウンドを作成しました。パットフォーリーは1980年代までハンナバーベラのためにこの仕事を続けました。それらの共有された遺産-ハンナバーベラ・ライブラリは今日まで古典的な漫画の効果音の縮図のままです。

 

NEW TECHNOLOGY, BETTER SOUND

 

技術が進歩し続けるにつれて、音とアニメーションの両方がますますリアルになり、1990年代初頭のデジタルオーディオワークステーションの出現により、サウンドトラックの数は無制限になりました。

 

この技術の変化により、アニメーションサウンドは、サウンドを録音および編集する1人の作業から、すべて異なる責任を持つサウンド・プロフェッショナルのチームに割り当てられたタスクに変わる道が開かれました。

 

CONTEMPORARY SOUND DESIGN: A MIX OF METHODS 

 

現代のサウンド・チームは、多くの個人で構成されていますが、サウンドデザイナーの役割は、その創造的な重要性において衰えていません。


 ベンバートの活薬は、重要な例です。 2009年、長編映画「ウォーリー」での彼の作品は、彼と彼のチームにアカデミー音響編集賞を授与しました。サウンド・デザインへの彼のアプローチは、トレッグ・ブラウンとジム・マクドナルドの取り組みに関する彼の幅広い知識を大いに利用しています。


サウンド・デザインの現代的なコンセプトに合うように、バートは伝統的な録音技術、特注の仕掛け、デジタルで制作および操作された要素の組み合わせを採用して、ウォーリーのサウンドを作成しました。


Animation Sound Design: Ben Burtt Creates the Sounds for Wall-E (Part 1) 

Animation Sound Design: Ben Burtt Creates the Sounds for Wall-E (Part 2) 

 

A GREAT CONTRIBUTION TO THE ART OF ANIMATION

 

何年にもわたって、アニメーションのサウンドエディターまたはデザイナーの役割は大きく変化しました。パーカッショニストから機械エンジニア、デジタルエキスパートまで、しかし目的は常に同じです。つまり、聴衆の作品への共感を促進する、新しくて興味深いものを作成することです。それがピチカートのつま先であろうと、ウォーリーの忘れられないロボットのボーカルであろうと、サウンド・デザイナーは永年にわたってアニメーション芸術に大きく貢献してきました。




[ END ]