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October 2, 2011

第72回「源氏物語幻想交響絵巻・完全版」「惑星(プラネッツ) Ultimate Edition」サラウンド制作について 冨田勳

By.Mick Sawaguchi サラウンド寺子屋塾 主宰
日時:2011年07月10日
場所:株式会社ソナ 試聴室
講師:冨田勲
テーマ:「源氏物語幻想交響絵巻・完全版」「惑星(プラネッツ) Ultimate Edition」サラウンド制作について


沢口:2011年7月のサラウンド寺子屋は、冨田先生の新作ついて、制作の舞台裏なども含めて試聴とお話をいただきたいと思います。本日の内容にふさわしい素晴らしいサラウンド再生環境ということでソナさんの試聴室を提供して頂きました。いつも有難うございます。では冨田先生にじっくりとお話とデモをしていただきたいと思います。


冨田:冨田勲です。私の念願の「源氏物語」と「プラネッツ(惑星)」の両方の曲をアルバムにしてサラウンドにしてリリースをしたかったのですが、ご存知のようにレコード会社はサラウンドはもう取り上げないという傾向になっています。だから源氏物語のサラウンドが出来ましたと言って沢口さんのお宅までスーツケースに入れて、まだレコードになる前ですよね、Nuendoに入れて聴いてもらったのがもう二年位前です。それから色々レコード会社の人達に聞かせたのですが、プラネッツは、以前出したのも覚えている人もいるし、これは是非出したいけれどもサラウンドは追って考えましょうといった状況でした。私は、最初からサラウンドで出してくれる所ではなければ嫌だという事で時間が経っていましたが、最終的にDENON系のコロムビアがやりましょうということで発売になったといういきさつです。今レコード会社は歌モノが主体になっているのですが、インストゥルメンタルなアルバムというのは余程でないとCDでも取り上げてくれない。その上サラウンドという条件が付くとなおのこと。非常に難しい状態でこれは一体どういう現象なのかやっぱり皆さんで考えないとこのまま行きますとサラウンドっていうのは没落してしまう。過去の一時期の流行った一つの方式みたいな事で忘れられてしまうような気がしますので、今までサラウンドにかなりこだわってきた私としてもこれじゃちょっと忍びないものがありますので今日は、皆さんにも私はこういった形で作りましたというのをお聴き頂いて色々ご意見などを頂けるとありがたいと思っております。


私のサラウンドの音の組み方というのは、人為的なところが非常に強いと自分では思っています。映画館で聴かれる音というのは結構微妙な音でも、防音された部屋の中でお客さんに囲まれている。しかも料金払って来ているので払った分だけ吸収しようという気持ちがあるわけです。だから聴く気構えが違うのと、それだけに集中させるような場になっていますけれども、一般家庭ですと外に車も走るし子供が騒ぐ。そういう中でドラマが観られているという事を平均的な観られ方として考えなくてはいけないなと私の考えが自然になってしまった訳ですね。それはサラウンドにしたってそうだと思います。この(試聴室の)ような装置で聴いてくれる人っていうのはほとんどいない。勿論ホームシアターで凝った人達がいますからそういう層の人もいるのですが、ただその人達だけを相手にしていたらレコード会社は儲からない訳です。

● 源氏物語の制作

平安朝、このスピーカーに囲まれたこの中が1000年昔の平安朝時代の王宮の日々、庭園のある王宮である宴がそこで催されているというような雰囲気をこの場の中に創るという事。つまり音場演出ですね。「桜の季節、王宮の日々」という2番目の曲あるのですが、シチリキが後ろの方で聴こえてだんだんそれが移動してきて、結局正面のスピーカーの所まで来るというような移動もしています。これにはナレーション坂田美子さん。琵琶奏者でおられるのですが語り部もされるので、一般のナレーターにやってもらうよりもミュージシャンですから背景のオーケストラとの兼ね合いをよく考えて頂けるのではないかということでお願いしました。原作は中居和子先生、最近亡くなられましたけれども、京言葉で源氏物語を綴った本があるのですけれども、いわゆる京都の雰囲気。まあ雰囲気があるんですね。そういうような京都の雰囲気でポツリポツリと語り始めるところからこの音楽は、このサラウンドは始まるような雰囲気にしました。最初が源氏の誕生のところ。桐壺が本当のお母さんなんですけれど、帝にものすごく可愛がられる。可愛がられたんだけれども身分がそれほど高くないので周りからいじめられる。そうこうしているうちに神経衰弱になっちゃって出家をするのかな。まあ早くして亡くなっちゃうんですね。それで藤壺があとから来るお母さんなんですが、年は自分と近いので源氏は初恋の人が藤壺で。それが2曲目「桜の季節、王宮の日々」です。庭園で宴が行われていて源氏が藤壺に惚れたきっかけでもあるんですね。結局藤壺は源氏の子供を宿してしまう。これはひどいものですよ。帝が親父さんですよね。その同じ運命が女三の宮の時に自分が、葵上が早くして亡くなってしまったので二番目の后に女三の宮を迎えるのですが、実は同じ目に源氏も遭うんですね。非常に好色な柏木に寝取られてしまって。その生まれた子供を自分の子供として認知しなくてはいけないという。そこの部分も音楽にありますけれども、そこまでかけていますと日が暮れちゃうので、出だしの所を。このナレーションだけ聴いていると京言葉ってストレートに英語みたいに言わないから、あまり意味が分からないと思うのですが、ただ雰囲気が物凄くあると思います。じゃあ聴いてみましょう。


[ 視聴 ]

冨田:冒頭の部分を聴いて頂いた訳ですが、これは、深田さんに録音をお願いして愛知万博の前夜祭の時に名古屋フィルハーモニー交響楽団によって1時間半のものを、高橋恵子さんの朗読で、名古屋の芸術劇場でコンサートをやりました。その時はまだ曲そのものやオーケストレーションがあまりよく出来てなかったのと、ホールが非常にデッドでこういうものを演奏するにはあまり相応しくなかったという事もありまして。でもヒビノ音響さんと放送の方は深田さんがいい状態にしてくださいましたけれども。それから少し作り直して今回に至った訳です。5年前ですかね、愛知万博でしたから。これはナレーションの伴奏音楽ではないと思っているものですからもっと音楽と同化してオペラで言えばその中に出てくる歌を歌う歌手のようなつもりでナレーションをやってくれる人を探していたところ、やはり琵琶奏者の坂田美子さんはミュージシャンですからその辺はよく心得ておられると思うのと京言葉がまたなんとも言えない雰囲気を醸し出していますので非常に良かったかなと思っております。これはあの帝、源氏のお父さんですよね。この事実を知っていながら感情の表に一切出さないで、それで藤壺の生んだ子供を自分の子供として非常に可愛がって、勿論認知はしてるわけですね。この辺が大変大人というか。でも皇室のスキャンダルですね、これは。(一同笑い)大変ですよ。やっぱり紫式部の文才ですかね。400年前、織田信長の時代ですよね。ヨーロッパで色々な文豪が出ました。さらにその600年も昔。世界中に文豪なんていない頃にこれだけの小説を書くということは。まあ日本に文字が入ってきたその後だからこういう小説が書けたんでしょうが、世に不思議ですね。それで美しいんですよね。この後六条の御息所が源氏の二番目の后、藤壺は亡くなってしまうんですけれども、二番目の妃に女三の宮を迎えて、それでそこで源氏はかつて親父にした事と同じ事を柏木にされるわけですけれども。でもそれは自分の子供として認知しなくちゃいけない。それは絵巻に載っていますね、源氏が赤ん坊を抱いているところの有名な絵があるわけですけれども。
あの頃は印刷という技術はないから書き写した訳ですけれども、書き写す人もストーリーが面白いからストーリーに引きづられながら模写と言うんですか。書き写したものが何冊もあってそれを抑えたところで今で言うYouTubeみたいなもので。こっちを抑えた所でこっちが残っていればそっから出てきちゃうという所があって、おそらく抑えきれなかったんじゃないかと勝手に想像するわけです。


次にお聴かせするのは「生霊」。これは葵上に六条の御息所という、いわば愛人ですよね、わかりやすく言えばそういったものです。葵上は本妻で、六条の御息所が愛人ですね。普段から引け目を感じている上にそういうしぐさを葵上は六条の御息所にされるので。だけれどプライド高いでんですよね、六条の御息所っていうのは。自分は教養のある人間だと。そういう関係でずっと続いてきたのが葵の行列、これ今でもありますけれども光源氏が馬に乗ってその行列に加わるという晴れ姿。これを六条の御息所は一目見たいと、愛しい源氏の晴れ姿なので一目見たいというので早くから牛舎でお供を連れて良い場所で待っていたわけです。そしたら三々五々、色々な牛舎が来て賑やかになってきたわけですが。その最後に葵上のお妃の行列がドーンときて。こともあろうに六条の御息所の牛舎の前でふたをしちゃったわけですね。むしろ奥のほうに追いやってしまって家来同士の喧嘩になって、これが有名な車争いですけれども。一昔前の花火見物の車の良い所を最初から陣取っていたのに、後から来て見えなくしちゃったみたいな。今は、係りがいて、そうゆうところには車を入れないし、駐車場には係がいてそうゆうことはないですが、昔は結構あったんですね、多摩川の花火大会なんかも。(一同笑い)それと似たようなことなんだと思うんですよ。後から来て何だって言うこととですが、多勢に無勢ですし、向こうは位も上ですし、家来の数も違いますからね。この車争い、互いの家来が喧嘩している有名な絵巻があります。ただ、あのころの源氏物語で気がつく点は、刀で相手を傷づけた話が一箇所も出てこないです。車争いのとき、どうやっていたのか調べると、木の棍棒なんですね。それで殴りあったんですね。危険な物を、持ち歩かない時代だったんですね。ところが、腕力は相手の方があり、牛車を追いやり柄をおられちゃって、ひっくり返され、公衆の面前で大恥をかかされたわけです。これがねちょっと読んでて、六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)も、ちょっとこれは収まり付かなかったと思うんです。また、腹が立ったのが、源氏の君がその前を素知らぬ顔をして通りすぎて行ったとあります。でも、収まりきれなくて、ついに生霊となって葵の上の寝室で殺しちゃうわけです。そうゆうシーンでも、なんか美しいんですね。これはいったい何なんですかね。ここは、サラウンドならではの、エフェクトをしたいと思って、坂田美子の建前のほうのナレーションが前の方から出ます。ようするに、一生懸命自分でこらえている、相手を憎むことなんてはしたないと、一生懸命こらえているんだけれども、自分の生霊、魂が出ていってしまうんですね。「抑えきれまへん」と言ってますけれども。それで、本音のほうが後ろのスピーカーから出てきます。「髪の毛をつかんで引きずり回し、打ちのめし」これが同じ坂田さんです。優しい顔をした人なんですよね。それが、、、お聴きになった方が下手な解説よりいいですね。(一同笑い)それでは、「生霊」のところをお願いします。


[ 試聴 ]

これが、六条御息所の生霊のところです。このような、描き方をしてみました。もっと、後ろから出る声を天井から聞かせるために、全部同位相にして、頭の中から聞こえるようにした方がいいのかとか、色々考えましたが、結局後ろから出したほうが、前に対して後ろですね、この方が効果があるかと、こうゆう形にしました。それから、もう一つ、六条御息所が死んだあとに死霊となって、紫の上は正式な后にはなれなっかのですが、一番長く源氏仕えて、このストーリーで一番長く登場しているんですね。その、紫の上が亡くなったわけです。それは、源氏が女三宮を新し后としてむかえ、そこから急に衰弱してしまった、ようするに、今まで長く源氏に仕えてきたのですが、これで自分のやることは無くなったという思いになったのではないかと想像するんですが。大変な仕打ちを源氏から受けているんです。仕打ちというのは読者から見てで、源氏は感じていないんですね。それを、耐えに耐えて耐えてしたのが紫の上だと思うんですが、紫の上が亡くなってから源氏がそれに気づくところが出てくるわけです。雪の降る日なんですけども、鳥辺野というところが今でも京都にあるんだそうですけれども、そこが葬儀場です。非常に錆びれた所で、その時、源氏が紫の上を思い出すわけです。紫の上は10歳のときに、雀を逃がしたと泣きじゃくる子、まだ、藤壺の面影が紫の上にあり、その子をみそめて、どうにも誘拐して。今から思うとひどい話なんですね。自分の理想の妻に育て上げるんだと、でも身分からして后にはなれなっかた。そこのところで、ずーと源氏に仕えたきた。そこで、源氏のご乱行はひどいものですよ。いろいろあったんだけれども、結局は紫の上をこころの拠り所にしたようなところがあって、それで、葬儀の後に源氏が、ガックリときちゃって、それからどんどんどんどん年老いちゃって、しまいに亡くなるわけです。その思い出の中の一つに、女三宮、后の所へ行って泊まるわけですけれども、結局は紫の上の所へ、ときどき忍び帰って来るわけですね。そのときに、雪の朝に、朝早く紫の上の玄関の前で、雪が降っているんだけれども、なんが入りづらい。そうやって立っていたら、紫の上が察して、迎え入れてくれた。もう、何事もなかったように源氏を迎え入れたんだけれども、その(紫の上)袖を見たら涙で濡れていたと言う部分があるんです。結局のところ、この物語は、死霊になって六条御息所が紫の上を襲って死んだと言うふうな書き方をしているんですが。葵上の場合は理解できるんですが、なんで紫の上なのか、私もよく分からないですが。それでは、「御息所の死霊」のところをお願いします。シンセサイザーで音を作った部分です。


[ 試聴 ]

● 質問コーナー

この後まだ終曲「平家の世へ」までありますが、今日は、「プラネッツ」もありますので源氏物語はこのあたりまでで、何かご質問はありますか?

Q:初演のときと比べて、シンセサイザーとか楽器構成が違いますか?
冨田:あの時は、コーラスを呼ぶことができなかたので、キーボードでコーラスの部分を篠田君が演奏したんですが、そんな程度(の違い)です。それと、生霊の部分、これ名古屋でやった場合そうなんですけれども、やはりどうしても、前もって用意する必要があって、それはメモリーに入れて、篠田くんが押さえると、あらかじめ作ったナレーションが後ろから聞こえると。今回は、全くシンセサイザーは入っていません。東京交響楽団と和楽器奏者だけですね。

Q:ナレーションと音で表現された部分の構成は、どう考えましたか?
冨田:ナレーションは音楽効果の一部だと思っています。ただ、やはり言葉として中井 和子さんの人格権もありますから、原作者とよく話をして、打ち合わせてやりました。だから、原作者も納得の上で、一つの流れを作ったわけですね。

Q:明珍火箸のさらさらと雪が舞っている音は、どうやって録られたんですか?
冨田:あれは、5人スタジオの中で、4本ばちの、だから一人8本ですね両手で持つから、こうやって持つとチリンチリンと、あと5人同じように。

Q:マイクアレンジどのような方法ですか?すごく、綺麗に聞こえたので。
冨田:マイクはどうやって録ったかな。いい加減だったと思うんですが。(一同笑い)さらさらと雪の降る、冷たいんだけれども、その中に物語性を持ったような感じの音のつもりで入れたんですがね。この前の名古屋の時も明珍火箸を入れましたし、結構、毎回登場します。明珍火箸は今でも、姫路城の売店に行くと売っていますよ。これは鋳型に流しこんで作るんではなく、出雲の砂鉄が棒みたいなやつを、叩いて丸くしているんですね。本当に昔からの鍛冶屋の工房ですね。それを、今だにやり続けている。息子さんが、その後を継いで、明珍さんはすごく喜んでいました。息子さんが3人おられて、その内の一人が、ハリウッドのラストサムライの殺陣(たて)をやったんですね。すごい人がいるわけです。

Q:この作品でサラウンド的に、一番こだわたことはありますが?
冨田:とくに、この次のプラネッツなんかは、実時間で演奏していないわけで、組み立てて行く感じですね。この、源氏物語も、アバコスタジオで、2部屋使いセパレートして録ったんです。となりの部屋でも、ヘッドフォンから音が聞こえ、なおかつ、テレビモニターで指揮者の様子がわかる形でセパレートして(パートごとに)録ります。なので、結局その後の作業は、私がシンセサイザーを使って、いろいろな音源を、最終的にサラウンドミックスダウンするのと同じような手法で作りました。基本的には、センタースピーカーから、ナレーションが出てきますが、あまりセンタースピーカーは信用しいないんです。(一同笑い)それで、サラウンドでベストポジションはここでよと、テープが床に貼ってあって、ここで聞いてい下さい、ここが一番良く聞こえるんですよと。これだから、(サラウンドが)普及しないんだと思うんです。それで、すごい装置をそろえたと、買った人は思っているんですよ。でも、)ベストポジションがそれしかない、ってゆうのは。やっぱり、僕はテレビと同じように、家族でみんなで聞くとか、そうゆうふうでないと普及しないと思うんです。僕は基本的には、4面ステレオです。特に、プラネッツの場合は宇宙ですから、前後や横もないわけで4面ステレオ、源氏物語もそうです。やはり、ナレーションとか、前らしき所にくるものは、ときどき、真ん中にきています。サラウンドでしか出ない効果を、一般の方にも楽しんで頂きたいんです。

交響詩ジャングル大帝、これは私が指導します尚美学園(大学大学院・冨田勲研究室)の研究生たちが、学校の予算でプロのオーケストラ、日本フィルハーモニー交響楽団と藤岡幸夫さんの指揮で、アバコスタジオで、自分たちが現場を持って、サラウンドに組んだんです。


どうやってサラウンドに組むかとなったときに、そのとき私が言ったのは、コンサートホールの音は、コンサートホールに行かないと聞けないんじゃないか、オーディオで聞く場合は、そのの特質を生かした音でないと意味が無いじゃないか。さっきお話しした、音までは、バイロイトのワーグナーが作った劇場にしても、ドレスデンにしても、すごい響きがすると思うんですが、それが収まったとしても、聞く側がちゃんとした装置で聞いてくれないと、少なくともコンサートホールと同じ音量で聞いて、それこベストポジションで聞いてもらえないと、効果がでないと思ったわけです。それで、いっそのこと一般的にするならば、子供たちがどう聞くか、尚美学園の近くに小学校がありますから、ちょうど夏休みでしたので理解のある先生にお願いして、パイオニアの簡易サラウンドセットを持って行って、これが結構いい音するんですね、ウーファーも付いて。そのときは、ハードディスク(DAW)から再生し、子供たちの反応を見ながら作ったんです。やはり、サラウンドが低迷してきた、放送も少なくなっていますし、レコード会社もほとんど取り上げてくれない、今回、本当に苦労したんです。なぜ、このような状況になったかと、サラウンドって言うとみんな口をそろえて、何百万もするようなスピーカーをそろえなきゃ本当の効果がでないのではと。結線が素人にはめんどうだとか。なんとなく、サラウンドが聞いてみたいと思っても、厄介なんじゃないかと思うのが、一般的の認識になってしまっているのではないでしょうか。それで、サラウンドもコンビニ感覚でやらないと、コンビニで子供とお母さん方を無視したものは売れませんよね。だから、まず子供が喜ぶ、お母さん方も喜ぶと言う部分も、もちろんそればっかりで困るんですが、そう言う部分も必要なんじゃないかと。

● 次世代のクリエータについて

僕も5歳の頃、北京の天壇公園で聞いた、不思議な音の聞こえ方、記憶に残っていて、いまこう言う仕事をするようになったのは、父親が連れて行ってくれて、それがきっかけじゃないかと思うんです。そうすると、サラウンド子供たちが興味を持って、サラウンドって素晴らしいと言う気持ちを持てば、彼らが成長してもっと凄いものを聞いてみたいとなります。それをやらないで、いきなり子供たちを無視して、放送局もレコード会社も、今のような結果になりますよね。なので私も、尚美学園、神戸電子専門学校ここがまた熱心でやる気のある人たちが多く、名古屋芸術大学でもやりました。ようするに、どこまでが録音で、どこまでが作曲と言う区分けが、いろいろな機材が発達して安くなり多様化してきたので、区分けが付きにくくなりました。逆に才能のある人間は、非常に発揮できる時代になってきたと思います。学生たちにも、今何を持って作曲と言うのか、僕らの頃は、和声学、対位法、楽式論をやって、おそらくハイドンあたりが築いた理論を今だに音楽学校で教えていますし、それは、無難だからで(一同笑い)、いや僕は否定していませんし、基礎として大事だと思います。でも、逆は真ならずで、モーツァルト達がそれで素晴らしい曲を書いたからと言って、それで名曲が書けると勘違いする人たちがいると。そこに、自分のクリエイティブの独自性をどんどん出して行かないと。それをやるには、今がチャンスじゃないかと思うんです。と言うのは、就職先がないと、作曲ですとゲーム音楽、ゲーム会社とは契約があるが他にあまりない。録音も、今どんどん録音スタジオがなくなっているから、就職先がないと。いま、アメーバのように訳がわからなくなっていますでしょ。今、そんな時代じゃないですか、全てに対して。だけどしたたかに自分の生きる方法を見つけて、生きていく。自分でツボを捕まえてそこに住むこと、自分自身のマネージメントもしなくてはなりません。それには、腕があるからと、通り一辺倒に売り込んでも仕事は来ませんからね。仕事はたまに、一回や2回は来ますが、それが一生のしごとにはなりません。どうですか?僕は最近の仕事をみてそう思うんです。だから、サラウンドだってはっきりしない。最終的には、多く層のリスナーの方が面白いと思ってくれることが結局正解かな。これは作曲も編曲も演奏もそうです。それはこうゆうものだと定義がこれだと定められないような時代で、だから面白いだと思うんです。

冨田:それじゃあプラネッツの方を。これはもう完全なアニメ、漫画です。前作と多少形が変えてあります。RolandのJUPITER-80などの音が入ってかなり音がしっかりしてきました。1曲目からいきます。


[ 視聴 ]

冨田:その次はマーキュリー。3曲目です。

[ 視聴 ]

冨田:これはMOOGシンセサイザーの素材音を76cm/sのスピードで録っておいた訳です。これは非常にややこしい事をやっていますのでNuendoで何年か前に組み直しました。そのNuendoには96kHz対応とあるのですが、あちこちややこしい事をやるとどうも対応できなくなってしまうようで、それで源氏の時は48kHzにした訳です。本当は(源氏物語と)その逆のほうが良かったなと思っているんです。というのはMOOGシンセサイザーというのは原音との比較がないわけですよね、だからやっぱり楽器や自然の収録は96kHzがいいと思います。シンセサイザーの場合は比較がない訳ですよ。96kHzにしたから音が良くなるという物ではなし、やっぱり聴いて音を自分で判断するわけですから、判断した時のその時の状態でいいのです。それと今の宇宙との交信は、よく宇宙船で地上の小学生とかとやりとりをする時の音がもう本当にすぐそこで喋っているような、あるいはラジオと同じようなクオリティで会話ができるのでつまらなくなってきています。(一同笑い)やっぱりあのころのトランシーバーの音とか短波放送の音というのは歴史に残る音なのでやっぱり使いたいなと思って僕はそのまま使ってます。それからロケットの飛び立つところは東名高速で録りました。マイクを風に当てるとバリバリバリという音がしますよね。あの頃のロケットの発射の音はだいたい歪んでいたんです。歪むと逆に迫力があるのでどこのテレビ局もそういう録り方をしたのかもしれないですね。そんな風にシンセサイザーだけでなくて色々やりました。だから音の素材になるものはなんでもなれという感じで。その後のJUPITERなんですが、これは有名なメロディーで、だいたい今まではJUPITERのメロディーまでくると針を上げちゃって、その後が聞かれないんです。実はライナーノーツにも書きましたけれど、糸川さんに対するレクイエムの気持ちがその後にあるのでその後も聞いて頂きたいなと僕は思います。

● 糸川英夫さんの思いで

糸川英夫さんになんで僕が興味を示したかというと、僕が小学校5年生の時にあの人はハヤブサ戦闘機というのを設計しました。僕はその設計者にものすごく関心がいきました。今回の川口淳一郎先生のはやぶさはリハーサルもなしに小惑星イトカワの粒子を地球へ持ち帰って来ました。やっぱり運のいい人もいるんですね。非常にびっくりしたのは、このプラネッツをカセットに入れて貝谷バレエ団に売り込んだんですよ。もしよかったらバレエに使ってくれと。まだレコード会社が取り上げると言ってなかった頃で。そしたら貝谷八百子さんから電話が掛かってきて、今度帝劇で貝谷バレエ団の会をやるんですがその時に是非使わせてくださいと言われた。それで実はご存知でしょうけど糸川博士がうちのバレエ団に入団されて俺に踊らせろとおっしゃるんですよ、僕にとっては願ってもないことでした。貝谷さんはそれほど糸川博士の事を評価されてなかったのか、わからなかったのか、有名な科学者だからと優遇せず上から5クラス位下のクラスに入れたんです。それでも糸川先生は一生懸命になって、足が10センチ上がるようになったとか耳まで届くようになったとか、中学生や高校生のまだ習いたての子達と一緒のクラスですよ。そのクラスで僕のプラネッツを聞いたそうです。そしたら是非俺に踊らせろと。JUPITERの後のエマージェンシーじみた所があってそこで時計のような音が聞こえてくる、そこは土星に入る前の、僕が一番つまらない所じゃないかなと思うところをわざわざ糸川さんが選ばれて、あそこを俺がやりたいと。そしてそこに盲目の科学者というタイトルを付けて欲しいと言うわけですよ。いや、僕は小学校5年生の時の空を飛んだハヤブサのイメージがあるんで…。糸川さんに最初にお会いしたのが帝劇の楽屋だったんです。レコードの中に糸川さんが踊られてる写真が載っているんですが、盲目の科学者とはいっても、成功しない科学者で乞食の格好です。それを踊られたわけです。これがかの人かという感じがしました。小惑星にイトカワという名前が付いたというのは、日本だけでなく世界的に糸川さんの業績が認められたからです。じゃあそのJUPITERを。エマージェンシーの後に惑星とかハヤブサという部分があります。これはやっぱり糸川さんのレクイエムの意味もありますけども、やっぱり夢ですね。

[ 視聴 ]

この後も旅は続くわけですけでども、長くなりますので今日はこのへんで。このあと原作では天王星にいく、当時は遙か彼方離れたところの星というイメージだったんでしょうけれど、(さらに遠い)冥王星なんかが発見されているんですが。最近冥王星は太陽系の一族ではないという話まで出てきて。まあいずれにしてもこの後も遥か遠くを描いているわけです。これくらいで終わらせていただきますけれども。なにかご質問ありましたらどうぞ。

● 質問コーナー

Q:シンセサイザーで大変表情豊かに演奏されていたのを聴いて感動しました。表情豊かにするというのでヒューマンインターフェースが非常に重要じゃないかと思うのですが、フェーダーやツマミやエクスプレッション・ペダルなど、このように表情豊かに演奏されるために冨田さんはどのようにされたのでしょうか?
冨田:実はずいぶん早くからコンピュミックス、クォードエイト、それはただボリュームだけでしたけれども、それをメインに使っていました。ペダルだとどうしてもレベルが曖昧になってしまうんですよね。 コンピュミックスだとレベルがはっきりしますので。ただしアナログ・テープレコーダーの1チャンネルはそのデータで、「ケロケロケロケロ・・・」という音でとられてしまうので。ところがアップデートして直したいなと思うときにはもう1チャンネルいるわけですね。となりのチャンネルに入れながらそれを修正したり、他とのレベルを合わせるにも何度も何度も入れて。でそれを入れておくとタイミングが遅くなっていくんですね、なぜかわからないのですが。例えば妙なノイズがあったところを一瞬引っ込めたいとき、うまくいったと思って何回もやっていると隠していたものがずれて出てきてしまったり。なので何度もアップデートは出来なかったですが それを使ったためにかなり正確に行ったと思います。まあ今のPro ToolsやNuendoはオートメーションを書いたらその通りに再現してくれますがそんなものはなかったですからね。いやあ苦労しましたよ、思い出すのももう。(笑い)ひどかったですよ。仕事部屋に寝袋を持って行って、とにかく睡眠時間はなかったです。それで海岸で日光浴するような木の椅子を持ち込んで寝るんですよ。それで寝ていると2時間くらい経つと体が痛くなってくるんです。それが目覚ましになって起きて次をやるっていう。だけど不思議なのは病気しなかったことです。(一同笑い)

Q:プラネットはマルチの音源を持っていらしたとおっしゃっていましたが?
冨田:付け加えたのもずいぶんありますが、今回は全てNuendoで一からミキシングし直しました。そのまま使えるところはそのまま使いましたが音のクオリティは良くなっているはずです。

Q:かつてクォードエイトでやられていたフェーダーワーク、例えばダイナミクスの盛り上がり方とか そういうのも今回はマウスでやられたのですか?
冨田:そうです。もう一つはマウスだとジグザグしてしまうので不安感があるので、数字で入力しています。あれはもう確実ですよね。無機的のようには思えますがそうとう細かく出来ますよね。それから篳篥のようなもの、この作品は実際の篳篥を使っていますけれども、それ的な表現をする場合に、ピッチコントロールのコントロールを書いています。どこの数字のところで半音になるとか、一音になるとか、そういう表を作ってそれに基づいてやっています。でも大変な手間です!でこれはやっぱり自分でやらないとだめですね。
他の分野の場合はもちろん学生たちと一緒にやる場合もありますけど、この「源氏」と「プラネッツ」は自分だけでやってみたいと。それとレコード会社がもう経済的に、売れる歌ものは一生懸命やるけれどもこういうインストゥルメンタルっていうのは、しかも新しいものはほとんど取り上げなくなりましたよね。本当に今回苦労しました。これからはサラウンドってドバーッと前に出るようにしましょうよみなさんで。どこのレコード会社も「(サラウンドと)表記すると売れなくなる」って言うんですよね。その売れなくなった原因というのはつくる方にも責任はありますからね、放送もどんどん無くなってしまって、なぜですかね?

Q:音を耳元で聴こえるようにするサラウンドのコツはありますか?
冨田:それは愛・地球博の前夜祭コンサートの時は、ローランドのRSSをつかってやっていました。その時僕は指揮をしていたのでその場にはいられなかったのですが、RSSをいくつも使って位相の関係でやって席にいた人が生霊が自分の頬を撫でていったという方がいたようです。ただそれも全員じゃないんですよね。干渉が起きたひとだけなるという。そういう人がいるとすごいことになったということになりますよね。個人的にはあまり積極的にはやってない手法ですが、やってみたいなとは思います。スピーカーのあるところから近づいてくるというのはRSSなどを使う以外ないのではないですかね?あれだと映像の3Dとも合うような気がします。ただ視聴ポジションが限られてしまうのがどうでしょうかね。一人で楽しむ分にはいいと思います。

Q:僕も「プラネッツ」をレコードで聴いてきまして、完璧とずっと思ってきたわけなのですが、今回ローランドのJUPITER-80などで差し替えがあったじゃないですか。それは当時は(今回差し替えた)その音をイメージされていたのですか?
冨田:当時は技術的な面で仕方が無いと思ってOKしていた部分があります。というのは低音が、MOOGシンセサイザーが低音にいくほど芯がないんですよね。例えば鋸歯状波を元にベースみたいな動きをした場合、もちろん効果的に使っているミュージシャンもいますが、今回のあの低音はMOOGじゃ出ないんですよ。なぜかというと低音といっても一周期が複雑な波形になっているのが、鋸歯状波だと一発だけ。あれが低い音にいくにつれてペカペカな音になってしまう。それで僕はアナログシーケンサーでこういう風にして、コントロールインプットが1ボルト/オクターブ、なんでスピードをそんな風に手間かかるのにモーグさんが設計したのかわかりませんが、つまりキーボードで演奏したようにピッチが変わるのです、周期が。あれで低音を作ると充実した音になるので。だから僕の今まで作ってきた物もMOOGシンセサイザーで作った割には低音がしっかりしている部分はそれなんだけれども、やっぱり満足な低音じゃないんですよね。特にパイプオルガンの低音なんていうのは出なかったですね、リバーブかけて広いホールで出したような効果は試行錯誤やりましたがシーケンサーの繰り返しを使っても出なくて。今回JUPITER-80を使ってはじめてまあこういう物かなと。そういうことが随所にありますね。昔は機材がこんなに並んで一つしか効果はありませんでしたが、今はJUPITER-80ひとつとっても色々出来ますからね。面白いですよ。これからの若い人達は幸せですよね。あれはアナログと、必要なところはデジタルにして。あれは工夫すると結構な表情が出てくると思いますよ。人間の声が歌っているようなのも出せるでしょう、下手な歌手呼んできてスキャットさせるよりも全然。(笑い)

沢口:どうもありがとうございました。源氏物語幻想交響絵巻完全版とプラネッツのUltimate Editionを聴きながらの冨田さんのサラウンド制作に対する変わらぬ情熱を、熱く受け止めたことと思います。是非次ぎにつなげていく責任が我々には、あるということです。冨田先生そしてスタジオを提供していただきましたソナの皆さんに感謝申し上げます。(一同拍手)

[関連リンク]
交響詩ジャングル大帝のサラウンド制作と大学の取り組み 冨田勳、野尻修平
ISAO TOMITA PROJECT
源氏物語幻想交響絵巻 完全版 [Hybrid SACD]
プラネッツ Ultimate Edition [Hybrid SACD]

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「サラウンド入門」は実践的な解説書です

下書き担当サラウンド寺子屋サポーター:Go HaseGawatomomiMUSHnemoto, Tsubasa Sato and NSSJP

December 15, 2010

第69回サラウンド塾 3D映像とサラウンド音響 Part.2 WFS技術 原理とその応用 Max Holtmann


By. Mick Sawaguchi
日時:2010年12月15日
場所:タックシステムショールーム
講師:Max Holtmann (RMEテクニカルアドバイザー)
テーマ:3D映像とサラウンド音響 Part.2 WFS技術 原理とその応用

* 2010-12-15のUSTREAMアーカイブを合わせてご覧ください。


沢口:2010年12月でサラウンド寺子屋塾は69回目になりました。先月と今月で3Dの映像とサラウンドはどういう接点があるのかをテーマにしました。先月はIMAGICAさんの試写室をお借りをして、実際に最近の3Dとサラウンドの作品を体験し、今回は、RME社のエンジニアの方が来日するということで、ヨーロッパで始まっているWave Field Synthesisというテクニックを日本に紹介してくれないかという事で、快く一日我々の為に時間を割いて頂きました。興味のあるテーマなので我が家では入りきれないと思い、TACセミナー共催という形で山本さんにご協力もいただきました。また今回寺子屋の様子をU-STREAMでライブ配信する試みも行いますので各地の皆さんは、楽しみにしてください。



Wave Field Synthesis(WFS)というプロジェクトは、ヨーロッパにEUREKAというプロジェクトがありましてこれは国家のプロジェクトで、カルーソというコード名がついているプロジェクトで、長い間WFSが研究をされてきてそれが実機として世の中に出すところまできました。
私は2年前にアメリカのTodd-AOという大きなダビングステージが3Dのファイナルダビングをする為のダビングステージを作ったというニュースを読み、写真を見たら壁全面にスピーカーが埋まっていてこれにWFSという技術が使われていてそれをインストールする機材面はRMEがやっているということでした。

今回は、是非そのWFSがどういう原理で我々が日頃制作をしている5.1chの方法とどういう違いがあるのか、メリットデメリットもあると思いますので、そういうところを講師のMax Holtmannさんからお話して頂けたら良いなと思います。それではMaxさんの紹介をシンタックスジャパンの村井さんからお願いします。


村井:シンタックスジャパンの村井です。講師役のMAXは、ビールで有名なミュンヘンのすぐ横ハイムヒューゼンという所にあるシンタックス本社で、ジュニアプロダクトマネージャーをしております。現在は、香港OFFICEで業務を行っています。いくつの専門用語や数学の方程式も出てくるので、10年ぶりという方もおられるかもしれませんけれども、是非お楽しみ下さい。
今年のフランクフルトミュージックメッセで、後ほどご説明致します、IOSONO社もsonic emotion社もブースを出しておりまして、Maxが卒業をしましたドイツの大学、デトモルト大学、そこも先ほど申し上げたEUREKAの1つのリサーチセンターになっておりまして、ほかにはベルリンの工科大学もそうですし、オランダとか、フランスとかいくつかあるように思うのですけれども、ヨーロピアンコミュニティ自身が新しい産業育成ということで投資をしてその結果がようやくここに巡ってきたのが、このWFSです。昨今の映像は3D映像が出てきている訳ですけれども、実際に映画館に行ってもスイートスポットは限られているのでなかなか端の席の人は良いかたちで楽しむ事が出来ない。どうしたら良いのかという事の一つのソリューションとしてWFSが注目されており、RMEはどちらかというと裏方でお手伝いをしております。WFS自身は1チャンネルあたり大量のスピーカーを使います。4面使いますから平均して128本とか500本とか、大きいところは720本とか使いますのでそういうところでご承知のMADIという技術を使いお手伝いしております。ではMAXよろしくです。

Max:本日はWFSについてお話をしたいと思います。私がいたデトモルト大学では2つのWFSシステムが入っています。ここでは、それをどのように使うかという研究を行っています。
本日のメニューですが、まず3D音響の単語とその背景について少しお話しをします。
その次に実際に使われている導入事例や、どうやってミックスを行うのかをお話しします。
最後に今後の見解などをお話しします。

[3D Sounds]
まず3D音響の実現方法にいくつかのアプローチがあります。
● Wave Field Synthesis(WFS)
● Higher Order Ambisonics(HOA)Multipoint Approachと呼ばれるもので5.1ch、7.1ch、22.2chのものがあります。
● Perceptually motivated approach。ここに書かれているのがVector Base Amplitude Panning(VBAP)とDirectional Audio Coding(DirAC)と呼ばれるものでとても重要なのがDynamic binaural synthesisというものです。ダミーヘッドやHRTFなどを応用しています。

[Evolution -from MONO to WFS]
音響の進化を最適リスニング位置(SWEET SPOT)と言う観点からお話しします。まず20世紀の前半にはグラモフォン蓄音機が部屋の隅っこに置いてあり、モノラルで音が流れてくるSWEET SPOTを探して、どこに座ろうとは考えなかったと思います。
その後20世紀半ばからステレオがポピュラーになり2つのスピーカーの間に座って聴くシステムが生まれました。今もステレオが一番流行している方法の理由としてはヘッドフォンですとか凄く簡単に音楽を聴く方法だからです。2つのスピーカーを置く場所があるのと価格帯もリーズナブルなものになります。ただ問題が一つありまして、スピーカー2つ、LchとRchのスピーカーの間に座らなければいけないという制限があります。その後5.1chサラウンド方式が出てきて、スピーカーの間に座らなければいけないだけではなく、部屋の真ん中に座らなければいけないという時代が起こってきました。 課題は、多くのリスナーへ広いSWEET SPOTをどう提供できるかにあります。

[Principles of Wave Field Synthesis]
今回お話しするのが、そのサラウンドで部屋の真中のスイートスポットをなくして、部屋のどこにいてもサラウンド体験が出来る環境の作り方です。まず1つのスピーカーが置かれているのを想像してみて下さい。私をスピーカーと思って頂ければ、そばに座っている人たちは私の方から音が流れている方向感覚を得ると思います。そういった環境で言うとやはり真ん中に座っている人しかサラウンドの感覚は得られないと思います。なのでスピーカーを10メートル、20メートル離す事でスイートスポットを大きくしてサラウンド感覚を広げる事が出来ます。しかしスピーカーを離してしまう事によって、高い周波数は減衰してしまいます。実際の音波の波形を見て頂きたいと思います。この波形の一部分を切り取ったものをご覧下さい。スピーカーに近い音波ほど球面波をしております。遠くにいけばいくほど平面波になります。我々の耳はこの球面波と平面波を聞き分ける事が出来ます。なのでWFSの基本原理はこの平面波を再現する事を目的としています。
すなわち小さな点音源スピーカを発音体として多数組み合わせることで平面波を作り出そうというわけです。この原理は17世紀にクリスチャン・ホイヘンス氏が発案した方法です。どんな波形も、より小さな波形で復元する事が可能だとおっしゃった方です。なので先ほどの図に戻りますと、壁に複数のスピーカーを備え付けます。これらのスピーカーにそれぞれ別々のディレイとアンプリチュードを流して、それを再生するとこのようになります。その波形を繋げると先ほど遠くの方にあった波形を復元する事が可能です。なので視聴者にとって方向性というのが生まれます。壁の外に音源があるような感覚になるのですが、その距離感というのは伝わらずに方向性だけが残ります。このようにしてすべてのスピーカーをすごく遠くに置く事によってスイートスポットを大きくする事が出来ます。課題は、音をスピーカーに当てはめるという事になります。20世紀に数学者によって色々考えられた方程式があるのですが、その一つは、部屋の隅々を小さなマイクで埋め尽くし、それでそれぞれのチャンネルを個々に録音をする。そのマイクを同じ数の小さいスピーカーに置き換えて再生を行うことでWave Fieldを再現する事が可能だという風に考えました。この部屋でいうと、私が立っている所で私が本当に話しているようにどこにいるひとにでも聴こえるという事です。これは素晴らしいのですけれども、経済的な恩恵を受けるのは、マイクとスピーカーメーカーのみだと思います。またとんでもないデータの数となってしまいます。さらに問題があって録音する部屋とプレイバックをする部屋が同じでなければいけません。


では、現実的な実現をどうすればいいのか。先程も言ったようにバーチャルなスピーカーを壁の後ろに配置したい、このモノスピーカーの為のモノファイルが存在します。そしてそのスピーカーの位置を記すテキストファイルがあります。その2つのデータをプロセッサーに送ります。プロセッサーで計算したそれぞれの信号を、1つ1つのスピーカーに流します。結果この図のように部屋の周りをぐるりと回すような事が出来ます。このためにはオーディオのファイルを変えるのではなく位置関係を表示するテキストファイルを変えるだけで可能になります。そして先程の部屋の内向き波形ではなくて、反対向き、外向きの波形を作りさらにスピーカーの数を多くする事によってバーチャルな音源を部屋の外側だけでなく中に置く事が出来ます。これが可能なのはデッドな部屋がある事と沢山のスピーカーが必要になります。この方法がスピーカーのモデリングを行う、音源のモデリングを行って再現をする方法です。なぜ本日WFSの話をしているかというと、これが代表的なモデルベースのテクニックとなるからです。

 

先ほどのPerceptually motivated approachとかは、モデリングベースではないアプローチとなります。まず音源のレコーディングを行います。例えばボーカリストをとてもドライな空間で1つのマイクロフォンで録音します。そして再現する時、プレイバックする時は、その人のモデリングを行うというような形になります。現在の研究ではこの位置関係をどのように保存するのかが問題になっています。今ご覧頂いているのがAudio Scene discription format(ASDF)というものになります。これは2つのファイルからなっています。まず上に表示されるのが最初のファイルです。まずこの上のファイルとオーディオファイルの2つを再生場所へ送ります。ファイルの指定と位置関係の指定でxとyが定義されているのが見られます。なのでプロセッサーが分からなければならないのはこのデータをどういった場所でプレイバックを行うかということなので2つ目のファイルにそれが記されています。ここに実際に書かれているのがスピーカーの数と位置です。1つ目のスピーカーの位置関係が書かれています。このフォーマットだと動きは再現できません。現在ベルリンの工科大学で研究が進められています。なのでプロダクションの段階ではまず最初にドライな空間でレコーディング、そしてその場所を保存をします。それの受け渡しを行うためにはWAVファイルで保存をして先ほどのxmlファイルのテキストファイルを作ります。受け取った側は5.1ch、7.1ch、バイノーラル、WFSなどどんな形のサラウンドでも再現できるような形をとることが目標となっております。なので、プレイバックの環境を問わずにプロセッサーの力だけで再生ができるような形が目標になります。
少しだけHigher Order Ambisonicsのテクノロジーと、Wave Field Synthesisのテクノロジーの違いを説明します。私が感じているのはドイツはどちらかというとWFS、そしてフランスはHOAに力を入れているのではないのかなと思います。実際にはそんなに音質の違いはありませんが実用性の部分では多くの違いが出てきます。WFSは様々なセットアップで使用する事ができます。HOAは円状に設置したスピーカーでのプレイバック方法しかサポートしません。HOAのレコーディングはサウンドフィールドマイクロフォンで行われます。WFSですと今持っているマイクを使うことができます。レンダリングの複雑さはHOAのほうが高いです。WFSはかなり単純化されているので、そんなにプロセッサーのパワーは使いません。ヨーロッパですとWFSは20以上の研究機関が研究し。実際の設備としてもワールドワイドで20ものエンターテイメントベニューで導入事例があります。

[ WFSの実用例 ]
1つはスイスから出ているsonic emotion社のsonic wave、もう1つが2週間前に発表されたドイツのIOSONO社から出ているSpatial Audio Processor IPC100になります。以前はIOSONO社は全くsonic emotion社とは違うアプローチをとっていて、IOSONO社はより完全な再現を目標としていました。仕様を見て頂いても分かるようにずっとsonic waveのほうがチャンネル数が少ないです。ただ凄く処理能力は速いです。私の大学では14台導入されていて、300ぐらいのスピーカーに流しています。レイテンシーは7ミリセカンドとすごく低く素晴らしいことだと思います。sonic emotionは他の機器との互換性もとても高くて様々なホールやミュージアム、ライブ等に導入事例があります。IOSONO社の新しいボックス(IPC100)を使うと先ほど説明したHOAやその他のサラウンドシステムとも互換性があり、ボタンひとつで5.1chのシステムに変えることができます。以前はIOSONO社は独自のスピーカーを作っていました。ロサンゼルスに導入されているシステムはとても高価なものになります。現在はポリシーを変えてどんなスピーカーでも使えるようにまた少ないスピーカー数でも使えるような形をとっています。先日見た導入事例では、10個ぐらいのスピーカーで再生ができる環境となっていました。以前は40から50ぐらいのスピーカーが必要でした。メーカとしてはオーディオクオリティー、効果、価格のバランスが大事なことです。


[ University, Cinemas and other applications ]
導入事例を主に見て行きたいと思います。私の大学では2つのどちらのシステムも入っています。これは私の大学のコンサートホールの例です。400ほどのスピーカーがぐるりとホールの周りを囲んでいます。この黒く見えるバンドが発砲スチロールのバーにそれぞれ8つのドライバーがついているものになります。これを作った当時にIOSONO社のものを導入しようと思っていたらすごく高価になっていたかと思います。今はそうでもありません。また、レイテンシーの部分でもsonic emotion社のものを導入する必要があったと思います。ここではMADIを使っています。地下にある14のプロセッサーでレベルとディレイを計算しています。MADIで送信するのはオーディオファイルのみとなります。コンピュータネットワークで送信するのが位置関係になります。これが実際の地下の写真で、これがsonic emotionのサーバーです。アンプが左側にあります。コンサートホールのなかに小さなデスクを用意して、Apple Logicのワークステーションのコントローラーを置いています。

ミキシングを行う一番最初の問題がどこで行えばよいのかが分からなかったということです。解決策はなく、現場のなかで動き回ってミキシングをしなければなりません。Logicのプラグインはこのようなインターフェイスになっています。個々のソースが小さな点で表示されています。コンサートホールの形をしているのが壁を囲ったスピーカーになります。先ほど映像に映っていたオルガンのところにギャップがあります。そこにはスピーカーがありません。


ではどのように使用しているのでしょうか?一例として、Raphael Cendoという現代音楽を作っているクラシック音楽家がいます。コンサートを行う会場に図のように5つのスピーカーを周りに配置しなければならないというような作品を作りました。なのでその構成としてはライブのドラムセットがあるだけでなく同時にスピーカーからも5つのサウンドが流れるような曲を作りました。この5chのスピーカーをWFSと置き換えて、そのため小さなホールで聴いているお客様みなさんが同時にライブのドラムとサラウンドの感覚を得ることができるような環境づくりに成功しました。


私の大学は音楽大学なので作曲家は他にもいます。今見て頂いているスコアは、WFSを使うことを前提としたスコアを実際に作り始めています。これは1人のシンガーと12個の別の楽器のスコアになっています。このスコアはライブで聞きながらプレイバックも行われている少し不思議な作品になっています。このような作品に使うだけでなく、リバーブの環境を変えるというような試みも行っています。オランダの製品でSIAP MKというプロセッサーがあります。コンサートホールの中に小さなディスプレイがあって、ホール全体の音響環境を瞬間的に変えてしまうというものです。オルガン奏者としてはすごく必要なことで、大きなホールですとオルガン奏者はとても長いリバーブタイムが必要なのでオーケストラとはだいぶ違う環境が必要になります。図のようなセットアップになっていてステージの上に複数のマイクロフォンが備わっています。プロセッサーがそのマイクの信号をWFS用に計算をします。一瞬で環境が変わります。
私の大学以外でも様々なところでWFSは使われています。たとえばsonic emotion社の製品で言うとsonic waveのプロセッサーをcoolux社Pandoras Boxと一緒に使うことでライブイベントができます。他には大規模な映画館でも使われています。ここで見ているのがフランスのシネマ展示会「Cinemateque」になります。IOSONO社は独自のシステムを使って独自の映画館を作ったことがあります。ひとつはロサンゼルスにあります。もうひとつはドイツにあってどちらかというとデモンストレーション用のべニューとなっています。私が実際に体験した映画では大きな木がお客さんに向かって倒れてくるというものがあります。客席の左側に座っているお客様は、右側に木が倒れてくる感覚を得て、右側に座っているお客様は左側に木が倒れてくる音が聞こえます。他には、製品発表会など様々なイベントでも使われています。これはシアターです。これはモナコ。フランス、パリのCentre Pompidouという現代アートのエキシビジョンです。香港のショールームでは実際に座って、音源をジョイスティックを使って動かす事ができるような部屋があります。私が知っている限りで一番大きなWFSの導入事例としては、ベルリン工科大学です。これはIOSONO社のシステムで白く見えるのがスピーカーになります。2年前にこのセットアップですごく面白い試みがありました。300km離れたケルンからのライブ転送です。ケルンの教会のWave Fieldをそのままこのホールで再現しました。ベルリン工科大学の外ではケルンのコンサートへのチケットを売っていましたので、お客さんの反応は様々で半分ぐらいはベルリンにいるのになぜこのような感じがするのか戸惑ってしまう方もいらっしゃいました。





[How to create WFS mixes]
次に、IOSONO社のプロセッサーを使用したワークフローを紹介します。スポットマイクをそれぞれのミュージシャンに置きます。そして部屋の環境を複数のマイクで録音をします。オーサリングツール、この場合はSteinberg Nuendoを使います。プレイバックではスポットマイクでレコーディングしたものを前の方に置き、部屋の音響を録った信号は四隅から鳴らすような形をとりました。これがその時のマイクセットアップ図です。IOSONOのワークステーションでは次のような図で表示されました。これのプレイバックを一度行ったとき、実際に録ったのと同じぐらいの大きさの部屋で行いました。なので部屋の前の方に立つと実際にオーケストラの中で聞いているような形になり部屋の後ろの方で聞いているとディフューズサウンドフィールドにいるような形になります。リスナーが慣れている音というのはその間の感覚です。部屋の後ろに座っていてあまりダイレクト音が聞こえないのは不思議な感覚でした。またあまりにも速く動くサウンドよりはゆっくりと動くソースのほうが感覚としては凄く良いものだと思います。
IOSONO社のプロセッサーには映画用の設定があります。最初にお話したセンタースピーカーを部屋の外に置いてしまうということがここで表示されています。ダイアログチャンネルが真ん中に表示されています。レフトスピーカーがあり、ライトスピーカーがあり、サラウンドスピーカーが部屋の後ろのほうに配置してあります。今ある5.1chなどのサラウンドミックスを表現するようなプリセットになります。これにより、より多くの人がサラウンド体験ができるような環境ができます。映画のプロデューサーがWFSを自身のスタジオで作ることができるのであれば、独自のソースを外ではなくて部屋の中に持って来て動かすことができるようになります。もちろんオートメーションもサポートしています。映像がなくても音声だけでも面白い効果が得られます。これは音楽でビートがゆっくり部屋の中を動くような形になっています。IOSONOのデモクリップで目の前で家が燃えているのがあります。もちろん見えないです、音だけなので。家が燃えている音がします。後ろから消防車がアプローチしてくるので後ろを観るような形になります。なので消防車が止まって消防士たちが出てきて叫び声ですとかドアが閉まる音とかがします。その大変な事態の真ん中にいるような感覚になります。

[ 課題 ]
たくさんのスピーカーを使うのでスピーカーのやはり質は落とさなければいけない。そんなことをすると、やはり音質的には良くありません。なのでセットアップにも関係ありますが、私の大学の音はそんなに良くありません。ただ、エフェクトは音質の欠点を忘れてしまうほどとても面白く、ここもバランスが重要だと思います。WFSの正確な再現には、デッドな部屋が必要だと先ほども述べましたが、私のいた大学では、空間が大きく響きも大きいのとスピーカーの質がそこまで良くないので音源を部屋の中に持ってくることができないのが問題です。それでもやはり5.1chよりははるかに面白いです。なぜならば、サイドの、例えば右サイドのフロントからリアに音が動くときのギャップがなくなるからです。
機材の選択は何をしたいのかによって様々です。なので使い方によってsonic emotionの方が適切であったり、IOSONO社のものの方が適切であったりします。今サウンドエンジニアとって一番問題なのが、IOSONO社のデータをsonic emotionに持っていくことができない互換性の問題です。なぜならばsonic emotionはIOSONOで使っているASDFファイルが読めないからです。なので我々の期待としてはひとつのオープンソースの方法、コンテナを開発してもらってさまざまなプロセッサーでどのようなモデリングベースの再現でも使えるような形を期待しています。また今後、オーサリングツールの充実も期待しています。sonic emotionは現在LogicとPyramixでしか使えません。IOSONO社のものはNuendoでしか使えません。数週間前にベルリン工科大学で発表された独自のWFSのプロセッサがあります。WFSだけでなくHRTF、バイノーラルですとかアンビソニックもサポートしています。そして素晴らしいのはこのソフトウェアは無料だということです。今からお見せするビデオがすごくおもしろくて、このプロセッサを使ってどういったことができるか見て頂くことができるかと思います。IOSONOのようにベルリン工科大学はこのASDFのフォーマットも開発した機関なので、今後出来ることとしては本当にIOSONO社と同じようなことができるようになります。今からお見せするのはAndroidのアプリケーションを使用していてスピーカーの配置がそこに表示されます。その効果というのはヘッドフォンを使って聞くことができます。それと同時にWFSとして流すこともできます。ご覧ください。



[ 動画視聴 ]

Max:今後の期待としてはもっとオープンソースで互換性が必要です。そうすればエンジニアとしてはコンテンツがすごく作りやすくなり、どんなところでもどんな環境でも再生できるようなことになると思います。これが私の考える今後の3D音響の未来です。では、質問などあれば、どうぞ。

[Q&A]
Q:高さ方向の表現は可能でしょうか?
A:IOSONO社ではもうすでにそういった試みもあって2段構成で少し高さも表現できるような、今ご覧頂いたサウンドスケープレンダラーでも高さが表現できると思います。もちろん他でもできるとは思うんですけれども複雑なテクノロジーになっていくことと思います。WFSでは不可能ではなくて要するにスピーカーの数の問題というところになります。我々の耳の働きは、高さより横の動きのほうに敏感ですので少しのスピーカーで高さというのは感じ取ることができます。

Q:プロダクションの段階でオーサリングしてから16chマスターでプロセッサーに行くという事なのですが、その16chはどういう構成になっているんでしょう。
A:制限はなく、要するにモノ音源が16chという事になります。なのでオーディオファイルのモノチャンネルが16個ということなので、例えばギターとボーカルとなにかが1つのチャンネルに合わさっていることもできます。ただそれが再現されるときはその3つが一緒に動くような形になります。

Q:ものすごく複雑にすると大変ということですか?
A:やはりそこまで16でも32でも、人間の脳が32個もの違うチャンネルを判別できるかというのはわかりません。もしかしたら予備として取っておくチャンネルとしてはいいかもしれないです。

Q:WFSでは、ひとつの仮想音源を作るのにいくつのスピーカーが必要になりますか?
A:最低でもこのくらいの部屋の大きさで、50〜60個のスピーカーが必要です。

Q:例えば3Dを表現するのではなくして、一方向から音が来るということを表現するにはどうですか?
A:やはりひとつのソースだったとしてもすべてのスピーカーにすべての方向から音を流さなければならないので、すべての壁を埋め尽くす必要があります。

Q:通常の5.1chの再生の場合は、スピーカーがLRCLsRsとチャンネルと場所が明確に分かれています。(スピーカーを多く設置する)WFSで5.1chの音源を再生するときに、エリア分けといった考えはあるのです?
A:明確なエリア分けはありません。例えばLchだけにある音源であったとしてもデータは、すべてのスピーカーで再生されます。実際にWFSでミックスするときは、WFSプロセッサーに、LchはL方向の遠くに、CchはC方向の遠くに、R、Ls、Rsと設定します。そうするとことで、サラウンドのスイートスポットが、コンサートホールのように広がります。

Q:5.1chの作品を作る場合は、WFSのプロセッサーまかせで、注意する点はないのでしょうか?
村井:この理論の一番のポイントは、再生周波数特性が半分になります。各社は、アルゴリズムを使って周波数を上げることをやっています。人間の耳は高域特性が敏感ですから、
A:あなたがサウンドエンジニアなら、5.1chミックスを心配する必要はありません。モデルベースミックス(WFS)では、5.1chの制限はありません。すべての楽器のファイル個別に用意し、リバーブを使い、それをどの位置から再生するか指示することができます。
村井:実際にホールでオーサリングしてみると、Logicの画面でパンニングできます。
A:楽器を個別のファイルで用意し、位置情報を指示します。(WFSの)サウンドレンダラーは、5.1ch、ヘッドフォン再生、WFSなど、それぞれの再生環境に合わせて変換します。


Q:すでにある5.1chのコンテンツから、WFSのコンテンツを作ることは可能ですか?
A:できます。もし、サックスだけを(WFSで)パンニングするには、先ほど紹介したプラグインを使う必要があります。複雑なパンニングは上手く表現できません。5.1chのミックスにパンニングする楽器を追加すると効果的かもしれません。

Q:例えば、 既存の5.1chのスタジオで、WFSの劇場向けのコンテンツを作るにはなにが必要ですか?
A:それは簡単です。5.1chのマスターを用意し、劇場に設置されたIOSONOプロセッサーを5.1chモードに設定すればWFSで5.1chの再生が可能です。また、どのようなコンテンツを提供するのかでも変わります。しかし3D映画で、飛び出してきた映像に同期して突然声が観客の目の前に出るような場合は、WFSでミックスする必要があります。

Q:その場合は、どのような機材が必要ですか?
A:WFSプロセッサー、NuendoなどのPCが必要です。
WFSプロセッサー、ヘッドフォン、5.1chの再生環境、NuendoとNuendoのプラグインを組み合わて作業する必要があります。もちろん、映画のようなWFSの効果を得るには、WFSの再生環境(プロセッサーとスピーカー)が必要です。何故ならば、5.1チャンの再生環境では限界があるからです。

Q:WFS専用のコンソールが必要ですか?
A:いいえ。既存のコンソールを使い、例えばダイアローグ1、ダイアローグ2を作りIOSONOレンダーに送り、リンクされた2台目のPCのNuendoのプラグインで、映画を見ながらマウスの操作でコントロールできます。

Q:高さ方向を表現するには、スピーカーをもう一列追加すると説明がありましたが、天井や床に設置する方法はありますか?
A:いいえ。現在のオーサリングツールでも大変複雑で、さらに機材が必要になるので、もう少し先になるのではないでしょうか。重要なことはWFSには限界がなく、オーサリングでの制限であることです。

Q:先ほど話にあった、木が倒れてくる作品の話がありましたが、それはWFSの環境で作られたものですか?
A:WFSの環境で作られたものです。

Q:わたしは、チャイニーズシアターでIOSONOで作られた映画を聞きました。個人的に映像の3Dだけではだめでこの情報化社会で映画館にお客さんを呼ぶには音の3D立体化しかないと思いIOSONOには注目しています。しかし、映像のデジタル化に費用がかかり、音にお金を使うのは大変です。映像が3D化されても、お客さんは20年前の5.1chの音で我慢しています。普通の5.1chフォーマットをIOSONOで聞いてもたいしたことはなく、IOSONOでミックスされたものはすばらしいです。なので(IOSONOの)36chや2階層になったシステムはいいと思います。(映画館、スタジオ、音響監督がIOSONOをひとつのフォーマットとして取り入れるには、どんな障害がありますか?
A:興味深いことがありました。IOSONOのこれまで高価でしたが、1ヶ月ほど前にポリシーを変更しました。オーサリングがスピーカー設置がなくても、モデリングベースで行えるようになり、これば個人の考えですが、費用がかからず、多くの人に高品質な3Dサウンドの提供が可能になるのではないでしょか。新しいIOSONOのオーサリングツールでは、映画用のWFSだけでなく、映画をiPhoneとヘッドフォンで聞いている人や、映画をの5.1や7.1スピーカーで向けに作ることができます。


Q:作り手側が3Dサウンドに興味をもってコンテンツを作ることが必要ですね。携帯からどうやってリンクしているのですか?
A:プロセスはLinuxのサーバーで行われ、そのIPネットワークにワイヤレスLAN経由のアンドロイド携帯電話でリモート操作します。

Q:WFSで、部屋の中で音のない空間は作るとこできますか?
A:残念ながら困難です。部屋には壁かあり、壁には反射があるので、完全に反射のない空間は不可能です。

Q:無響室では可能ですか?
A:無音を再生すれば可能です。(一同笑い)

Q:60個のスピーカーを使うことが想像できないのですか、WFSのコンテンツを作る環境を教えてください。
A:ミキシングコンソールは通常、5.1アウトだけではなく、サブミックスを作るためのステムアウトがあります。例えば、コンソールは15サブミックスを作ることができます。5.1chではなく、それのステムをIOSONOレンダーに送り、映像に合わせて動かします。それを最後に5.1chのミックスにしたい場合は、IOSONOレンダーで変換が可能です。(スピーカーごとではなく)音のソースごとで考えて下さい。

Q:プロセッサーの後に60個のアンプが必要なんですか?
A:はい。60個のスピーカーには60個のアンプが必要です。(一同笑い)

Q:60個のスピーカーが動作しているかチェックする簡単なシステムはありますか?
A:わかりませんが、私の大学では24個のスピーカーに動作確認の青いランプがありました。sonic emotionのプロセッサーにはスピーカー補正の機能があります。IOSONOの新しいプロセッサーにも同じ機能があるのではないでしょうか。


沢口:どうもありがとうございました。WFSの技術背景と実際の実用現場の話が聞けたのは、大変貴重な機会だったとおもいます。共同開催として会場を提供していただきましたTACシステム山本さん、そして講演の時間を寺子屋のためにアレンジいただきましたシンタックスJAPANの皆さんどうもありがとうございました。(一同拍手) この後TAC山崎さんからMADIに関連したTAC取り扱い製品の紹介、シンタックスJAPANから最新のFireFace UFXと同軸ニアフィールドモニターSP KSデジタルの紹介がありました。




[ 関連リンク ]
sonic emotion
http://www.sonicemotion.com/

IOSONO Sound
http://www.iosono-sound.com/

シンタックスジャパン・RME製品
http://www.synthax.jp/

「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です

November 20, 2010

第68回サラウンド塾 体感3D映像とサラウンド音響 村越宏之、冨里幸太郎、佐々木孝徳、喜多 真一

By. Mick Sawaguchi
日時:2010年11月20日
場所:IMAGICA東京映像センター 第2試写室
講師:村越宏之、冨里幸太郎、佐々木孝徳(株式会社IMAGICA)喜多 真一(Sony PCL) 
テーマ:3D映像とサラウンドの親和性を体感する

冨里幸太郎(株式会社IMAGICA)
村越宏之(株式会社IMAGICA)
喜多 真一(Sony PCL)
佐々木孝徳(株式会社IMAGICA)
のみなさん 

沢口:2010年11月のサラウンド寺子屋は3Dとサラウンド音響の親和性を体感してみようと言う企画です。3Dとサラウンド音響というのは大変ホットな話題ですが、いい環境で聴ける条件が難しくなかなか開催できませんでした。今回はIMAGICAさんのご協力で素晴らしい環境で3Dとサラウンドを体験できることができましたので、多いに楽しんで頂けると思います。それでは、宜しくお願いします。

冨里:おはようございます。IMAGICAの3D推進室の冨里と申します。まず私のほうからIMAGICAの3Dへの取り組みの概要をお話しさせて頂きます。最初に3Dに関連する市場概況です。我々は、コンテンツ、ディストリビューション流通配信、ディバイス表示上映装置というこの3つを切り口にマーケティングをしております。

コンテンツ
ご存知の通りアバターを始めとする3D映画の興行的な成功、こちらがキーとなって来年も全米で30本以上の3D映画が公開される状況になりました。国内におきましてもすでに10本以上の3D映画が公開すると決まっております。そしてスポーツ中継、あるいはコンサート、ライブといったイベントの3D制作がいま非常に活発化しております。

ディストリビューション流通配信
作ったコンテンツをお客様にお届けする、その分野におきましてやはり有料の放送局様、ならびに配信の事業者様が積極的に取り組みをされています。スカパーさんに関しましては6月に3D専門チャンネル、スカチャン3D169、こちらを開局後、連日3D番組の放送を生中継を含めて放送をされているという現状です。またパッケージソフトBlu-rayに関しても、規格がようやく決まりまして最新のBlu-ray 3Dによる高画質、高音質作品のリリースが始まったという現状です。

3Dを表示、上映する環境
やはり今3Dの立体映像を観てサラウンド音声を聴くというところで、一番良いクオリティで聴ける環境の映画館、こちらの3D対応も急速に伸び続けています。私どもの調べですが、世界でだいたい15000スクリーン位、日本国内におきましても全体3400スクリーンのうちの約15%、500スクリーン以上が3D対応になっているという現状です。そしてホームエンタテイメント部門への波及という事でも電機メーカー様各社3Dテレビを市場投入され、2010年度4月から9月の国内出荷台数が約13万台という数字が出ております。これは薄型テレビの全体に占める割合としましては1.3%という事でまだまだ少ない状況ではあるのですが徐々に普及が始まってきています。そしてテレビ以外の個人向けの、いわゆるスマートフォンや高機能携帯端末に関しても3D表示の対応が始まっているという事で色々な出口が徐々に広がってきているという現状かと思います。

IMAGICAの3D映像技術ワークフロー
コンテンツのプランニング、プリプロダクション段階から、実際の画像を生成するプロダクション段階、それを仕上げ加工するポストプロダクション段階、そしてそれを各種用途に応じたアウトプットをするという一連の行程をサポートするというところをコンセプトに色々なサービスメニューを用意しています。やはり3Dに関して、これは通常の2Dのコンテンツ制作でも変わりはないのですが、特に重要となるのが実際にプロダクションに入る前のミーティングあるいはプリビズ(3D映像絵コンテ)を使った準備段階がその後の状況を左右すると言っても過言ではないくらい大事な工程になります。この段階で経験豊冨な3Dスーパーバイザーが参加し最適なワークフローのご提案とアドバイス等を行うという態勢です。
3Dの画像を生み出す方法として、3D撮影をするか、2Dを3Dに変換するか、3DのCG空間上で立体視を作るという、大きく分けて3つの方法論があります。3D撮影については後ほど詳しく説明します。ポスプロにおいても3D対応の編集機、そして色調整、カラーグレーディング、もちろんサラウンド設備を備えたMA室も各種用意をし用途に応じたアウトプットも万全の態勢で備えております。

3ality DigitalTS-2撮影
IMAGICAではこの3ality DigitalのTS-2というシステムを使って、3D撮影を行っています。今日ご覧頂く映像も一部こちらを使っております。3ality Digital TS-2は立体撮影業界では画期的な特徴をもっておりまして、立体視ということでLとRの2台のカメラを取り付けて撮影をする仕組みになっていますが、この2台のカメラがきちんと同期します。これは一見当たり前のようなことに聴こえてしまうかもしれませんが、今までの立体撮影機器は非常に難しかった事が出来るようになったということで、非常に画期的なシステムと言われています。ここをしっかり同期しないと、後でご覧になる一般のお客様も目が疲れてしまう、頭が痛くなってしまうということに直結する要因となっておりますので、精度よく3D撮影をするために欠かせない要素となっております。そしてこの2台のカメラが撮影しながらリアルタイムで視差の調節が出来るというところも非常に大きな特徴の一つです。立体撮影では2台のカメラの距離と角度、これを調節していく事で奥行きと飛び出し感を作っていくのですが、この調節が撮影をしながらリアルタイムで出来るということで生中継にも十分対応可能であるという事と、従来に比べて現場でのセッティング時間が掛からないという事で、2D作品と同等の収録が実現できるという特徴を持っております。

3D作品の上映環境
今回は、HDCAM-SRテープから再生します。今日は24pのものと60iのもの両方ありますが、HDCAM-SRテープのDual streamという方式で記録された映像信号の左目の映像と右目の映像、これをVTR、Sony SRW-5800を使って再生それをBarco DP 100DLRプロジェクターを使って投影しています。立体視のために赤外線も出ているフレームシーケンシャル+液晶シャッター方式という上映仕様なのですが、実際には画像が左目、右目、左目、右目と高速で144Hz、1秒間に144コマ、左目72コマ、右目72コマという、当然人間の目では察知出来ないスピードで画が出力されています。ここでL、R、L、Rと出ている映像信号と同期する形で赤外線が発射されています。それをスクリーンから反射して皆さんのお手元のメガネ受光部分で赤外線を受光すると、出力と同期する形でメガネがL、R、L、Rとシャッターを切って右目の映像は右目だけに、左目の映像は左目だけに届けるということで立体視が成立する仕組みになっています。

通常こちらの第2試写室は、映画の場合、Dolby 3Dという3Dシステムを採用しておりデジタルシネマパッケージ、劇場用映画のデジタルシネマの規格である、DCPのファイルの再生をしています。同じく左目の映像ソースと右目の映像ソースが出てるのですけれども、Dolby 3Dの場合、INFITECという特殊な技術を使って右目左目に特殊な光を届けているという仕組みとなっております。これはRGBの光の波長を分割して左目用のRGB、右目用のRGBという分割されたものが特殊なメガネを使って見ると立体に見えます。

上映3D作品
IMAGICAからは、3本です。まず最初にGR75 オープニング映像という2分程のショートクリップを上映。
次に東京島という映画の予告編の3Dバージョンを。
最後に弦楽五重奏とピアノソロの演奏の模様を3D撮影した映像を上映します。
GR75オープニング映像これは、IMAGICA、創業75周年記念イベントを先月開催しました。この時のオープニング映像として作ったものを上映致します。この映像はあらゆる3D画像生成方法を駆使して、最新の技術をふんだんに取り入れて作った映像になっております。先ほどもワークフローの紹介で説明しましたが、3Dの撮影と、2Dから3Dへの変換、そして3DCGと色々なアプローチを取り入れて作ったものとなっております。(一同拍手)

[ 作品視聴 ]

村越:次に邦画の予告編で「東京島」という邦画の30秒トレーラーを制作しました。本編はLCRSの4チャンネルと2D映像ですが、3Dの劇場でこの予告が上映されるとのことなので、この予告編も3D&サラウンドで作りたいとの依頼がありました。みて頂ければ分かると思いますが、布というか旗を振っている部分は新たに3Dで撮影したものです。本編の音楽はステレオですが、それをサラウンドにしました。それではご覧下さい。これは、セリフはすでに収録されたものを、私がミックスしました。

[ 作品視聴 ]

村越:次に、IMAGICAの3ality Digitalで撮影した、弦楽五重奏とピアノソロを教会で収録したクリップを再生します。

制作フロー
収録は、2010年1月28日で、1日で収録しました。場所は、(東京都)品川区のグローリア・チャペルで、御殿山の品川教会と呼ばれているコンサートや録音で使われることもある場所です。IMAGICAの3DデモのためとスカパーJSATさんの素材用に共同で撮りました。撮影は、3alityDigitalカメラを使いHDCAM-SRに60i Dual Streamで撮っています。カメラは3Dカメラ1セットです。カメラが片方は正面に、もう一方は下に向いているものを、ハーフミラーを使い撮影する、3ality DigitalのTS-2と呼ばれる方式です。カメラはクレーンを使用しました。打ち合わせのときに、音は現場で録りたいとか、いやCDのプレイバックでいいと、打ち合わせでは結構バタバタしていました。私は、せっかく教会での撮影なので、サラウンド収録すると言い張っていましたが、直前までCDのプレイバックでいいよとのことでした。最終的に勝手にサラウンド収録の機材を持って行きました。当日は、プロディーサーの方にいきなり、「今日の録音はサラウンドだよね?」と言われ、「もちろんそうです。」と答えました。

手順としてまず先に音楽を収録し、アーティストの方のOKがでた後、それをプレイバックしながら撮影しました。通常のように、事前にプレイバック素材を用意するのではなく、その場で収録したものを再生しました。基本的にはクリックなどを使っていませんので1曲通してOKテークにできるようミュージシャンにお願いしました。録音の機材をどうするか悩んでいたのですが、手持ち機材でできるのか検討し、Digidesign Digi003を使い、サラウンド+弦楽五重奏なので10チャンネル必要になります。 Digi003のアナログ入力8チャンネルとADAT入力8チャンネルにHAを組み合わせることにしました。噂に聞いていた、RMEのoctamic IIをシンタックスジャパンさんから、もう一台は、Metric halo ULN-8をロックオンプロさんからレンタルしました。マイクは、サラウンドのLCRにノイマンKM 140(単一指向)LsRsにノイマンKM 131(無指向)を使い、ヴァイオリンはSennheiser MHK80、それに合うように、ヴィオラとチェロにSennheiser MKH 8040を、ピアノのオンマイクにはAKG C414B TLIIを使いました。ハンドリングが楽なようにSPL Tree(サラウンドマイクアレー)を使いました。
映像の撮影もあるので、同期も含めこれらをどう接続するか考えました。

[ セッティング図 ]

弦楽五重奏のオンマイクはMetric halo ULN-8を使い、SEND OUTからDigi003のアナログの入力に入っています。サラウンドツリーのマイクはRMEのOctamic IIを使い、ADAT OUTからオプティカルでDigi003に接続しています。図にSGとありますが、ビデオ撮影するのでシンクジェネレーターが必要となります。3値シンク(Tri-level Sync)をカメラに、48KHzのワードクロックをDigi003に入れて、スルーをMetric haloとRMEに送ります。最初、ワードクロックのスルーはうまくいくのだろうかと思っていましたが、実験したところノイズが出ることもなく安定してロックしていたのでこの方法を採用しました。同期に関しては、このシステム内でカメラも含めシンクしたシステムが構築できています。
Pro Toolsで編集用ステレオミックスを作り、RMEの空いている7と8チャンネルに入れ、AESアウトから、VTRに返しています。後でサラウンドの音貼りをするときのガイドや、チェック用であるとか、撮ったものをその場ですぐにプレイバックするときはにはVTRだけできるようになっています。Metric halo ULN-8はアナログしかPro Toolsに接続していないのでゲンロックしてなくてもいいように思いますが、AESで送る必要がありますので、ロックしています。なぜAES送りなのかと言うと、VTRの入り口がAESだったからです。サラウンドツリーのマイクは、すべて単一指向のマイクを使いたかったのですが、機材調達の関係で、フロントが単一指向でリアが無指向です。
次にピアノの系統ですが、基本的には同じ場所で同じように録っているので、大きくは変わっていません。何処が違うかっていうと、ピアノのオンマイクの2本、ハイとローになっています。あとの系統は全て同じです。VTRに2ミックスを送るであるとか、オンマイクの方はMetric halo ULN-8を使いサラウンドマイクの方はRME Octamic IIを使い、サウンドマイクに関しては全く同じです。
このホールは、一般的な長方形の教会で、ここIMAGICA 第2試写室より横幅は1.5倍で長さは2倍で高さは天井高4mぐらいあるような、いわゆる長方形で回りは木でステージが若干40~50cm高く上がっているというような所でした。ステージの上で録ったのですが、教会の人のアドバイスで何処で録ったら一番音がいいかだけを聴いて、ちょっとステージの前の面から下がった位置になるのですが、その位置でピアノであるとか、ミュージシャンに立って頂いて録りました。そこからサラウンドマイクは3mぐらい前のステージの面からちょっと前に出した位置、そしてステージから2m70cm上げた位置に最終的になりました。色々テストして、そこが一番サラウンド感が録れるのでそこにしました。これから4曲分を弦楽五重奏で2曲、ピアノのソロで2曲聴いて頂きます。これに関してはIMAGICAのMA室で7chミックスないしは10chミックスしています。サブウーハーは使ってません。4曲とも5.0ミックスになってます。これはスカパーさんと一緒に録ったということもあり、HD60iになっています。

[ 作品視聴 ]

ミックスについて
基本的には弦楽五重奏の方は5チャンネルのオンマイクと5チャンネルのサラウンドツリーの10チャンネルのミックスです。わかりやすく動いてる感じが欲しいというのがあったので、特に弦楽五重奏の方は右行ったり左行ったり結構はっきりしてたり、リアも結構大きめです。ピアノの方はそこまで動かないです。プロデューサーの方と方針を決めながらざっと作っておいて、微調整をしていく感じです。基本はミックスの時点ではNo EQ、No Compです。若干低域を切ってるぐらいです。それと少しだけ5.1chのリバーブの「Church」を出してます。TC Erectronic system6000の中の6.1のリバーヴのアルゴリズムを使ったものを若干加えています。ピアノの方も同じパラメーターで加えています。今回のテーマは空間を切り取るという事だったので、基本的に後処理はオンとサラウンド側の足し加減のみということで、これはもう録るときから決めていたので、その方向でミックスしました。IMAGICAからのデモは以上です。次にSony PCLの喜多さんがもってきてくれました作品について説明して頂きます。

喜多:Sony PCLの喜多です。今日は、SONY PCLで昨年の夏SONY銀座ビル用に作ったOPUSシアターの3DのコンテンツとTOSTEMさんのイベントがパシフィコ横浜であった時に制作した映像2本再生します。銀座Sonyビル用の物は、視差調整等が現在健康被害等を言われてる次元の前のものですので、かなり3D感を出しています。もし気持ち悪くなる方がいたら大変だなと思いまして、先に話しておきます。 では、Sonyビルの3Dアクアリウムを再生します。

[ 作品視聴 ]

昨年の夏休みに子供向けとしてSony銀座ビルの7階OPUSシアターという所で、期間限定で2週間程上映したものです。見ておわかりの通り、IMAGICAさんの3ality Digital撮影のものとはかなり手法も異なっています。映像はSony PCL独自の撮影リグを用いておりまして、横長いシアター向けを意識して、わざと視差を大きくつけてあります。サウンドトラックは、完全に5.1chのポストプロダクションでMIXしました。次はTOSTEMさんのエコ博というのが9月の中旬にありまして、そのイベント用映像です。ドラマ仕立てでかなり楽しめこういうコマーシャルがあってもおもしろいんじゃないかと私は思っています。
では、TOSTEMインプラスマンを再生します。

[ 作品視聴 ]

村越:それでは、Q&Aに移りたいと思います。

Q:喜多さんの作品は、音の高さや厚さがあるのはシステムが違うからでしょうか?2作品とも高さも奥行き感も全然違うと感じました。
A:美海水族館に関しては、本来、作曲の方と直接ポストプロダクションで5.1chで音楽を作ろうというアプローチだったので、我々ポストプロダクションのエンジニアが音楽のミックスダウンをしてもいいのだろうかというところも疑問に思いながらも、お互いで相談していくという形でやりましたので、音像は意外とふっていたりするのですね。

Q:映画館で聞いてるみたいな感じがしました。
A:ありがとうございます。インプラズマンに関しては劇場というものがパシフィコ横浜の中で組まれたので、その場所がどういう環境なのかということを一応確認し実は布一枚で覆ってあるようなところで、外の音が以外と入り込んでくる環境なので、なるべくセリフなどがちゃんと聞こえるようにMIXしました。アプローチとしては、Sony PCL405というスタジオでプリミックスでパンニングは全部やってしまいました。

Q:音ではなく、3D映像の制作に携わっている佐々木さんにお聞きしたいのですが、3Dの映像として2種類あると思います。ひとつはスクリーンは正面に限って3D映像を出すというパターンともうひとつは2Dなのだけれど、全周囲、ドーム型の映像で全方向に画があるパターンと、2種類が方向性としてあると思うのですが、どちらのほうが、それぞれのメリット、デメリットも考えて見ている人に対して有効的とお考えですか?
A:たしかにそうですね。巨大なドーム型映像の立体館と今流行っているメガネかけて見る2眼方式の3Dということですね。どちらにも良いところがあって、どちらにも少し苦手なところもあるのですが、今流行っているのはやっぱりメガネをかけてLRそれぞれ違う映像を見て立体感を感じるという方が、リアルさというか、生々しさというものがあると思います。臨場感的には人間は常に右左違う映像を見て生活をして、立体感を感じているので、それに近いところの臨場感というものは得られると思います。

Q:正面だけに3Dすると画が見切れてしまいますよね。凄い大きなスクリーンを前面に用意すれば良いのですが、そのデメリットとそれが無い2Dのものを音に照らし合わせて考えると今の3Dというのはいわゆるバイノーラルで立体音響を作っているようなものなので、「左の音に左の音、右の耳に右の音」そのパターンと2Dなんだけれど、全方向スピーカーを用意してという、これがサラウンドの音響だと思うので、今、なんとなく映像はバイノーラルで音はサラウンドで、という違う方式でお互いやっているような感じなので、映像の方からすると、どっちのほうが臨場感だとか考えをお持ちなのかなと思ってお聞きしました。最終的には全方向に3Dというウェイブシンセシスではないですけれど、音でいうと、そういう方向が一番なのですけれど、なかなか今はまだ、未来の話なのかもしれません。
A:会場によっては3Dのスクリーンをマルチ画面で何画面も立体的に横に並べてみる3Dとか、そういうのも展示会とかでやられているものもあって、そういう時は臨場感は格別なものがありますね。

Q:さきほどの3Dのメガネのシステムのところで144Hzという話をされたのですが、24pと60iの同期の関係がどうなっているのですか?
A:24pのときは144Hzでトリプルフラッシュという、1秒間に144コマで左72コマ右72コマ。60iのときにおそらく96pです。なので、厳密にはこの部屋で最適に見ようとすると24Pで見るのが最も最適な視聴方法ではあるのですが、放送をターゲットに作られたコンテンツということもあって、60iの素材しかなかったということです。今回は60iの素材も24pに最適な環境で上映を行いました。

Q:そこのズレというか、144Hz、72Hzと24pというのは倍数の関係にあるということでしょうか?
A:そういうことですね。なのでそれが最適ということで、家庭用のテレビでは122Hzまたは244Hzということで放送のコンテンツに関しては最適に見られるようにTVが発売されているということですね。

Q:村越さんにお尋ねします。最初のピアノと弦楽五重奏なのですが、録音時のモニターはどのような方法ですか?
A:モニターは、ヘッドフォンで聞いています、基本的にはVTRに送るダウンミックスを聞いたり、後はいわゆるDigi003をお使いになった方は分かると思うのですが、ヘッドフォン端子にAUXで音を選んで送っておいて、各チャンネルをソロで聞いて見たりだとか、両サイドのものを聞いてみたりだとか、チェロを聞いて見たりしています。ピアノのほうは元々はONマイクが2つ立ててありましたので、それをLRで聞いたり、サラウンド側のマイクを通して聞いたり等はしていますが、空間の確認は録っているときにとれていません。

Q:喜多さんと村越さんに質問なのですが、ミキシングをするときに、通常は2Dの画を見てミキシングをされることが多いと思うのですが、やはり3Dを見ながらミックスしたほうがいいかなと思うときがありますか? もうひとつは、3Dというのはもちろん昔から、私もSonyにいたころからいろいろとやらさせて頂いたのですが、はるかに違うのは、前に飛び出すということではなく、奥行き感だと思うのですが、こういった状況の3Dが登場したことによって、果たしてこのままの5.1chなどの音響システムで実際にそれが表現できるかと言う点です。
A:3Dの仕事のときは、だいたい編集室で一回、MA前に映像をなるべく確認をできるようにしています。さすがに今の現状のMA室では3D映像を見ながらMAをするのは不可能なので、今後作業量とともに考えていかなくてはいけない課題なのかもしれませんが、メガネをかけたままコンソール見たときに気持ち悪くならないだろうかどうかなどその辺の問題が作業環境にどう影響を及ぼすのかまでは今のところ研究をしておりません。それから2番目の質問に関してですが、「ひっこむ音はサラウンドにとって苦手ですよね」という話をよくしていまして、私が最近、実験したのですが、ハードCの後ろ側、1mぐらい後ろに遠いC勝手にFCと名前をつけてやってみたのですが、パンフォーマットがコンソールに無かったので、LCRSのパンフォーマットを借りて、Sチャンネルを遠いハードCのような扱いで、フロントの「ツラ」と「遠い」というのを試したら、はるかにEQとかリバーブとかレベルとかでいじるよりも、遠くに行くのですね。ONの小さい音は近い。小さいだけで。遠くにどうやってもならないというのをずっと思っていて、ひっこむサラウンドはどうすれば良いのだろうかということを個人的には実験していますが、そんなフォーマットはないので、LCRの後ろにもうひとつLCRを立てたかったのですが、そこまで物理的に用意ができなかったというのもありまして、変則的な三角形というものはやったのですが、やっぱり遠くに逃げるのですね。体感上。これはちょっと良いなと思っているのですが、どこにもフォーマットがないので、今後どうするのだろうということは思っています。

A:非常に難しい質問を頂いたなと個人的には思っています。まずひとつ目の質問は3Dを見ながらですよね。それはスケジューリングと打ち合わせとの兼ね合いによって大きく左右されるものが大きいので、私の場合は、終わってから必ず確認をするということをやります。もう一点は打ち合わせを密にさせて頂くことをなるべくするようにしています。ただし、美海水族館のように、音源ソースが非常に少ないものに関しては、音楽の作家の方であるだとか、そういったところの打ち合わせでとどまってしまうことが多いですね。仕上がった映像を見る機会というのは現場のOPUSシアターに行っての調整が最終段階だったりするので、基本的にはやっぱり2Dの環境のところできっちり作れる事が一番良いと思っています。まずサラウンドとしてきちんと作品を壊さないものがちゃんと作られているかということが第一前提だと思っています。コンテンツとサウンドトラックのマッチングについては、奥行きのレイヤーというのを音場層で作るべきかどうかというのを議論したことがあるのですが、ケンカの寸前まで話し合ったことがあるのですが(笑い)、「スピーカーが物理的に置けない」ということもあるので、私は村越さんとは違うアプローチでリバーブを使ったりEQ処理だったりとかで奥行き感はどうやったら作れるかな、という実験はしているのですが、村越さんほど体感できるところまで、「これだ」という方向はまだ発見できていないですね。確かにフォーマットも含め今後は、今年のAESでも言われていたような、縦方向の空間を優先させるべきなのか奥行きなのかというところが悩ましいところだと思っています。

Q:今の話の続きになるのかもしれないのですが、最後のコンテンツは、LCRの画面に映っている奥行き感の音像と、音楽と効果音のサラウンド感というのはわりと分離ができているように感じています。フロントのLRにあまり音楽がいなくて、ワイドにいる感じのミックスを感じたのですが、それは意図的にされているのですか?
A:実はあれはコンテンツとして映画館仕様では作っていないので、後ろを85dBでやっているのですね。今回は3dB上げてもらいました。そしたら音量が大きかったというのもあって、かなりそういう感覚は錯覚されたかなと思ったのですが、実はちゃんとフロントにもいます。音楽に関しては実は2チャンネルです。予算の都合で、監督が持っている音源ライブラリから、今は監督が音源ライブラリを持つ時代なんだなとすごく驚いているんですけれども(笑い)、そこから持ってきた編集済みの音楽をさらにトリートメントしてきれいに編集点を作って(5.1chに)アップミックスする手法で、いちおうリアは作っておいた方が包まれ感は出るし、もし良くなかったらやめようということで、あと効果音がスピーカーの外側までいくようなパンニングをしてあげると出やすいのかなとは思っています。セリフはわりときれいに録られていたのでそういう音のソースカテゴリごとのレイヤー構造みたいなものは出来たと思っています。

Q:ピアノソロの作品で、画面左に鍵盤が並んだ時にその角度に音が定位していたように感じたのですが、何か特別な処理をされたのですか?
A:ピアノを録音する時に、ピアノの反射板が客席に向けて置くと音が良いという教会の方のアドバイスがあり、オンマイクを通常の発想で立てるとサラウンドマイクとどうやって整合性をとったらいいのかと悩んでいる間に、録りますと言われて、そのままいわゆる一般的なステレオ録音のハンマーに近いオンマイクで立てました。それだけでもステレオで成立するように録ってそれにアドオンする形でサラウンドツリーの音をのせる方法しか無いと思っていたところもありました。それで結果論ですが意外とマッチングが良かった。その効果を出しているのが、サラウンドツリーの5本を1組として、ステレオオンマイクのレベルを決めたあとに(サラウンドツリーの音を)足したり引いたりフェーダーをいじっていたら「ここが気持ちいい」というところがあったのでそこに落とし込んでいます。全体に聴いて変なディレイ感や位相感が出ないことは確認して。今回は5.1ではなく5.0でやるということだったので低域に関しても過不足無くおかしなことにならないようにというところだけ注意して、それにほんの少しだけリバーブがのっているだけです。

Q:サラウンドツリーの2.7mの高さが忠実に出ていると思うのですが、その高さは色々試してみて決めたのですか?
A:そうです。テスト録音の時に3名で行ったのですが、計算では3m強の高さにしようと思って行ったんですが、LCRをステレオに畳み込んでモニターしたときにちょっとオフっぽいかなと感じて、リアのLRだけを聴いた時にオフすぎるという印象を、無指向性のわりにこんなにオフでいいのかなと思ったので前後位置も高さも変えました。それは録りながら上げて、下げてといわゆる撮影の時に照明さんがやるようなアナログチックにやりました。想定した場所からはちょっとずれましたがやはり現場で調整するのがいいのかなと思います。

Q:それはDigi003のヘッドフォンアウトで聴いてということですね?
A:そうです。それは5チャンネル分をテレビ方式のダウンミックスにかけて聴いていて、それと、オンマイクの2本を足したり足さなかったりして空間を頭の中で想定しているというか、オンオフの感じはなんとなくわかるのであとは全体の空間の感じをスタジオで作れば良いかなということと、もし空間が足りないようであれば、MAというかミックスの時にリアチャンネルだけディレイするのもありかなと考えてもいましたが試した結果それはやっていません。

Q:せっかくなのでカメラの方に質問です。3Dで撮影する時に、クレーンなどの特機というのは現状あるものをそのまま使えるのですか?
A:リグを使って撮影すると、カメラ自体が大きくなるので、IMAGICAのリグですと軽いもので30kg、重たくなると5、60kgかかってくるのでクレーンのアームの耐久加重に耐えれるもの、あとはクレーンのヘッド部分に収まりきるかどうかをクリアすれば現状のものでいけます。やはり3Dは撮影しながら動きがあるとすごい立体感が出てくるので特機とセットで撮影するということがすごく多いです。

Q:ということは3Dのカメラのセットは今後小さいものになればなるほどカメラマンとしては嬉しい?
A:できればそうですね。ただ現状のリグと使うレンズにもよるのですがやはりワイドめで撮りたいとなるとリグがどんどん大きくなってきたりするので、その辺は今後に期待というか小さくなれば機動性は上がります。

Q:カメラの視野の広い狭いという調整の方法は3Dの方式によって違うのですか?
A:方式によっては変わらないです。例えば収録は右目左目のLRをそれぞれフルHDの状態で撮って、そのあと劇場で色々違う方式に変えるのは一旦マスターを作ればそこから変換するだけなのでそこは問題ないです。

Q:ではカメラマンとしては、上映の方式とか記録の方式とか関係なしに一定のもので撮っておけばいいのでしょうか?
A:特殊な環境、例えば上映する劇場や設備が決まっている場合などはそこ用に、例えばメガネをかけて暗くなるから少し明るめに撮っておこうなどはあるかもしれませんが基本的には一般的な方式で作って各劇場に渡すというだけです。プロジェクターとメガネによって、今かけているXpanDやRealD、DolbyDなど各方式で微妙な明るさの変化があり、劇場の違いにもよってくるので難しいところなんですけれども、それは再生側の調整の話ですね。

Q:我々は音のサイドなので、ステレオで表現する音場とサラウンドで表現する音場に大きな違いと楽しみを見つけているんですが、カメラマンの方は従来の2Dでやるのと今回のように3Dでの撮影を経験されたのとでどんな感想をお持ちなんでしょうか?
A:3Dは今までの2Dと映像の演出方法が変わってくるところがあります。例えば2Dの音楽ものやライブものだとカット割りがすごい短く短くやっているのを、3Dで同じように短くしてしまうと立体感を目で確認して感じるまでに人間にディレイがあるので、出来る限り短いカット割りはせずに長く回してつないでいくやり方のほうが3Dとしては見やすくて面白かったりするようです。3D映像としての見せ方というか演出方法は研究されているところなんですが、今後は変わってくると思います。

Q:カメラで撮られている時は3Dの映像を見られているのですか?
A:今のIMAGICAの方式だと片面のRchのカメラの2Dのビューファインダーで確認しながらやっています。

Q:それを頭の中で3Dに合成しながらでしょうか?
A:そうです。また3Dは3Dで別個にコントロールする人がVEのような形で調節していますので。現状はそういうやり方になっています。

喜多:Sony PCLの場合は、クライアントモニターには仮合成した3Dのパネルを見ています。ただし小さいものです。

Q:視差というのは個人差がありますか?
A:あります。3D映像は個人差がものすごく大きいです。強烈な視差をつけた映像に関してもものずごい立体的に見える方もいればそんなに立体的に見えない方も全然立体感を感じない方もいて本当にバラバラです。そこに関して作り方としては今は最小公約数といいますか、誰もが自然にあまり行き過ぎない3Dをつくるような設計をするのが主流です。

Q:映画館の座る場所によって、見え方が変わったりすることはあるのですか?
A:劇場によって座る場所によっても立体感は変わってきます。やはり人間の目の幅とスクリーンの視差の相対関係が座る距離によって変わってくるので、後ろに座れば座るほど立体感は強調して見えます。飛び出しや奥行きも、スクリーンは相対的に小さく見えてしまいますが、強く感じるようになります。

Q:音声だとスクリーンから2/3の位置を中心と考えてミックスするなどありますが、映像にはそういった基準のようなものはありますか?
A:出来る限りスクリーンの正面で見た方が設計者の意図は忠実に再現される形になります。3Dを見ながら頭を動かすと欠像する部分が変わってくるので背景がぐわっと動くようになるのでそういう意味でも正面から見て頂くのがベストです。

参加者:3DでもIMAXの3Dなどドームシアターの本格的な3Dで見ると視野がすべて覆われているので没入感は最高に良いと思います。ただ2Dでも視野が覆われていると没入感は,良いと思います。
参加者:今の3D映像は,音の世界でいうとバーチャルサラウンドと一緒で2つのスピーカーで信号処理して左の音は左耳だけ右の音は右耳だけという方式に近いなと思うのですが、音の方では、現在全方向2Dのサラウンドに移行していったので、映像はどうなるのかなというのは大変興味があります。

沢口:みなさんどうもありがとうございました。今回は、すばらしい映像/音響の3Dを体感していただきました。会場を提供していただき多くの3D映像を用意していただきましたIMAGICA/SONYPCLのみなさんにあらためて感謝いたします。(一同拍手)

[ 関連リンク ]
株式会社IMAGICA:3D関連サービス・技術情報
3ality Digital:TS-2 Studio Beamsplitter Rig
ソニーPCL株式会社:3D/4K

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