By. Mick Sawaguchi
日時:2009年7月20日 SONA試聴室
テーマ:芸大メディア出版初SA-CDサラウンド制作ディスク「ホルベルグ組曲 マリンバアンサンブル」の制作について
講師:亀川徹(東京芸大准教授)藤田厚生(ワンダーステーション)
沢口:2009年7月のサラウンド寺子屋塾は大学のソフト制作を取り上げました。大学がメディア関係の制作という取り組みを始めています。これは私はとても良い事だと思います。「大学は勉強するだけで、それ以外のところは社会に出ておまかせよ」というのではなく、大学が自分達でできることは自分たちでやっていこうという取り組みが出てきたのは大変良いことだと思います。ちょうど今朝の朝日新聞に大学がメディアに取り組みという記事が出てまして一番早いところで2004年くらいで、現在14大学位がメディア関係の制作を行っているそうです。今日はその中で東京芸術大学の音楽環境創造科が芸大メディア出版のサラウンドSA-CD第1作目としてクラシックのマリンバ演奏をサラウンド制作しました。制作の実際を亀川さんにお話とデモをしていただいて、有限会社エフの代表取締役の藤田さんにマスタリングの様子とSA-CDをどうやって作っているのかについて、お話しいただこうと思います。
亀川:東京芸大の亀川です。よろしくお願いします。大学で出版を始めたんです。そのひとつとして私の方で作ったCDが、4月にリリースされましたのでその取り組みについて紹介したいと思います。 私の話に加えてSA-CDの話が出来たらいいなという事で、SA-CDのマスタリングをやっていただきました、藤田さんに声をおかけした所、ありがたく引き受けていただけましたので、是非SA-CDのハイブリットディスクのマスタリングについてもお話していただこうと言う内容です。
東京芸大出版会について紹介させていただきますと、2004年に各国立大学が独立行政法人化になりました。先ほどの沢口さんの話にもありましたが、その時に各大学が色んな取り組みを大学ごとにやって良いと。元々東京芸大も美術と音楽、色々なコンテンツを作っているんですが、そういったものを外に出して行ければいいということで2007年に設立しました。ただ実際これを進めていこうとすると結構大変な事があってですね、一番大きいのは権利の問題で、色んなものが大学にありますが、簡単にそれを出すっていうのは権利関係で難しい問題があります。私も2004年の独立行政法人化からのこの出版会の立ち上げの委員会に関わっていまして、CD化の話は早くから言っていたんですけど、既存のコンサートとか過去のアーカイブとかをCD化するのは、著作権と、著作隣接権をクリアにするのが中々難しいという事でした。実際今まで出たもので、美術、音楽、色々やっています、書籍関係とか楽譜とか、後DVDは映像研究科というのが横浜に出来まして、そこの修士課程で作った作品のDVDが出て、これは中々良く出来ています。黒沢 清監督とか色んな方の指導を受けています。後、このDVDの新曲「浦島」、これは邦楽学科で、奏楽堂での演奏会をDVD化したものです。
大学としては「皆さん、積極的に出して下さい。」という反面、お金はあまりないので「限られた予算の中なんですがやってください」という形です。
芸大出版をインターネットで見ますと、出版会というタグがありまして、ここから行けるます。しかし中々大学に、宣伝の機能が無くてですね、芸大の美術館の横にある「アートプラザ」というショップでこういったものを売っています。この「Quint」は、SA-CD、1890円です。是非聴いてですね、カスタマーレビューに書いてください。それだけ宜しくお願いします。(一同笑い)これ結構重要なので。(笑い)
今回大学からある程度予算が出るっていう事で、その範囲内で出来そうだということにしトータル、38分弱なんですけども、学生達にたくさん買ってもらえるような値段ということで2000円をきるような値段に設定しました。これSA-CDとしては結構安いかなと。
演奏、マリンバアンサンブル「Quint」、五人組みの人達なんですけども、(写真を見ながら)真ん中にいる男性の方が藤本先生、音楽の準教授で、その方のお弟子さんを中心に組まれたグループです。結成が2006年からなんで、たまたま私が、2007年結成2年目にコンサートを、北千住の天空劇場という芸術センターにあるホールで大学の催物の一環でありまして、その時に彼らの演奏を聞いてこれはおもしろいなと思いまして、マリンバ5台で弦楽の合奏の曲とかをアレンジしてやっていたんですけども、これをスタジオで録音したらおもしろいんじゃないかという事を藤本先生にお話したところ、非常に心良く乗ってきていただいまして「じゃあやりましょう」ということで北千住のスタジオを使って録音をすることになりました。
マリンバって結構録音難しいんですね。録音やられた方ならわかると思うんですが打楽器というのは叩いて音を出す楽器ですから、いわいるパーカッシブと言うか録音するときはアタックの強調されることが多いんですね。それでマリンバの場合はもちろんアタックもあるんですがそれプラス、トレモロという細かく音を刻む奏法で打楽器にしては非常に柔らかい伸びた音を演奏上作ることができるんですね。ただ録音して聞いてみるとカツカツした音ばかりでふわっとした感じは難しいんですね。私は色々な楽器を録ってきましたが、このマリンバというのは難しい楽器だなと思っていました。それでこれが5台だったらどうなるのかなというのがあったのですけれどもスタジオで色々やってみましょうという事で来てもらってやりました。
今回のCDに収録したのはここに入っている大きく3つの曲ですね。一つ目はグリーグのホルベルク組曲という曲でこれと、同じグリーグの二つの悲しき旋律の春というのと、バッハのトリオソナタ。楽譜を藤本先生がマリンバ用にアレンジしたんですが、弦楽器で表現できる世界とはまた違う別の曲のような面白い音になっていると思います。
これが使用機材ですね、(図を見ながら)基本的には大学にあるマイクとコンソールとスピーカーと後、若干YAMAHA SREV1を少しかけました。後はProToolsで編集しました。マスタリングはSonic Studioのsound Bladeというのを使いました。これは2chのマスタリングだけで後のSA-CDのマスタリングは藤田さんから後で詳しく話していただこうと思います。
マリンバは、こういう配置で録音しました。これがメインマイクで私がここ最近ずっとやっている「オムニ8」という方法なんですが、前方3chをDPAの4006二本と双指向で、DPAは双指向性を作っていないのでSchoepsの双指向性を使ってます。これで3本でLCRとなってます。なんで双指向性を使っているかという事なんですが、基本的にはLRの間隔が2mくらい、それに双指向性のマイクを約40cm前に出してやっています。いわいるDecca Treeとか、よく皆さん使われているのだともう一本全指向のマイクを足して90cmくらい前に出しますが、私が色々やってみた感覚でいくと真ん中に全指向のマイクを置くのは非常に使い辛いんですね、真ん中に固まりができてしまうんで、センターの使い方が難しいなとかねてから思ってたんですね。それで色々やってみた結果、指向性のあるマイクの方が良いんじゃないかと、色々やってみたんですが最終的が良いかなと、これは単一でも悪くは無いと思うんですが、ただ単一指向性と双指向性の違いというのは、周波数特性で見ると単一指向性というのはどうしても周波数帯域によって指向軸が変わってくるんですね。双指向性というのは比較的どの帯域でも指向性が八の字になっているんですね。そのかわりあまり低音が出ないというのがあります。ただあまりセンターの音って低音がいらないんですね、やってみると低音がかえって邪魔になったりするので、だからちょうどいいんじゃないかなという事で、これを使っています。これで前方3ch作りまして、後ろに全指向のマイクを2本、これもSchoepsです.
各楽器ごとにU-87Aiを一個。これがですね、バスマリンバで低音がものすごい音が出る楽器で、共鳴管がぐねぐね織り曲がってですね、非常に大きな楽器です。これは二本立ててます。マリンバのパートとしてはこれが一番トップでこれがセカンド、で3番、4番、でベースと、ファーストヴァイオリン、セカンドヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスというそんなふいんきですね。
これは実際の写真です。五角形に並んでます。今回サラウンドで録音するということで、こういう形でやってみて下さいということでお願いしてやってもらいました。これが真ん中にあった全指向と双指向のマイクですね。これが背面、後ろの方にあるマイクロホンですけれども、こういう形で5ch録ってまして。で各楽器にはU87Aiがあるという形です。これが反対側から見た感じですね。そしてこれが上のメインマイク。 では音を聴いてもらおうと思います。録音はProToolsで・・96kHz、24bitでやりました。SA-CDをどうやってProToolsで作ったのかと思われるかもしれないのですが、普通はSA-CDのために例えばPyramixとかSonomaとか特殊なソフトを使うんですが、そういったものを借りたりですね、編集のこととかを考えると、96kHz、24bitでやっておけば大丈夫かなということもありまして、藤田さんともお話しさせていただいた時問題ないよと言っていただきましたのでじゃあやってみましょうということで全て96kHz 24bitでやりました。今回96kHz24bitで持ってきましたので・・まずですね、完成音を聴いていただきます。
~音源再生~
ではマイクごとにどうなっているのか、それぞれのマイクを聴いてみたいと思います。まず、LRのマイクだけですね。
~LR音源再生~
こういう感じです。多分真ん中で聴いているとですね、少し中抜けした感じに聴こえてると思うんですね。でこれがセンターのマイクですね。
~センター音源再生~
これは双指向なので、わりと響きはクリアに前の音が録れてると思います。で、LCR3つで聴くと前の中抜けが解消された感じで全面に巧く配置されると思います。
~LCR音源再生~
こんな感じですね。で、リアの全指向です。
~音源再生~
こんな感じです。あの、スタジオ自体コンサートホールほど大きくないので、ある程度直接音も入った感じで。響きと直接音が混ざった感じになっていると思いますが、この5本だけで聴くとこんな感じですね。
~音源再生~
こんな感じですね。で、オンマイクはですね、ちょっとざっと1個ずつ聴いてみますか。1番というのが後ろからです。
~音源再生~
これもパンは使わずにLsから出してます。これはもともとHDのファイルだったのでサラウンドパンとかは使えるんですけども、実際パンニングを使わずにこのままダイレクトにアサインしてます。2番がサラウンドのレフトサラウンドですね。
~音源再生~
これは実際のミックスの時のバランスなんで相対的にこのぐらいです。そんなにあげてないと思うんですけど。芯を足してるような感じです。3番のパートが前の左です。
~音源再生~
これが3番目のパート。これが4番目、チェロにあたいする・・・
~音源再生~
最後にこれが一番低いバスマリンバで、
~音源再生~
こんな感じですね。で、5台のマリンバのオンマイクだけで聴くと
~音源再生~
バランス的にはバスマリンバを少し強調しているのがわかると思います。これでトータルで聴いていただくと、こんな感じです。
~音源再生~
こういう感じです。今ここで最終的出来たものに入っていないのはSREVのリヴァーブだけなんですけれども、今回はちょっとSREVのは持って来れなかったので、入ってませんけれども、基本的には殆どリヴァーブはほんのちょっとオンマイクに足したぐらいでさっきのが最終ミックスになります。
~音源再生~
そんなに大きくは響きの感じは変わってないと思います。わずかに足している感じですね。後で聴いていただきますけれど、もう少しゆったりした楽章の曲とかあるんですね。そういう所はちょっと多めにリヴァーブを足したりしていますが、基本的にはこのスタジオの響きをちょっと補完する程度で作っています。シンプルに使ったマイクはこれだけですね。後はいくつかテスト用に立てていた物はありますけれども、実際に使ったのは本当にこれだけです。ステレオダウンミックスの事もここで話をしておきますが、今回ハイブリットとは言ってもですね、実際に聴かれるのは9割方ステレオだろうというのもありまして、ステレオミックスをどうするかとなったんですけれども、実際にこれがどうなっているかと、もう一回聴いていただくと実際のセッションファイルとほぼ同じなんですけれども、バスを作ってましてですね、それぞれのさっき聴いていたサラウンドのミックスを受ける同じバスをここに作ってるんですね。で、そのサラウンドのミックスを受けたバスがステレオバスに組んで、そのステレオバスをここで受けてますね。これがステレオマスターになっています。ステレオのミックスをお聴きください。
~音源再生~
これで大体、後ろが約3dBくらい下がっていまして、正確に見ると2.4dBくらいですかね、でセンターが若干下がってます。普通真ん中に持ってくるとバスでパンニングを振り切った時から真ん中に持ってきた時にLRから持ってきた音で、聴感上同じになるように大体、3dBくらい下げるんです。これは卓によっては4.5dBとかもあるんですけれども、ProToolsはですね、ちょっと高いんですね確か2.5dB。普通は何もせずに全部一直線にしてL、R、Cで送ればうまくいくはずなんですね、バスから送れば、 結局CからLRに分岐される時に落ちますからね。でもProToolsの場合は少し大きいのでちょっとだけ下げてます。もし皆さんこういうやり方をやるのであれば聴いて合わせることをお勧めします。最終的にこのバランスで作ったんですけれども、実際5ch作ったのと同時に2ch作ったのではなくて、実際は5ch作る工程と5chが出来た段階で2chを作る時に、リヴァーブをちょっと増やしてます。実際に聴きながら。ただ、全体のバランスは殆ど変えてないですね。基本的には変えずに、リヴァーブの量だけ少し変えて最終的にはレベルが巧く収まる様にダウンミックスのトータルのレベルとかをやって作りました。5chのダイナミックレンジをそのままダウンミックスすると、大きくなりすぎるんですね。逆に小さくなった時に、かなり小さくなってしまうんで若干ダイナミクスの補正っていうのは必要になるとは思いますけれども、今回は殆ど変えていません。トータルで大きくなるところだけ、ちょっと下げてるくらいですね。これがダウンミックスです。
この段階で皆さんミックスに関してご質問ありますか?私はあまり、エフェクターを使わない主義といいますか、なるべく録るときのマイクのアレンジでなんとかしようという考えなので特に今回のようなものについてはEQやコンプレッサーを一切使わずに録れるように考えました。
Q.楽器の場所やマイクの距離をとかは変えてみたりしましたか?
亀川:先ほどの写真を見ていただければわかるんですけれども、結構狭いんですよ。一つは彼らの演奏のやり易さっていうのがあって、色々動かしたりしました。マイクの位置も色々やりました。コンセプトとしては、ある程度先ほどのバランスで聞いていただいたように、ある程度メインのマイクで、バランスを取れる様にしたいなっていうのはあったので、何とかその中でバランスを取れる様にと思ったんですけれども、これは最後まで悩んだところではあるんですけれども例えばINA-5みたいに単一指向性のマイクを並べて5ch作るっていうやり方もあると思うんですけれども、そうやると今度はオンマイクとの兼ね合いがちょっと難しいかなと思って、今回は割り切ってある程度私がここで手慣れているやり方を基本に考えて足りない分はこの単一指向性のマイクを使えばいいやという形で割り切りました。先ほどのを聞いてもらうとわかるんですけれども、割と後ろから音が流れるみたいに聴こえる部分があるんですけれども。あれはやはり単一指向性のマイクの効果が結構効いてます。割と音楽的な表現があった方がいいという所は少しバランスを変えているんです。だから、全てこのマイクだけでやってるというわけではないです。もちろん曲によっても全体の雰囲気で録れているものはなるべくこの5本だけで作りました、要は前方3つのスピーカーである程度安定した音像が出来ている状態というのを考えて、配置なども考えました。
Q.楽器で囲まれた円の中にメインマイクを置く場合に、亀川さんのメインマイクだとセンターに双指向性という指向性のあるマイクを楽器の円の中に突っ込むことになりますよね?
亀川:はい。
Q.その場合、簡単に言うと横に配置された楽器の音が弱くなっているとか結構難しいんじゃないかなと思うんですけど、ステージ全体を亀川さんのマイキングで狙われるんじゃなしに、囲まれた中にそれを突っ込むというのはどういうメリット・デメリットがあるのでしょうか?
亀川:実際ITU-RのLCRのスピーカ配置でということでだとは思うんですけれどもこの、センターが無い状態でのLRというのはある程度この音像っていうのは録れるんですね。 バランスよく。逆にバランスの良い位置を2本のマイクで探すという考え方ですね。で、それにセンターを足してあげているということですね。だから確かにこの配置のなかでここに双指向性があるということはこっち側の情報というのは割とクリアに録ろうという意識でやってるんですが、この配置を考える時にやはり真ん中に何を持ってくるかというのは凄く重要だと思いますね。
Q.リードになりそうな楽器というのはですね。特に先ほど双指向性を使われるのが、低域特性があまり録れないという話があったんですが、それなのに狙っているのがバスマリンバということで、これの意図は?
亀川:逆をいうと、このマイクがあるから結構必要になっていて割と先ほどのバランスであがっていることになっていると思うんですけれども、こちらのファースト、セカンドに対応するのをこっちに持ってこようというのも考えたんですけれども、やはりトータルで聴いた時に元々の発想としては「これは弦楽合奏だ」というのがあったので弦楽合奏だと左からファーストヴァイオリンみたいな並びになりますよね。 だから、そのイメージがあったので割と両側でいいんじゃないのかなという素朴な発想はありましたね。だから、真ん中にメロディーというよりは弦楽合奏の広がりみたいなもの、ファーストヴァイオリン・セカンドヴァイオリンが両側にあるみたいな、そういう意識で考えたんですね。それを少しサラウンドに漏らそうかという意識でやったのはあります。
Q.何となく今までの亀川さんのマイクのやり方だと、円の外側その絵でいうと下側の部分に全体の円を音源と見て、それを狙うような感じなのかなと思ったんです。だから中に入れられているのが新しいと言いますか・・・
亀川:新しいというか、これも実際やってみてどうなのかな、という感じはあったのは確かです。これが彼らのコンサートの時の並びなんですよ。だから最初はこれで前方に録るというのもあったんですけれども、やはりこれだとサラウンドに期待して聴いた人には物足りないかなというのはあって、どうしようかなというのはありましたね。これは実際に藤本さんとも相談してこんな感じだとどうかな、と聴いてもらって、やはり取り囲まれるというのは面白いよね。ということであったのは確かです。で、半分は少し逃げというとあれなんですけど、このマイクをうまく使えばある程度その効果も出せるかなというのがあったのも確かですね。だから最初からこのメインマイク5本だけではちょっと難しかったかなというのは録る段階から思っていました。それは聴いてみてからかなと思っていました。
Q.これをLRの2chにする場合は、センターでポンと分けてしまうんですか?
亀川:そうですね。
Q.その場合にそのセンターに双指向があるということは、あのダイポールの正極と負極がありますよね?
亀川:はい。
Q.それを2chにしてしまうと逆相感が出てきたりとかはしませんか?
亀川:それは逆相という意味ではあまり関係ないと思います。マイナスから入ってくる音は殆ど響きなんですね。あまりそれ自体が逆相の成分として邪魔になるというのは、LRに関して何かを働かすという事は無いと思います。私もダウンミックスをやってますけれどもそういったことは無いですね。これはもちろんこういう形でやってかなり下の方置いて正面狙って後ろから音が入ってきたりすると影響があると思いますけれども。では、実際聴いていただきましょうか。では、1曲目のホルベルクから聴いていただきましょう。全5曲で約20分ですね。
~音源再生~
亀川:ホルベルク組曲を全曲お聴きいただきました。ここでですね、藤田さんにSA-CDの制作についてお話を伺いたいと思います。私の方は録音したものを96kHz、24bitのWAVの5chのファイルとステレオのファイルとSound BladeでDDPというCDのフォーマットにしたものを藤田さんにお渡ししたんです。そこからどうなったかをよろしくお願いします。
藤田:藤田と申します、宜しくお願いします。私は亀川さんと同じ九州芸工大という名前の大学があった時に卒業しまして、それからこの業界に入りましたので、もう30数年間エンジニアの仕事をしています。たまたま亀川さんの方から先程お話があったような企画があるというお話がありましたので、そのことを例にとりながらお話をしますけれども、先にスーパーオーディオCDの基礎をお話しますその後今回の亀川さんが制作されたものの具体例をお話します。
まずは従来の通常のCDですね。CD-DAと呼んでいます。16bit、44.1kHzのフォーマットでオーディオが記録されているコンパクトディスク。レッドブックに準拠したCDと、スーパーオーディオCDはスカーレットブックという新たな規格がありまして、それに準拠したディスクです。そして、そのものと、スーパーオーディオCDバリエーションがいくつかありますので、その説明をして今回のハイブリッドディスクがどうなっているかも簡単に説明します。これはよく皆さんご存じの事で、一番違うのはこの下から3番目のデータ容量が4.7MHz、通常のDVDと同じであるという事とレーザーの波長が違うという事です。厚さなど物理的な事は全く同じです。それでCDとスーパーオーディオCDとの互換が取れるというプレーヤーが存在するという事になります。コンテンツの内容は2chの通常のステレオの他に3、3.1、4、4.1、5、5.1chとこれはもうユーザの方で選択が可能です。それからトラック数も収録時間、容量が大きいのでトラック数もたくさん録る事も出来ます。記録時間も2chであれば109分まで入ります。ただ通常は2chと5.1chまでのものとが混在しますので、だいたい通常のCDと同じ位の容量だという風に皆さんはだいたい思ってらっしゃいますけれども、それで大丈夫だと思います。後は周波数特性が高い方まで伸びているとか、そういうのは1bitのDSDの特徴をそのまま記録出来るという事からきています。ですから再生環境にすごく音は左右されます。後でお話しますけれども、スーパーオーディオCDを作るにあたって、いくつかのポイントがありますのでそれを理解してないとマスタリングは大変です。
ディスクのバリエーションは3つありまして右側のハイブリットディスクが今一番多いと思います。 これどちらも同じ光、下からのレーザー光を受けて音を再生しますので、これ二枚貼り合わせたものです。この技術が最初なかなか確立しなくて当初の立ち上がりが非常に悪かったと話を聞いています。長時間のは真ん中のものですね二層式、今のDVDビデオもこのタイプだと思います。全くシングルレイヤーというDSDスーパーオーディオCD層のみというディスクも存在します。それで構造的には二枚の貼り合わせの下の面ですね、レーザー光に近い方に、これHD層と呼んでいますけれども、スーパーオーディオCD用のデータを記録した面と、通常のCDと同じ所には通常のCD層の記録された面があって、波長の違いによってCD層を読み込むときには透過してしまうとそういう理屈です。ハイブリットCDの音が良くないとかそういう噂が出ていますけれども、こういう原理、物理的にそういうものが存在するからだと言われています。
実際の制作の流れ
先程もどういうファイルを受け取れば良いかという事から、実際にマスタリングでどういう事をやっているんだとか、あと、テキストデータというものが別に存在します。まずオーディオファイルとして今回は96KHz、24bitのオーディオデータwavのデータでしたけれども、これはなんでも大丈夫です。スーパーオーディオCDにする為にはアナログであろうが、DSDの1bitの2.8MHzのオーディオデータになるものであれば、クオリティーが良くても悪くても、そのままの形で変換できますので、これは何でも大丈夫です。ただ自分がここぞと思った良い音は、本当にそのままの形で記録出来ます。それが通常のCDとは違うところです。器が大きいという事なんです。ですからダイナミックレンジも周波数特性も通常の16bit、44.1kHzに比べて非常に大きいので、それなりに音質も良いものとして記録はできますけれども、それなりに気を使う事が沢山あります。その素材を受け取ると、通常ですと、通常のCDを作る為と同じ作業、イコライジングしたり、ダイナミックスを変えたり、レベルを変えたりですね、後、編集が必要なものは編集したり、曲間の調整をしたり、PQというCDと同じ旗を、各曲の頭のIDをつけたりというような作業をします。これは私はSADiEというメーカーの、ワークステーションを使っています。これはDSDの領域で全部出来ます。ただそれをやらずに取りこむ前にPCMの領域でやったり、アナログの領域でやったりする事も可能なので、出来るだけ自分が必要な目的とする音質が得られる方法をとります。ですからアナログのEQを使いたければ、アナログを一回、例えば今回であれば96kHzを一回D/Aしてアナログの領域でイコライジングして、またDSDに変換してというような方法も取ります。それは素材音楽の内容ですとか、作品の目的なりによって手法はまちまちです。いずれにしても通常のPCMのCDのマスタリングとは全く変わらない作業が出来ます。そういう作業で一曲ごとにレベルだ、音色だ、という事を変えていく必要があれば変えていって、並べ替えてっていう事でひとつのトータル的なものが通常のCDのマスターと同じものを作る必要があって、EM、エディッテッドマスターというもので呼んでいますけれども、EMをつくります。これを1ファイル化、頭からお尻まで一筆書きでされたファイルですね。これがDSDIFF、DIFFとも呼んでいますけれども、これを2chとマルチとそれぞれのファイルを作ります。これは2chはインタリーブ、マルチの方はそれぞれモノファイルに分かれたものを作ります。そこまで出来たらですね、それと並行してテキストエディッターでタイトル、曲目、演奏者名などを入れるんですけれども、そこに入れる情報をもらってそれを打ち込んでいく作業をします。ディスクに全部情報を入れられるので、何かアーカイブ用にこういうのを作っておくのも良いと思います。
最終的にワンファイル化された2chのDIFFファイル、xxxx.diffという拡張子が付いています。それのマルチのものも同じように。その2つのファイル、2種類のファイルと後、今作ったテキストデータがsttファイルという、sttという拡張子の付いたファイルがあってそれをまとめてオーサリングします。この時にオーサリングも先程のワークステーションのSADiEの中にオーサリングソフトが入っていまして、それをひとつはレベルチェックを勝手にやってくれます。スカーレットブックに決められた規格よりもレベルオーバーしていれば、そこではねられてとまります。それから容量チェック。4.7GBまでの容量ありますけれども、それが超えないようなものであるかどうかというのもチェックします。それからテキストデータの内容に表示出来ないフォントが入っているかいないかというチェックもします。後5.1chのコンフィグレーションも選べます。今回は5.0chでしたので、なおかつL、R、チャンネル1ch2ch3chでどれを選ぶかっていうのもここで自分で変えることも出来て、今回は5.0chなのでこのパターンですかね。そういうコンフィグレーションも全部決めた後にですね、レベルのチェックを。
これはSADiE上のメーター表示の一例です。一つのトラック。これは8トラック分を表示しています、左からピンクと緑とブルーと黄色と紫があってそれぞれ見ているところが違います。一番左側は通常のオーディオ帯域ですね、20kHzまで。それから左から二番目の緑のバーが20kHz~50kHz。それから青いバーが50kHz~100kHzまで。それから黄色がDC成分、一番右の紫がマックスピークといってトータルのレベルです。オーサリングの時に見なければいけないのがこのマックスピークがスカーレットブックで決められている3.1dB、+3.1dBを超えないことという決まりごとがあります。それを超えるとそのディスクはプレーヤーでかけた場合に歪んでしまったりとか不具合を起こすことがあるのでまずだめ。DC成分もだめですとか決まりごとがあるのですが、今はDC成分とマックスピークだけ守れば100kHzで-20dB位振っていてもパスします。録音の時に使うA/DコンバーターによってDSDに直接アナログから変換するコンバーターによっては、ノイズシェイプのノイズがフィルターかけずにそのまま記録される場合があって、-40dBとか、絶えずこれは振っていますので、それと楽音と混じってしまうと時々規格以上に上がってしまう場合もあります。通常聞こえないので無視しても良いと言われてるのですが。通常の20kHz、CD上で調整されたような機材のそういうシステムとは違って、結構レベルは高いレベルで入っています。それでその帯域で歪みっぽくなったりする事が多いので、こういうものも抑えてあげる必要がある時は抑えます。後で説明しますけれども、レベルのチェックも終わった後にファイルとして問題なければ、2chエリアのEM5ですね。それぞれのEQのデータがありますので、それとここにsttファイル、テキストデータのファイル、これを全部選んであげて今回はハイブリットディスクですとか、後、DSTのエンコード、いわゆる圧縮です。ロスレスの圧縮のするしないっていうのがあって、それもここで選んであげる必要があります。それはここにあってこれもソフト上でツルっと1時間物でも5分とか10分待てば勝手に全部そのファイルを読んでくれて表示するんですけれども、この2chエリアと緑のマルチchエリアでどれ位容量食っているかっていうのを表示します。大体これも代表的な例なんですけれども、通常2chエリアが4分の1位、マルチchエリアでちょうど4.7GHzに収まるようなものがほとんどなのですが、マルチchは容量が小さくてもロスレスの圧縮をかけてオーサリングします。それでも入りきらない場合は2chのエリアを圧縮します。それの圧縮をするかしないかをここで選びます。これは2chエリアだけのオプションですね。それでもう一度計算させて、入りきればこれでOKという事になります。ですから中身のレベルとかと割と対応していて、レベルが大きいところは当然容量食っちゃうので、そういうソフトで確認します。確認し終わったら、ここでクリエイトCM、カッティングマスターを作るというワンクリックでオーサリングが始まってしまいます。これ作業に要する時間は1時間もので大体それぞれ4倍速位でやりますので、それぞれというのは2chエリアとマルチchエリア。半分の30分位でオーサリングは終わります。それ自体はAITというテープメディアに記録されるんですけれども、それと後は通常のCD-DAの方のマスター、DDPのマスターと一緒に工場に送ってプルーフ版が1週間ほどで出来あがってきます。いわゆるレーベルに印刷していない、中身が間違えないかどうかという確認の為の、それを視聴してOKかどうかという事なんですが。
実は今回これで一度NGを出しました。亀川さんからきたものはこのPCMでマックス最大0dBまで振っていたものと思われます。ヘッドルームぎりぎりまで振っている。スカーレットブックでは3.1dB未満なので私は過去の経験から2.8dBまで、ギリギリ振るまで上げました。なんで3.1dBまでいかせないようにするかというと、さっきのノイズシェイプのノイズがパラパラしているので、タイミングによってはコンマ3dB位パンと跳ねて引っ掛かることがあります。これオーサリングの時に止まっちゃうので、なんにもしなくてもオーサリングでパスする事があります。それパスして偶然も良いんですけれど、やっぱり怖いのでコンマ3dB位下げてオーサリングしたんです。ところが、工場からは何も言ってこなかったんですが、あるメーカのプレーヤーでかけると歪みました。ところがもう一台私の業務用プレーヤで再生すると、それは歪まないです。色々調べると、これ過去に何回もあったのですけれども、スーパーオーディオCDプレーヤーの中には一度またPCMに変換して出すプレーヤーがあります。すると、この部分でクリップして歪んでしまうと。という事なので、また元通りこの帯域に納めてディスクを作らないと駄目だという事になって、もう一度オーサリングからやり直したんですけれども、これはちょっと制作者側としては非常に残念な事で、何とかならないのでしょうか(一同笑い)
Q:スケールの読み方なんですけれども。0dBFSというのはデジタルのスケールで一番上ですよね。
藤田:そうです、PCMのフルbit。
Q:ですよね、それ以上の+3dBまでいけるというのはどこで読めるんですか?
藤田: これはPCM上では読めないのでDSDメーターでみると、これはソフトウェアもあればハードも出ていますけれどもこれで見ると数字上で出てきます。
Q:じゃあPCMで録っている段階では分からないという事ですね?サバ読みをある程度して…
藤田: もう当然PCMだとこの先は入らない(見えない)し、やはりせっかくスーパーオーディオCDを作るのでっていう事で、作る側としては上げたいので、上げるのですけれども。
Q:それはどこで上げるのですか?
藤田:EMO、Edited Masterを作る時に。その段階で、EDL上で上げます。色々ファイル自体のレベルをソフトウェアのミキサーを通して上げる時もありますけれども、私はEDLで頭からお尻まで全部自分で上げています。
Q:0dBFSまで録ってきたマスターを1dBでも2dBでもそこで上げると音質的にやっぱりメリットがあるんですか?
藤田:ある時とない時があってプレーヤー側に3dBのサバを読んでSA-CDをかけた時3dBを下げるプレーヤーがあるんです。そうすると聴感上小さくなる。それもあるので上げたいのですけれども、さっきのような理由があって中の使われているチップによってDSDをPCMに一回変換して出すプレーヤーが存在するので、そうすると頭クリップすると小さいままで再生されると。
Q:制作者側としてはどこのチップがやっているかというのは、だいたい捉えられているのですか?
藤田:私は大体メーカーによって、後同じメーカーによっても機種によって違うとか半ばそんなものですね。一番ぱっと聴いて分かるのはSA-CDをかけてS/Nの悪い再生装置があります。シャアシャアシャアシャアいうツイーターからすごくノイズが出る。それはちょっと色々変換しているものが存在すると
。
Q:それは心当たりがあります、ソフトが悪いんですよね?
藤田:いや、ソフトが悪いんじゃないんです。それはプレーヤーです。ソフトは通常SA-CDのディスクを作る段階でS/Nが悪いというのはまず素材のせい、素材に依存する以外はまず無いので、だいたいマスタリングの時にそういうものはどうするかっていうのは制作者側と相談して、ちょっとこれはあまりにもS/Nが悪いとなれば、クレジットを入れるなりしていただくようにしていますけれども。せっかくのハイクオリティの器の広いもので何か作ろうとしていますから、そういうメリットを活かした素材であれば色々と出来あがったものとこちらが意図したものがちょっとでも違うと困りますので、その辺は相談して色々クレジット入れるなり、そういう事が起こらないようにさっきのレベルを下げてみたりとか、という事はやります。
Q:高域がどこまで入れていればノイズシェイプが出ても大丈夫なのかっていうメドはどこでつけるんですか?
藤田:これでさっき50kHzからうんぬんっていうこの青いメーターですね。通常のプレーヤーは50kHzから上はフィルターがかかって出ないようになっています。
Q:それはコンシューマーの?
藤田:コンシューマーの。なので逆に言えばそこに入っていると、悪さして歪みっぽい再生音になったりする事もあるので、それが振ると危険かなっていうのもあります。
Q:それはどれ位っていうのもあるんですか?
藤田:これは決まりごとがあってスカーレットブックに何dBというのが出てくるんですけれども、一般の録音でそれが入っているという事はまずないです。特殊な電気楽器使ったり~
Q:あんまり通常のレコーディングをする場合には気にいしないでは良いと。
藤田:気にしないでも全然良いと思います。
Q:という事はマスタリングとか制作の段階で怖いからとかっていって40kHz位からフィルター入れるとかっていうのは別にしない方が良い?
藤田:それは音質に非常に影響するので、やめた方が良いと思います。まあこれでプルーフ版のレベルもOKになったという所で、今回どういう風な経路で作品を作っていったかという事を御説明しますと、まず亀川さんの方からは左の端のDVD-Rの方に焼いたファイル、96kHz、24bitのファイルが2chのファイルとマルチchがそれぞれ曲ごとにバラバラに全部来ました。それと同時にCD用のDDPマスターも送られてきました。それをDVD-Rから直接コピーせずに読みだす事も可能なのですが、マルチの場合にですねやはりデータ欠落、欠落というか要するに音が出なくなる事もあるので一度PyramixのSATAのハードディスク(HDD)に一度丸々コピーをして、それをトラック上に貼り付けて、それを再生しながらこのPrism SoundのADA8というPCMからDSDに変換するハードウェアですね。これは8chですので今回の5ch分同時に変換できます。リアルタイムで変換しながらと。通常は他の作業の時はTC6000というのをPCM上でイコライジングしたりダイナミックス変えたりとか、まあ使う事もあります。今回はこれも使わずにスルーでやってます。そしてこれ全部デジタル上でやりますのでDCSのClock Masterで全部同期かけます。この場合は96KHzの48系列のdCSのClock Masterと44.1KHzですね、DSDの場合はベースが44.1kHzのベースの64倍、2.8MHzですので、これをdCSのClock Masterには便利な機能があってひとつのベースから分集して48系列と44.1系列同時に同期のかかった状態で出す事が出来るので、96KHzは直接出して44.1kHzは一回出してGrimm Audioというクロックジェネレーターがあってこれでクロックを一回綺麗にしてからSADiE上にクロックを渡します。これで完全に全部同期のかかった状態になるので、ここで、フレイしてSADiE上でDSDに変換したファイルを記憶していくという事をやります。
Q:ハードディスクで持ち込んだ場合と変わりはないんですか?
藤田:変わりはないんですが、実は過去にシリアルATAではなくて通常のATAに記録されたハードディスクを持ち込まれた物がありました。これは2chのオーサリングではEM作る段階では問題なかったんですけれども、マルチchのものが時々トラックからランダムにノイズが出る事が、やっぱりアクセスが間に合わない。それで色々調べたんですけれども、その時は外付けのUSBの2.0で繋いで駄目で、ファイヤーワイヤーで繋いで400ですけれどもそれも駄目でマザーボードの余分なATAのフラットケーブルそのまま直付けだとOKでした。それがちょっとシビアですね。たぶんオプチマイズすると問題ないと思うんですけれども、やはり読み書き、お客さんの方で読み書きされて最終的にファイル作ったりするので、どうしてもデータが色々なところに飛んでたんだと思うんですけれども、過去にそういう事があったので、必ず作業の前はオプチマイズしたハードディスクを使って、そこに録ってという事をやっています。取り込む方もそういう風にやっています。その辺も気を使わないと録れるんですけれども、やはりオプチマイズしたものとしていないものを聴いてみるとした方が音が良いというよりもなめらかな音がする事が多いですね。
Q:という事はニューのCD-Rに焼いてデータで持っていった方が一番安心ていう事ですね。
藤田:そうですね。
Q:後、例えばダブルDSDで録りましたってものも持ち込まれるって場合はどうするんですか?
藤田:それもありました。それは、オーディオゲートでしたっけ。KORGのソフトウェア、それで2.8に変換して。
Q:じゃあそれは問題ない。
藤田:問題ないです。だから今のところどんな音源が来ても、とりあえずは対応できます、それで最終的にEMをこの中で作るんですけれども、作った後にオーサリングはそのテキストデータと一緒にさっきのソフトを使って1クリックで。通常のソニーの別のソノマシステムというのがあって、ソニーのメーカーの方で使っているワークステーションですと、ここにCMのイメージをカッティングマスターのイメージファイルを作って、それをAITなり、今はAITのテープがやっぱり製造上少し生産力が落ちているという事なので出来るだけDVD-Rに焼いてくれと言われています。それ焼いてって事になるんですけれども。SADiEですと直接イメージ作らずに、テープ上にイメージのファイルを作っていきます。コピーの回数は一回少ないのかな、工程上は。書きながら、カッティングマスターを作っていきます。時間も節約になるっていう事です。これで完成。
実際の部屋のハードウェア、再生環境その他の御説明をすると、これはSONAさんに作っていただいた部屋が代々木のワンダーステーションの二階にマスタリングルームがあります。ここが4m、奥行きが6mですね、約。そういう部屋にスピーカーL、RとリアにL、Rの、これ4.0chのシステムです。120度のこれ30度でしたね。ギリギリITU-R、ギリギリにとれる部屋を作りました。これ実は120度だとちょっと置けなくて110度になっています。フロントのスピーカーは通常のこの部屋が、通常のCDのマスタリングをする部屋ですので、しかもDSD関連とかそういうハイエンドなクオリティの物も扱うということで、最終的なものがハイエンドにも対応するものを目標にしたいという私の気持もあったのでスピーカーをオーディオマニアもこんな音で聴いているという想定もしつつ、Anthony Galloというアメリカのメーカーですけれども、そのスピーカーを使っています。で、後ろはそんなに仕事量も少ないだろうというので、KEF、ケフの91という小さいスピーカーを使っています。このAnthony Galloは後で説明しますけれども、こういう形をしたちょっと横向きのウーハーとスコーカー2個に、ツイーターがピエゾですねこれは、ピエゾ組織使ったツイーターです。低い方から50kHzまでフラットに出るという特性があるのと、指向性が広いのと、後ネットワークを1個も使っていないシステムです。そういう事もあるのと、後コンマ0.1分のスーパーウーハーとしての成分はデュアルボイスコイルウーハーというものを持っていまして、これ端子が2つあります。この1個のウーハーに対してボイスコイルを2個持っていて、もう1個パワーアンプを足して上げる事で.1分のサブウーハーの帯域を足して再生する事が出来ます。それでそういう理由もあって、後、音質がクセがないというのもあったので。これは秋葉原一日歩き回って何枚かCD持って行って、嫌なオヤジになりながら「スピーカーをもっと前に出せ」とか「スピーカーケーブル変えろ」とか言いつつも(一同笑い)「間隔をもっと縮めろ」とか「広くしろ」とか一件当たり3時間位おんなじCDのおんなじ部分しか30秒位しか聴かないままで帰ってこれに決めたんですけれども。それに対応させる為にですね、プリアンプもこれはちょっとオークションで落としたんですが、AccuphaseのCXの260っていうプリアンプを、これ探し出しました。これはダウンミックスのボタンを押すと、フロントの成分そのままで、センター成分を左右に分ける、それからLFEも左右に分ける、リアはリアでそのまんまリアに行くという、5.0chの入力を持ちながら4.0chで再生可能な機能を持っているという、唯一これしかなかったのでこれを見つけ出してこれを今使っています。全体のシステム図は取り込みつつ聴くのがSADiEのアウトから、これD/AにGenexというアメリカのメーカーです。これ8chのD/Aコンバーターで、これもDSDの対応、PCMも対応します。で、8ch全部対応するので、そのD/Aを通して先程のプリアンプでL、C、R、とLFEをこのパワーアンプに2ch分全部一度入れて、これのスルーアウト、これ出力側の2系統ありますので、この専用のパワーアンプに送って通常の成分とスーパーウーハーの帯域をダブルボイスコイル分に入れてと。2.1chまで再生してリアは別のパワーアンプで流します。現状部屋の2.3mとれたんでしたっけ。2mちょっと位。で、通常のCDのマスタリングの事もあって、実際は2m位がベストポジションでしたので、それに合う形で中心点からは同心円状に持ってきています。
藤田:通常の基準レベルで音圧も合わせた状態になっています。それから先ほどのダブルボイスコイル分の専用のアンプがありましてクロスオーバーやカットオフの帯域やレベル、フェーズすべて調整できます。飛躍的に見て20Hzから出ていたと思います。意外と低い方が音が出ていまして、ここで聞くと聞こえない音がスピーカーから出てきます。後ろ(リア)は当初今回のような音源がくることを想定していませんでしたので、通常の5.1chの素材ですと後ろ(リア)はホールのアンビエンスやリバーブ、拍手だったり雰囲気が出るスピーカーだったら良いだろうと想定していましたので小さいスピーカーですが一応20KHzまでちゃんと出るようなものと、それから同軸になっています、定位だけは確実に出るようなシステムにしております。
今までの所で何かご質問はありますでしょうか。
Q:ハードセンターはあえておかなかったんですか?
藤田:まず予算の問題があり、それからこのスピーカーが、特にツイーターの指向性が300度くらいありまして、側に何か置くとものすごく影響されます、通常のマスタリングのスタジオのように大きいスピーカーと小さいスピーカーを自分の前に置くだけでかなり音が反射で音像が乱れたりすることがありました。それからこのマスタリングの部屋も通常のワークステーション用のディスプレイを置いていません。ここと同じようにこれのちょっと小型のものを上から吊ってディスプレイでワークステーションの画面を表示させています。この両脇にスピーカーが来るような形になっています。大体80インチくらいで、それを見ながら作業することになるんですが、そのくらいしないと音的に満足できる再生が出来なかったので、そういう意味でもセンターは止めました。
Q:先ほどの話に戻りますが、DSDの方が3dBヘッドルームが下がるとおっしゃっていたのですが、基本的にはDSDの信号はPCM(変調)に変換してはいけないと言うことですか。
藤田:私はそう思います。
Q:一方再生機側で言わせてもらうとDSDの信号はデジタルで出る機械はほとんどないですよね。唯一HDMIでバージョン1.2から許可されてはいますけども、なかなか実質的には出せないっていうのが現状で、出せると言っている方式に関してはマルチチャンネルでも一旦PCMに変換して出すというのが今主流になっていますけれども、それはどうお考えですか。
藤田:出来ればこの3dBは結構大きいので,通常のPCMだとそういう必要ないと思うのですが、本当はDSDは6dBまで入りますからね、録音していても分かるのですが可聴帯域よりも上の何かをちゃんと収録するために全体を上げるとやはりこれくらいないと良い音として記録されないということがあるので、本来なら僕は3dBはきれいに再生できた方が良いと思いますけれども。過去にというか最近もそうですけどもワンポイントのマイクを2本使って同時にProToolsの96のシステムに簡単なDSDのシステムを持っていって頭で分けて録音して通常にプレイバックして頂いて、DSDだとどうかというと演奏者側が皆さん顔がニコニコして「こんなに良い音で録れるの」とまずおっしゃいます。ただ逆にその良い音を聞いた時にあらが目立つとか細かすぎるなど、このような音で録って欲しくないというアーティストもいらっしゃいますが、ほとんどのアーティストさんはずっとこのような音で録りたいと皆さんおっしゃるのですが、色々制約がありProToolsのように途中でパンチインするということも今までのシステムだと難しいです。それが出来る機材もありますが、おそらくトータルで6、7倍の費用がかかってしまうと思います。そのようなこともあるのでスタジオワークとしては難しいと思いますが、演奏者側が良い音で聞いた後の演奏がすごく良くなるというのはよくあるので、やはり記録する音が良いというのは毎回良いことだとは思いますけれど。そういう意味もありPCMでも出来るだけハイクオリティーな96kHzの24bitなどのフォーマットで録音された方が僕は良いと思います。それから良い忘れてしまったのですが実はこのPyramixに内部でDSP処理でDSDに変換するソフトが入っています、一旦96kHzを352.8kHzの32bitに変換してそれから2.82MHzを作るというソフト2回変換する必要があるのですがソフトウェア上で4倍速くらいでファイルを作ることが出来ます音的にはそんなに遜色はないもので出来ますけれどもやはりキャラクターを持っています。このD/Dコンバーターを使ってもキャラクターがありますが、今回は頭で何分か行ってみてこちらを選びました。他にも一旦D/A、A/Dしてやる方法もありますし、他のメーカーで2ch分しかないD/Dコンバーターでしたらそれを3回行ったりすることもあります。ある程度音を聞いてそれから選択してということをしています。それから、今回僕が1番困ったのは右チャンネル側に(マリンバの)バチがあたる音が入っていまして、マスターを聞くとそうでもないのですが、製品になるとそれが耳につく音になってそれが再生装置によっては歪みのように聞こえることがありました。これはどのフォーマットに変換しても避けられなかったので1番それがまろやかに聞こえて普通の音楽として聞こえる方法をとりました。もしかしますとレベルの問題ではなくて、ここにコピーをしたということがいけなかったのかもしれません。色々してみると同じシリアル-ATAでも今私はHITATIのものを使っていますけどもSeagateやSamusungなど出ていますがメーカーによっても音が違うので何とも言えないです。あとUSBを使った方が音が滑らかになったりするのですが、トラブルがなければ意外とUSBの方が良かったりすることもあります。それからハードディスクを横にしないで立てると回転系なので周りの環境にすごく影響されやすいような気がします。例えば外付けのハードディスクでしたら電源を録る場所を変えてみるなどでも音に影響されることが多いです。まぁ、言い出すときりがないのである程度までしたら作業に入ります。ケーブルを変えたり,クロックのやり方を変えたりもします。今回はこういう流れで行いました。
Q:ハードディスクそのもののオプティマイズとおっしゃいましたが、具体的にはどのようなことを行いましたか。イニシャライズとは違うということですか?
藤田:あれは中に記録されているものを連続データがバラバラに入っているのをWindows用のソフトで並べ替えていました。
Q:ProToolsでも使うディスクが新品の場合と使い古した場合だと音が違うと言いますが?
藤田:それもおそらく同じだと思います。あとMacはメモリーに依存していることがあるので最終的にマスターを作るときは一回電源を切って再起動するとメモリがクリアになるので使えるメモリ領域が増えますからほかのアプリケーションをはずしてProToolsだけ立ち上げると音は変わります。PCベースの機材は全てそうです。今回のシステムは全てWindowsです。
Q:先ほどUSBの方が良いとおっしゃっていたのですがIEEEで録るのとどちらが音が良いですか?
藤田:一概には言えないのですが、ワークステーションのベースがどうしてもWindowsなのでドライバーソフトの影響だとは思うのですが、Firewire関係のもののハードディスクのやりとりをするとうまくいかないことが多いですね。それから最近のLaCieなどのハードディスクだと特にうまくいかなくて私が作業しているワークステーションではMac Driveというソフトを入れましてMacFormatで書かれたハードディスクを読めるようにしているのですがそれのバージョンによっても読み書きがスムーズにいくものといかないものがありますがその場合でもUSBだと問題ないことがほとんどですね。WindowsベースのものでMacで書かれたフォーマットのハードディスクを読むときは比較的USBの方がスムーズにいく場合が多いです。マザーボードにもよるかもしれないですね。
Q:CDのためのPQコードやISRCといった、レッドブックに入っているその作業というのはSA-CDの場合はCDとSA-CDとはべつべつで作業するのですか?
藤田:別々で行います。先ほどDVDと一緒に亀川さんからいただいたDDPのマスターのPQデータだけをいただいてそれに貼付けていきます。そうしますとまったくCDと同じPQと同じ位置にすることが出来ますので方法としてはそれをやりました。中にはライブの演奏会などでは少し違うものもありますけども、今回はスタジオ録音なので時間も全部ミックスも全く同じものをしました。
Q:先ほどのSonomaだとテープに出さないでDVD-Rにとおっしゃっていたのですが、それはSA-CDのプレーヤーで再生できるDVD-Rで作れるということですか?
藤田:違います。Sonomaでというのではなく、SonomaではEMまでしか作れません。それをもう1台専用のワークステーションがありましてそれをそのソフトでカッティングマスターを作るのですがそれは4.7GBのイメージファイルが出来ます。それをそのままDVDに焼くだけです。
Q:それはデータとしてですか?
藤田:はい。
Q:それをプレス工場に持っていくのですね?
藤田:そうです。ですからそれには既にエンコードされていてテキストデータも入っていますしPQコードも入っていますのでこれは専用のソフトがないとこれは読めないです。それから一旦スーパーオーディオCDにしてしまいますと、スーパーオーディオCDプレーヤー以外は音を聞くことが出来ません。で、これ(このディスクになったもの)でも聞けません。ドライブがありませんので、ただ専用のドライブがありそのドライブでかけるとDSDのデータが出てくるものが世の中に何台かあります。それですと逆に聞いてアーカイブすることも出来ます。
Q:SADiEの補足を少しさせて頂いてよろしいですか?
藤田:どうぞ。
石井:OTARITECの石井と申します。SADiEシステムの輸入代理店をしていまして、DSD8という商品は表向き上はディスコン商品になっていますので欲しいとおっしゃって頂いても現在販売することが出来ません,
藤田:そこで、気になるマスタリングのお値段は(一同笑い)
石井:現在、私は代々木のワンダーステーションというところで、マスタリングルームでこの作業が出来るようにしていますけれども、これは定価で1時間2万2千円という感じです。それからマルチも含めてハイブリッドのオーサリングを行うと、この辺を最低価格にして請求させて頂いています。これにはAITのメディア代がさらにかかります。それプラス後、一般のメーカーの方は良いのですが、個人のレーベルの方はSONYさんはお付き合いできませんので、それの窓口になって欲しいと言われていまして、その共通のガラスマスター、原盤代がハイブリッドで2つ作れます。CD用とSA-CD用トータルでこのお値段(図参照)。それからプレスが最小単位が千枚からで1枚これぐらい(図参照)Pケース付きの値段です。約20万くらい。それから印刷物その他も今回全部やって頂いて、やはり色身ですとか見た感じもありまして、1度2度更正入れたりすると、これぐらいかかります(図参照)デザイン料も含めて、そういうものを全部いれると大体これにちょっとおつりが来るか来ないかぐらいですね。今回は全て亀川さんの方で編集もされてレベルもきちんとそろえて頂いてましたしイコライジングも何もせずに吸いあげてそのままいきましたがこれくらいかかります。(図参照)。というのは6時間と書いていますがマスターを全て作ったあとまたリードバックして全部チェックしたりしていると1時間ものだと最低でも2時間、取り込んで4時間ですから、6時間のうち4時間は聞いているだけということになります。1番最短です。なので、もっと細かいことをしようとすると、1日や2日で終わらないこともありますけども頑張ってやっています。何かあれば費用はどうでもなる所とならないところがありますけども、これくらいはかかります。
藤田:行程はマスターを受け取ってから3週間後には製品版が1ヶ月かからずに出来ます。1週間後にプルーフ盤が出来上がりますので通常のCDと全く同じ行程で出来ます。
Q:それからコピーコントロールSA-CDはないのですか?
藤田:SA-CD自体がウォーターマークが入っていましてコピー出来ない仕組みがいろいろあります。今まで海賊版が出たことはおそらくありません。
沢口:では、お二人の全般についての質問タイムにしましょうか。
Q:亀川さんの話に戻りますが、マイキングの絵は最初に見していただいて5台のマリンバの中にこういう風にマイクを置くと言うのは分かったのですが再生される時に5.0のスピーカーでどういう風なイメージで楽器配置をされたのですか。録られたシグナルをそのまま出されたということは結局5台のマリンバが1個ずつのスピーカーにはまっていると考えて良いのでしょうか?
亀川:そこまで明確にはたとえばBOYSⅡMENも出していましたがあれほどではありません。あくまで一体となった音像のイメージだと思いますが、空間としての1つのものと捉えていますので今回で言えば比較的包まれている感じはあって欲しいと思うのですが、今おっしゃったように各スピーカーからという風にすると曲によっては変な感じに聞こえる所があると思います。なのであくまでも音楽とのバランスではないかと言う風に思っています。なので最終的に作るときは気をつけ、考えました。
Q:ということは再生する側としては必ずしも前3本のスピーカと後ろ2本のスピーカを同じ空域でない場合も容認しておく方が良いのですか?
亀川:もちろんそれはユーザーの方の自由ですが、私が考えたのは5つが同じ条件でという風に作ってはいるので、違うことになった時どう聞こえるのかはまた別の問題かなと思います。あくまでも前方重視であることは、私はそう考えています。人によっては5ch全て等価だとおっしゃる方もおりますが、それはやはりダウンミックスは2chでCDにしたりで聞かれることを考えますと、今回もそうですが一応すべて切り替え出来るようにはなっていまして、切り換えた時に全く別の世界になるというのは少し違うのではないかと思っていまして、2chなら2chである程度それが世界として残っていると言いますか、共通していると言う風にした方がよい言うことを考えると、あまり5chから完璧に独立して音が出るというのは今回は違うかな思いました。もちろんそういう風に作れる音楽もあると思います。
Q:クラシックの場合5.0で「0.1」というのはほとんど使われていないと思うのですが、それは何か特別な理由があるのですか?
亀川:特別な理由ということで言えば、難しいですね。要するに「0.1」を使うことがすごく難しいんです。今回で言えばバスマリンバの音を「0.1」に使うという選択肢もあったのですが、実際「0.1」の環境がある所でやってみたのですが変な感じになりました。そこまで聞こえる必要があるのかという感じがするのと、音楽的なバランスが「.1」があることで非常に変わってしまう危険性があるなと思ったので、再生環境で0.1」がどれくらいになるかSA-CDだと再生する時に+10dBしないんですよ。それが間違ってだれかが+10dBにしてしまって聞いたらとんでもない音になるだとか色々なことを考えると今回5.0chに割り切ってしまおうと思いやめました。PIONEERさんでやっているフェイズを合わせる話もありましてそういうことも考えるとやはり「0.1」はあくまでも独立した音として出せるものの方があまり間違えはないかなと思いまして、今回のような既に5chに流しているものと同じものの中から成分を取り出して「0.1」を作るというのは相当気をつけないと難しいなというのが考えているとことです。なので本当に必要なければ「0.1」は使わなくても良いかなと言うのは今思っています。もちろん「0.1」を使う効果的なソフトはあると思います。今回限ってはそこまで低音が鳴っていることの意味はあまりないのではないかと思いました。
Q:最初に演奏の権利問題が難しいとおっしゃっていましたが、音楽著作権はどのようにされていますか?
亀川:今回は最初からこのような形で出版から出しますよということを前提に、じゃあやりましょうということで、演奏者も含め全員了解です、基本的にはノーギャラです。全員了解の上で進めていたので全く何の問題もないです。
Q:では個人と録音契約に近いようなことをしたのですか?
亀川:はい、現在大学に顧問弁護士のようなことをしていただいていまして、色々相談しているのですが、やはり基本的には演奏者の権利を守るとかですとか制作者の権利を守るというのは基本ですし、我々のように大学でそのようなことを守らないといけないだろうということなので大変ですがやってくださいと言われまして、今何か出すとすると毎回もらっています。実は次回チェンバオーケストラという室内楽の学生を主体に行っている演奏会がございましてこれも2月に千住キャンパスでありまして50人くらいの編成のオーケストラです。これは指揮者のヨハネス・マイセルというウィーン音大の先生でその人もすごく録音をすることに理解を頂いてCD化も承諾をいただきました。これについては演奏会全員にも許諾をもらいました。これはほぼマスターは出来ていましてあとは藤田さんに渡すだけになっていましてこれを1つ考えています。それとハイドンの弦楽四重奏全曲をウィーン音大との協同で68曲くらいを半分に分けましてCD化しましょうという話が進めています。これは既に何曲かやっています。3年がかりでやろうと言っていまして最初からCD化しますということで進めています。
Q:成り立ちとしては芸大がお金を出して原盤を作る形で、それは研究発表と言う形で営利目的とはまた違う考え方ですか?
亀川:はい、営利と言う形ではなくあくまでも活動として出せるものを出しましょうということです。そういう意味では既にCDを出している先生もいらっしゃいましてそういうものとは違うものをやりましょうということで行っています。
亀川:基本的にこれで演奏者にギャラが入ることもありません。出来るのは例えば今回1000枚作って頂きましたがセカンドロッドからは売り上げを分配出来るしくみになっていますので。
Q:それは演奏者にも分配出来るのですか?
亀川:はい、いくらかは分からないですが。1000枚売れればすごいと思います。
藤田:追加プレスは1000枚ではなくて100枚単位でも可能です。
Q:録りの作業は授業のゼミの活動と連動していたりしますか?
亀川:本当はそうしたかったのですが、録音の日程がたしか平日ではなかったので有志に声をかけて手伝ってもらいました。
Q:企画持ち込みなどは大丈夫ですか?
亀川:はい。先生方に募集中で、いくつか話はきています。それから宣伝ですが沢口さんと中原さんとサラウンド入門というテキストを現在作っていますので、是非寺子屋の皆さんに読んで頂きたいですね。これは書籍として芸大出版から出そうということで沢口さんから声をかけて頂きました。
沢口:亀川さん、藤田さんどうもありがとうございました。大学でのコンテンツ制作が業界にもいいはずみになるといいと期待しています.藤田さんいは、日頃我々がわかりにくかったSA-CDのマスタリングを丁寧に解説していただき大変参考になりました。どうもありがとうございました。「サラウンド入門」もご期待ください!(拍手)
[ 関連リンク ]
東京芸術大学出版会
有限会社エフ
「サラウンド寺子屋報告」Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
Mick Sawguchi & 塾生が作る サラウンドクリエータのための最新制作勉強会です
http://surroundterakoya.blogspot.com
July 20, 2009
第61回サラウンド塾 芸大メディア出版会サラウンドSACD制作「ホルベルグ組曲」MIXとSACDマスタリング 亀川徹 藤田厚生
July 10, 2009
第14回AES TOKYO CONVENTION にてMick Sawaguchi JAPAN AWARD受賞のお知らせ
By Mick Sawaguchi 沢口真生
MICK SAWAGUCHI 第14回 AES TOKYO CONVENTIONでAES JAPAN AWARDを受賞
隔年で開催されるAES日本支部のコンベンションが今年は東京科学技術館で7月23日ー25日で開催されました。その開会式のセレモニーで優れた論文やAES活動への貢献に対しAES JAPAN AWARDが授与されます。今年MICK SAWAGUCHIは、このサラウンド寺子屋活動と永年の音響分野での貢献に対してAWARDを受賞しました。
このサラウンド寺子屋塾も2009年の8月で62回の開催になりました。このサラウンド寺子屋のHPを読んでくれているみなさんからも、どしどしこんなサラウンド制作をやってみましたので、みんなと共有したいという提案をお待ちしています!
* サラウンド寺子屋メンバー登録
「サラウンド制作情報」 Index にもどる
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