April 1, 2007

第41回サラウンド塾 サラウンドロケDVD 制作「SUPER ROLLING IN THE SKY - BLUE IMPULSE」 桐山裕行

By. Mick Sawaguchi
日時:2007年4月1日
場所:三鷹 沢口スタジオ
講師:桐山裕行(1991スタジオ)
テーマ:「スーパーローリングインザスカイ ブルーインパルス」DVDのサラウンド制作について

沢口:今月は、1991スタジオの桐山さんを講師に、日本の誇る曲技飛行チーム ブルーインパルスの飛行テクニックを映像はHDで音声はサラウンドでDVD制作した内容についてロケーションからFinal Mixまで初挑戦で得た新たな視点についてお話していただきます。
桐山:1991スタジオの桐山です。普段はCMや音響効果の仕事がメインですが、本日は、私のサラウンド初挑戦体験記をデモを交えてお話したいと思います。ロケーションは2006年9月から11月という長期ロケになりました。また事前準備としてその前に各地で開催された航空ショーを下見して「航空ファン心理」なども勉強しロケに望みました。ロケ地は航空自衛隊松島基地にある訓練飛行場がメインです。ブルーインパルスチームは自衛隊の広報に所属しパイロットの皆さんは、教官を経験した腕達者ぞろいです。

この曲技飛行シリーズの歴史は大変古く1987年のLD時代からローリング スカイシリーズとして現在まで10作品が継続しておりコアなファンがいます。HDで撮影を始めたのは、このソフトのひとつ前のイタリアチームのDVD制作からですが、5.1チャンネルサラウンドにしたのは今回が初でDVDの発売は3月末です。では、はじめにソフトを再生したいと思います。40分くらいお楽しみください。

デモ再生

桐山:まずこのサラウンド制作を担当するに当たり以下の4項目を基本としました。
1.限られた予算で何をメインにやるか?
ロケは週3回で一回の飛行時間はは、20分x3回また天候の変化など変動要素も多いのでロケーションが長期間になるのは予想していました。
2.ロケーションはサラウンド収録。機動性のある機材を自前で用意する。
3.音楽も10曲ほど使いましたが、これもサラウンドとする。
4.MIXもサラウンド環境を構築して実施。

ロケーション
自前の機材でサラウンド収録をやるということで私が選択したのはDAT2台による4チャンネル収録です。アンプ/DATはシグマSS-340x2とD10-Prox2です。同期はフリーランでカチンコあわせだけですが、特段問題なく4チャンネル録音ができました。マイクはゼンハイザーMD-441x4をオーダーしたクロスバー マイクホルダーに水平90度 仰角45度でとりつけ、全方位とすることでどこがフロント、リアといったことは考えずに収録しました。ではこれで収録したジェット機の素材と同じ音を2チャンネルステレオからMixで擬似的にサラウンド化した素材を聞き比べてください。

最初は:ダイアモンド テイクオフという飛行形態です。まずサラウンドで続いてステレオから擬似サラウンド化した素材です。

デモ:

私の感じではオリジナルのサラウンド音に比べてステレオから作ったサラウンドは水平面移動についてはそれなりに感じがでていますが、高さの感覚が出ていないと思います。

次に一機だけでロールオン テークオフという素材を同様にサラウンドとステレオからサラウンド化した音を聞いてください。

デモ:

次はレインフォールという編隊です。

デモ:

後方から前方に上昇編隊です。

デモ:

下見で航空ショーに出かけてファンの方の声を聞いてみると、みなさんどの編隊でどんな音がするかを大変シビアに聞き分けているということです。ですから映像は長玉で狙っていても音は、その飛行編隊にふさわしい音がしっかり捉えられて無いとファンは満足しませんので様々なポイントで収録することを心がけました。収録ロールはトータルで26ロールです。そのうち使えたのは数ロールでしたが。

2の機動性については、広い飛行場内を迅速に行動しなくてはならないのでセッティングを変えるといった時間がないためカメラ同録用は sanken CMS-10と7による小型4チャンネルマイクセットを1ペア用意してこれに対応、ゼンハイザーマイクの4チャンネルはオンリー素材録音専用と使い分けました。

今回の収録系統図を示します。HD-カメラへは、4チャンネルアダプターを経由して4チャンネル収録しています。

音楽のサラウンド
テーマ曲はサラウンドの定位を意識したアレンジで作曲、MIXしています。これ以外にもBGMが10曲ほど必要でしたがすべて新録できるほど予算がありませんでしたので著作権フリー選曲から選びこれを音響ハウスにてサラウンド化しています。前回は自前でサラウンド化したのですが、機材レンタルや時間を考えると専門のエンジニアに担当してもらったほうが返って結果も良いということでお願いしました。サラウンド化に使用したのはTC-S6000のアンラッププログラムです。バンドものよりオーケストラのほうが広がり感はを得ることができました。

MIXサラウンド環境の構築
1991スタジオは、基本的にステレオ制作にしか対応していません。いろいろ実験もしながらサラウンドMIXを行ってみたかったのでここに仮設でサラウンドモニター環境を作りました。図に系統図を示します。幸いサウンドクラフトのコンソールが8チャンネル ダイレクト出力を取り出せるのでこれを利用しました。モニタースピーカはGENELEC 8020x5とLFEは、7050です。アライメントはチャンネル当り85dBで調整しましたが、実際のMIXでは、75dBあるいは、家庭環境をチェックする上で60dBでモニターしています。

Pre-mix
映像編集を行っている段階に立ち会ってまず不要音声とタイミング調整を実施しました。映像はスモークというノンリニアで編集しこれには12トラック音声があるのでここでまとめ、データを1991のサーバーへ送ってもらいこれをプロツールズへペーストしています。ちなみに1991スタジオのポリシーは環境に配慮するということで極力媒体を介さずにサーバーでデータのやり取りを行っています。

Final mix
2006年の年の瀬12月23-26日で行いました。Pre-mix段階のトラック数は60トラックです。今回は長期ロケのおかげで音を聞くとこれが何の時の音か聞き分けられるようになっていましたので映像を見ても的確な素材を選択することができました。LFEは、パイロットとの会話からどんな状態のときが低音を感じるか。。。聞き取りをして要所要所のみに使っています。プロセッサーはAphex Big Bottom Waves IR-1というプラグインなどを使用しました。

制作を終えて
Final Mixは、試写をかねた外部ポスプロのマスターVCRへサーバー経由で送りマスターが完成です。Mixを終えて感じたのは、全編サラウンドとなったので、耳休めのポイントを作っておくべきだったという点です。ロケーションでは前半戸惑うことが多かったのですが、10月には行ってからは目的も絞れて、カメラマンやプロデューサともカメラアングルやパンニング、編集ポイントなどについてサラウンド音声を活かせるようよく議論するようになりました。予算が少なくても自分でやる気を持って取り組めばいろいろとできることはたくさんあるなあというのが終わってからの実感です。

沢口:桐山さん、どうもありがとうございました。質問をどうぞ。
Q-01:ロケーション期間はべったり3ヶ月という感じですか?
A:レギュラー番組もあるので週に3日出かけてまた戻るという繰り返しでした。
Q-02:26ロールのオンリーと編集済み映像はどうやってあわせたのですか?
A:クレジットがたよりで、長期間のロケでしたので映像をみればどんなときのどの音かが分かるようになりましたので、メモから素材を取り出すといった極原始的な方法です。
セッションファイルは全部で32GBの容量でした。
Q03:コックピット内の録音は?
A:コックピット撮影は、専門のカメラマン以外できません。小型カメラの2CH音声にパイロットの会話と室内音を独立して録音。モノーラルのコックピットから広がりを組み立ててました。
Q04:単独で録音したオンリー素材はありますか?
A:撮影優先で収録しましたので、まわりがうるさいときやコックピット内で着席する音などはオンリーで録音しました。毎回正確に行動している人たちなのでどこを使ってもぴったりシンクします。(笑い)
Q05:ブルーインパルスの音は想像以上に耳に優しい音ですが?
A:通常我々が耳にするジェット機の音というのは、戦闘用のFという機種ですがブルーインパルスで使っている機種はTという機種で練習用なのであまり耳をつんざくような音はしません。
Q06:4チャンネルのモニターは?
A:基本的にはフロントとリアの2チャンネルを別々でモニターしましたが、後半イヤフォンを2つ耳の両側へ配置して4チャンネルで聞きましたが、これでも十分感じがつかめました。
Q07:高くなると音はどんな感じで聞こえますか?
A:高くなると高域が無くなってゴーという低域だけになります。
Q08:試写+音戻しという方法は能率的ですが、もし手直しなど生じた場合は?
A:このシリーズを担当しているクルーは永年やっているので音に関しては我々を信頼してくれていますので手直しなどはありませんでした。試写にはブルーインパルス ファンネットと方々にも聞いてもらい、PRしてもらいました。彼らは、家庭でモノーラルで聞いている人もいますのでサラウンドで聞いたのは、今回が初体験ということもあり、大変喜んでくれました。
Q09:完パケはダウンMIXも作ったのですか?バランスチェックは?
A:今回は、サラウンド一本でいくという方針でしたのでダウンMIXは再生側に任せています。バランスチェックもスタッフでしましたが、特に問題ありませんでした。
Q10:収録時にはレベルは調整しましたか?
A:ジェット機のピークは前より排気音が大きいのでこのレベルに合わせたら後はそのままで録音しています。

桐山さんの初挑戦サラウンド制作は、これまでにもまして参加者に新鮮な感動と「そうか!それでできるんだ!!」という納得がえられたのではないでしょうか。なにもないところから手作りで作り出したサラウンド音響のDVDは、きっとファンの方々にも納得されることでしょう。寺子屋で話をする3日前から緊張で睡眠不足になったといっていましたが、丁寧な事前準備のおかげで参加者もいろいろなヒントをえたようです。 桐山さん、どうもありがとうございました。(了)

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