January 10, 2005

BBC プロムスコンサートHD + 5.1サラウンド 2004

By:Broadcast Eng 04-11 抄訳:Mick Sawaguchi 沢口真生

BBCは、毎年夏のクラシックイベントとしてロンドンのロイヤル アルバート ホールという球形の天井を持つホールで一月間に渡る音楽イベントを行っています。これをサラウンド制作しようという様々な取り組みが数年前から行われていますが、これは 2004年の最新レポートです。
映像にHD制作を取り入れ始めたところが、頑固なBBCも変化に対応というところか?(Mick記)

[ はじめに ]
BBCは2004年のプロムナードコンサート制作にあたり、WembleyにあるClassic Sound社の協力のもとに5.1ch サラウンド録音を実施した。
これは映像がHDで音声は5.1CHという構成である。
担当したのはBBC SP-PROJのNeil HutchinsonとClassic SoundのJohnasan Stokesである。彼らは2003年の時もチームを組んで実験を行っている。ここで感じたのは生放送でのサラウンドとステレオMIXを、どうモニタリングするのかにあった。
2004年のコンサートは、 World wideでの配信を考え、昨年の結果を有効に活かすことが彼らの責務となった。


2004プロムナード コンサート

HD-TVの動向は、USAを始め各国で活発となっている。これらの動向をうけBBCでもHD-TVとサラウンドの番組を制作していく必要を感じているのが現状である。Kevin OnellはBBC の国際展開を担当するコーディネータである。彼は、こうしたBBCの対応は、USAのHD専門チャンネルとして放送を行っているDiscovery HDシアター等から影響を受けていると話している。こうしたチャンネルで昨年のプロムナードコンサートは放送され、今後BBC制作の高品質な音楽番組がニーズとしてあると考えている。これらは、DVD化もされ、Classic Sound社は、こうした制作も担当している。

イギリス国内では、HD-TVで視聴することは現在困難な状況ではあるが、海外のHD-TVに対するニーズの高まりとBBCも無縁ではありえないとOneilも認識している。プロムナードコンサートの収録は、BBC-TVとラジオで大きく異なっている。BBC-TVは、コンサートの会期中最後の1あるいは2夜分のみ収録するのに比べラジオのほうは、全編を録音している。このためTV音声はラジオ録音のシステムを流用している。ラジオの録音用マイキングは、通常80-100チャンネルの規模で、このうち常時使用するのは、70チャンネルくらいである。
昨年は、5.1CHのステムを作ることで対応したが、あまり良い結果ではなかった。コンサート会場となるRAHは、音響的に条件がわるくモニター条件も十分とは言えないからである。

この昨年の経験をいかしてClassic Sound側でサラウンド用のマイクをいくつか追加するという方法が今回採用された。ひとつは、B&K全指向のペアマイクを指揮者の頭上に設置、それより少し離して単一指向性のSchoeps MK-4Sを設置。これは音場全体をカバーするマイクとした。もうひとつのペアは、会場後方むきで同じMK-4Sペアを、メインのペアマイクと同じ高さで6m後ろに設置した。
加えてRAHの天井で拡散している音を捉えるために3本のB&K全指向性マイクが設置された。これらのマイクは、時間軸を揃えてあり不要なエコーやずれが生じないようにしてある。
これらは、Pyramix DAWに64トラックで録音、これ以外にMCやSEをTASCAM-DA88に録音した。HDは映像自身にも遅れがあり、各マイクにも遅延があるので最終MIXは、大変複雑な工程となった。
コンサート最終日の演奏は、さらに複雑でRAHだけでなく、エジンバラ・ダブリン・バーミンハム・スワンシーといった各地を結んでの合同演奏となった。
RAHの演奏は、衛星伝送で各地に送られ、それぞれの演奏はまた衛星経由でRAHに送り返されている。これらは、DA-88に演奏とオーディエンスにわけたステレオステムで録音、計8トラックとなる。これらの素材全てはTASCAM MX-2424にコピーし、RAHの会場とうまく馴染むようなMIXが行われた。
最終的なMIXは、メインMIXとM&EMIXに分けられそれぞれ5.1CH MIXとステレオMIXで計16トラック分がTASCAM DA-98に記録された。
制作を担当したClassic Soundは、AMS NEVE LOGIC-2をメインとした自社スタジオで制作され、VCR配給にはDolby-Eエンコードが行われている。(了)

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