抄訳:By Mick Sawaguchi 沢口真生
・映画音楽にどのように従事してこられましたか。
Malcolm Luker:私は1983年に「ムッソリーニ」と呼ばれるTVプロジェクトで知り合った、Georgio Moroderを通して映画に携わりました。「ムッソリーニ」では多くの優秀なアメリカのTVスタッフと知り合いました。私がDan Wallenという青年(彼はある意味、私の良き師でもあるのですが…)と一緒に映画の仕事をしていた時、映画音楽について衝撃的なひらめきが起こりました。ある日彼からオーケストラレコーディングのヘルプを要請され、手伝い、そのあと彼は、レコーディングに対する私の考えを質問攻めしてきました。彼からの質問でマイクはどのように働くのか考えさせられましたし、Dolby Stereo Boxで音声をデコードした時、意図した表現が劣化しないための攻略法を教えてくれました。私は彼の考え方を取り入れ、それを基礎にし、その後の私自身の方向性が決まりました。Danのような私を助けてくれる人がいて、私はとても幸運でした。というのは、たいていの人は、どうしてそのようなことが起こるのか教えてくれないからです。私はとても感謝しています。
・その時はステレオの仕事をされていましたか?それともサラウンドでしたか?
私はドイツでステレオのクラシックレコーディングの仕事を始めました。ドイツではPlacido Domingoの二組のアルバムを制作しました。実をいいますと、1988年にL.Aで開かれたオリンピックのアメリカ国歌は、私がLSOと一緒にレコーディングしました。
・サラウンドでのオーケストラレコーディングで、独自のアプローチがありましたらお聞かせください。
昔、私はX/YやM/Sそしてspot microphonesといったGeutsche Grammaphone(ドイツグラムフォンレコード)のアプローチを使っていました。しばらくして私はDecca Treeを見つけ、それを使って何ができるのか分かりました。しかし、それを吊るすことはやさしいことではありません。というのも、吊るす高さと同様に、マイクお互いの距離が鍵になり、それはそこの空間に大いに関係があるからです。
今、私はいつでもDecca Treeを使っています。extreme Lとextreme Rに私はAB方式を使い、それをサラウンド成分にももっていきます。また、サブウーファートラックにおくものは別個にレコーディングしています。それが全体の鍵になるからです。私はLchとRchからSWch成分を引き出すことはしませんので勝手に80Hz以下からSWch成分を引き出すことはありません。
別個にレコーディングしたものをサブウーファートラックにおいていますのでその結果は驚異的です。
・omniマイクを使いますか?それともcardiodマイクを使いますか?
私はその両方のコンビネーションで使います。しかし、それは完全にはominiではありません。数年前、私はDirk Braunerというマイクロフォン設計者に会い、彼は私にVM-1の初期バージョンを送ってくれました。私はそれを多くの仕事で使い、その感想を報告しました。6ヵ月後、私たちは何とかしてそのマイク5本を集めました。そのサウンドは本当に、本当に素晴らしいです。<Dirk Braunerマイクの美しいところは、マイクがひろった音の特性が正確なので、そのアプリケーションには何が適当かと考察できる点です。>
・何本のマイクを使いますか?
5本のBraunerマイク(2本はサラウンド用に吊るします)とsub用に1本のTLM170(subに適したところに置きます)を使います。そして私は正面に1本のマイクを使い、もう1本別に半分ほど下げた位置にviolinセクションのマイクを吊ります(このとき、高さと距離からくる位相差を正す必要があります。さもないと泥沼にはまります)。そしてviolaに1本のステレオマイクを使いますので、このtreeに関して位相問題は起こりません。木管には私は4本のMKH-80番台を使います。そしてhornにはSM-69ステレオマイクを使います。
マイクをセッティングすることはとても重要なことで、まるで私が数学者と建築家に同時になるようなものです。というのは、世界の70%はまだ4:2:4だからです(Left、Center、Right、そしてMono SurroundチャンネルからなるDolby Stereoは2チャンネルステレオにエンコードされ、そのあとLCRSの4トラックにデコードされます)。すべての国でディスクリート5.1になったら素敵ですが、残念なことにほとんどの国がまだそこまでいっていません。DVDは素晴らしいですが、アメリカ国外ではまだ新しいテクノロジーなのです。映画館に関する限り、音声は変化するという事実を知っていなければなりません。マイクを置いたときに、何が起きるのか私は正確に知っていますそれはDan Wallenから教わった哲学の一部なのです。
・mixするとき、ユニークな方法でリバーブをセッティングするとお伺いしていますが?
リバーブの使用については多くの事柄を含んでいます。もし5.1サラウンドをmixしていて、ステレオリバーブを使うことができたら、すべてがワンダフルになるでしょう。でも、たいていがそうはいきません。というのは、Dolby boxを使って仕事をするやいなや、あらゆる種類の音がサラウンドチャンネルにいってしまいますし、全体のサウンドは劣化してしまいます。私は(Lexicon)480を好んで使います。というのは、それが私にとって依然、ベストであるように思うからです。入出力を別々につなぐので、サラウンドにもっていきたいものに、独立したsendによって、別々のリバーブをつけることができるのです。私は480をmono splitsで使いますので、2入力4出力になります。たいてい、Send1は1台目の480のmachine1に送り、フロントの左手側に定位させます。センターには、Send2をmachine2に送り、その出力両方を中央におきます。そして、Send3は2台目の480のmachine1に送り、フロントの右手側に定位させます。Send4は2台目の480のmachine2に送り、これだけはstereoでサラウンドに定位させます。もちろん、2台の480を同じに設定します。これで位相ずれ・分離のない完璧なサラウンドリバーブの完成です。同じユニットならばそのような問題も起こりません。
・サンプラーをどのように扱っていますか?
最近の多くの若者は「19Percussion」(サンプラー)を使っています。しかし、不幸にもその音はサンプラーにしか聞こえません。[サンプラー]の音をより大きくさせるために私は、その音をスタジオに送り、Left、Center、Rightとマイクをセッティングします。ケースによっては、空間とサイズを出すために、2本のサラウンドマイクさえセッティングするのです。最近のスコアミクサーはフィフティフィフティでサンプラーを使っているようですが、平面的な音にどうしてもなってしまいます。実際に使ったサンプラーが少なければ少ないほど、空間的広がり感は増すでしょう。その結果、ダイアローグと効果音に対して音楽が聞こえてくるのです。実際、サンプラーはあなたのミクシングから深みを取り除いてしまい、結果あなたは効果音にたいして終わりのない戦いを始める羽目に陥るでしょう。広がり感があれば、音楽と効果音は一緒に、むしろよいものとして、生きてきます。
・何に録音していますか?
私はEuphonixのR-1を気に入っています。そしてマイクをClass Aのマイクアンプに直接つなげます。マイクアンプについていいますと、私はGraceに恋に落ちたくらい夢中です。いくつか理由があるのですが、BrunerのマイクとGraceのマイクアンプのコンビネーションがすばらしいからです。これらをふたつの映画で使いましたが、私はその結果にとても満足しています。
・レコーディングと映画、両方にたくさん関わって以来、そのふたつの違いは何だとおもわれますか?
それは全く違うアプローチですね。仕事に着ていく服から違うと私は思います。私はロックバンドのギタリストとして仕事をはじめたのですが、アンプのボリュームを最大にチューニングするのが好きです。長年、あらゆる種類のロックやジャズレコーディングをしてきており、私はそのすべてが好きです。特にそれが良くできたときはなおさらです。しかし、私はオーケストラのレコーディングの仕事も愛しています。というのは、80人の人が一斉に声を出した時、それはまるでボリュームを11の位置にチューニングした2つのMarshallの正面に立っているかのようです。私はそれを愛しているのです。それは情熱です。単なる仕事ではないのです。(了)
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