By Mick Sawaguchi 沢口真生
日時:2004年3月21日
場所:三鷹 沢口スタジオにて
講師:山田道雄(NHK)
テーマ:JUNKY FUNK Band 5.1CH MIXについて
沢口:今回は、POPSのサラウンド音楽MIXの実例をレポートしてもらいます。講師はNHKのミキサーで山田道雄さんです。ではよろしく。
山田:今日はJUNKY FUNKというFUNKバンドのMIXを担当したときにサラウンドでやってみましたのでデモを交えてお話します。
[ POPS音楽サラウンドのポイント ]
今回のポイントとしては以下の5点に挑戦してみました。
1 サウンドステージは、ドラムのプレーヤーが聞いているような音場にする
2 客席で聞いているリアリティとは異なった創作系のリアリティを追求
3 点音源楽器は大胆にパンニングして70年代的な途中が抜けた空間とする
4 客席とは見た目が逆になることを音だけで説明できるか?
5 映像なしのサラウンド制作でできることを追求
録音は平和島の倉庫街にあるSOUND CREW STUDIOでプロツールズで録音。ここは、楽器が豊富に用意してありどれでも即使うことができます。ミキサーもデジデザインのプロコンを使用、モニターはGENELEC 1031です。天井が高いスタジオなのでドラムスはガレージ風のアンビエンスを捕まえるようにしました。ドラムス録音の詳細は本ドラマー嶋村さんのHPにも紹介されていますので参照してください。http://itto9.hp.infoseek.co.jp/各楽器はブースを使用し通常のマルチ録音と同様の段取りで録音しています。ですから音源は点音源の音マイク音源となりますので、以下のような考えで組み立てました。
1 モノーラル音源レベル差で奥行きをだす
2 ステレオ録音音源は情報量も増え、広がり感もあるので積極的に利用
3 無指向性マイクでステレオ収音し奥行き感と情報量の向上をはかる
これらを最終的な音場をイメージしながら録音することで的確な音源が録音できる。モノーラル音源は必要に応じてエフェクト処理で広がり感をだす。ドラムは各楽器は点音源の集合体だが、お互いのかぶりがあるので適切な定位を与えるだけで空間と奥行きができあがる。センターの扱いは、ハードセンターのシャープな定位感を十分活かしたいと思いモノーラル音源では積極的に使いました。ファンタムセンターを多くするとステレオへのダウンミックス時にバランスがくずれるので注意して使っています。図に示したのが今回のサラウンドMIXの定位です。みておわかりのようにスネアー キックをハードセンターとしてこれを取り巻くようにタム系とシンバル類が取り囲んでいます。FPfはリアをメインにセンターを結ぶ三角形に定位させています。サラウンドmixではコンプレッサーなどで音圧を稼ぐといたやり方は極力せず自然なダイナミックスを心がけました。また可能であればマイクの数も極力減らして音場を重視した録音も魅力的だと感じています。
[ 今後の挑戦 ]
今後の挑戦としてはそれぞれのプレーヤの位置で聞いているような定位と音場を作ってみたり、メインボーカリストの立場になってバンドがリアチャンネルでオーディエンスがフロントといった構成もやってみたいと思います。
各プレーヤーに1チャンネルづつを割り当ててどんな可能性があるかもおもしろい試みではないかと考えています。あとは、マルチで素材を用意しましたので皆さんでさわってオリジナルなサラウンドMIXをやってみてください。(了)
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