レポートby Mick
Sawaguchi
サラウンド寺子屋塾 主宰・UNAMAS Label
98回目となるサラウンド寺子屋塾が、名古屋・音ヤの会の皆さんが幹事となり以下の内容で開催されました。
主 催 : 名古屋・音ヤの会
日 時 : 2017年8月9日(水曜日) 19:00 ~ 21:00
場 所 :(株)Zaxx MAスタジオ
住 所 : 愛知県名古屋市東区葵1-26-12
住 所 : 愛知県名古屋市東区葵1-26-12
講演1 19:00 ~ 19:50 「 ささしまMusic
Base 」5.1chサラウンド制作
講師:日比野 正吾 ㈱ CTV MID ENJIN 技術センター・クリエイション技術部 音声
講演2 20:00 ~ 20:50 「UNAMASレーベルのハイレゾ・サラウンド 制作 」
講師:沢口
真生 沢口音楽工房
UNAMAS-Label代表
安藤:皆さんこんにちは、名古屋音ヤの会の幹事を担当していますCTV MID ENJINの安藤です。今回は、Zaxx様のサラウンド対応ポストプロダクション・スタジオのご協力で開催することができましたことを感謝いたします。最初にZaxxスタジオの代表であります舘さんから一言お願いします。
館:皆さん、こんにちは。Zaxxスタジオは、私が、CTVを定年してから、名古屋で初めてのサラウンド対応ポストプロダクションをスタートさせ今年で20年になります。当時に比べ、映画やゲームそしてTV番組でも、多くのサラウンド制作が行われるようになり、ホームAV市場でもDolby Atmos対応のソフト・ハードが市場に出てまいりました。Zaxxも今年の6月にGZ東京六本木の新ポストプロダクション・スタジオの開設に伴いDolby Atmos制作環境を導入しました。本日参加の皆さんの中にも若手や学生の方もお見えのようですので、是非こうした新たな音響の世界に挑戦していただきたいと思います。
安藤:舘さん、どうもありがとうございました。では、早速講演01を始めたいと思います。内容は、弊社が本年4月から新番組としてスタートしました「
ささしまMusic Base 」5.1chサラウンド制作 について日比野さんからデモを交えて紹介をお願いします。
日比野:CTV MID
ENGINの日比野です。私からは、今年の4月から新社屋移転に伴う音楽LIVE「ささしまMusic Base」のサラウンド制作を紹介します。
これは、新社屋完成に伴いB−スタジオで公開収録する音楽番組で、月1回のレギュラー番組です。雰囲気は、スタジオを音圧感充満のLIVE HOUSEにしてしまおうということで、口パクやカラオケではなくバンドの生演奏が基本です。
スタート時は、2CHステレオでしたが、個人的にメーテレさんが10年継続している「ボンバー」のサラウンド制作に負けないものをCTVでもやりたいと提案しました。(拍手)
最初にデモ再生をお聞きください。
デモ再生
サラウンド制作のきっかけは、総務省のA-PAB用にCTVの4K対応スタジオで番組をやるということになり当時のプロデューサーにサラウンド音声のデモを聞いてもらい、LIVEの空気感がよくわかると気に言ってもらい「サラウンドを聞く人は、多くないだろうけど俺も頑張るからサラウンドでやってみよう」ということになり、4月よりレギュラーとなりました。
サラウンド制作のコンセプト
まとまりの良い2CHステレオでも音圧感だけがあるPAサウンドでもない臨場感を表現するというのが基本コンセプトです。スタジオの基本セットを以下に示します。
バンドのステージ両サイドにイントレがあり、12回線のマルチBOX3をそれぞれドラムーバンド/VO-その他で切り分けています。
AUDIENCEマイクは、フロントL-Rと客席中央部X2そして後方Ls-Rsの6CHで、楽器の臨場感ピクアップ用に、ドラムのOFFマイクがCCHにフロントL-Rの3CHです。
詳細は、以下のマイキング図を参照ください。
回線系統は以下に示すようなアナログ分岐を基本としています。
サラウンドMIX系統図を以下に示します。
サラウンドMIXは、基本ダイレクトMIXです。メイン入力はSTUDER VISTA-X64回線+コンパクトリモート10回線で構成しています。プロツールズにバラで録音していますが、これは、バンドのリハーサルが終わった後でさらに追い込むためのチェック用でVISTA-Xの入力をDAWリターンに切り替えることで瞬時にマイク入力からDAWリターンをモニターしながら追い込みができます。
編集用に単独の素材も収録してあり(ISO-VCR素材)これはドラム専用のカメラ、拍手素材用そしてディレクターが独自にSW’INGしたD-ONLYなどがあります。
MA
編集後の映像は、MXFで音声は、OMFファイルとしてポストプロダクションを行います。ファイナルMIXは、1-6CHがサラウンド音声、7-8CHが2CH DOWNMIXとなります。
NET配信用の2CHについてはDown MixステレオをMP-4へ自動コーディングするエンコーダを経由して作成し、これが試写データにもなります。
MIXのバス系統は、以下に示すようにドラムのステム、ベース、ギターVO、コーラス、REV,アンビエンス、MC/ゲストトークで構成しています。
今後について
まだ始まったばかりですので、様々な試行錯誤を行っていますが、今後の課題は、以下に述べる3つだと思っています。
終わりに、
今回の音楽LIVE「ささしまMUSIC BASE」のサラウンド化については、制作側の皆さんからの強力なサポートがあり、実現しました。この場を借りて関係者の皆さんへ感謝申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
安藤:日比野さん、どうもありがとうございました。本日は、メーテレのボンバーeの関係者の皆さんも参加していますので、お互い良い刺激になれば、名古屋の音声も一段と向上するのではないかと期待します。
では、後半は沢口塾長からハイレゾ・サラウンド音楽制作の最新動向をUNAMAS Labelのアルバムを例に紹介していただきます。
沢口:皆さんこんにちは、MICK沢口です。
私は、20年ほどJPPA AWARDのミキシング部門の審査を担当してきましたが、2016年度も名古屋の番組が受賞しました。大変おめでとうございます。皆さんは、関西圏と関東圏に挟まれて何か窮屈なイメージを持っているようですが、決してそうではないということが、この継続的な受賞により証明されていることを是非皆さんのモチベーションの向上につなげていただきたいと思います。今や「負けるな名古屋」になっているんですよ!
では、ハイレゾ・サラウンド音楽制作のデモを聞いていただきながらUNAMAS Labelの最近の取り組みを紹介します。
これは、2016年後半から2017年6月までのUNAMAS Labelのアルバム制作です。
UNAMAS Labelの制作手法の最近の取り組みについて以下にまとめてみました。
基本は192-24 PCMで5CHあるいは、7.1CH+4CHのイマーシブ・サラウンドを志向しています。リリースの形態は、マルチフォーマットとして通常の2CH.5CH.MQA-2CHそして9CHサラウンドマスターからバイノーラル・コーディングしたHPLです。今年の秋以降では、DSD11.2 2CHのリリースも予定しています。
では幾つか制作例を紹介した後でデモ再生を行いたいと思います。
まずクラシック制作では、拠点を軽井沢の大賀ホールとして制作しています。
ここではサラウンド表現に適した楽曲を決定したあとにステージでの配置を決めて、あとは、マスターのCHと使用するマイクの数を1:1としたマイキングでシンプルにレコーディングするという方法です。
次は、スタジオ録音での制作例です。日本音響エンジニアリングの千葉AGSスタジオでの制作例です。
次に紹介するのは、私のライフワークにしている自然音サラウンドと音楽を融合した「サラウンド・スケープ」というアルバムシリーズの新作です。
これは東京の奥座敷である多摩の四季を3年に渡ってレコーディングした自然音と音楽を融合しています。羽村に伝わる民謡は、ボーカルの方に森の中で歌ってもらいサラウンド録音しました。
これは2017年の2月の制作で、沖縄八重山諸島の一つ竹富島でのフィールド録音と三線を中心としたルーツ音楽を192-24 PCMとDSD11.2ダイレクト2CHの2フォーマットでレコーディングしたアルバムです。フィールド録音は、深夜に行い、音楽録音は、公民館を借りて行いました。写真でおわかりのように大変コンパクトなシステムでハイレゾ・サラウンド制作が行えるというエコシステムです。
制作リポートは、プロサウンド2017-8月号に寄稿していますので是非お読みください。
では解説はこれくらいにして幾つかデモをお聞きください。
デモ−01 UNAHQ 2010 DEIMENTIONSから再生
デモ−02 UNAHQ 2011 A.Piazzolla by Strings and Oboeから再生
デモ−03 UNAHQ 2012 Souvenir de Florenceから再生
デモ−04 The Sound of TAMAから再生
デモ−05 The Sound of Taketomi Islandから再生
UNAMAS Labelの配信は、現在国内と海外で以下のサイトからダウンロードすることができます。また制作PVもUNAMAS 4Kで検索するとYouTubeにアップしていますので、参考にしてください。
安藤:沢口塾長どうもありがとうございました。今回は、学生さんも参加していますので、感想など聞いてみたいと思います。
学生01:サラウンドの世界とはどんなものかを経験できて大変有意義でした。
学生02:私は環境音と音楽の制作に関心があるので本日のサラウンド・スケープというアルバムコンセプトが大変参考になりました。自然音の録音は何CHで行っているのですか?
沢口:4CHです。最終的に音楽がセンター中心で配置しますので開けてあります。
学生03:フローレンスの思い出がとても良かったと思います。作曲者が意図したスコアの意図がサラウンドでよくわかりました。是非CDを購入します!
沢口:残念ながらCDは2CHまでですので、CDだと表現意図は、わからないとおもいます。(笑)
メーテレ:メーテレの白木と申します。弊社の音声中継車はイマーシブ・サラウンド制作対応にしていますので是非何かやってみたいと思いました。
安藤: 皆さん、長時間にわたりありがとうございました。会場を提供していただいたZaxxスタジオの皆さんにも感謝申し上げます。(拍手)