By K.Hilton 2002-09 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生
[ はじめに ]
RIK EDEは1998年にゲーム「Lander」で初の5.1CH音声を制作し、以来ゲーム音声で「サラウンド伝道者」を自認するゲーム音楽音声クリエータで、昨年ヒットした「WIPE-OUT-BURN-OUT」や、現在進行中の「INDY 500」などが彼の近作といえる。彼は最近のサラウンドゲーム音楽を大変厳しく批判している。
以下は彼と交わしたインタビューの概要である。
1 スタジオではどんな機材を使用していますか?
以前はO2-Rをカスケードにして使用していましたが、現在のメイン機材はYAMAHA DM-2000です。YAMAHA R&DのメンバーとともにTERRY HOLTON と私は、DM-2000の開発に参画し、何がサラウンド制作に必要かを検討しました。
基本は5.1CH制作がこのコンソールだけでできるような機能を取り入れることでした。モニタリング エフェクター パッチング などすべてオールインワンで可能です。DAWとのインターフェースも大変良くできています。コンソールの横にはTASCAM MX-2424や、3台のNUENDO ADAT等が置いてありますが、これらの接続も大変シンプルになりました。O2-R の時代は、正直いって内蔵エフェクターなどあまり実用に耐えられなかったので、いきおい外部機器が増えましたが、現在のデジタル技術の進歩は驚異的で、今残しているのはレキシコンPCM-80とTCエレクトロニクスのDELAYのみです。モニターはGENELEC 1031にB&WのLFEです。編集ソフトはSOUND FORGEをメインで、マスターレコーダはDA-98です。再生チェック用にDOLBYやDTSのエンコーダー・デコーダも用意しています。
2 ゲーム音楽はいまでも良い評価をえていません。これは安いスタジオとキーボードシンセサイザー中心で制作しているからでしょうか?
その評価は今も変わりません。私は、ゲーム音楽といえどもモスクワ管弦楽団で録音したり、アメリカのLAで映画音楽を制作している人々と協力関係を持っています。彼らはゲーム音楽にも新しいアイディアをいれたいと考えていますし、「ハリウッドライクなサウンドトラック」をゲームでも実現したいと考えています。必要な音は外部スタジオ録音で行いこれらをMX2424または、RADARに録音し自宅でMIXします。
3 サラウンドにたいして、どういった考えで取り組んでいるのですか?
DVDがホームシアターで家庭に受け入れられ、次はTVだと思っています。ここUKではSKY-DIGITALチャンネルがそうでしょう。この傾向は音楽やニューメディアにも波及すると考えています。作曲家の立場でいえば、ディスクリートのサラウンド音響はすばらしいと思います。残念なのは、今のゲームサラウンド音楽が既存のステレオから擬似的にサラウンド化したものが多く、5.1CHの評価を結果的に悪くしていることです。私はサラウンドをこけおどしで使うのではなく、総合的なメッセージとして使いたいと思います。
4 ゲームのサラウンド音楽とは?
サラウンド音声は、ゲームの体験をより高めることに貢献できると考えています。
ヘッドフォンやバーチャルスピーカで体験するより、実際のスピーカをゲームプレイヤーの周りに設置するのが一番効果的です。疑似サラウンドは多くが逆相成分のみで効果的ではありません。ゲーム音声がサラウンドへと向かうのは必然だと考えています。自分で5.1CHの制作スタジオを持っていることは実に幸運で、そこで様々な試行錯誤を行うことが出来ます。楽器がどこへどう定位するとどんな効果があり、逆に効果がないのかといったこともDM-2000の機能を活用して経験することが出来ます。
5 ゲームのグラフィック部門とは、どういった関係で仕事をしていますか?
ゲームの映像部門はたいがい最後まで残ります。私は映像デザイナーやプロデューサと連携していつも最終的な仕上がりを予測しています。またデザイナーへ仮音楽をわたしてイメージの統一を図ったり、全体のスタイルを考えるヒントにしてもらいます。映像が完成した段階でまず、スポット効果音を入れ、その後音楽を作曲します。アンビエンスを形成するための効果音は最優先で、ゲーム音楽はあくまでゲームのノリを形成する役目としてリズム関係から作曲しています。(了)
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