By.Mick Sawaguchi
日時:2010年2月14日
場所:日東紡音響エンジニアリング株式会社 音響研究所サウンド・ラボ
講師:崎山安羊、佐竹康(日東紡音響エンジニアリング株式会社)
テーマ:日東紡 AGS音響実験スタジオSound Lab見学と新作サラウンドソフトの試聴
沢口:2010年2月のサラウンド寺子屋は、2009年秋に設置された、日東紡音響のあたらしい拡散吸音体AGSを主体にした実験スタジオ、サウンド・ラボの見学と体験試聴です。いい響きとは何か?を追求した結果を、日東紡の崎山さんと佐竹さんから解説していただき,いろいろな音も実際に聴いてみることにしたいと思います。また休日に関わらずお手伝いいただきます山下さん、宮崎さんにも感謝申し上げます。では、崎山さん佐竹さんよろしくお願いします。
日東紡の概要説明
崎山:日東紡音響、音空間事業本部の崎山です。よろしくお願いします。日東紡はスタジオを作っている会社だというのはご存知かもしれませんが、スタジオ作り以外にも以下のような事業部門があります。
・音空間事業本部:建築の建物を作る
・システム事業部:ソフトウェアやハードウェアのシステムを作る
・DL事業部:航空機騒音の測定基地があります
・コンサルティング事業部:測定や音響のコンサルタント
・研究開発部
・営業推進部
91名の会社で墨田区の両国に本社がありまして、千葉北に、ここは第2研究所で少し離れたところに第1研究所があります。もう一つは大阪営業所というのがあります。それと関西国際空港に近いところに航空機騒音のDL事業部があります。去年一昨年から名古屋に営業所をつくりました。第1音響研究所というのが、車が入るような無響室、残響室があります。そこでは色々車の測定もしますし、スピーカーや吸音拡散体もそこへ持って行って測定したりします。第2研究所が、サウンド・ラボの隣で、物性の研究ですね、色々な素材の流れ抵抗などが計れる設備で、なかなか日本にはありません。
● 音空間事業本部というのは建築ですので、テレビスタジオ、シアター、レコーディングスタジオ、試聴室、それから皆様にはあまりなじみないかもしれませんが無響室や実験室を作っています。無響室・残響室はメーカーさんの研究施設になります。車メーカー、電気メーカー、空調の室外機・室内機、それから事務機は海外輸出が多いので、海外仕様の基準に則るように測定しながら海外に出していくという格好になります。
● システム事業部なんですが、これは「Noise Vision」といいまして、車の中にマイクがいっぱいついています。それからカメラもいっぱいついています。これを車に乗せて、例えばピラーの風切り音が大きいなとか、エンジンの方が大きいなとか、そういったことが測れるようになっています。これをスタジオで利用しますとどこをどう改良すればいいのかというところがわかります。例えばサラウンドだと卓の反射などがありますが、そういった反射も観測することが出来ます。この写真がシステム事業部の流れ抵抗などを測る機械です。これも日本では教えてくれる先生がなかなかいないので、ヨーロッパの先生などに教えてもらっています。それと移動装置ですとか、この写真は無響室なんですが、よく見ると車のボンネットが見えるんですよ。要は車メーカーさんはこのボンネットの遮音がどうか、そういった測定もされます。
● コンサルティング事業部ですが、これは音の測定とコンサルタントをやっています。例えば車が走っていましてビルが建っていると、そこでどういった交通騒音があるのかというような予測計算ですね。また工場騒音ですと、このへんが(騒音が)大きいから全部対策するのではなくここを重点的に対策しよう、などそういったことをやっています。
● DL事業部ですがこれは航空機騒音ですね。この写真のものの中にはXYZの方角を見られるマイクが入っていて音圧を測っています。こちらの写真の機械は最近の飛行機は電波を出していますから、そういったものでどの飛行機が通ったか識別しています。それで、色々なところに測定点があるのですが、データを集計しますと飛行機がどういう高度で、どういう風に通ったかというのが音響的にわかります。全国でうちの測定器の入っている箇所のデータを集計することで飛行機の音の測量ですね、そういったことが可能です。簡単でしたが、会社はスタジオ以外にもこういったことをやっていて、そういった技術もスタジオでも使っていますと言う紹介でした。
Q:無響室は、製品のテストをするのですか?それとも無響室自体を施行するのですか?
A:両方です。委託研究業務といって我々にメーカーさんから委託されるものや、無響室を作る、両方です。
Q:流れ抵抗とは空気の動きですか?
A:例えばグラスウールがありますよね、あれは音を吸いますが、その中で細かいところを音が通って出てくるんですね。主に車のボンネットの内側に張ってある吸音材に関連してくるのですが、そういう物性を測ることによってシミュレーションが出来るんですねそのデータをつかって。例えば近いところでいうと中継車は遮音もとりたいし軽くしたいと相反しますよね。その場合にこういう材料をこういう風に並べるとこれくらい遮音が出来るなとシミュレーションできるのですが、そのためにはまずそういう物性の測定からやらないと出来ないんです。あとは車メーカーさんに材料を納品するメーカーさんですね。
Q:航空機騒音測定の技術は進歩していますよね?
A:進歩しています。実は航空機騒音の調査のやり方が変わりました。法規が変わったんですね。今までの測定は、簡単に言うと騒音計しかなかった頃の規格だったんです。ですが今はデジタル化出来ますので、時間軸上で追っていけますから航空機騒音の測定の仕方が変わりましたので、そういう意味ではDL事業部は忙しくなっております。全員が技術/営業というマインドでやってます。
それでは,本題の拡散吸音体AGSについて佐竹の方から説明します。
拡散吸音体AGSとは?
佐竹:Acoustic Grove System(AGS)という新しい拡散体と試聴室のご紹介を佐竹からさせていただきます。
Acoustic Grove Systemの名前の由来ですが、Acousticとはご存知のように音響です。Groveというのは林とか木立という意味があります。森林の中の心地よい空間の響きにヒントを得ながら室内で、どうやって持ってきたらいいかというところから発生した、新しい部屋の中の調整機構ということで名付けました。実際に森の中ではどういう音響になっているかというのはだいぶ古代から学者さんたちが研究されていまして、日本でも森林空間の中の音響ということで、かなり研究が進んでいます。我々の先代の社長が京都の北山杉の森の中の音が非常に心地よいということは常々言っておりそういったバックグラウンドがありまして、なんとか部屋空間の中にもそういった心地よい響きを持ってこられないかということで、壁面全体を無数の柱で囲んで音を調整するという機構を開発しました。
[小規模な空間の音響設計上の課題]
佐竹:スタジオという小さな空間の中で、音響設計ではどういった課題があるかというと大きく3つといったところです。
1. 低音域の室モード(定在波)対策。みなさん必ず悩まれる部屋のモードの問題。
2. リスニングエリアの拡大。場所による差をどれだけ無くせるかというのが課題。
3. 周波数バランスの良い吸音処理。グラスウールといった吸音材は、高い方だけが吸われてしまうので、
どうやって低域と高域をバランスよく吸音処理をするか。
さらに2チャンネルとマルチチャンネルで音場の表現が飛躍的に増えるということも考慮して、それに対して建築はどうあるべきかというのを考えなければなりません。2チャンネルはLRの間で定位と音像を表現するんですけれども、サラウンドはアンビエンスだとかサラウンドのパンニングだとか、要はチャンネルの個数が増えるのでそれぞれのスピーカーの間の部屋の条件はどうしたらいいかというので先ほどのAGSの開発のバックグラウンドとなるわけです。
今までは吸音、反射というような部位を組み合わせて部屋を調整していました。例えば目標となる残響時間になるように吸音面と反射面を組み合わせて部屋の残響時間を合わせ込む音響調整をしているのですが、実際に吸音面と反射面が明確に切り替わるところで、境界条件ががらっと変わると特異な反射波が生じるという現象があります。これはホールなど大きな空間ではそれほど問題にならないのですが、モニタールームのように比較的壁までの距離が近い場合は例えば反射と吸音の間を耳が移動するだけでかなり音場が変わったりという問題点があります。これをいかに少なくするかというのが今回のAGS開発のコンセプトということですね。壁面の境界面をいかに滑らかにするか。音響的な言い方をすると音響インピーダンスをいかにスムーズに変化させるかという言い方になるんですけれども。これをどういう風に実現するかというところで先ほどの柱が出てきます。壁面を反射面、吸音面と区切るのではなく、無数の柱を配置して壁を取り囲むことで徐々にインピーダンスが変わるような壁面を構成しようとこういう形になりました。
この写真は最初にこのAGSを導入したスタジオの例です。ミキサー席の両側壁と後壁にAGSを配置しています。コンセプトとしては吸音面、反射面を明確に切り分けない連続したサーフェイスのデザインで、高い方から低い方まで滑らかなモニター空間を狙おうというデザインになっています。
AGSで得られる効果
[効果1. 室モードの抑制効果]
佐竹:このグラフは灰色の四角が7m x5mの部屋を想定した模型実験の結果で音圧分布です。赤いところがレベルが高く青いところが低いところです。実物換算で80Hzのモードがたっています。それに対してAGSを1面に置きますと、直近のあたりのピークディップが緩和されるという効果が出ています。これはいままでの吸音トラップだとかグラスウールだとかを設けず拡散の効果だけでこういった減衰を得ることが出来ます。今度はそれが時間と周波数でどういう風に変化していくかを見てみたのですが、全く何もない部屋と両側2面にAGSを設けた部屋と4面にAGSを入れた場合の時間周波数特性です。全く何もない真四角な部屋だとやっぱり低域のモードの尾ひれがついて「ウワウワ...」というのが残るんですけれども、それがAGSを配置すると減衰を早める効果があります。
[効果2 拡散反射性状 ~中高域の緻密な響き~]
佐竹:真っ平らな硬い壁とAGSを配置した壁とに音波を当てると、どういう風に跳ね返るかというのをコンピュータシミュレーションによってアニメーション化しました。まずは硬い壁の反射です。2KHzの純音が出ましてこの波面が平らな壁に当たって、そのまま位相の揃った波面がひっくり返っています。いわゆる鏡面反射という強い反射を起こします。一方AGSの方なんですが(AGSに)入射した音波が細かく砕かれてレベルがぐっと下がって小さな反射が部屋全体に均一にわたっていって時間的に長く弱い反射を返すという効果があります。
では実際にこういった反射があるのかというのを、当社の無響室で実物大のモックアップをつくって測定しました。音源はシングルコーンのスピーカーで3mの距離から音を出して跳ね返った点、壁面の前2m x1mの間を10cm間隔でマイクロフォンを移動しながら、測定しどういう風な波面が観測されるかを実測データからアニメーションしたものを流します。はじめにフラットな壁面です。丸い波面がそのままひっくり返ったような強い反射を起こします。そのまま待っていると、また弱い反射が返って、また返ってくると。これはスピーカーのバッフルの面と壁面が平行面なのでその間で往復の反射が起こっていると。こういった現象が確認されました。続いてAGSの方です。同じように丸い波面が入って、もう波面が揃わない、煙のような形でじわじわと返っていって時間的にもかなりのびているのがわかると思います。だんだん減衰していってスピーカーとの間のフラッターエコーは起こらないと。こういった現象がとらえられています。この結果を模式的に概念図に書くとこちらの2つのようになるかと思います。左側がフラットな硬い壁の反射、右側がAGSの拡散の反射です。こういった硬い壁の強い反射音がくると直接音と反射音が一緒になると音色を変化させてカラーレーションが起こります。いわゆる、くし形フィルターという現象になります。この時間差が、かなり大きくなると、フラッターエコーのようになったりとか、ディレイがかかったような音になります。それに対して拡散反射ですと直接音の周波数特性に影響を与えない要は色づけが少ない微細な響きがつくというような形で緻密な響きというような表現を我々はしています。
先ほどの無響室のスピーカーから(壁面に)当たって跳ね返ってきた、1mの直近での特性のグラフがこちらです。まずパチンと大きな直接音がきて、2波目が-6dBくらいのこれは距離減衰で、硬い壁では減衰しないので倍距離で-6dBの反射が起きています。その間さらにスピーカーから返ってきた音でフラッターエコーが観測されています。それを周波数分析しますとコムフィルターのようなかなり周波数特性的にキャラを持つ音になってしまいます。それに対してAGSは-20dB以下の弱い拡散派がじわじわと返ってきますので、周波数の変化が非常に少なくて調節音の色づけが非常に少ないというデーターが観測されています。
拡散体の配列がなぜランダムがいいかというと、単純に平らな壁だとパチンと一発返ってきて結果音に癖がついてしまいます。それに対して拡散体を均等に並べた場合は、波面が鱗のようになって時間間隔とレベルが変わってきますので周波数特性の変化が少ないという利点があります。そして、なぜ丸をつかったかというと音色にキャラがつきにくい利点になっていると思われます。これは今検討中なんですが、単純な硬い壁が(グラフの)赤、青いのがAGSのような拡散体です。音源は1KHzと2KHzです。グラフの真ん中が90度、まっすぐ返ってくるところでそれぞれ左右に円弧を描いて0度から180度になります。このグラフがより平らになれば、一様に反射音が返るというようなグラフです。拡散反射の方が均等に音を返すということがわかっていて、今これを細かく検討しているところです。
[効果3. 吸音特性の制御]
佐竹:こちらのグラフがいわゆる残響室法吸音率といって、この線がグラスウールの吸音率の周波数特性です。横軸が周波数、縦軸が吸音率です。グラスウールというのは壁面に接地して使ってしまうと(周波数の)低いところはほとんど吸わなくて高い方はぐっと吸っていわゆる高域の吸音が過多になる。なのでグラスウールに囲まれた部屋は非常に詰まった感じに聞こえます。
AGSですと(残響室法吸音率が)だいたい0.2~0.3と、ほぼフラットな特性があります。部屋の目的によって部屋の響きを変えたい場合は、AGSの中に吸音材料を組み合わせることによって表面の仕上げは変えずに響きの量を調整するということが出来ます。サウンド・ラボの試聴室は、だいたい残響時間は500Hzで0.3秒ないくらいですので、今までのコントロールルームとしてはちょっとライブかなと。リスニングルームとしては少しデッドかなというそれくらいを今狙って調整しています。AGSの導入事例ですが放送局のポストプロダクションや音楽プロダクションスタジオさんのトラックダウンルームで導入しました。
Q:一部分でも効果があるものなんですか?
A:そうですね。こちらは後の試聴でも聞いてください。
佐竹:AGSをユニット化して 「SYLVAN」と名付けて一般のオーディオショップさんなどで販売されていますので、そちらをご紹介します。横幅が40cm、縦が1.4m、奥行きが20cmでそこに10本の径の違う柱を並べて部屋の調音に使っていただいています。
ホームシアターですがスピーカーの両脇と内側にSYLVANを置いて広がり感奥行き感の再現を調整しています。
デモルームでサラウンドセットを組んでいるところでSYLVANの実験をしていただきました。結構部屋はライブなんですがライブのところに置くだけで効くのかという疑問があったのですがフロントとリアの間に各3本とL、RとCの間に1本ずつの計8本置いたのですが、かなり効果があり臨場感や、拍手が生々しくなったりすごく変化があってご担当の方にも喜んでいただきました。
あとは音楽を聞くのではなく演奏する空間でピアノの練習室です。かなり狭く8畳くらいのグランドピアノがはいった部屋なんですが、ピアノのふたを開けた面の前に1本置くだけで、響きのタッチが非常にわかりやすくなったとピアニストの方からコメントをいただいております。
ここサウンド・ラボ、大きい方の部屋がいま試聴室として使っている空間で、もう一部屋小さなブースとして同じAGSを配置しています。広さが床面積で約53平方m、高さが3.6m、表面積が200平方mくらいでAGSユニットが61平方mくらいです。壁面の約3分の2以上をぐるっと取り囲んで360度配置しています。ブースも同じく360度配置していますが(AGSの)奥行きを少し変えて部屋の有効を広めにとっています。目的としては試聴室かブースに楽器や卓を持ち込んで録っていったりといった実験ができるようになっています。またぐるっとカーテンをまわせるようになっていましてAGSの効果を消して試聴が出来るような環境を整えています。システムの概要ですが、スピーカーは当社で扱っているNESスピーカーというものでダブルウーハータイプでトールボーイタイプのものを5本そろえています。サブウウーハーはLRの両脇に2本使っています。アンプはNESの自社製のものを使っています。
Q:サラウンドサークルの大きさはどれくらいですか?
A:今は2.9mです。
Q:AGSの拡散体の大きさや間隔などはどういう理屈で決められているのですか?
A:円柱の径によって拡散できる周波数が数式で求まるので、奥行き方向に6段階で径の太さを変えています。
Q:径の組み合わせはスタジの条件などにより変えるのですか?どこの設置でも同じですか?
A:環境によってカスタマイズします。SYLVANは決まっています。
Q:同じようなコンセプトのBlackbird Studio・Studio Cとはどうコンセプトが違うのですか?
A:あそこはだいたい1.1m~1.2mくらいの奥行きで全帯域を拡散させるという発想だと思うのですが、日本ではそこまでの空間をとれないことが日本では多いですよね。それに対してAGSは壁厚を薄くして、いかに周波数帯域を変えずにナチュラルに返したいというのが発想の原点です。均一に拡散させるという起源は共通ですが手段が違うのと、聴感上の話があって人が心地よく聞こえるとか、ナチュラルに聞こえるというのは何だろうというのが今研究しようというところで、実際に聞いていただいてほかの拡散体に比べて非常に心地よく、ナチュラルに音楽的に聞こえるというコメントをいただいています。
では、解説は,これくらいにして実際に音を体験してみたいと思います。
試聴室音体験
崎山:スピーカーがサラウンドで配置されていますが、まずはステレオの音源で再生します。この部屋はAGSが前後左右に配置された音響実験室です。
本来はAGSがない状態と設置した状態を聴き比べて頂きたいのですが、今回はカーテンでAGSを覆うことで効果を確認してみます。
まずカーテンをしめた状態で聞いて頂きます。この部屋では拡散音場を目指していますが、床が平面でスピーカーの側面も平面で反射面です。それがどう変化するのか、また、実際の調整室ではコンソールや機材がありデコボコですが、ここでは床が丸見えです。(カーテンを閉めながら)だんだん私の声が変わってきたと思いますがこのように変化します。これから、ステレオでデモしますが、サラウンドのセンターチャンネルのスピーカーも反射面になってことに気ずくと思います。先程のご覧頂いた、製品の柱状拡散体のSYLVANも2個置いただけで結構変わります。この実験室は多目的で、調整室・リスニングルーム・楽器集音の実験として音場を調整でき、現在は調整室に近い状態に調整しています。
Q:木の素材は何でしょうか?
A:素材はタモで、天然木そのままですと狂いが出ますので、集成材を使っています。
カーテンを閉めた状態で、Alice Sara Ottのピアノソロの「La Campanella」を聞いてみます。
(デモ)
次にスピーカーの側面も反射面なので簡易的にフェルトで覆ってLRのステレオがどのように変化するかを聞いてみます。
(デモ)
鮮明度が増したことがお解り頂けたと思います。
次にセンターンチャンネルのスピーカーをフェルトで覆って影響を聞いてみます。
(デモ)
センターチャンネルの影響がお解り頂けたと思います。
だんだん吸音の方向に行きましたが、次に、SYLVANを設置してみます。
(デモ)
空間の広がりや楽器の本来の音に近づいたと思います。
次はカーテンを開けて聞いてみます。(カーテンを開けながら)私の声が自然になってきたと思いますが、吸音性の部屋ですと音源の位置ははっきりするのですが、バランスが悪くなり、また、空気感がなくなります。正面はスピーカーがあり密度が高くなりますので、カーテンを閉め吸音してAGSの音を聞いてみます。
(デモ)
空気感や前後感(奥行)やピアノの胴の鳴りが聞こえてきます。一番最初の吸音した状態と比べて左右のバランスが合ってきました。
次に全てのカーテンを開けて聞いてみます。
(デモ)
スピーカーの後ろのカーテンも開けると2次元的な音像です。
次はサラウンド音源で聞いてみます。(スクリーンを下ろす)DTSのデモディスクより「ボーンアイデンティティ」です。センターチャンネルにセリフ、効果音も細かく沢山入っています。特にシートベルトの音やエンジン音を聞いて下さい。
(デモ)
次に5本のスピーカーをフェルトで吸音してみます。特に最初のセリフの聞こえ方に注意して聞いて下さい。
(デモ)
セリフがはっきり聞こえるようになり、エンジンの音の輪郭がはっきりしました。
次はSYLVANを2個(LとC、CとR間に)設置した状態で聞きます。
(デモ)
次は、正面のカーテンのみ閉めて聞いてみます。
(デモ)
最初のシーンでの車内のエンジンのアイドリング音も聞こえるようになりました。
次はカーテンを全部閉めて小澤征爾指揮のベルリン・フィルを聞いてみます。
(デモ)
次は(5本の)スピーカーをフェルトで吸音してみます。
(デモ)
チャンネル間のセパレーションが良く楽器の位置がわかります。
次はSYLVANを2個(LとC、CとR間に)設置した状態で聞きます。
(デモ)
最後にカーテンを全て開けて聞いてみます。
(デモ)
これで聴き比べは終了です。
沢口:崎山さん佐竹さんどうもありがとうございました。DVD-AudioやSACDの動きを見ていてほとんどの方が音楽のサラウンドソフトはダメじゃないかと感じています。今日は、ブルーレイMUSICという分野を開拓している2Lの音楽サラウンドを聴きましょう。2009年11月のInterBEEにプレゼンターに来て頂きました。ブルーレイの登場で容量の大きい(高品位)ものが可能になりました。また、高品質の配信ビジネスも始まっています。なおかつ、これまでのCDユーザーに向けても両立性のあるマルチ展開できるビジネスモデルが2009年から始まりつつあります。2Lは、たった3人のレーベルですが、取り組もユニークで音も素晴しいですね。収録方法は、5本のワンポイントサラウンドマイクを使い、DAWはピラミックスで、フォーマットはDXD(Digital eXtream Definition / Fs=352.8kHz、24Bit)方式です。現状のPCMフォーマットの最高の状態でマスターを作り、ブルーレイには192kHz24Bit、配信は96kHz24BitでMP3やCDやSACDでの販売もしています。これはCD以降の展開のひとつのヒントとなると思います。
(デモ)
沢口:ちなみにこのブルーレイディスク、どの位売れていうのか、みなさんの気になるところだと思います。なんと1万枚以上売れてるそうです。
Q:日本でも販売していますか?
A:はい。日本では、キングインターナショナルが販売しています。大きなカスタマーはアメリカが多いようで、6割位アメリカだそうです。
沢口:次に、モンスターミュージックのジョージ・ベンソンの作品です。これは、ブルーレイ(ディスク)ではないのですが、新しい試みでCDとSuperDiscと呼ばれるDVDの2枚組です。DVDには、サラウンドで96kHz24BitのDTSとDolby Digital、ステレオでPCMの96kHz24Bitが入っています。なおかつこのDiscには、エクストラとして、デジタルミュージックファイルが入っています。これは、Dolby Headphoneでエンコードしたサラウンド、AAC 320 kbps、 WMA 192 kbps、Apple Lossless 48kHz16Bitのステレオが入っており、iPodにコピーしてヘッドフォンでサラウンドで聴くことができます。これは非常にきめ細かいサ−ビスです。ハイクオリティ楽しむお客様から、iPodで楽しむお客様までを全部カバーしてるっていうところが、すごく面白いと思います。サラウンド的にも凄く面白いですね。
Q:ディスクのフォーマットは何ですか?
A:DVDディスクです。
(デモ)
参加者持参のソフト再生
参加者:AKIRAのサウンドトラックのサラウンド版です。これは、ダミーヘッド(マイク)を真ん中に置いて、その周りを僧侶の人々が4人位で念仏を唱えながらぐるぐる回るものを収録したようです。
(デモ)
参加者:Legends of Jazzです。
(デモ)
画面ではピアノが右にあるのに、最初の部分で左からピアノが聴こえるのはどう思いますか?(一同笑い)
参加者:これは大阪の高貴寺という所で行われたライブの音源です。当日雨が降っていたみたいで凄い雨の音、それで演奏しているのがサウンドアーティストの鈴木昭男さんという人で、石の笛を吹いています。
(デモ)
Q:凄い雨ですね。(一同笑い)どしゃ降りですね。これどうやって録ったのですか(笑)
参加者:The Beatles [USB]です。この中に、USBの中にデータが入っています。
A:実はBOXのCDが出た時に、僕はリアルタイムでビートルズは経験していないので欲しいなと思ってCDのBOXセットを買おうかと思っていたんですけれど、ちょっとなぜか躊躇して。なぜかというと、最近私の会社では、やっぱりコンピューターで音楽を再生するのが流行っています。中身は、FLAC 44.1KHz 24bit and MP3 320Kbpsのデータになっています。
Q:BOXセットとUSBの値段の差はありますか?
A:BOXセットとあまり変わらないようです。
山下(日東紡):PC再生系の説明をします。
今頂いたUSBのデータは、パソコンで取り込んで、NASというネットワークのハードディスクにコピーします。それを、イギリスのハイエンドのメーカーLinnのDSでアナログに変換してプリアンプに行き、聞いて頂く形です。オーディオマニアの方は、LINNのDSがあるからここに来たいっていう方もいらっしゃる位です。CDで再生するよりもなぜか一度リッピングしてDSで聴いた方が音の臨場感が高まったり、音楽を楽しく聴けたり、なぜかなぜだか…。要はジッターとかそういった回転系のあれに音を汚されないっていうんですかね。っていうのがメリットですかね。
(デモ)
沢口:それで最後に96kHz24Bitのファイルを聞いてみましょうか。UNAMASで先月収録したものです。
(デモ)
では,最後にまとめて質問タイムにしたいと思います。
Q & A
Q:調整にはどの位時間が必要ですか?
A:どのように調整するかで変わりますが、1日ほど必要です。ASGは手前と奥にあり、すべてが違うものが設置されています。また、900cm角の物はサイズが 何種類かありすべて名前が書いてあります。それを確認しながら設置します。
Q:今日は残響が少なめのセッティングとのことですが、調整する場合はどうするのですか?
A:現在は(前と奥のAGSの)中間に黒く見える吸音材を入れています。スタジオなどの調整室でもっと吸音したい場合は奥にも吸音材を入れます。導入したスタジオでは吸音率を約0.5程度に調整しました。
Q:私は吸音の(スタジオ)環境ので作業することが多いので、カーテンを閉めた状態のほうが作業しやすく感じました。開けた状態ですと、音がきらびやかなりライブ会場のようなところでは効果的と思いますが、(ミキシングでは)定位がわかりずらいのではないでしょうか?
参加者:私はもっとライブのほうが良いと思います。
A:無響室でLRのスピーカーで聞くともっと広がって聞こえます。吸音環境では定位の点ではいいのですが音楽全体のニュアンスなどは把握しずらくなります。当社では長年スタジオを作っていますが、日本のスタジオは1970年台からかなりデッドで海外ではライブな傾向にあります。デッドな環境では音が詰まって聞こえるので、ボリュームが上がってしまい、EQなども過度になると思います。できればライブなスタジオがいいのではないでしょうか。
Q:なぜデッドなスタジオが多かったのですか?
A:日本のスタジオの歴史を紐解くことになりますが、、、。(一同笑い)かつての日本では、スタジオ側はそれほどでもありませんが、コントロールルームを解体するとグラスウールがどっさりでてきました。それほどデッドで無響室のようでした。しかし通常人間は残響のある状態で聞いていますので、無響室のようなスタジオでミックスすることに疑問を感じていました。
Q:映画のデモでは(AGSの)効果がよくわかりました。
A:映画のシーンでは効果音が沢山入っています。とくに警察無線の音などはデッドな環境ですと聞き逃しますし、音楽のデモでも小沢征爾さんの指揮台を踏む音など細かい音は拡散音場では聞きやすくなります。アタック音も聴きやすくなり映画のエンジン音が吹き上がる音も変化しました。
Q:ブルーレイの登場で製品の質が向上しますが、音響設計の側から変化することはありますか?
A:エンジニアの方が作業がしやすい環境を目指しています。音の把握がしやすい、長時間の作業でも疲れないこと、レベル・EQ・リバーブなど調整したものを正確にモニターできる環境を目指しています。さらに、放送局とレコーディングスタジでは調整が異なります。放送では小さいスピーカで聞いてもバランス良く聞こえるように、エンジニアの方と相談しながら最終的に調整しています。レコーディングスタジでも小さいスピーカーで聞いてバランスが良く大きいスピーカーで聞くと、さらに低域が加わって聞こえる。中域がしっかりし、大ききスピーカーで聞くと高域と低域が追加されるような音場になればと思います。
崎山:それでは、SYLVANを設置した場合の音の変化をピアノの録音でお聞かせします。場所は、ここの4倍くらいの音楽練習室です。そこにSYLVANを4本設置しただけでも結構変化します。SYLVANがない状態で聞いみます。
(デモ)
ピアノの反射板を開けた状態で、その後ろにSYLVANを4本設置しました。(写真をみながら)マイクは、オンマイクとフォロフォンとアンビエンスマイク遠くへ置き、10チャンネルで収録したものをラフミックスしたステレオのものです。次にSYLVANを設置したものを聞いてみます。
(デモ)
音が滑らかになり、空間の大きさが想像できるようになった思います。
Q:何本くらい設置すれいいのでしょうか?
A:録音ブースのような設置の制限のあるようなところでは1本設置するだけでも効果がありました。2本よりは4本または6本あればサラウンドでも配置の自由度が増します。
Q:価格はいくらですか?
A:210,000円(税込)です。
Q:ミニ版の要望はありますか?小さくすると効果がないのでしょうか?
A:特注品ではサイズの変更が可能です。60cmや120cmのサイズのも、またそれを組み合わせて180cmとして使う方法もあります。ミニサイズにしても音源の位置や設置を考えるとこの位置に設置できればと思います。
Q:レンタルしてはどうでしょうか?
A:放送局から中継先で設置したいとの要望がありました。InterBEE2009での会議室を使ったサラウンドデモルームではSYLVAN6本と吸音パネルを使い設置させて頂きました。オーディオメーカーさんの地方でのデモには会議室でのデモがありまたセッティングに時間が限られることもありお貸しした実績もあります。
Q:何も考えないで設置した場合は逆効果になるときはありますか?
A:逆効果になるまではないと思いますが、SYLVANだけに限らず、建築音響的に考えた設置のコツはあります。
沢口:崎山さん、佐竹さんそして本日お手伝いいただいた山下さん、宮崎さん今日はどうもありがとうございました。(拍手)
[ 関連リンク ]
日東紡音響エンジニアリング株式会社 AGS(柱状拡散吸音体)について
2L
Lindberg Lyd AS(レコーディング詳細について)
Monster Music
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「サラウンド入門」は実践的な解説書です
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