Mick Sawguchi & 塾生が作る サラウンドクリエータのための最新制作勉強会です
http://surroundterakoya.blogspot.com
December 10, 2007
サラウンドめぐり 中瀬武 (名古屋テレビ映像)
" 「やりたくても番組がないし」ってことでなかなか 機会がなくサラウンド番組の制作は実現しないのが実情だと思います。待っていてもサラウンド番組はやってきません。こちらから仕掛けましょう。 " 「放送技術」より
「サラウンドめぐり」 サラウンド開拓者の熱いメッセージ Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
November 10, 2007
サラウンドめぐり 杉本誠 (毎日放送)
"サラウンド放送に携わることが多くなって、自分の世界も広がりました。もちろんモノラルやステレオの番組もやっていますが、その中での音作りに対して広がりができました。しょっちゅうサラウンドにしたらどうかなぁ、などとも考えます。というのもサラウンド以外だと物足りなくってしょうがないんです。"「放送技術」より
「サラウンドめぐり」 サラウンド開拓者の熱いメッセージ Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
October 21, 2007
第49回サラウンド塾 実践サラウンドマイキング 亀川徹
By. Mick Sawaguchi
日時:2007年10月21日
場所:芸大千住キャンパス スタジオ A
講師:亀川徹(東京芸術大学 音楽環境創造科 準教授)
協力:音楽環境創造科 生徒のみなさん
音楽演奏:ソプラノ 小高深雪(声楽修士2年)ピアノ伴奏 山田哲広(やまだあきひろ)(音楽音響創造修士2年)
テーマ:実践 サラウンドメインマイキング
沢口:10月は、実践編の2回目として「体験サラウンド・メインマイキング」というテーマでここ千住にあります、芸大キャンパスのスタジオAをお借りして実施したいと思います。日ごろ文献で読んではいるが実際のセットアップはどうするのか?また様々なサラウンド メインマイクのサウンドの特徴は?など参加者が体験しながらマイキングの知識を肌で経験してください。本日は、講師の亀川さんと学生の皆さんにもご協力いただきました。また演奏を録音するために今回は小高さん、山田さんのお二人にも協力していただきました。大変ありがとうございます。それでは、亀川さんよろしくお願いします。
亀川:皆さんこんにちは。千住の芸大キャンパスへようこそ。最初にこのスタジオの概要と機材についてお話したあとで、現状どんなサラウンド用のメインマイクがあるのかについて解説します。そしていよいよ実践編ということで今回用意したマイクロフォンを使って可能な限りのセットアップを行ってみたいと思います。芸大手持ちのマイクに加えてサンケン小林さんからCO-100kマイクを、エレクトリ境沢さんからノイマンKM-130-140シリーズをお借りしました。スタジオ-Aは、音楽家が演奏しやすい空間を提供することを第一のコンセプトにソナ中原さんに設計してもらいました。以下に仕様を紹介します。
東京芸術大学千住キャンンパス スタジオA
スタジオA
横幅:11.7m 奥行き:14.8m 高さ:7.3m
残響時間:0.96秒(500Hz)
NC値:15以下
録音調整室
横幅:6.9m 奥行き:7.6m 高さ:3.9m
NC値:15以下
*主要機材一覧
コンソール:Trident S80
モニタースピーカー:Musik Electronic RL901K×5(L,C,R,Ls,Rs)、BASIS 4K×2(LFE)、Genelec 8040(ステレオニアフィールド)
DAW:degidesign ProTools HD3(192I/O×4)
エフェクタ:YAMAHA SREV1、Lexicon PCM-91、Urei 1176、TubeTech CL1B、AMEK 9098Comp
マイクロホン:DPA4006×2、CMC64×2、CMC66×2、CMC68、U87Ai×4、C414×2、C38B 、MD421
スタジオ工事
建築基本設計:(株)日総建
音響技術検討・音響建築工事:(株)ソナ
音響システム工事:(株)スタジオイクイプメント
コントロールルームはアナログコンソール32CHで、このダイレクト出力がプロツールズへ32CHそのまま録音できます。モニタースピーカはムジークエレクトロニクスでフロントのL-C C-R間にLFEが2台はいっています。本日の録音は48KHz/24bitで192-IOを経由して録音します。では、各種サラウンド・メインマイキングの現状について解説したいと思います。
● デッカ ツリー
これは、イギリスのデッカ レコードでステレオ録音用に使われていた方式のひとつです。オリジナルのマイキングではノイマンのM-50というマイクをフロント3本に使用することを前提にしています。このM-50というマイクは、当時として大変ユニークな特性をもっており、2KHzまでは全指向ですがそれ以上では指向性を持ったマイクです。現在はDPA4006などを使っていますが、本来はこうした指向特性を前提としていました。L-C-Rの間隔は1.5-2mでオーケストラに向かってLがVln にRがchelloへ向いています。これにアウトリガーと呼ぶLLとRRという広い間隔のLとRが加わり5本でフロントを形成します。これにリアのサラウンドマイクを適宜付加するという考え方です。通常サラウンド録音で呼ぶデッカツリーは、このフロント5本の組み合わせを総称しています。ハリウッドなどアメリカの映画音楽サラウンド録音でのメインマイクとしても良く使われています。
● FUKADA-TREE
これはNHKの深田さんが1997年に考案してAESで発表しその後沢口さんなどと世界的に紹介してきたマイキングです。オリジナルのFUKADA-TREEはフロントL-C-Rに単一指向性を、リア用も単一指向性を使いアウトリガーのLL,RRに全指向性を使って計7本でひとつのマインマイクを形成するという考え方です。そしてこのフロントとリアのマイクの中間部をホールのクリティカル ディスタンスと呼ぶ直接音と間接音がうまく融合する場所へ設置するというのがポイントになります。ちなみにここのスタジオのCD値は2.2m付近です。深田さんは、いつも前進する人なので2006年の大阪シンフォニーホールでのサラウンド収録実験のときは、すべて全指向性マイクとしてリア用には、APEというアダプターを取り付け高域に指向性を持たせています。また全指向性としたことでマイク間隔も広くなっています。深田さんは、演奏される音楽の内容や演奏会場によってオリジナルにこだわらずに様々改良を重ねていますので、みなさんもこれにこだわらずにいろいろ改良してみてください。
● ポリフェニア ペンタゴン
これは元フィリップス レコードの人たちが立ち上げたポリフェニア レーベルで採用している方式です。マイク配置はITU-R BS775の配置をそのままマイク配置にした方式です。ですから理論的にどうしてこうしたのかといった細かい理論はないのではないかと思います。
● INA-5
これはオランダ語で理想的単一アレイという言葉の頭文字から命名された単一指向性5本によるマイキングです。ホールなどの天井からつりマイクでも設置できます。このマイクの角度と間隔はM.ウイリアムスという人が考えたレコーディングアングルという考え方をサラウンドへ発展させて決められています。
● OCT
これはドイツのIRT研究所 G.タイラー が考案した方式です。彼は同一音源がL-C C-R L-Rの間でできるファンタム音像の不一致で音が不鮮明になることを避けるためLとRは指向性の鋭いマイクを使いセンターは単一指向性という組み合わせを考え、これで不足する低域を補うためにL Rと同一位置に全指向性マイクを設置してLPFで100Hz以下のみをフロントL.Rへ付加するという方式です。OCT-バーという専用のバーを使えばリア用のサラウンドマイクも設置できます。ヨーロッパでは使われていますが日本ではあまり実績がありません。
● オムニ8亀川方式
先ほど述べたINA-5やOCTは基本的に単一指向性マイクを使用していますが、実際に録音した音の傾向として定位は向上するが広がり感が不足するという印象です。私はフロントのメインマイクは、全指向性が適していると考えておりそれに基づいて私が2006年にAESで発表した方式で最適距離を検討したところL-Rで2mという結果がでました。これでセンター成分をいかにセパレーション良くするかということでセンターを両指向性としています。リアは、ホールにもよりますがフロントマイクから4-6mにペアマイクを配置しています。
● W-M/S
これはステレオのM/S方式を拡大してフロントの単一指向マイクに加えてリア側にももうひとつ単一指向性マイクを加え、計3本を使う方式です。これをデコードすると4CHのサラウンド出力が得られますし、専用のデコーダを使うとセンター成分も取り出すことができます。マイクが3本で済むというメリットをいかして機動性重視のサラウンドロケなどに活躍しています。
● IRT-X
これも先ほどのOCTと同様にIRTのG.タイラーが考案した方式で、25cm距離で90度に配置したクロスバーの先端に単一指向性マイク4本が取り付けられています。これもコンパクトなのでサラウンド ロケなどで活躍しています。
● Hamasaki SQ
これはNHK濱崎さんがもともとフロントに5本の指向性マイクを使いリアのサラウンド用として考案したマイキングです。両指向性マイク4本で2m間隔の正方形を作ります。両指向性のプラス側を外側に向けて設置し、フロントからの直接音のかぶりを減らしています。
● オムニSQ
これは先のHamasakiSQが使用している両指向性マイクを全指向性にした方式で大阪MBS放送の入交さんが考案したマイキングです。全指向性ですのでステージに近いと直接音が多くなりますが、ホールの響きが豊かでステージよりも遠くに配置した場合は有効な方式です。
ではこれ以外の製品化されたサラウンドマイクについても紹介します。
● アンビソニック方式
● km-360
● ホロフォン
● ダイマジック
● トリノス オーディオ
実践編PART-01
スタジオへ移動して実際のセットをはじましょう。
今回用意したのは、
● オムニ8+リア2ch
● デッカ3ch+アウトリガー
● hamasaki SQ
● INA-3(フロントのみ)
です。
参加者からDPA-4060を持参したのでセットしたいというリクエストがありこれも設置することにしました。
まずソプラノの小高さんにスタジオ内で一番気持ちよく歌える位置を決めてもらいます。
(小高さん歌いながら前後左右移動してもっとも気持ちよく歌える位置を決める。)
次にピアノの位置を決めます。スタジオ-Aの床はネダという格子状の梁が十字にはいった床材ユニットを組み合わせています。みなさんたたいてみるとお分かりだと思いますが堅い部分と共振する部分が音でわかると思います。ピアノの足はこの堅いネダの部分において不要共振のでないようにします。逆にチェロやコントラバスなど豊かな響きを欲しい場合はこの共振面を使います。次にピアノの蓋の開閉を行って2人のバランスを決めます。今回は、全開で良いようですので全開でやります。つぎにスタジオ側面の吸音パネルを調整して演奏者がやりやすいコンディションを作ります。ここまでで演奏側のベストな条件が決まりましたので、いよいよマイクをセットします。ここのつりマイク用BOXは6回線まで使えるようにしていますのでワンポイントサラウンドマイクなども見栄え良く吊ることができます。各マイクの高さや距離の測定には建築現場で使う伸縮自在のスケールを使っています。それぞれセット、レベルチェック後第1回目の録音が開始です。
1回目にセットしたマイキングは
オムニ8
デッカツリー
INA-3(リア無しメインのみ)CMC-64
HAMASAKI SQ
DPA-4060ミニチュアペア
コントロールルーム側で再生
実践編PART-02
2回目に使用したマイクは
KM-130/131をメインにしたデッカツリー
U-87Ai3本によるINA-3
オムニスクエアー CMC-62/CMC-66
リア ペアKM-140
再びコントロールルームで各種組み合わせを再生。その後メインマイクだけや、各種リアマイクの組み合わせ、そしてリア単独のみの、メーカの違いや指向性の違いなど比較取聴を行いサラウンド音場を堪能しました。
沢口:質問や感想があればどうぞ。
Q01:たとえば7本のマイクを使った場合に5CHのサラウンドMIXを作るにはどうするのか?
A01:メインの5本はそのまま各チャンネルへ定位します。LL/RRといったマイクはフロントのLとRに振り分けてメインのL/Rとバランスをとります。
Q02:同じようですがアウトリガーのLL RRはどこに定位させるかの?
A02:Q01と同じです。これもフロントのL/Rへ定位させます。
Q03:中間定位といった方式はないのか?
A03:フロントとリアの中間へ定位させるという方法も行われてはいますが、十分注意しないと聞いている位置によってサイドのバランスが異なってきます。テラークレーベルのM.ビショップなどそうした方法を実施してオーケストラをサラウンド収録している例も見られます。
Q04:次世代方式として7.1CHが提案されているが制作側の配置は検討されているのか?
A04:現在どこに定位をするのが良いのかは制作側ではまだ統一した規格になっていません。5.1CHの延長としてリアや側面の補強として使うとか、水平面は5.1CHのままで高さの情報として使うとかといったアイディアが出始めた状況です。映画など制作スタジオの設備もまだそうしたところまでは設備の対応がなされていません。
Q05:各マイクの感度設定はどうするのか?
A05:本来は小型のピンノイズ発生器などをセットし各マイクの前で再生して全てのマイクの感度をあわせるという事をやります。またあらかじめ感度校正用の発信器をマイクに取り付けて感度を校正しておくと言った厳密な方法をとっているクラシックのレーベルもあります。今回はそこまでやっていませんのでメーターと聴感であわせただけです。
Q06:クリティカル・ディスタンスを現場で手軽に判断する方法はあるのか?
A06:ではじっさいにやってみましょう。これは我々が耳で聞いたのでは、わかりませんし、片耳できいてもよくわかりませんので、モノーラル マイクで録音しながらそれを聞いて判断するのがいいと思います。ステージ上で聞き慣れた歌などを歌ってもらいながらモノーラルマイクで録音しながらだんだん客席側へ下がっていくと直接音と残響音が1:1になったように聞こえる場所があります。その付近がその会場のCD値だと検討をつけてみることができます。(一同納得!)
沢口:残りの時間でコマーシャルのサラウンドデモ素材の評価を1991永田 北村さんから実施。貴重なアンケートデータも得られました。
第1回目のサラウンド マイキング
第2回目のサラウンド マイキング
「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
日時:2007年10月21日
場所:芸大千住キャンパス スタジオ A
講師:亀川徹(東京芸術大学 音楽環境創造科 準教授)
協力:音楽環境創造科 生徒のみなさん
音楽演奏:ソプラノ 小高深雪(声楽修士2年)ピアノ伴奏 山田哲広(やまだあきひろ)(音楽音響創造修士2年)
テーマ:実践 サラウンドメインマイキング
沢口:10月は、実践編の2回目として「体験サラウンド・メインマイキング」というテーマでここ千住にあります、芸大キャンパスのスタジオAをお借りして実施したいと思います。日ごろ文献で読んではいるが実際のセットアップはどうするのか?また様々なサラウンド メインマイクのサウンドの特徴は?など参加者が体験しながらマイキングの知識を肌で経験してください。本日は、講師の亀川さんと学生の皆さんにもご協力いただきました。また演奏を録音するために今回は小高さん、山田さんのお二人にも協力していただきました。大変ありがとうございます。それでは、亀川さんよろしくお願いします。
亀川:皆さんこんにちは。千住の芸大キャンパスへようこそ。最初にこのスタジオの概要と機材についてお話したあとで、現状どんなサラウンド用のメインマイクがあるのかについて解説します。そしていよいよ実践編ということで今回用意したマイクロフォンを使って可能な限りのセットアップを行ってみたいと思います。芸大手持ちのマイクに加えてサンケン小林さんからCO-100kマイクを、エレクトリ境沢さんからノイマンKM-130-140シリーズをお借りしました。スタジオ-Aは、音楽家が演奏しやすい空間を提供することを第一のコンセプトにソナ中原さんに設計してもらいました。以下に仕様を紹介します。
東京芸術大学千住キャンンパス スタジオA
スタジオA
横幅:11.7m 奥行き:14.8m 高さ:7.3m
残響時間:0.96秒(500Hz)
NC値:15以下
録音調整室
横幅:6.9m 奥行き:7.6m 高さ:3.9m
NC値:15以下
*主要機材一覧
コンソール:Trident S80
モニタースピーカー:Musik Electronic RL901K×5(L,C,R,Ls,Rs)、BASIS 4K×2(LFE)、Genelec 8040(ステレオニアフィールド)
DAW:degidesign ProTools HD3(192I/O×4)
エフェクタ:YAMAHA SREV1、Lexicon PCM-91、Urei 1176、TubeTech CL1B、AMEK 9098Comp
マイクロホン:DPA4006×2、CMC64×2、CMC66×2、CMC68、U87Ai×4、C414×2、C38B 、MD421
スタジオ工事
建築基本設計:(株)日総建
音響技術検討・音響建築工事:(株)ソナ
音響システム工事:(株)スタジオイクイプメント
コントロールルームはアナログコンソール32CHで、このダイレクト出力がプロツールズへ32CHそのまま録音できます。モニタースピーカはムジークエレクトロニクスでフロントのL-C C-R間にLFEが2台はいっています。本日の録音は48KHz/24bitで192-IOを経由して録音します。では、各種サラウンド・メインマイキングの現状について解説したいと思います。
● デッカ ツリー
これは、イギリスのデッカ レコードでステレオ録音用に使われていた方式のひとつです。オリジナルのマイキングではノイマンのM-50というマイクをフロント3本に使用することを前提にしています。このM-50というマイクは、当時として大変ユニークな特性をもっており、2KHzまでは全指向ですがそれ以上では指向性を持ったマイクです。現在はDPA4006などを使っていますが、本来はこうした指向特性を前提としていました。L-C-Rの間隔は1.5-2mでオーケストラに向かってLがVln にRがchelloへ向いています。これにアウトリガーと呼ぶLLとRRという広い間隔のLとRが加わり5本でフロントを形成します。これにリアのサラウンドマイクを適宜付加するという考え方です。通常サラウンド録音で呼ぶデッカツリーは、このフロント5本の組み合わせを総称しています。ハリウッドなどアメリカの映画音楽サラウンド録音でのメインマイクとしても良く使われています。
● FUKADA-TREE
これはNHKの深田さんが1997年に考案してAESで発表しその後沢口さんなどと世界的に紹介してきたマイキングです。オリジナルのFUKADA-TREEはフロントL-C-Rに単一指向性を、リア用も単一指向性を使いアウトリガーのLL,RRに全指向性を使って計7本でひとつのマインマイクを形成するという考え方です。そしてこのフロントとリアのマイクの中間部をホールのクリティカル ディスタンスと呼ぶ直接音と間接音がうまく融合する場所へ設置するというのがポイントになります。ちなみにここのスタジオのCD値は2.2m付近です。深田さんは、いつも前進する人なので2006年の大阪シンフォニーホールでのサラウンド収録実験のときは、すべて全指向性マイクとしてリア用には、APEというアダプターを取り付け高域に指向性を持たせています。また全指向性としたことでマイク間隔も広くなっています。深田さんは、演奏される音楽の内容や演奏会場によってオリジナルにこだわらずに様々改良を重ねていますので、みなさんもこれにこだわらずにいろいろ改良してみてください。
● ポリフェニア ペンタゴン
これは元フィリップス レコードの人たちが立ち上げたポリフェニア レーベルで採用している方式です。マイク配置はITU-R BS775の配置をそのままマイク配置にした方式です。ですから理論的にどうしてこうしたのかといった細かい理論はないのではないかと思います。
● INA-5
これはオランダ語で理想的単一アレイという言葉の頭文字から命名された単一指向性5本によるマイキングです。ホールなどの天井からつりマイクでも設置できます。このマイクの角度と間隔はM.ウイリアムスという人が考えたレコーディングアングルという考え方をサラウンドへ発展させて決められています。
● OCT
これはドイツのIRT研究所 G.タイラー が考案した方式です。彼は同一音源がL-C C-R L-Rの間でできるファンタム音像の不一致で音が不鮮明になることを避けるためLとRは指向性の鋭いマイクを使いセンターは単一指向性という組み合わせを考え、これで不足する低域を補うためにL Rと同一位置に全指向性マイクを設置してLPFで100Hz以下のみをフロントL.Rへ付加するという方式です。OCT-バーという専用のバーを使えばリア用のサラウンドマイクも設置できます。ヨーロッパでは使われていますが日本ではあまり実績がありません。
● オムニ8亀川方式
先ほど述べたINA-5やOCTは基本的に単一指向性マイクを使用していますが、実際に録音した音の傾向として定位は向上するが広がり感が不足するという印象です。私はフロントのメインマイクは、全指向性が適していると考えておりそれに基づいて私が2006年にAESで発表した方式で最適距離を検討したところL-Rで2mという結果がでました。これでセンター成分をいかにセパレーション良くするかということでセンターを両指向性としています。リアは、ホールにもよりますがフロントマイクから4-6mにペアマイクを配置しています。
● W-M/S
これはステレオのM/S方式を拡大してフロントの単一指向マイクに加えてリア側にももうひとつ単一指向性マイクを加え、計3本を使う方式です。これをデコードすると4CHのサラウンド出力が得られますし、専用のデコーダを使うとセンター成分も取り出すことができます。マイクが3本で済むというメリットをいかして機動性重視のサラウンドロケなどに活躍しています。
● IRT-X
これも先ほどのOCTと同様にIRTのG.タイラーが考案した方式で、25cm距離で90度に配置したクロスバーの先端に単一指向性マイク4本が取り付けられています。これもコンパクトなのでサラウンド ロケなどで活躍しています。
● Hamasaki SQ
これはNHK濱崎さんがもともとフロントに5本の指向性マイクを使いリアのサラウンド用として考案したマイキングです。両指向性マイク4本で2m間隔の正方形を作ります。両指向性のプラス側を外側に向けて設置し、フロントからの直接音のかぶりを減らしています。
● オムニSQ
これは先のHamasakiSQが使用している両指向性マイクを全指向性にした方式で大阪MBS放送の入交さんが考案したマイキングです。全指向性ですのでステージに近いと直接音が多くなりますが、ホールの響きが豊かでステージよりも遠くに配置した場合は有効な方式です。
ではこれ以外の製品化されたサラウンドマイクについても紹介します。
● アンビソニック方式
● km-360
● ホロフォン
● ダイマジック
● トリノス オーディオ
実践編PART-01
スタジオへ移動して実際のセットをはじましょう。
今回用意したのは、
● オムニ8+リア2ch
● デッカ3ch+アウトリガー
● hamasaki SQ
● INA-3(フロントのみ)
です。
参加者からDPA-4060を持参したのでセットしたいというリクエストがありこれも設置することにしました。
まずソプラノの小高さんにスタジオ内で一番気持ちよく歌える位置を決めてもらいます。
(小高さん歌いながら前後左右移動してもっとも気持ちよく歌える位置を決める。)
次にピアノの位置を決めます。スタジオ-Aの床はネダという格子状の梁が十字にはいった床材ユニットを組み合わせています。みなさんたたいてみるとお分かりだと思いますが堅い部分と共振する部分が音でわかると思います。ピアノの足はこの堅いネダの部分において不要共振のでないようにします。逆にチェロやコントラバスなど豊かな響きを欲しい場合はこの共振面を使います。次にピアノの蓋の開閉を行って2人のバランスを決めます。今回は、全開で良いようですので全開でやります。つぎにスタジオ側面の吸音パネルを調整して演奏者がやりやすいコンディションを作ります。ここまでで演奏側のベストな条件が決まりましたので、いよいよマイクをセットします。ここのつりマイク用BOXは6回線まで使えるようにしていますのでワンポイントサラウンドマイクなども見栄え良く吊ることができます。各マイクの高さや距離の測定には建築現場で使う伸縮自在のスケールを使っています。それぞれセット、レベルチェック後第1回目の録音が開始です。
1回目にセットしたマイキングは
オムニ8
デッカツリー
INA-3(リア無しメインのみ)CMC-64
HAMASAKI SQ
DPA-4060ミニチュアペア
コントロールルーム側で再生
実践編PART-02
2回目に使用したマイクは
KM-130/131をメインにしたデッカツリー
U-87Ai3本によるINA-3
オムニスクエアー CMC-62/CMC-66
リア ペアKM-140
再びコントロールルームで各種組み合わせを再生。その後メインマイクだけや、各種リアマイクの組み合わせ、そしてリア単独のみの、メーカの違いや指向性の違いなど比較取聴を行いサラウンド音場を堪能しました。
沢口:質問や感想があればどうぞ。
Q01:たとえば7本のマイクを使った場合に5CHのサラウンドMIXを作るにはどうするのか?
A01:メインの5本はそのまま各チャンネルへ定位します。LL/RRといったマイクはフロントのLとRに振り分けてメインのL/Rとバランスをとります。
Q02:同じようですがアウトリガーのLL RRはどこに定位させるかの?
A02:Q01と同じです。これもフロントのL/Rへ定位させます。
Q03:中間定位といった方式はないのか?
A03:フロントとリアの中間へ定位させるという方法も行われてはいますが、十分注意しないと聞いている位置によってサイドのバランスが異なってきます。テラークレーベルのM.ビショップなどそうした方法を実施してオーケストラをサラウンド収録している例も見られます。
Q04:次世代方式として7.1CHが提案されているが制作側の配置は検討されているのか?
A04:現在どこに定位をするのが良いのかは制作側ではまだ統一した規格になっていません。5.1CHの延長としてリアや側面の補強として使うとか、水平面は5.1CHのままで高さの情報として使うとかといったアイディアが出始めた状況です。映画など制作スタジオの設備もまだそうしたところまでは設備の対応がなされていません。
Q05:各マイクの感度設定はどうするのか?
A05:本来は小型のピンノイズ発生器などをセットし各マイクの前で再生して全てのマイクの感度をあわせるという事をやります。またあらかじめ感度校正用の発信器をマイクに取り付けて感度を校正しておくと言った厳密な方法をとっているクラシックのレーベルもあります。今回はそこまでやっていませんのでメーターと聴感であわせただけです。
Q06:クリティカル・ディスタンスを現場で手軽に判断する方法はあるのか?
A06:ではじっさいにやってみましょう。これは我々が耳で聞いたのでは、わかりませんし、片耳できいてもよくわかりませんので、モノーラル マイクで録音しながらそれを聞いて判断するのがいいと思います。ステージ上で聞き慣れた歌などを歌ってもらいながらモノーラルマイクで録音しながらだんだん客席側へ下がっていくと直接音と残響音が1:1になったように聞こえる場所があります。その付近がその会場のCD値だと検討をつけてみることができます。(一同納得!)
沢口:残りの時間でコマーシャルのサラウンドデモ素材の評価を1991永田 北村さんから実施。貴重なアンケートデータも得られました。
第1回目のサラウンド マイキング
第2回目のサラウンド マイキング
「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
October 10, 2007
サラウンドめぐり 江本 修(平成13∼18年度JEITAサラウンドサウンド 専門委員会主査 元松下電器)
"よく「住環境から日本でサラウンドは普及しない」と言われるが、本当だろうか?今よりずっと住環境が狭い時代に2度に渡ってサラウンドが受け入れられた実績があるのである。"「放送技術」より
「サラウンドめぐり」 サラウンド開拓者の熱いメッセージ Index
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
September 24, 2007
冨田勲 第1回エレクトロニクス・アーツ浜松賞 受賞記念講演会
2007年9月24日ACTCITY浜松
By漢那拓也
今年ローランド音楽財団の第1回エレクトロニクアーツ賞を受賞されました冨田勲さんの記念講演が浜松で行われました。その模様を尚美の冨田門下生漢那さんが尚美学園のHP用にリポートした内容を寺子屋NEWSとしても掲載許可を頂きましたので、お読み下さい。(沢口)
本文
9月24日月曜日、アクトシティ浜松にて「冨田勲エレクトロニクス・アーツ浜松賞受賞記念講演会」が行われました!
この講演会は、主に浜松市在住の音楽ファン、音楽指導者、音楽を学ぶ多くの学生を対象としたもので、予定されていた定員を上回る満席状態。まさに立錐の余地も無い、大盛況の講演会になりました。
梯郁太郎氏からのご挨拶から始まった講演会は、冨田先生の半生を10分間の映像で紹介したビデオ上映、梯氏と冨田先生の対談と続き、30年以上ものお付き合いがある間柄ならではの、貴重なシンセサイザー黎明期の昔話などをお話しされていました。
他のメーカーが、アナログ・シンセサイザーのコントロール電圧(CV)の入力規格を簡略化していく中、ローランドだけは最後まで従来の規格を通していたそうで、冨田先生はそのことに対して大変感謝されていました。
従来の規格である「1ボルト上がるごとに1オクターブ上がる」方式(oct/V方式)は、非常に回路が複雑になる反面、プログラムをするものにとって、入力するコントロール電圧の計算はとても簡単になります。
単なる「手弾きのキーボード楽器」に収まらない、冨田先生のシンセサイザー妙技を活かすためには、計算のしやすい「1ボルト上がるごとに1オクターブ上がる」方式が、とても重要だったそうです。
昨年の「冨田勲トークセッションレポート」では、冨田先生が奏でる「音」の秘密について、MOOGの不安定さやファジーさに触れましたが、今回の講演においても、「技術と芸術の相互関係」の大切さを改めて感じました。
今となっては「古の技術」となってしまったお話なので、若い世代の方には少々難しいお話であるにも関わらず、客席では制服を着た学生の方々が、要所要所で熱心にメモを取っているのがとても印象的でした。
梯氏と冨田先生の対談の後は、NHK番組の音楽制作から始められた、冨田先生の50年以上のキャリアを紹介する冨田先生による講演となりました。
「3時間で書いた曲が50年以上使われている」という、「今日の料理」のテーマ音楽、「新日本紀行」や大河ドラマ「新・平家物語」、手塚アニメの「ジャングル大帝」などに代表される、ステレオでオーケストラを主に使われていた時代。アルバム「月の光/ドビュッシー」や「殻のついた雛の踊り(展覧会の絵より)」、「パシフィック231/オネゲル」などの曲に代表されるMOOGシンセサイザーと4つのスピーカーを使ったサラウンド表現を追求された時代。そしてサウンドクラウド。近年のオーケストラとシンセサイザー、そしてサラウンド表現を合わせた、「源氏物語交響絵巻」に代表される時代。
それぞれの時代ごとの作品を通して、技術の進化や制作環境の変遷、それによって幅の広がった音楽表現の可能性について、実感をもってより深く知ることができる様な内容の講演でした。
どの時代においても冨田先生は工夫を欠かさず、例えば「新日本紀行」では拍子木に深い残響効果が掛かっているのですが、今では当たり前のように使われているリバーブが当時はなく、非常階段の残響をうまく利用されていたり、それから20年後、MOOGシンセサイザーでの表現を追求されていた時代には、4chサラウンドを表現するため、ミキサーのフェーダーを使って音の移動を表現したり(相当フェーダー捌きの練習を重ねられたそうです)されていたとのことでした。
そんな冨田先生の発想力が会場を沸かせたのがヒヨコと猫とニワトリが追いかけっこをする様子を描いた「殻のついた雛の踊り(展覧会の絵より)」で、いかにもヒヨコ!といったシンセサウンドに、これまたいかにもドラネコ!というようなシンセ音、そしてニワトリ以外想像出来ないシンセ音の、それぞれキャラクター味溢れるMOOGサウンドが会場を縦横無人に駆け回り、客席からは拍手喝采、サラウンド表現が持つ、エンターテインメント性が遺憾なく発揮されていました。研究生も是非見習わせて頂きたいです!
サラウンドに傾倒した時代として紹介された、3つのオーケストラが織り成す「波のフーガ」や優雅な世界に渦巻く女性の激情を「本音」と「理性」に分けて描いた「浮遊する生霊(愛地球博前夜祭より)」のシーンなど、会場一杯に広がるサラウンドの存在感に、圧倒された方も多かったのではないでしょうか。
さらには比叡山延暦寺・根本中堂で、源氏物語を人形師・ホリヒロシさんの人形舞と共演された映像も、一部紹介され、美しい人形の造詣やホリヒロシさんによる人形の演舞、生霊のシーンの「髪の毛を掴んで引き摺りまわす」表現に、鳥肌が立つくらい釘付けになりました。
冨田先生の「源氏物語交響絵巻」のアルバムジャケットにも使われているホリさんの人形は、やはり見ている人を引き込む何かを持っているのではないでしょうか。
その他にも、こういった場では今回初めて「月の光」のサラウンドバージョンが披露されるなど、貴重な音源に触れさせていただけたり、この度初めて試みた「SONAR」による音だしも非常に好評で、高音質の音楽空間を楽しむことができました。
最後に冨田先生の一番最近の作品である、みんなのうた「鳳来寺山のブッポウソウ」が映像付きで上映され、会場からの拍手とともに約2時間に及んだ講演会は幕を閉じました。
私個人の感想としましては、この日の冨田先生の講演からは「技術の進化した近年では、様々な音楽の楽しみ方がある」という若い世代の人たちへのメッセージを感じました。この講演会に参加され、熱心にメモを取っていた学生の方々にも、きっとそのメッセージが届いていたのではないかと思います。
SONAR操作・音声コントロール/野尻修平
レポート著/漢那拓也
写真提供/財団法人ローランド芸術文化振興財団
「サラウンド制作情報」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
By漢那拓也
今年ローランド音楽財団の第1回エレクトロニクアーツ賞を受賞されました冨田勲さんの記念講演が浜松で行われました。その模様を尚美の冨田門下生漢那さんが尚美学園のHP用にリポートした内容を寺子屋NEWSとしても掲載許可を頂きましたので、お読み下さい。(沢口)
本文
9月24日月曜日、アクトシティ浜松にて「冨田勲エレクトロニクス・アーツ浜松賞受賞記念講演会」が行われました!
この講演会は、主に浜松市在住の音楽ファン、音楽指導者、音楽を学ぶ多くの学生を対象としたもので、予定されていた定員を上回る満席状態。まさに立錐の余地も無い、大盛況の講演会になりました。
梯郁太郎氏からのご挨拶から始まった講演会は、冨田先生の半生を10分間の映像で紹介したビデオ上映、梯氏と冨田先生の対談と続き、30年以上ものお付き合いがある間柄ならではの、貴重なシンセサイザー黎明期の昔話などをお話しされていました。
他のメーカーが、アナログ・シンセサイザーのコントロール電圧(CV)の入力規格を簡略化していく中、ローランドだけは最後まで従来の規格を通していたそうで、冨田先生はそのことに対して大変感謝されていました。
従来の規格である「1ボルト上がるごとに1オクターブ上がる」方式(oct/V方式)は、非常に回路が複雑になる反面、プログラムをするものにとって、入力するコントロール電圧の計算はとても簡単になります。
単なる「手弾きのキーボード楽器」に収まらない、冨田先生のシンセサイザー妙技を活かすためには、計算のしやすい「1ボルト上がるごとに1オクターブ上がる」方式が、とても重要だったそうです。
昨年の「冨田勲トークセッションレポート」では、冨田先生が奏でる「音」の秘密について、MOOGの不安定さやファジーさに触れましたが、今回の講演においても、「技術と芸術の相互関係」の大切さを改めて感じました。
今となっては「古の技術」となってしまったお話なので、若い世代の方には少々難しいお話であるにも関わらず、客席では制服を着た学生の方々が、要所要所で熱心にメモを取っているのがとても印象的でした。
梯氏と冨田先生の対談の後は、NHK番組の音楽制作から始められた、冨田先生の50年以上のキャリアを紹介する冨田先生による講演となりました。
「3時間で書いた曲が50年以上使われている」という、「今日の料理」のテーマ音楽、「新日本紀行」や大河ドラマ「新・平家物語」、手塚アニメの「ジャングル大帝」などに代表される、ステレオでオーケストラを主に使われていた時代。アルバム「月の光/ドビュッシー」や「殻のついた雛の踊り(展覧会の絵より)」、「パシフィック231/オネゲル」などの曲に代表されるMOOGシンセサイザーと4つのスピーカーを使ったサラウンド表現を追求された時代。そしてサウンドクラウド。近年のオーケストラとシンセサイザー、そしてサラウンド表現を合わせた、「源氏物語交響絵巻」に代表される時代。
それぞれの時代ごとの作品を通して、技術の進化や制作環境の変遷、それによって幅の広がった音楽表現の可能性について、実感をもってより深く知ることができる様な内容の講演でした。
どの時代においても冨田先生は工夫を欠かさず、例えば「新日本紀行」では拍子木に深い残響効果が掛かっているのですが、今では当たり前のように使われているリバーブが当時はなく、非常階段の残響をうまく利用されていたり、それから20年後、MOOGシンセサイザーでの表現を追求されていた時代には、4chサラウンドを表現するため、ミキサーのフェーダーを使って音の移動を表現したり(相当フェーダー捌きの練習を重ねられたそうです)されていたとのことでした。
そんな冨田先生の発想力が会場を沸かせたのがヒヨコと猫とニワトリが追いかけっこをする様子を描いた「殻のついた雛の踊り(展覧会の絵より)」で、いかにもヒヨコ!といったシンセサウンドに、これまたいかにもドラネコ!というようなシンセ音、そしてニワトリ以外想像出来ないシンセ音の、それぞれキャラクター味溢れるMOOGサウンドが会場を縦横無人に駆け回り、客席からは拍手喝采、サラウンド表現が持つ、エンターテインメント性が遺憾なく発揮されていました。研究生も是非見習わせて頂きたいです!
サラウンドに傾倒した時代として紹介された、3つのオーケストラが織り成す「波のフーガ」や優雅な世界に渦巻く女性の激情を「本音」と「理性」に分けて描いた「浮遊する生霊(愛地球博前夜祭より)」のシーンなど、会場一杯に広がるサラウンドの存在感に、圧倒された方も多かったのではないでしょうか。
さらには比叡山延暦寺・根本中堂で、源氏物語を人形師・ホリヒロシさんの人形舞と共演された映像も、一部紹介され、美しい人形の造詣やホリヒロシさんによる人形の演舞、生霊のシーンの「髪の毛を掴んで引き摺りまわす」表現に、鳥肌が立つくらい釘付けになりました。
冨田先生の「源氏物語交響絵巻」のアルバムジャケットにも使われているホリさんの人形は、やはり見ている人を引き込む何かを持っているのではないでしょうか。
その他にも、こういった場では今回初めて「月の光」のサラウンドバージョンが披露されるなど、貴重な音源に触れさせていただけたり、この度初めて試みた「SONAR」による音だしも非常に好評で、高音質の音楽空間を楽しむことができました。
最後に冨田先生の一番最近の作品である、みんなのうた「鳳来寺山のブッポウソウ」が映像付きで上映され、会場からの拍手とともに約2時間に及んだ講演会は幕を閉じました。
私個人の感想としましては、この日の冨田先生の講演からは「技術の進化した近年では、様々な音楽の楽しみ方がある」という若い世代の人たちへのメッセージを感じました。この講演会に参加され、熱心にメモを取っていた学生の方々にも、きっとそのメッセージが届いていたのではないかと思います。
SONAR操作・音声コントロール/野尻修平
レポート著/漢那拓也
写真提供/財団法人ローランド芸術文化振興財団
「サラウンド制作情報」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
第48回サラウンド塾 大型映像とサラウンド制作の現状 山本雅之
By. Mick Sawaguchi日時:2007年9月24日
場所:エス・シー・アライアンス 稲田スタジオ
講師:山本雅之(株式会社 エス・シー・アライアンス)
テーマ:IMAX からプラネタリウムまでの大型映像サラウンド制作について
沢口:9月は、早稲田にありますSCアライアンスのIMAX用ダビングステージをお借りして、日本国内ではこの分野で貴重なノウハウをお持ちの山本さんから大型映像におけるサラウンド制作の現状とデモをお願いしました。皆さんもIMAXなど大型映像の作品をまとめて聞くのにも大変貴重な機会だと思います。ちょうど今月のプロサウンド誌に山本さんが担当されたIMAX用「銀河鉄道999」のサラウンド制作リポートも掲載されていますので合わせてお読みください。それでは山本さんよろしくお願いします。
山本:山本です。私は、SCアライアンスのメディアエンターテイメント社に所属しておりキャリアは20年となりましたが、その大半はこうした大型映像のサラウンド制作を担当してきました。今日は、こうした大型映像とはどんなジャンルがあるのか?一般的な5.1CHサラウンド制作にくらべどういった特徴があるのか?などについてデモと解説で進めたいと思います。最初にここのスタジオ設備について紹介します。コンソールはプロツールズICONでスピーカレイアウトは、様々なレイアウトに対応するため フロント センターハイ LFEそしてリアは6個のスピーカがあり,制作に応じてモニター環境を切り替えています。フロントはGENELEC 1038B LFEは7073A サラウンド側は1032AX6です。モニターバス終段にYAMAHA DME24をいれて時間軸と周波数特性を整えています。
Console & DAW D-Control | 32 POST with Surround Panner digidesign
PRE digidesign 1
192 I/O digidesign 3
SYNC I/O digidesign 1
MIDI I/O digidesign 1
HD 3 Accel Core + MassivePack Pro4 digidesign
Mojo Avid 1
Plug-ins 360。Surround Tools Bundle WAVES
Restoration WAVES
Gold Bundle WAVES
Auto-Tune 4 Antares
Pitch 'n Time Serato
UnWrap TC Electronic
Sub DAW Digi002Rack digidesign 1
Monitor SP 1038B(FL,C,FR) Genelec 3
1032A(Surround,Top) Genelec 7
7073A(SW) Genelec 1
SMS-1P(Small) SONY
Monitor Alignment System DME24N YAMAHA 1
Mic Pre RED-1 Focusrite 1
Comp. 9098CL AMEK 1
1178 UREI 1
501 Symetrix 3
Effector 480L Lexicon 1
Recorder DA-98 TASCAM 3
D2424 fostex 1
PD-80 OTARITEC 1
PCM-7040 SONY 1
CDR-W66 SONY 1
MDS-E12 SONY 1
CDP D730 STUDER 1
Converter ADI-192DD RME 1
AD-8000 Apogee 1
Sync Generator SSG192 Lucid
Synchronizer MICRO LYNX SYSTEM LYNX
その他 HSR-2000P SHINANO 4
それでは、大型展示博覧用映像のジャンルについて紹介します。我々が手がけているジャンルをまとめると以下になると思います。
● IMAX オムニMAX系
● 博覧会 展示系
● プラネタリウム
● アミューズメント
● IMAX オムニMAX系
これは70mmフィルムを横に使う方式で上映されるカナダのIMAX社の方式です。オムニMAXは、会場の形態がドーム上になっており、IMAXは平面構造という違いがあります。同種の方式としては五藤光学が使用しているアストロビジョン ウルトラ70 コニカミノルタ系のI-worksなどがあります。IMAXは国内では上映館が減少していますが海外では人気のある上映方式です。特徴はディスクリートのサラウンドチャンネルでL-C-R-TOP-SL-SRという6チャンネル構成であること。LFEは、これらのチャンネルのうち80Hz以下の低域をLFEに送って再生しています。これに使用しているLFEパワーアンプは3.2kwという超弩級のパワーアンプが使われます。音声のマスターは44.1KHz/24bitで制作しそのデータを再生用HDにいれて再生しています。再生フォーマットは44.1kHz /16bitとなります。トラックアサインは
1- SL
2- FL
3- C
4- FR
5- SR
6- TOPという構成です。ではこの方式で制作した「銀河鉄道999」を上映します。
デモ
ラストのテロップの大きさを見ていただくと実際の画面の大きさが想像できるかと思います。このスタジオのスクリーンサイズの何十倍ものスクリーンで上映されますのでここでMIXしたレベルや定位の換算をしながら制作をおこなわなくてはなりません。私が心がけているMIXは、
● センタートップ チャンネルをいかに有効につかうか?
ここには特定の音を定位することもありますがフロント音場の中抜けを防止するために同じような音源を配置するといった場合もあります。音楽の場合も特定のフレーズや楽器をここに定位させるといった場合もあります。
● 台詞の定位は大胆に
これは先ほども述べたように実際のスクリーンの大きさはこのスタジオとは比べものにならない程大きいのでここの映像に台詞の定位をあわせるとほとんどセンター寄りとなってしまいます。それを避けるためここでMIXしているときは横からはみ出すくらいに大胆に定位をしています。
● LFEへ送るサウンドをフロントメインL-C-Rでどう作っておくか?
IMAX方式では専用のLFEチャンネルをもうけていません。全チャンネルのなかからおおよそ80Hz前後でLPFを入れて低域を取り出しそれをLFE SPへと送っています。ですからLFE成分となるような音源は、フロントの3チャンネルに分配しておきこれが再生側でLFE-SPから取り出せるようにしておきます。また出来るだけフルビットを使うシーンなどを心がけていますが、現状アナログ再生館も残っているためその場合は現場あわせで最大レベルを調整しています。レベル管理の方法は、VUメータでフロント3チャンネルを監視しそれ以外はデジタルメータで監視しています。IMAXシアターでは、リファレンスとなる上映館がないのでどこを基準に仕上げればいいのか?が毎回課題です。
● 展示博覧会用
この分野の特徴は、全てがカスタムメイドなので標準となる指標がないという点です。毎回異なったデザインや環境でベストの音響を構築することが我々に科せられた課題といえます。2005年の愛知万博では長久手日本館の「地球の部屋」というコーナーを担当しました。この音響は球体の浮き構造の中に3層構造で上部・中間部・下部という構成でしたが、球体という構造のため反射が多く調整に苦労した思い出があります。また電力館での「ふくろうの家」というライド型式の展示ではお客様が電車に乗って暗いトンネルを通過するのにあわせて11チャンネルのマルチ音響を再生するというデザインを担当しました。こうした場合は、事前に仮設で現場の再現をしながら音響設計を行う必要がありますので事前準備にも多くの時間が必要です。
● プラネタリウム
これまでのプラネタリウム音響はアナログで2チャンネルから4チャンネル再生が多かったのですが最近の型式は6チャンネルとなり最新では8チャンネルも登場しています。プラネタリウム座席構造はフラット型式と傾斜型式の2通りがあり型式によってリアのSL/SRの感じ方が異なるので座席構成によってバランス設定の調整が重要となります。再生機器は現在HDとなりFOSTEX D-2424が一般に使われています。映像との同期はTC同期です。最近の映像はパソコンベースでデジタル化されてきました。ではプラネタリウムでの作品例として「かいけつゾロリ」を聞いてください。
デモ:
この素材は元々2チャンネル作品でしたのでD-M-E素材をL-C-Rのステムに分解して提供してもらいそれらをもとに8チャンネルのマルチ音響を制作しました。I-CONは7.1チャンネルまで対応していますのでその7.1チャンネルバス構造を利用してMIXしています。最終バランスは実際の現場へ機材を持ち込んでバランス調整します。
●アミューズメント音響
テーマパークなどのアミューズメントのマルチ音響の変遷は、アナログ時代には8-16トラックマルチトラックレコーダが使用されていました。これがCD連装を4台同期させた8チャンネル再生へ、そして最近はHDやARメモリーへと変遷してきています。一例としてあるテーマパークでの設置例を紹介します。これはステージショーが終わったあとのパレードで観客が歩いていくに連れて様々な音響が連動して再生されるというシステムです。素材PRE-MIXまでスタジオで行ったあとはここの駐車場に実物と同じモックアップを建設してそこで最終MIXを行いました。もう一例は六本木ヒルズのアリーナにあるタワーの時刻に連動したサウンドスケープです。ここでは10チャンネルのマルチ音響を現場でのMIXで最終バランスをとっています。
● 現場MIXとツール
これまで様々なジャンルのサラウンド マルチ音響制作を紹介してきましたが、実際の設置条件は一定でないことと広大な空間をスタジオではシミュレートできないので現地での最終MIXが必要だということがお分かりになったと思います。このための3つの方法と再生コントロールのためのツール:LCSについて紹介します。現地での最終MIXを行う方法は、期間と予算によって以下の3方式をメインに選択しています。これ以外は、現地の既設機材での調整やLCSというマトリックス内での調整といった対応もあります。
● プロツールズTDMフルセットの持ち込み:セッションファイル自体からMIXできるのできめ細かいバランス調整が可能。機材の構成がおおがかりなので機動性はない。
● ヌエンド+MOTUのセット:データをプロツールズから変換する必要がある。小型機動性があるので単独でもMIXできる
● プロツールズLE:最低限のステム構成にまとめたデータでバランス調整。もっとも機動性があるがきめ細かなバランスまでは不可
理想的構成はフルセットを持ち込んでの最終MIXですがこれは完成までの期間や予算でいつも持ち込めるというわけでもないので私は大規模な仕事でなければコストと機動性のバランスから2番目のヌエンド+MOTUの構成が汎用性に優れていると思っています。ではこうした大規模マルチ音響を様々なタイミングとバランスで再生していくのに必要なコントロールツールLCSについて紹介します。これは一言で言えばデジタルマトリックスミキサーと空間内スピーカ配置およびレベルコントロール、ディレーコントロールなどを一括してメモリーしておけるコントローラです。パソコン画面上でSPACE MAPという現場で必要なスピーカレイアウトを作画し、CUEというタイミングコントロール情報を入力することでいかような音響デザインにも対応できるまさに大規模マルチチャンネル音響で必要なツールです。
実際の操作をデモ:
以上で、大規模サラウンド制作の現状と実際の説明を終わらせて頂きます。まとめると大規模サラウンド制作が通常の映画放送音楽ゲームなどと異なる大きな点は、
● 巨大なスクリーンや場所における再生なのでダイナミックレンジをどれだけ広くとれるか?
● 広さに応じた極端な定位の感覚が必要
● 高さチャンネルの有効活用を考える
● 3方式による実際の現場での最終MIXが決め手
に集約できるのではないかと思います。
では最後に「宇宙エレベータ」という作品を再生します。
デモ
沢口:山本さん大変有り難うございました。では残りの時間でQ&Aをお願いします。最初に今回参加出来ませんでした冨田さんから事前に質問が寄せられていますので、最初にそれを紹介して山本さんの考えをお聞きしましょう。
質問1) 大きな展示場やテーマパークのような場合 スピーカーの配置が展示物や地形の都合で、必ずしもサラウンドとして理想の配置でない場合に、ミックスダウンをどのようにされますか?今は現場にノートパソコンに入れたNUENDOなどを 持ち込んでその場で聴きながらミックスダウンができますが、きちんとしたスタジオ であらかじめサラウンドに組んだものを現場に持ち込み ますと、必ずといっていいほどはまりません。なお屋外のまだ工事中の現場でミックスダウンをする場合は、工事中は現場も作業用トラックなどの通路にもなっており、砂埃もひどく、また作業後の夜は騒音の関係で大きな音が出せません。これらの諸問題はどのように解決しておられますか?
山本:
1.できる限り現場にてミックスをする。
2.できる限り早い段階で現場の音響システムを把握しておく。
3.現場の音響システムについて改良できる余地がある場合は意見を提案する。
4.現場に機材を持ち込まなくても、ある程度は音を調整できるシステムを組み込んでおく。
私もできる限り現場でミックスするようにしていますが、状況が許さない場合も多く、そのようなときには、できる限り早い段階で現場の音響システム図を手に入れるようにしています。また、必ず現場に行って状況を確認します。それをもとにスタジオでミックスするしかありません。現場に機材を持ち込めなくても、現場のシステムで調整できる余地がある場合などには、なんとか交渉して、現場試写などの時に、そこの機材で最低限の調整はするようにしています。特に現場が工事中であったり、夜間は大きな音が出せなかったりすると、なかなか満足の行くミックスはできませんが、それでもなんとかミックスして、あとは現場のシステム上での調整をしています。幸いなことに、私が現場に行く仕事の多くは、弊社の別部署が音響の設計施工をしていることが多く、意見を出しやすいので、そのようなときには、必ず(予算にもよりますが)ソフト納品後でも、ある程度の調整が可能な音響システムを入れるようにしてもらっています。(例えばデジタルミキサーやDMEなどを入れるなど)また、スピーカーの位置やその他問題がある場合にはきちんと説明して、極力改善してもらいます。私もこうしたテーマパークでミックスした経験があります。その時には、敷地の外れに現場と同じようなモックアップを作ってもらいミックスしました。そして現場で音を出し確認して、最終的には現場音響システムの一部である「LCS」という、ダイナミック・オーディオ・マトリックス・ミキシン グ・エンジンで微調しました。
http://sceng.sc-a.jp/products/LCS/LCS_top.html
質問2)
広い会場の場合でも、ミックスダウンは通常中央で、つまりベストポジションでバランスをとります。しかし、現実問題としてベストポジションでない場所で聞く観客の数の方が多く、極端な場合ある一つのスピーカーの近くに来てしまった場合は、他のスピーカーからの音は遅れ、演奏のアンサンブルやノリがすこぶる悪くなりますが、なにか解決をしておられるのでしょうか?
山本:
1.定位をしっかり聞かせたい場合→ 曖昧なパンニングをしない
2.広い範囲でしっかりと聞かせたい場合→ ダイバージェンスを使って周りのスピーカーに音をこぼす
3.スイートスポットについて→ ベストポジションにてミックスをするが、必ず会場内でのあらゆるポジションにて確認し、最低限の情報は聞かせる
4.現場でのミックスは予算と時間に応じた組み合わせで行う
これらも既にやられていることとは思いますが、特に私の仕事ではナレーションやセリフを扱うことが多く、最低限どの場所でもそれらがちゃんと聞き取れるようであれば、後はある程度(ここが難しいところでもあるのですが)犠牲になっても仕方ないと思っています。またドームシアターなどでは多くのお客さんが後方に座ることが多くその際にリアのスピーカーが近くなりすぎることがあるので、若干ディレイをかけることが多くあります。私が今行っている現場ミックスはだいたい以下のような機材の組み合わせです。
1. ProTools TDM Full SET
2. NUENDO + MOTU 828mk2 + LapTop PC
3. ProTools LE
4. ProTools + LCS
5. LCS
これらを作品、予算、作業期間などに応じて使い分けるようにしています。
質問3)
サラウンドが、かつてのモノラルからステレオに移行したときのような一般人の間での爆発的なブームが 起きないのに不安を感じています。(映画は別として)家庭的な母子で楽しめる方向に向いていないからでしょうか?設置が一般では面倒くさいからでしょうか?家電量販店でのサラウンドコーナーが少なくなっています。一部のマニアのひそかなる楽しみに留まるのでしょうか?子供たちも楽めるサラウンドが必要と思われます。子供たちは同じ方向を向いてじっとしていません。広い会場でのサラウンドには家族連れが多いため、こういった要素も必要であると思われますが?今後のサラウンドのなす方向をご指示いただければ幸いです。
山本:
これは私の勝手な考えですが、家庭でいうと、ゲーム関連、外でいうとテーマパークをはじめとするアミューズメント系のプログラ ムでのサラウンドが今後は期待できるのではないでしょうか。やはりターゲットは冨田先生のご指摘通り、子供たちだと思います。サラウンドというと取っ付きにくいと思われがちですが、我々が子供の頃に体験した自然(山に行けばあちこちから鳥のさえずりが聞こえ、川や田んぼではではカエルが鳴いていたような)というのもある意味サラウンドですし、(今の子供たちにはあまり経験が無いのかもしれませんが・・・。)音楽にしてもヘッドフォンで聞くだけではなく、生の演奏を会場で聴くというのもそうでしょう。誤解を恐れずにいうと「サラウンド」=「体感」と言えるのではないでしょうか。この体感することの楽しさをどう伝えていくかが我々の使命だとも思います。
沢口:それではここに参加の皆さんからもどうぞ!
Q-01:大規模サラウンド音響のMIXは想像もできませんが、このスタジオの何十倍もある場所でどう聞こえるかの換算はどうしているのですか?
A:たくさん経験するという経験値しかないので私もそれで換算しています。
Q-02:音楽素材がなかなかサラウンドで持ち込まれないので苦労していますがどういった解決方法をとっていますか?
A:音楽のサラウンド素材提供は、正直我々も苦労しています。音楽制作側の理解と機材的な対応が音楽側で出来ていないのが現状ですね。それで私は次善の策として2チャンネルでもパート別のステムで持ち込んでもらうようにしています。これですと音楽制作側にも負担にならないし、我々も自由度が2チャンネルステレオだけよりも広がりますので。
Q-03:我々が見学して参考になる関東周辺の場所はありますか?
A:都内はなかなかありませんので山梨県立科学館、田無の多摩六都科学館、中央区のタイムドーム明石などがお薦めです。
Q-04:ステレオ素材のサラウンド化でよく使うツールはありますか?
A:私はWAVESの360をよく使っています。
Q-05:MIX時のモニターレベルはチャンネル当たりいくらですか?
A:大型の場合は85dB/CHですが通常の5.1CHサラウンドの場合は
82-83dB/CHです。大型でも設営条件で音量を大きくとれない場所もあるのでその時は85dBにこだわらずに小さいレベルでMIXします。
Q-06:アニメなどではリップチェックも大切ですが大画面の場合のチェック方法はどうしているのですか?
A:通常のワーク用映像では分からないので口元をズームした映像も提供してもらいこれでチェックします。
Q-07:音響スタッフは社内?社外?ですか。
A-:当社は自社内に音響スタッフもいますが、こうした大規模サラウンド音響の経験をどんどん修得してほしいと思っています。
Q-08:高さチャンネルはどういった音が有効ですか?
A:私は浮遊感を感じる音や音楽の特定のフレーズ、また全体のつながりを補正する音などに使っています、場合によっては低域をここに配置することもあります。
Q-09:現場MIXでの苦労などはありますか?
A:こうしたイベントが通常春からスタートという場合が多いので現場MIXが冬になることが多いことですね。しかも春からの展示ということで会場内は冷房設備しかありませんので防寒対策が大変です!また工事中のMIXということは建設現場の方々とも生活を共にしますので重たいヘルメットを被ってMIXや朝は全員でラジオ体操をしたりと連帯感の醸成にも気配りしながら騒音や埃とも戦わなくてはなりません!(笑い)
沢口:山本さん、長時間スタジオを提供していただき、しかもなかなか経験することのない大型映像とサラウンド音響をたくさんデモしていただき大変有り難うございました。(拍手)また本日アシスタントして頂きました稲住さんにもお礼申し上げます!
「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
場所:エス・シー・アライアンス 稲田スタジオ
講師:山本雅之(株式会社 エス・シー・アライアンス)
テーマ:IMAX からプラネタリウムまでの大型映像サラウンド制作について
沢口:9月は、早稲田にありますSCアライアンスのIMAX用ダビングステージをお借りして、日本国内ではこの分野で貴重なノウハウをお持ちの山本さんから大型映像におけるサラウンド制作の現状とデモをお願いしました。皆さんもIMAXなど大型映像の作品をまとめて聞くのにも大変貴重な機会だと思います。ちょうど今月のプロサウンド誌に山本さんが担当されたIMAX用「銀河鉄道999」のサラウンド制作リポートも掲載されていますので合わせてお読みください。それでは山本さんよろしくお願いします。
山本:山本です。私は、SCアライアンスのメディアエンターテイメント社に所属しておりキャリアは20年となりましたが、その大半はこうした大型映像のサラウンド制作を担当してきました。今日は、こうした大型映像とはどんなジャンルがあるのか?一般的な5.1CHサラウンド制作にくらべどういった特徴があるのか?などについてデモと解説で進めたいと思います。最初にここのスタジオ設備について紹介します。コンソールはプロツールズICONでスピーカレイアウトは、様々なレイアウトに対応するため フロント センターハイ LFEそしてリアは6個のスピーカがあり,制作に応じてモニター環境を切り替えています。フロントはGENELEC 1038B LFEは7073A サラウンド側は1032AX6です。モニターバス終段にYAMAHA DME24をいれて時間軸と周波数特性を整えています。
Console & DAW D-Control | 32 POST with Surround Panner digidesign
PRE digidesign 1
192 I/O digidesign 3
SYNC I/O digidesign 1
MIDI I/O digidesign 1
HD 3 Accel Core + MassivePack Pro4 digidesign
Mojo Avid 1
Plug-ins 360。Surround Tools Bundle WAVES
Restoration WAVES
Gold Bundle WAVES
Auto-Tune 4 Antares
Pitch 'n Time Serato
UnWrap TC Electronic
Sub DAW Digi002Rack digidesign 1
Monitor SP 1038B(FL,C,FR) Genelec 3
1032A(Surround,Top) Genelec 7
7073A(SW) Genelec 1
SMS-1P(Small) SONY
Monitor Alignment System DME24N YAMAHA 1
Mic Pre RED-1 Focusrite 1
Comp. 9098CL AMEK 1
1178 UREI 1
501 Symetrix 3
Effector 480L Lexicon 1
Recorder DA-98 TASCAM 3
D2424 fostex 1
PD-80 OTARITEC 1
PCM-7040 SONY 1
CDR-W66 SONY 1
MDS-E12 SONY 1
CDP D730 STUDER 1
Converter ADI-192DD RME 1
AD-8000 Apogee 1
Sync Generator SSG192 Lucid
Synchronizer MICRO LYNX SYSTEM LYNX
その他 HSR-2000P SHINANO 4
それでは、大型展示博覧用映像のジャンルについて紹介します。我々が手がけているジャンルをまとめると以下になると思います。
● IMAX オムニMAX系
● 博覧会 展示系
● プラネタリウム
● アミューズメント
● IMAX オムニMAX系
これは70mmフィルムを横に使う方式で上映されるカナダのIMAX社の方式です。オムニMAXは、会場の形態がドーム上になっており、IMAXは平面構造という違いがあります。同種の方式としては五藤光学が使用しているアストロビジョン ウルトラ70 コニカミノルタ系のI-worksなどがあります。IMAXは国内では上映館が減少していますが海外では人気のある上映方式です。特徴はディスクリートのサラウンドチャンネルでL-C-R-TOP-SL-SRという6チャンネル構成であること。LFEは、これらのチャンネルのうち80Hz以下の低域をLFEに送って再生しています。これに使用しているLFEパワーアンプは3.2kwという超弩級のパワーアンプが使われます。音声のマスターは44.1KHz/24bitで制作しそのデータを再生用HDにいれて再生しています。再生フォーマットは44.1kHz /16bitとなります。トラックアサインは
1- SL
2- FL
3- C
4- FR
5- SR
6- TOPという構成です。ではこの方式で制作した「銀河鉄道999」を上映します。
デモ
ラストのテロップの大きさを見ていただくと実際の画面の大きさが想像できるかと思います。このスタジオのスクリーンサイズの何十倍ものスクリーンで上映されますのでここでMIXしたレベルや定位の換算をしながら制作をおこなわなくてはなりません。私が心がけているMIXは、
● センタートップ チャンネルをいかに有効につかうか?
ここには特定の音を定位することもありますがフロント音場の中抜けを防止するために同じような音源を配置するといった場合もあります。音楽の場合も特定のフレーズや楽器をここに定位させるといった場合もあります。
● 台詞の定位は大胆に
これは先ほども述べたように実際のスクリーンの大きさはこのスタジオとは比べものにならない程大きいのでここの映像に台詞の定位をあわせるとほとんどセンター寄りとなってしまいます。それを避けるためここでMIXしているときは横からはみ出すくらいに大胆に定位をしています。
● LFEへ送るサウンドをフロントメインL-C-Rでどう作っておくか?
IMAX方式では専用のLFEチャンネルをもうけていません。全チャンネルのなかからおおよそ80Hz前後でLPFを入れて低域を取り出しそれをLFE SPへと送っています。ですからLFE成分となるような音源は、フロントの3チャンネルに分配しておきこれが再生側でLFE-SPから取り出せるようにしておきます。また出来るだけフルビットを使うシーンなどを心がけていますが、現状アナログ再生館も残っているためその場合は現場あわせで最大レベルを調整しています。レベル管理の方法は、VUメータでフロント3チャンネルを監視しそれ以外はデジタルメータで監視しています。IMAXシアターでは、リファレンスとなる上映館がないのでどこを基準に仕上げればいいのか?が毎回課題です。
● 展示博覧会用
この分野の特徴は、全てがカスタムメイドなので標準となる指標がないという点です。毎回異なったデザインや環境でベストの音響を構築することが我々に科せられた課題といえます。2005年の愛知万博では長久手日本館の「地球の部屋」というコーナーを担当しました。この音響は球体の浮き構造の中に3層構造で上部・中間部・下部という構成でしたが、球体という構造のため反射が多く調整に苦労した思い出があります。また電力館での「ふくろうの家」というライド型式の展示ではお客様が電車に乗って暗いトンネルを通過するのにあわせて11チャンネルのマルチ音響を再生するというデザインを担当しました。こうした場合は、事前に仮設で現場の再現をしながら音響設計を行う必要がありますので事前準備にも多くの時間が必要です。
● プラネタリウム
これまでのプラネタリウム音響はアナログで2チャンネルから4チャンネル再生が多かったのですが最近の型式は6チャンネルとなり最新では8チャンネルも登場しています。プラネタリウム座席構造はフラット型式と傾斜型式の2通りがあり型式によってリアのSL/SRの感じ方が異なるので座席構成によってバランス設定の調整が重要となります。再生機器は現在HDとなりFOSTEX D-2424が一般に使われています。映像との同期はTC同期です。最近の映像はパソコンベースでデジタル化されてきました。ではプラネタリウムでの作品例として「かいけつゾロリ」を聞いてください。
デモ:
この素材は元々2チャンネル作品でしたのでD-M-E素材をL-C-Rのステムに分解して提供してもらいそれらをもとに8チャンネルのマルチ音響を制作しました。I-CONは7.1チャンネルまで対応していますのでその7.1チャンネルバス構造を利用してMIXしています。最終バランスは実際の現場へ機材を持ち込んでバランス調整します。
●アミューズメント音響
テーマパークなどのアミューズメントのマルチ音響の変遷は、アナログ時代には8-16トラックマルチトラックレコーダが使用されていました。これがCD連装を4台同期させた8チャンネル再生へ、そして最近はHDやARメモリーへと変遷してきています。一例としてあるテーマパークでの設置例を紹介します。これはステージショーが終わったあとのパレードで観客が歩いていくに連れて様々な音響が連動して再生されるというシステムです。素材PRE-MIXまでスタジオで行ったあとはここの駐車場に実物と同じモックアップを建設してそこで最終MIXを行いました。もう一例は六本木ヒルズのアリーナにあるタワーの時刻に連動したサウンドスケープです。ここでは10チャンネルのマルチ音響を現場でのMIXで最終バランスをとっています。
● 現場MIXとツール
これまで様々なジャンルのサラウンド マルチ音響制作を紹介してきましたが、実際の設置条件は一定でないことと広大な空間をスタジオではシミュレートできないので現地での最終MIXが必要だということがお分かりになったと思います。このための3つの方法と再生コントロールのためのツール:LCSについて紹介します。現地での最終MIXを行う方法は、期間と予算によって以下の3方式をメインに選択しています。これ以外は、現地の既設機材での調整やLCSというマトリックス内での調整といった対応もあります。
● プロツールズTDMフルセットの持ち込み:セッションファイル自体からMIXできるのできめ細かいバランス調整が可能。機材の構成がおおがかりなので機動性はない。
● ヌエンド+MOTUのセット:データをプロツールズから変換する必要がある。小型機動性があるので単独でもMIXできる
● プロツールズLE:最低限のステム構成にまとめたデータでバランス調整。もっとも機動性があるがきめ細かなバランスまでは不可
理想的構成はフルセットを持ち込んでの最終MIXですがこれは完成までの期間や予算でいつも持ち込めるというわけでもないので私は大規模な仕事でなければコストと機動性のバランスから2番目のヌエンド+MOTUの構成が汎用性に優れていると思っています。ではこうした大規模マルチ音響を様々なタイミングとバランスで再生していくのに必要なコントロールツールLCSについて紹介します。これは一言で言えばデジタルマトリックスミキサーと空間内スピーカ配置およびレベルコントロール、ディレーコントロールなどを一括してメモリーしておけるコントローラです。パソコン画面上でSPACE MAPという現場で必要なスピーカレイアウトを作画し、CUEというタイミングコントロール情報を入力することでいかような音響デザインにも対応できるまさに大規模マルチチャンネル音響で必要なツールです。
実際の操作をデモ:
以上で、大規模サラウンド制作の現状と実際の説明を終わらせて頂きます。まとめると大規模サラウンド制作が通常の映画放送音楽ゲームなどと異なる大きな点は、
● 巨大なスクリーンや場所における再生なのでダイナミックレンジをどれだけ広くとれるか?
● 広さに応じた極端な定位の感覚が必要
● 高さチャンネルの有効活用を考える
● 3方式による実際の現場での最終MIXが決め手
に集約できるのではないかと思います。
では最後に「宇宙エレベータ」という作品を再生します。
デモ
沢口:山本さん大変有り難うございました。では残りの時間でQ&Aをお願いします。最初に今回参加出来ませんでした冨田さんから事前に質問が寄せられていますので、最初にそれを紹介して山本さんの考えをお聞きしましょう。
質問1) 大きな展示場やテーマパークのような場合 スピーカーの配置が展示物や地形の都合で、必ずしもサラウンドとして理想の配置でない場合に、ミックスダウンをどのようにされますか?今は現場にノートパソコンに入れたNUENDOなどを 持ち込んでその場で聴きながらミックスダウンができますが、きちんとしたスタジオ であらかじめサラウンドに組んだものを現場に持ち込み ますと、必ずといっていいほどはまりません。なお屋外のまだ工事中の現場でミックスダウンをする場合は、工事中は現場も作業用トラックなどの通路にもなっており、砂埃もひどく、また作業後の夜は騒音の関係で大きな音が出せません。これらの諸問題はどのように解決しておられますか?
山本:
1.できる限り現場にてミックスをする。
2.できる限り早い段階で現場の音響システムを把握しておく。
3.現場の音響システムについて改良できる余地がある場合は意見を提案する。
4.現場に機材を持ち込まなくても、ある程度は音を調整できるシステムを組み込んでおく。
私もできる限り現場でミックスするようにしていますが、状況が許さない場合も多く、そのようなときには、できる限り早い段階で現場の音響システム図を手に入れるようにしています。また、必ず現場に行って状況を確認します。それをもとにスタジオでミックスするしかありません。現場に機材を持ち込めなくても、現場のシステムで調整できる余地がある場合などには、なんとか交渉して、現場試写などの時に、そこの機材で最低限の調整はするようにしています。特に現場が工事中であったり、夜間は大きな音が出せなかったりすると、なかなか満足の行くミックスはできませんが、それでもなんとかミックスして、あとは現場のシステム上での調整をしています。幸いなことに、私が現場に行く仕事の多くは、弊社の別部署が音響の設計施工をしていることが多く、意見を出しやすいので、そのようなときには、必ず(予算にもよりますが)ソフト納品後でも、ある程度の調整が可能な音響システムを入れるようにしてもらっています。(例えばデジタルミキサーやDMEなどを入れるなど)また、スピーカーの位置やその他問題がある場合にはきちんと説明して、極力改善してもらいます。私もこうしたテーマパークでミックスした経験があります。その時には、敷地の外れに現場と同じようなモックアップを作ってもらいミックスしました。そして現場で音を出し確認して、最終的には現場音響システムの一部である「LCS」という、ダイナミック・オーディオ・マトリックス・ミキシン グ・エンジンで微調しました。
http://sceng.sc-a.jp/products/LCS/LCS_top.html
質問2)
広い会場の場合でも、ミックスダウンは通常中央で、つまりベストポジションでバランスをとります。しかし、現実問題としてベストポジションでない場所で聞く観客の数の方が多く、極端な場合ある一つのスピーカーの近くに来てしまった場合は、他のスピーカーからの音は遅れ、演奏のアンサンブルやノリがすこぶる悪くなりますが、なにか解決をしておられるのでしょうか?
山本:
1.定位をしっかり聞かせたい場合→ 曖昧なパンニングをしない
2.広い範囲でしっかりと聞かせたい場合→ ダイバージェンスを使って周りのスピーカーに音をこぼす
3.スイートスポットについて→ ベストポジションにてミックスをするが、必ず会場内でのあらゆるポジションにて確認し、最低限の情報は聞かせる
4.現場でのミックスは予算と時間に応じた組み合わせで行う
これらも既にやられていることとは思いますが、特に私の仕事ではナレーションやセリフを扱うことが多く、最低限どの場所でもそれらがちゃんと聞き取れるようであれば、後はある程度(ここが難しいところでもあるのですが)犠牲になっても仕方ないと思っています。またドームシアターなどでは多くのお客さんが後方に座ることが多くその際にリアのスピーカーが近くなりすぎることがあるので、若干ディレイをかけることが多くあります。私が今行っている現場ミックスはだいたい以下のような機材の組み合わせです。
1. ProTools TDM Full SET
2. NUENDO + MOTU 828mk2 + LapTop PC
3. ProTools LE
4. ProTools + LCS
5. LCS
これらを作品、予算、作業期間などに応じて使い分けるようにしています。
質問3)
サラウンドが、かつてのモノラルからステレオに移行したときのような一般人の間での爆発的なブームが 起きないのに不安を感じています。(映画は別として)家庭的な母子で楽しめる方向に向いていないからでしょうか?設置が一般では面倒くさいからでしょうか?家電量販店でのサラウンドコーナーが少なくなっています。一部のマニアのひそかなる楽しみに留まるのでしょうか?子供たちも楽めるサラウンドが必要と思われます。子供たちは同じ方向を向いてじっとしていません。広い会場でのサラウンドには家族連れが多いため、こういった要素も必要であると思われますが?今後のサラウンドのなす方向をご指示いただければ幸いです。
山本:
これは私の勝手な考えですが、家庭でいうと、ゲーム関連、外でいうとテーマパークをはじめとするアミューズメント系のプログラ ムでのサラウンドが今後は期待できるのではないでしょうか。やはりターゲットは冨田先生のご指摘通り、子供たちだと思います。サラウンドというと取っ付きにくいと思われがちですが、我々が子供の頃に体験した自然(山に行けばあちこちから鳥のさえずりが聞こえ、川や田んぼではではカエルが鳴いていたような)というのもある意味サラウンドですし、(今の子供たちにはあまり経験が無いのかもしれませんが・・・。)音楽にしてもヘッドフォンで聞くだけではなく、生の演奏を会場で聴くというのもそうでしょう。誤解を恐れずにいうと「サラウンド」=「体感」と言えるのではないでしょうか。この体感することの楽しさをどう伝えていくかが我々の使命だとも思います。
沢口:それではここに参加の皆さんからもどうぞ!
Q-01:大規模サラウンド音響のMIXは想像もできませんが、このスタジオの何十倍もある場所でどう聞こえるかの換算はどうしているのですか?
A:たくさん経験するという経験値しかないので私もそれで換算しています。
Q-02:音楽素材がなかなかサラウンドで持ち込まれないので苦労していますがどういった解決方法をとっていますか?
A:音楽のサラウンド素材提供は、正直我々も苦労しています。音楽制作側の理解と機材的な対応が音楽側で出来ていないのが現状ですね。それで私は次善の策として2チャンネルでもパート別のステムで持ち込んでもらうようにしています。これですと音楽制作側にも負担にならないし、我々も自由度が2チャンネルステレオだけよりも広がりますので。
Q-03:我々が見学して参考になる関東周辺の場所はありますか?
A:都内はなかなかありませんので山梨県立科学館、田無の多摩六都科学館、中央区のタイムドーム明石などがお薦めです。
Q-04:ステレオ素材のサラウンド化でよく使うツールはありますか?
A:私はWAVESの360をよく使っています。
Q-05:MIX時のモニターレベルはチャンネル当たりいくらですか?
A:大型の場合は85dB/CHですが通常の5.1CHサラウンドの場合は
82-83dB/CHです。大型でも設営条件で音量を大きくとれない場所もあるのでその時は85dBにこだわらずに小さいレベルでMIXします。
Q-06:アニメなどではリップチェックも大切ですが大画面の場合のチェック方法はどうしているのですか?
A:通常のワーク用映像では分からないので口元をズームした映像も提供してもらいこれでチェックします。
Q-07:音響スタッフは社内?社外?ですか。
A-:当社は自社内に音響スタッフもいますが、こうした大規模サラウンド音響の経験をどんどん修得してほしいと思っています。
Q-08:高さチャンネルはどういった音が有効ですか?
A:私は浮遊感を感じる音や音楽の特定のフレーズ、また全体のつながりを補正する音などに使っています、場合によっては低域をここに配置することもあります。
Q-09:現場MIXでの苦労などはありますか?
A:こうしたイベントが通常春からスタートという場合が多いので現場MIXが冬になることが多いことですね。しかも春からの展示ということで会場内は冷房設備しかありませんので防寒対策が大変です!また工事中のMIXということは建設現場の方々とも生活を共にしますので重たいヘルメットを被ってMIXや朝は全員でラジオ体操をしたりと連帯感の醸成にも気配りしながら騒音や埃とも戦わなくてはなりません!(笑い)
沢口:山本さん、長時間スタジオを提供していただき、しかもなかなか経験することのない大型映像とサラウンド音響をたくさんデモしていただき大変有り難うございました。(拍手)また本日アシスタントして頂きました稲住さんにもお礼申し上げます!
「サラウンド寺子屋報告」 Index にもどる
「サラウンド入門」は実践的な解説書です
Subscribe to:
Posts (Atom)