By 代表研究者 土方 裕雄、フィールド・サラウンド録音研究グループ代表
この評価実験で使用した6種類マイクと音源集DVDを希望者へ実費頒布(送料込み¥1,000)します。 希望者はまでメールで問い合わせて下さい。
PDFダウンロード:フィールド・サラウンド録音における音源別最適マイキングの究明
概要
2003年からの地上デジタル放送開始に伴いサラウンド番組制作は、2010年時点で年間1300番組が放送されるまでに成長してきたが、その多くは、スポーツや音楽といった番組である。NHK-BBC共同制作「プラネットアース」シリーズや「世界ふれあい街歩き」サラウンドシリーズ 「里山」等の番組に見られる紀行やドキュメンタリー番組では、ロケーション現場でいかに臨場感や存在感のあるサラウンド音を限られた機材とマイクアレンジで行うかが世界的な課題となっている。本研究では、こうしたフィールド・サラウンド録音において、音源ごとに適切なマイキングを見つけるため、6種類のサラウンド・マイクアレイを同一素材同時録音し、それらを主観評価実験によって検証する。録音対象は、日本の代表的な季節を感じさせる音及び自然環境音を選び、通年で最適場所を選択し実施する。録音素材は、定位(移動感を含む)、臨場感、包まれ感、距離感(広がり、奥行き)、迫力の5種類の評価語に適した音源とし、移動感を得られる波音では、マイクロホンを持って海の中に入り、前から後ろへ通り抜けるような効果を狙った。 成果は、2011年7月の完全サラウンド化によって全国的な推進が期待されるサラウンド番組制作者に、参考となる提言を行うとともに、比較試聴DVD−Rを制作配布することでフィールド・サラウンド録音の普及に貢献することとした。
8 本実験結果をふまえたフィールド・サラウンド録音における考察
今回フィールド・サラウンド録音の代表的なマイクアレイ6種類の評価を行った。これはフィールドサラウンドのマイクアレイでは初めての体系的な実験であるといえる。これらの結果と、これまでの研究会メンバー個々による経験則をふまえ、以下に述べるような音源別、目的別の適切なマイクアレイの選択を提言することができよう。
1 滝のような点音源音場での録音では、指向性のあるマイクロホンを用いたアレンジメントの方が目的音源の音像が浮かび上がってくる。
2 迫力や定位感を優先しないバックグラウンド・ノイズを収録する際には全指向性を用いると、背景音の定位がそれほどシャープにならず、マイルドな雰囲気のアンビエンスが得られ、各マイクのかぶりによって、つながりの良いサラウンド効果がある。
3 移動感を求める場合は、指向性のあるマイクロホンを利用すると、音像の動きがシャープに出る。
4 ガンマイクロホンは、離れた音源を明瞭に収音するため、手前の音と奥の音がブレンドされた独特の音色になる。清流の音では、他のマイクアレイの音とは一線を画していた。指向性の延長線上にない限り手前の音は強くならず、奥の音と合わさった時にも圧迫感のない音になる。
5 本来、コンサート・ホールでの収録を目的としていたFUKADA TREEをCO-100KとCU-44XIIを用いてフィールドで試してみたところ、特に「包まれ感」において良い効果を感じた人が多かった。しかし、このマイクアレイは大がかりなセッティングを要するため、機動力を求める収録では現実的ではない。評価実験ではFUKADA TREEが優位な条件では、IRT-Xも同様に包まれ感で高い評価を得ていることから、マイクロホンの間隔をある程度離したマイクアレイは、スムースな包まれ感を必要とするベース音に有効なマイキングと言える。今回IRT-XではSCHOPES CCM41を使ったが、 指向性が緩やかなCCM4を利用することで、さらなる効果が期待出来る。
6 現場でサラウンド録音された音源は、作品の質と立体的な表現力を向上させる上で有効であることが認識できた。
長野県戸隠高原にて収録
千葉県銚子市屏風ヶ浦にて収録
[ 関連記事 ]
第49回サラウンド塾 実践サラウンドマイキング 亀川徹
「実践5.1ch サラウンド番組制作」目次
「Let's Surround(基礎知識や全体像が理解できる資料)」目次
「サラウンド入門」は実践的な解説書です。
「地上波デジタルテレビ放送におけるサラウンド収録法の研究オーケストラ・ホール収録編」
No comments:
Post a Comment