February 10, 2002

DTS-96-24 5.1ch DVD-AUDIOで蘇ったQUEENの名作「A MIGHT AT THE OPERA」

By S.Harvy S.P 02-02 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

5.1 CHのサラウンド音楽で実現したかったのはQUEENの本アルバムです。ここに聞かれるサウンドのすばらしは5.1CHで真価を発揮するからです。
プロデューサ・アーティストのR.Kaplanは、長い間この企画をあたためてきました。入手したアナログ24トラックのテープのコピーは、アビーロードスタジオで行われました。しかし予想したとおり25年前のテープは再生した瞬間から磁性体がはがれ落ちることととなり、その対策のためテープは高温で焼かれることになりました。これをNuendo 96-24 HDにコピーしたのです。
HD はアメリカ サンタモニカのGLEN FREY所有の「DOGHOUSE STUDIO」に送られエリオット シャイナーの手で5.1CH-MIXが行われることになりました。プロデューサとしてオリジナルのアルバムを担当したRoy Thomasも参加しています。
DTS の方針を気に入っているひとつは、彼らが大変アーティストの意向を優先することにあります。このアーティスト至上主義はあせらず良いものを制作するという環境を生みだし 本プロジェクトに最適のエンジニアやできればオリジナルを担当したスタッフやアーティストが承認したスタッフで構成することができました。アルバムのパッケージについてもBrianが当時の写真や付加資料を送ってくれましたし貴重な映像も入手できました。1975年の「ボヘミアン ラプソディ」は5.1CH音声と歌詞つきでビデオがリリースできました。シャイナーがこのプロジェクトに参画する1年半前彼はこの話しをきき大変興味を持っていました。でも実現するまではとても1年半とは思えないような長い道のりを感じたと話しています。「DOGHOUSE STUDIOが気に入っているのはここでホテル カリフォルニアをMIXしうまくいったからです」ここには 48チャンネルのNEVE VR-Pコンソールがありますが、通常の24トラックテープからMIXするには十分なチャンネル数です。しかしQUEENの場合は例外でした。

彼らは、24トラックのなかを一部の隙もないくらいに音で埋め尽くしていたからです。ですから同一トラックを別々にスプリットしてEQ、リバーブ、パンニングしなければならずチャンネル数は96チャンネル規模になりました。「これをプロデュースしたRoy Thomasの才能には脱帽です。」とシャイナーもコメントしています。MIXではできるだけオリジナルの味を出すためアナログディレイやCapitalレコードにあるエコールームなどに加えEventide-Orville ,TC-S6000, Lexicon480等を加味しました。モニターはYAMAHA NSP-10で統一しマスターはSTUDER A-827にJ.FRENCHがアッセンブルした8トラックヘッドを乗せEMT-900のテープでDOLBY-SRエンコードで録音しました。ここからプロジェクトの要望に応じて様々なフォーマットにコピーされます。今回はNUENDOとALESIS HD-24にもコピーされています。今回のプロジェクトで統一して使用したコンバータはSWISS SONIC社のコンバータです。

MIX の中で気に入っているのは「ボヘミアン ラプソディ」です。ここには200ものボイスが録音されておりこれらをまとめても30チャンネル分を占有するくらいテープの隙間を埋め尽くしています。オリジナルのMIXはすばらしい出来なのでシャイナーが行った5.1CH MIXは彼らがL-Rの間で行った表現を360度に拡大するだけだったと述べています。次に気に入っているのは「WYNES WORLD」です。ここではギターとボーカルが前後左右を移動しておりドラムは巨大な雷鳴のように轟き、ピアノは空間に浮いているような世界が出来ています。20年前の作品とは思えないサウンドと5.1CH MIXによる立体的なQUEENの音楽によって彼らが聴いていたであろうサウンドが現在に蘇ってきたのです。(了)

「サラウンド制作情報」 Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です