November 1, 2003

第4回サラウンド塾 ラジオドラマサラウンド 糸林薫

By 糸林薫 (NHK放送技術局 制作技術センター ドラマ番組技術 音響制作)

2003年11月1日(土)、沢口真生氏自宅スタジオにおいて、第4回サラウンド寺子屋が開催された。ここで「Surround Sound for a Radio Drama」と題して講義を行ったので、以下にその概要を記したい。

はじめに

2003年10月10日から13日にかけて、米国ニューヨークで第115回AESコンベンションが開催された。このコンベンションには多くのセミナーやワークショップが開かれており、その中の「チュートリアル・セミナー」にパネリストとして参加した。
その時に講演した内容を日本語に置き換え、熱心にサラウンドを学ぶ寺子屋塾生に発表することで、サラウンドについて再検討した。


概要

NHKでは1980年代よりサラウンドのオーディオドラマを制作しており、ドラマにおけるサラウンド制作のノウハウを蓄積してきた。それらを体系的にまとめ、次の4つの視点から講義を進めた。
1.ラジオドラマの利点
2.成功への鍵
3.制作手順
4.結論


1. ラジオドラマの利点

視覚情報がない分、視聴者の想像力を最大に引き出せる。
サラウンドで制作することで、「リアリティー・感情・エネルギー・空間」をより強調することができる。
サラウンド番組では「モノラル・ステレオ・サラウンド」をうまく組み合わせることが重要になる。
今までのモノラルやステレオでの番組制作の経験がサラウンド番組制作に応用できる。


2.  成功への鍵

サラウンドで番組制作するために上司を説得しよう。
サラウンドをミックスするためのチャンスを作ろう。
サラウンドミックス経験者に相談して、彼らの忠告を聞こう。

世界の専門家と情報のやり取りをし、それを通じてノウハウをシェアしよう。


3. 制作手順

ラジオドラマにおける制作手順は次の通り。
セリフ収録

セリフ編集

生音収録/フィールドレコーディング

SE

音楽録音

プリミックス

ファイナルミックス


・ セリフ収録におけるマイクアレンジをいくつか紹介した。
・ サラウンドの音楽録音でのマイク配置をいくつか紹介した。
・ サラウンドでのSE制作の基本となるパターンを説明した。
・ 実際にサラウンドで制作したラジオドラマを視聴した。

2003年5月3日に放送された特集オーディオドラマ「怪し野」の一部を20分間上演。



4. 結論

サラウンド音声は我々にとって魅力ある音声表現である。
サラウンド制作のノウハウを皆と共有することが重要である。
サラウンド制作のチャンスを作り出し、それを逃さない。

ゆっくり着実に前進あるのみ。

最後に

米国AESでのチュートリアル・セミナーでは、SEの作り方について質問が集中した。また日本のラジオ事情についても、いくつかの質問を受けた。一方で、サラウンド寺子屋の塾生の関心は、サラウンド音楽録音に集まり、それについての質問が多かった。
サラウンドの興味の広がりを日本にも定着させるため、情報交換の場や、雑誌などの媒体が必要である。その意味でも、サラウンド寺子屋の存在意義は大変高いものがあり、今後もその活動を支えてゆきたい。

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