August 20, 2007

北京オリンピック 中国CCTV サラウンドセミナー

By Mick Sawaguchi 沢口真生(サラウンド寺子屋主宰)
中国CCTVスポーツ サラウンド セミナーから

[ はじめに ]
8月19-23日で北京中央電視台CCTVの招きでスポーツ サラウンド制作の基礎セミナーを行ってきました。その中での感想など皆さんへもレポートします。受け入れ窓口はCCTV制作センター音声部長の郭さんです。


1 セミナー概要
実践編を重視してこちらからこれまで録画していた各種スポーツHD-サラウンドを再生したいと考えD-VHSなる機種が入手可能か?打診しました。結果は予想どうり「もう古いフォーマットなのでない!」ではどうするか?
幸い今回TAMURAチームがBIRTV展示会で展示するためその機材に同梱で日本からAVアンプとD-VHSデッキを持ち込みました。カルネではJVC犬マークはだめなんだそうで、黒マジック。20日にスタジオで機材セットとサウンドチェック。今日中に終われば御の字という気持ちでしたので夕方16:00頃終わって一安心。再生モニターはMKとJBLの自動補正機能つき最新スピーカが用意され「好きな方でやってくれ!」というわけです。

21日は朝9:30に玄関に到着するとなんとそこに懐かしい2人の李さんが並んでいました。かれらは昨年の山東TVでのセミナーにも参加した北京メディア大学の先生でサラウンドの推進派です。そしてその後ろにはSANKENの小林さんと千葉さんも並んでいました。WMSマイクのデコーダのデモにきたそうです。10:00からCCTVスポーツ担当チーフのCHENさんがCCTVのスポーツ サラウンドへの取り組みの歴史と最近マカオで実験収録したバスケットNZ対中国戦をデモしました。

CCTVの歴史は以下のようだそうです。
シドニーオリンピックに参加して世界のレベルとの相違にこれではいけないと実感。その2004アテネやドーハ 中国国内 イギリスなどでの競技制作担当を通じて国際的なレベルにまで到達してきた。2007年春に北京オリンピックにむけた特別サラウンドミキサーチームを発足。「A-ONE」と言います。10名程のプロジェクトで北京オリンピック放送を担当する専任チームです。
卓球 テニス バスケット サッカー バトミントン バレーについてサラウンド制作の実践を行っている。IOCの技術責任者デニス氏を迎えての収音セミナーやDolby Europのサポートによるサラウンド収録などがこれまでの成果だそうです。みなさん!オリンピックの陸上競技には我々Made in Japan ATマイクが多く使われており嬉しい気持ちと、どういった経緯でそうなっているのか?知っていました。なんとデニス氏が元AT USAだったんです。縁とは不思議なものですね。出会いは大切です!

その後私の担当で午前中はPPTでの座講、さてはじめるか・・・というところでデッキとアンプのパワーが切れているのが分かりましたので「気をきかせてOFFにしておいてくれたのか?と思いきや220V-100Vのステップダウン アダプターが加熱でダウンしていたのです。別のトランスを捜すこと1時間あまり。でも参加者は良い休憩になって良かったようです。午後からは各種サラウンド番組のデモ そして残りの時間で参加者とQ&Aを行い17:00に終了。その後あの強い酒攻勢かと覚悟していましたら、「今日はメンバーが揃わないので22日にやろう」ということになり一安心。



ここで受けた私の印象は
● マイクは仕込めるだけ仕込んでチャンネルが増えるのは気にしない。
● 逆に日本のマイキングはなぜあんなに少ないのか?と質問
● 最適モニターレベルの調整やLFEといったことは気にしていない
● Dowmixは当然気にしていない
● 30名中サラウンドmix経験者は10%。聞いたことがある人は90%

音声部長の郭さんからは
● ステレオとサラウンド決定的な違いはなにか?と色々な人に質問するが納得できる応えをもらったことがない。沢口さんはどうおもっているのか?
● 音楽録音スタジオのコントロールルームでステレオとサラウンドを両立した音響設計をしたいのだがそれは可能か?
● ステレオからサラウンドを作れるような時はいつ頃来るか?
● サラウンドが普及するためには何が優先課題か?

といった質問がでました。残りの時間で2つの音楽録音スタジオと一つのPRE-MIX ROOMそしてマスタリングROOMを見学しました。480平方メートルの第一スタジオはフルオーケストラ対応で響きは2.4秒くらい。コントロールルームはNEVE VR-88 モニターはステレオがDynaudioカスタム サラウンドはMKです。マイクは世界中のトップモデルが何でもあり!エフェクターも同様です。第2スタジオはSONY OXFORDでスピーカは同様。


DAWはプロツールズ PCM-3348そして持ち込みでDSD録音とニーズに応じて対応しています。
チーフの李さんは2004年の広州でのセミナーにも参加しており中国でもトップクラスのサラウンド音楽ミキサーです。彼はアナログ派で自分のCD再生には第一スタジオでやってくれました。CDもJVC XRCDでないとやらないそうです。「マスタリングするとこちらではハイ上がりにしてしまうのでダメだ!」といってました。音声部長の郭さんがにやにやしながら案内してくれたのはマスタリングルームです。放送局のマスタリングルーム?そうですここでは自分たちの制作した素材を様々なスピーカやCD再生機で比較してベストな音を追求しています。マスタリングにはGML MANLEY等が積んでありスピーカは大中小タンノイでアンプはアキュフェーズとコード。超マニアックな機材選定はすべて郭部長が手配しているとこことです。「良い上司をもつといいですね」


[ 北京BIRTV展示会場から ]
翌日は中国版InterBEEの音声会場だけを見学しました。もはやハードは同じ!という時代ですね。ないものはないというくらいです。
サラウンド関連ではベイヤーがだしたヘッドトラック付きのサラウンド ヘッドフォン
サウンドフィールド社の小型ST-350マイクですかね。でも一番は山東TVに納入される隔壁構造の録音中継車!機材はスタジオと統一したようでユーフォニックスS-5とDynaudioモニターです。部屋はラック室とミキシングルームの2つでゆとりの広さ。ほかにも3台程大型OB-VANが出ていましたがそれらはステレオ対応でした。きっと山東TVのQUING QUINGミキサーはにんまりしていることでしょう。



[ まとめ ]
ついに22日の夜になりました。パイ酎の度数を何度にするか?と郭さんが店に聞いています。「一番高い度数の奴は何度なの?それを出してよ!」と言った感じ。で出てきたのは68度という国蔵というブランドです。
そしてみんなは一口乾杯ようの小さなグラスに次ぐのに私のまえにはワイングラスが用意されこれで飲め!というわけです。そして私がそのボトルを全部あければつぎに軽めの上海紹興酒をみんなが飲むから早く飲め!という雰囲気です。1995年にポーランドにロケで行ったときにクラコフという街で90度というウオッカで2階からころげおちましたが・・・またそれか・・・と覚悟を決めてなんとかボトルを開けましたが舌は完全麻痺 胃の中はチリチリいっています。でも真の友人であり男となるには中国では避けて通れません!


ホテルにどう帰ったか後半の記憶はないまま23日の朝をむかえましたが、まあ、無事な体であったことを喜びましたね。上海メディアグループの音声部長という人も参加していましたが、「次回は上海でこれをやろう」と言った感じです。みなさん胃の粘膜を鍛える方法はないですかね?


CHEN CHENの奥さんがなんと「サラウンド制作ハンドブック」中国語版を翻訳したひとりでした。感謝!(了)

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「サラウンド入門」は実践的な解説書です

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