January 30, 2005

第20回サラウンド塾 パイオニアDVD-AUDIO 市川俊一

By Mick Sawaguchi 沢口真生
2005年1月30日 三鷹 沢口スタジオにて
講師:市川俊一(パイオニア)
テーマ:パイオニアDVD-AUDIO制作
記録:木村佳代子

沢口:2005年第一回目の寺子屋は、永年パイオニアで高品質サラウンドソフト制作をプロデュースされた市川さんです。こだわりの歴史とサラウンド制作の取り組みの歴史やこうした新たなソフト制作を行う場合のエンジニアの課題などを歴史を追ってデモしていただきます。なお、最新作DVD-Aでの作品についてはスイングジャーナル2月号に詳細が掲載されていますので、ご参照ください。




市川:パイオニアの市川です。今日は、私の高品質サラウンドソフト制作の道のりとその間に感じた課題についてデモを歴史順に再生しながらお話したいと思います。まず、サラウンド音響をソフトに本格的に導入したいと思ったのは、1993年にレーザーディスクの中にDOLBY AC-3というデジタルサラウンド音声をいれることから取り組みました。その第1作は1995年「いまそこにある危機」でした。それまでDolbyサラウンドという方式は、映画音響の中で取り組まれ、3-1方式のサラウンド音声がアナログで記録されていました。アメリカの映画関係者もこうした方式は、あくまで映画館での再生を前提に制作していたのですが、これが家庭においてもデジタルのままでソフト化出来ることをアピールさせた出来事だったとなつかしく思います。当時このレーザーディスクでのデジタルサラウンド音声を普及させるべくハリウッドの映画関係者と制作のための交渉やCESショーでの日本メーカのデモに奔走した思い出があります。映画ソフトだけでなく、サラウンドのすばらしさを電気店やオーディオ店で知ってもらうためには、さまざまなデモソフトをメーカとしても提供する必要がありました。そのため私自身がその役目を担うことになったのです。DVD-Aでの本格的な制作を開始したのは、
1997 / 7 高田みどり パーカッション演奏(96k/24bit/5ch) サウンドイン スタジオ
1997 / 9 中本マリ 擬似ライブ風景収録(96K/24bit/4ch) サウンドイン スタジオ
1997 / 11 ディキシーライド ジャズ演奏 (96k/24bit/5ch) パイオニア スタジオ
などの素材を多く収録しオーディオフェア(当時)、WCES にてデモに使用しました。

その時のDVD-A制作の基本スタンスは、民生用ハードメーカーでの開発をサポートできる高音質な素材の提供。
フル仕様の静止画を掲載 (80枚~150枚程度)
収録からディスクまでのピュアな伝送路     
音楽性よりも音質にウエイトをかける
新しい方式に常にチャレンジする。(96kHz/24bit5ch.以上MLPエンコードでは6ヶ月先行しソフト制作各社のDVD-Aへの参入を促す活動としました。

1999年から5.1CHサラウンドでの音楽制作に取り組みましたが、大きな課題に出会うことになります。すなわちレコーディングエンジニアやサウンドデザイナーといった人々が従来の2-CHステレオでの手法や録音方法から脱皮することなく我々が意図する制作とぴったり波長がなじまないということに直面したわけです。どうしても従来のL-Rという定位から抜け出せないためセンターチャンネルを均等に使うと言うことにおおきなためらいがありました。そんななかでサラウンド音楽に興味のあるアーティストやエンジニアと巡り会う努力を重ねながら今日に至っています。

録音機材について我々は、高品質を目標に試行錯誤の結果現在は、以下のようなシステム構成としています。ですからこのバランスはラジカセで聞いてもらうことは前提にしていません。あくまで高品質サラウンド音楽の再生を前提としたシステム構成です。収録はアナログにこだわり、マイク出力は単独にSONOSAXマイクプリを経てSTUDER A-820 24トラックレコーダへ録音します。トラックダウンはSTUDER A-820からミキシングコンソールの6-CHマスター出力をD/Aし。マスターレコーダGENEX GX-8500へ録音。モニター系はこれをdcs でA/D し6チャンネルをカスタム制作のモニター切り替えboxを経由してATCのモニタースピーカでモニターしています。ロケーション録音では、これらの機材すべてを移動搬入しますので多いときは1tもの機材になります。

DVD-A制作で苦労するのは、すぐれた音楽が録音できてもこれにマッチした静止画映像をどのように組み合わせるか?にあります。現在まで色々な試行錯誤をおこないましたは、いまのところバランスがいいのは、すぐれた写真や絵画など映像として一定の価値をもったものとサラウンド音楽をコラボレーションすることです。今後DVD-A がより記録容量の大きな媒体へと進化していけば次は、映像も動画でハイビジョン品質のものにサラウンド音響を組み合わせることになるでしょう。(了)

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